戦姫創造シンフォギア   作:セトリ

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ー破壊ー Despair or Hope

 

旧東京湾、第三倉庫。

太陽が沈みかけた薄暗闇に、蛇と男と少女と戦姫は居た。

 

『やぁ、やぁ、やぁ。君と会うのは、いつ振りだろうかね。葛城?』

 

蛇は戯けた調子でパイプ椅子に座りながら語りかける。

紫の銃を持った男がアンティーク調の装飾を輝かせ、トリガーを引く。

 

『っと、いきなりの挨拶じゃないか?』

 

蛇はなんでもないように手を振る。

煙が細々と一筋。その身に纏う赤い鎧には傷はついていない。

 

「あんたにはこれぐらいがお似合いだ。ブラッドスターク」

 

男からおよそ予想がつかない暗い焦りに、蛇は嗤う。

 

奪われた者の怒り、悲しみを混ぜた絶望。

それに相対して輝く希望に満ちた姿が、蛇には滑稽に見えて嗤いは止まらない。

 

「何が可笑しい?」

『お前達がオレに敵う訳がないのに、楯突く所だよ』

 

男は銃に黒色の歯車と橙色の歯車、二つの容器を装填する。

 

【ギアノイズ!】【ギアチャージ!】

 

【ファンキーマッチ!】

 

黒煙を銃口から吐き出し、男の姿を包んでいく。

 

「潤動!」

 

蛇を睨みつけるような目、戦意に満ちた掛け声。

それに呼応し、橙色の火花が黒煙の中から弾けていく。

 

【Fever!】

 

稲妻のように駆け巡るは、異形の身体。

幾重にもなる歯車が手足、胸部に噛み合い、鎧となる。

腕部には更に三角柱型の黒と橙色の装甲が追加される。

 

【Perfect!】

 

最後に橙と黒の二色の歯車が合わさり、一つの仮面となって男の顔に装着される。

 

「ストレンジブレイバー、ver.(バージョン)C 転換完了(コンバート)

 

極めて獰猛な叫びにも似た冷たい声が仮面を通して倉庫に広がる。

 

蛇は軽く乾いた拍手をしていた。

 

『お前のそれ......オレの計画頓挫寸前まで追い込んだアイツの姿にソックリで腹が立つんだが?』

 

その手には銀色に装飾された小型の銃、トランスチームガンが握られている。

銃口は、黒髪の少女に。

 

「一丁前に脅しをかけたつもりかい? なら、もっと本気で脅さないとお前の右腕無くなるけどいい?」

 

「ぁぁぁぁああああッッ!!!!」

 

豪雷の如き勢いで垂直に上から降り注ぐ撃槍(ガングニール)

穂先は凶器が握られた蛇の右腕へ。

 

「解放全開!イっちゃえエェッッ!!」

 

爆発的なエネルギーが倉庫全体に伝わる。はち切れんばかりの轟音とコンクリートの粉塵が辺りに充満する。

 

【チャージライフルモード】【ファンキー】

 

一筋の光。バチバチとプラズマを発して、粉塵を押し退けて蛇の居た方角へ放たれる。

 

「やったか......?」

 

男はその手にある橙の槍へ象られた紫の銃を握り締める。

銃口と銃床の部分には、両腕部から取り外された装甲が接続されている。三角柱型だったそれは中心から上下に割れ、細く長い無色の棒が中から露出していた。

 

『なるほどねぇ』

 

蛇の囀り声。

次いで男は銃へ、蝙蝠の羽ばたく造形が施された容器を装填する。

 

【フルボトル!】 

 

容器に溜まっていたエネルギーが銃を通して全体に伝播する。

無色だった棒が毒々しい紫色へ染まっていく。

 

【ファンキーアタック フルボトル!】【Gun!】

 

カチリ、と冷たく場に響く。

 

およそ10秒程の照射が行われる。

蛇の身体を眩ます程の光量とコンクリートが赤く溶ける熱量をもってして。数瞬の間を置いて染まっていた色が棒から光線として放出された。

 

『そういう作戦だったか。確かに人質奪還する手段としては最善だ』

 

蛇は何事も無かったようにプスプスと煙を上げている無傷の左手を振り、あっけらかんとしてパイプ椅子に未だ座っていた。

 

「......よくやった立花響」

 

男のそばに少女を抱えた戦姫が降り立つ。

 

「これで未来(みく)を返してもらったよ!」

 

戦姫の勝利宣言。

彼らの勝利条件は人質の奪還。蛇を倒すことでは無い。

 

「じゃあ、俺たちはこれで失礼するよ。ブラッドスターク」

 

撤退の為に銃から煙を撒き、辺りに灰色を漂わせる。

蛇は慌てる素振りも見せず、ただ見守っていた。

 

『ほんと、よくやったよ』

 

煙が晴れる。

 

『ただ、一つ忘れていないか? ここはオレのテリトリー、支配圏だという事を。主人の許可無く出ることは出来無い』

 

その場には男と戦姫が居た。彼らの顔には動揺と焦りが表れている。

 

「撤退できないだと。いや、足が全く動いていない。動けない? まさかそういう事なのか?」

 

「どういうこと、何ですかこれ!? 足が石になったみたいに動けないッ!?」

 

蛇はその二人のもがく様を見て大いに嗤う。

 

『これが、オレの今の力だ。ちんけな毒で操ってなんかいないさ。もっと大きな力だ』

 

何もかもが出来る自分に酔いしれるような手つきで蛇は戦姫を指差す。

そして、歌を口ずさむ。

 

【Balwisyall nescell gungnir tron】

 

戦姫が光り輝き、元の制服姿へ戻っていた。

 

「ガングニールが!? 何で急にッ?」

 

『強制武装解除。シンフォギアに限っては、オレには無力だ。そして、おまえにはこれがある』

 

蛇は指差した手を男に矛先を変えて、また歌を口ずさむ。

 

【Rei shenshoujing rei zizzl】

 

神獣(シェンショウ)ぐぁっ!?」

 

指先から放たれた、紫を帯びた白熱光線は男の身体を瞬時に貫く。

男の身に電気が走り、元の姿に戻る。

 

「巧さんッ!?」

 

「人を拐わす、魔を祓う光......確かに、ネビュラガスには効果的、だな......っぁ」

 

全身を貫く衝撃に堪らず膝をつく男。

少女は駆け寄ろうとするが、全く足が動かない。

男は貫かれた左肩を押さえる。その隙間からは肉の焼き焦げた如何とも形容し難い、鼻を劈く(つんざ)臭いと黒色の煙が指の隙間から漏れていた。

 

「なんで、動かない? 動いて! 動け、私の足! ぁぁぁあッ!!!」

 

絶叫。

どれだけの力を入れても、どれだけ気持ちを込めても、動かない事実は揺るがない。

 

『動くわけがない。君たちの生体制御権はオレが握っているからな』

 

「生体制御、まさかお前、神の、『口を閉じろ』ちごっ!」

 

『余計な事を口走る。そんな子には罰を与えないとね?』

 

蛇はパチンと指を鳴らす。

同時に戦姫の手から少女が離れ、地面に落ちる。

その眼には意識の光は消えていた。

 

『いやぁ、まだバラルの呪詛が解かれていない神殺しの意識を操るのは気分が良い』

 

魂が抜けたような顔つきで棒立ちしている戦姫。

蛇が手招きをするたびに、一歩ずつ蛇の方へ向かう。

 

『そうそう、良い子だね。もうちょっとこっちに来てよ』

 

目の前まで辿り着いた戦姫に対して、蛇は何処からか機械を取り出して彼女の腰へと当てがう。

光り輝いた蛍光イエローの帯が彼女の腰回りを一周する。

 

『似合っているね。融合症例の君なら、きっと良い兵器になれるよ』

 

戦姫は男の方に振り返る。

彼女の腰に鎮座しているのは、彼らにとって一番身近にあり、とても見覚えのある、夥しい血と悲しみに塗れた機械だった。

 

彼女の腰にはビルドドライバーが装着されていた。

 

「--------!」

 

『じゃあ、この後どうするか。想像はついただろ、天才』

 

男は口を開けない。

言葉を交わそうとしても、形に成らず、ただ意味のない足掻きにしかならなかった。

 

『命を乞うなら、今しか無いけどなぁ。ブラッドスターク様の計画を邪魔してすいませんでしたとか』

 

「----------!」

 

蛇は続いて全体が赤い機械を取り出す。備わる青みかかった蓋を手でスナップさせて、開閉を繰り返す。

 

『え、何だって? なに、なに。アメリカに居た筈の万丈龍我を日本に連れて来て二年間匿ってすいませんでした?』

 

繰り返して、五度。

指をゴムのように伸ばし戦姫のビルドドライバーへ差し込まれる。

 

「-----------!」

 

『その際に、フルボトル50本とパンドラパネル5枚、ネビュラガス関連の各種システムを奪ってしまいすいませんでした、だと? おいおい、こいつは大罪だなぁ?』

 

そのまま流れるように何もできない男の懐に指を入れて弄る。UFOやピラミッド、キリン等、持っていた様々なフルボトルを辺りへぶち撒けた。

 

「-----------!?」

 

『お、あったあった』

 

蛇は散らばった内のとあるフルボトルを上空へ二つ放り投げる。

それらに刻まれた彫刻は赤々と輝く鳥と無機質な人形。

 

『そうなったら、やるべきは一つだ』

 

戦姫が両手でそれらを掴み取り、軽く振って中身を撹拌、キャップを指定の位置へ回してビルドドライバーの装填口へ滑り込ませる。

 

【フェニックス】【ロボット】【スーパーベストマッチ!】

 

『死で以って、償うがいい。葛城巧』

 

ビルドドライバーに追加された赤い機械。戦姫はその青い起動スイッチを押す。

 

【ハザードオン】

 

「-------------!」

 

冷酷でくぐもった低い人工音声が流れる。

その言葉の意味も、これから起きる事も戦姫は理解せず、蛇に唆されるまま赤いハンドルを回し始める。

 

【ガタガタゴットンズッタンズタン! ガタガタゴットンズッタンズタン!】

 

戦姫の前後に形成されるのは、人形の鋳型。

人一人分の分厚さあろう鉄板だった。

 

【Are You Ready?】

 

覚悟を問うビルドドライバーに対して、戦姫はなすがままに立ち尽くす。

解答の四文字は紡がれる事なく、その全身は鉄板に挟まれた。

嵐の前に似た静寂が場を包む。

 

【アンコントロールスイッチ!】

 

程なくして鉄板は開ける。

煤のようなネビュラガスが舞い散り、漂う。

 

【ブラックハザード!】

 

鉄板がビルドドライバーに格納されて、漆黒の人型が顕れる。

黒づくめの鎧は端々が刺々しく攻撃的な印象を受ける。

両瞳に宿すエレメントは暗闇の中で燦然と輝く。鋼色に靡くロボットのマジックアーム。橙色の火を灯す鳥が片翼を広げている。

 

【ヤベーイ!】

 

陽が落ち、闇が広がる。

理性が明滅し、溶けていくかのように。

 

パチン、と蛇は指を鳴らす。

同時に、動かなかった男の口から呻き声が漏れる。

 

「最悪だな。どれだけの時間を費やせば、そこまで悪辣になれる?」

 

一歩ずつゆっくりと男の方へ歩いていく黒き殺戮兵器。

 

『気の遠くなる程の時間だよ』

 

兵器への発砲。

乾いた音と胸部から咲く火花。

それでも兵器は歩みは止まらない。

 

「......それじゃ、先に逝ってる」

 

【マックスハザードオン!】

 

黒く淀んだエネルギーが兵器の右脚へ集束していく。

それは誰が見たとして生身の人間に耐えられる代物ではない。

 

【ガタガタゴットンズッタンズタン!】

 

更にエネルギーは練り上げられて、これ以上にない程混じり気の無い黒へと変貌を遂げていく。

 

【Ready go!】

 

ただの暴力が、殺意が場を支配する。

そこに(よう)など無く。

ただ目の前の障害を排除する為、兵器は行動した。

 

【ハザードフィニッシュ!】

 

ガキュリと、倉庫内にリンゴを砕き潰したような音がする。

水風船が割れるような破裂音と共に、男を中心として赤色の噴水が湧き上がる。至近距離で浴びて巫鳥になった装甲からは、煙が立ち昇る。

過剰なエネルギーを全て吐き出すように高熱を発生させて、乾かしていく。

 

『当然の結末だな。さて、ここからが本番と行こうか』

 

蛇が兵器に手招きをする。

誘われ、兵器は蛇の方へと歩いていこうと闇の方へ向いた瞬間、暁から人影が落ちてくる。

 

『誰だっ!?』

 

その返答へ逆光して輝く人影は、銃のような物で何かを発射した。

一息に打ち出されたそれは兵器の装甲へ吸い込まれていき、火花を全身へ散らし、後退る。

 

蛇はそれがただの銃弾では無い事に勘づく。

ハザードフォームのビルドを後退りさせる、そんな威力の銃撃を繰り出せる銃などこの世界には5本も無い。

しかも、小銃サイズでのものと考えればこの世界に存在するものなのか。

 

その疑問は、人影の腰に輝いた白色の大型ベルトバックルが晴らした。

 

『破壊者かっ!』

 

相手が何をするのか、目的は自分じゃない事は蛇には分かっていた。

これから蛇がやる事は一つだった。

 

『残念だったね!ーーーーー』

 

人影は白のバックルにカードを挿入して、稼働させる。

 

【Attack Ride Engage】

 

人影は尋常ではない脚力を以って兵器へ一息で肉薄する。

 

たった一息の差。

 

“そいつには何も手出し出来ないさ”と心の中で勝利を確信して蛇は今回の幕を引き下ろすべく、転送結晶を握った手を振る。

 

そして振り切る間際、何かが手首に巻きついた。

止められたのは1秒。

後に転送結晶が兵器の足元へ叩きつけられ、眩い赤光を発して兵器は倉庫から姿を消す。

 

『......してやられたか。としても、オレの第一目的は達成した。計画に必要なピースは3つ』

 

蛇は嗤う。

右手首に巻きつかれた鎖を引きちぎり外す。

鎖はボロボロと砂のように砕けて、地面に辿り着くまでには粒子となって跡形も無く消えていた。

 

『新たなバベルの塔が建つ事を恐れろよ、フィーネ』

 

数多のフルボトルを溢した男の死体だけしか無い倉庫に、嗤い声が広がっていた。

 

 

 





音声データNo.2017-09-03

【この音声はフィクションではありません】

「火星で発見されたパンドラボックスが引き起こしたスカイウォールの惨劇から十年。日本は東都、西都、北都の三つに分かれ、混沌を極めていた」

「桐生戦兎と万丈龍我は、ナイトローグ、ブラッドスタークから構成されるファウストの陰謀を食い止めるべく仮面ライダーとして戦った」

「人間がネビュラガスを浴びる事により生まれるスマッシュから成分をフルボトルで抜き取り、協力者によって浄化され俺たち仮面ライダーの力とした」

「ナイトローグである氷室幻徳は、スカイウォールが出来る際にパンドラボックスから発生した光によって攻撃本能が刺激され、国のトップに立つ為に東都の首相を潰し、代理となりファウストの力によって他の都を制圧しようと画策していた」

「それを影から支えていたのはブラッドスタークである石動惣一だった。彼は宇宙飛行士であり、彼がパンドラボックスを触ったことによってスカイウォールの惨劇が起きた」

「俺たちはパンドラボックスから分離した、6枚からなるパンドラパネルの内、東都にある2枚を得てフルボトルも20個集まっていた。もちろんパンドラボックスそのものもあったが、それはブラッドスタークに奪われた」

「パンドラボックスから放たれた未知の成分で作成された、ラビットタンクスパークリングによってナイトローグが撃破される事によってファウストも瓦解した」

「逃げ延びたブラッドスタークはパンドラボックスを北都へ持っていき、更なる陰謀を企てていた」

「そして、氷室幻徳のヒントにより解明された新型ベルト、スクラッシュドライバーこれらの存在が一層戦いの混沌を加速させていった」

「それら全てはファウストに所属する科学者であった葛城巧が、とある事件により記憶を失い姿を変えられ仮面ライダーの道を歩む事になった桐生戦兎の造った兵器が発端だった」

「桐生戦兎は苦悩と悲しみを抱えて、尚造った責任を果たす為に戦いへと身を投じていくのであった」


【音声の再生を終わります】


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