うちのビーチェが一番可愛い!   作:赤き真実で宣言マン

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その日、青年は運命に出逢う──


第一話

 右代宮家にお世話になって3ヶ月が経とうとしていた。この間に気づいたことについて記そうと思う。

 まず第一に右代宮夫人は夫である金蔵氏に愛人がいるのではないかと疑っている。実際、彼が姿を消すことが稀にある。この島は彼が所有している島だからどんな事でも出来るのだろう、注意して意識を割いていてもいつの間にか消えていることがある。……唯一の心当たりとしては森の奥だろうか。彼処には近づかないようにと島に来た初めに忠告されている事からもあの奥に何かがあるのは確実だろう。問題は金蔵氏の目を盗んでどうやって森に入り込むかだが、まぁなるようになるだろう。

 次に右代宮兄弟の仲の悪さだ。これについては遊び感覚で次期当主に相応しい人物かどうかで書いていきたい。

 まず長男蔵臼は威厳がある態度を高圧的に接すれば身につけることが出来ると考えている節がある。そのため妹や弟に強く接しているが、あんなので威厳が身につくなら誰も苦労しないだろと言いたい。……いや、一度だけ言ったことがあるが聞き届ける気はなさそうだった。器量、そして自分の才を信じる強さがない見るところがない男、と言った印象かな。

 長女絵羽。彼女は才気もあり自分の能力についてもどの程度のものなのか自覚をしている。そこは評価できるがことある事に兄蔵臼に対抗するのは如何なものか。そこが無ければ次期当主に推したい人物だろう。まぁ次期当主に収まれば落ち着くとは思うんだが。

 次に留弗夫……。彼は……スネ夫とかそんな感じの性格をしている。その場で一番権力を持っている人物に取り入るような男でその人物に好ましい言い回しをしたり機転が利く。……当主っていうよりは参謀とかそっちの方が合ってるんじゃないかなぁ?

 そして最後に楼座。彼女は年の離れた末っ子ということもあり、ことある事に兄や姉に板挟みにされて虐められていた。俺が来てからめっきり無くなり感謝されたことがあるが、悪い気はしなかった。まぁしわ寄せは俺に来てる訳だが、気になるほどでもない。

 

 とまぁ、長ったらしく書いてはみたがこの評価誰かが読んだりしないよな?読まれたら間違いなく殺される気がする。あっ、でも絵羽お義姉様に関してはいい事しか書いてないから何かあったら庇ってほしいな☆

 

 

 

 そして今日はある計画──森の奥の金蔵氏の愛人を探す旅を実行する日である。この島は俺が住まわせてもらっている屋敷部分と船着場などを含めても島の1/3程しか使われていないと思わせるほど大きい。……つまりは残りの部分に金蔵氏の愛人なり妾なりが潜んでいたとして夫人はもちろん子供たちも気づけない仕組みになっているはずだ。

 数週間をかけて源次さんや使用人の目を盗み集めた非常食や飲料水をリュックに詰め込み一路木々が鬱蒼と茂る森へと入っていった。

 

 

「……完全に迷った。マジで自分がどこにいるか分かんねぇ…詰んだな」

 

 森に入りはや4時間。屋敷を抜け出したのは早朝だったにも関わらず今は太陽が煌々と照りつけている。…いや、太陽の位置で方角自体は分かるじゃねえか。

 

「あほらし。……もうちょい進んだら帰るか」

 

 この選択が俺に一生涯の宝物を授けてくれたのだから運命なんて言うのはよほど気まぐれなんだと思う。

 このあと30分ほど歩き続け、流石にどこかの木陰で休憩しようという所でその屋敷は目の前に現れた。表の屋敷よりは存在感がないが、愛人を囲うのが目的だとすればこれ以上無いほどの建物だろう。屋敷自体の高さも森に隠れるほどの大きさに抑えられているが、離宮があったりするのは流石と言う他ないだろう。

 

「──どちら様でしょうか?」

 

 そして屋敷の隠蔽工作に関心していた俺は少女の声を聞いた。声に気付き振り返ると金髪蒼眼に黒いドレスを纏った美しい女性が──

 

「あの?……こういう時はどう声をかけるのが正解なんでしょう?……うぅ、おと…金蔵に教えて貰ってないし……」

 

 彼女に見蕩れていると俺の気分を害したと早合点し、わたわたと面白いほどに慌てる少女。正直彼女の百面相を見ているのも乙なものではあるが彼女の心象を悪くするのもうまくない。……初対面の相手にこんなに気を遣うなんていつ以来だろうか。

 

「すまない、キミが余りに綺麗だからつい見蕩れてしまった。許してくれるか?」

 

「きれっ……!」

 

 思うままに彼女に伝えると可愛らしく赤面し両手で頬をおさえ照れてしまった。その仕草も最早愛おしく感じられてしまう。会ってまだ数分と経っていないはずなのに俺は彼女が──。

 

「あのっ!中でお茶でも如何ですか?……その、宜しければ」

 

「喜んで」

 

 彼女の申し出を断る理由もそんな気すら無く、彼女に導かれるまま屋敷へと足を踏み入れる。

 最近お茶を勉強しているという彼女が淹れてくれた紅茶は香りが良く、明らかにいい茶葉だとそういう事に疎い俺でも気付けた。目の前に紅茶が置かれ、彼女のお気に入りだと言うマドレーヌなどが茶請けとして数個頂いた。

 

「……うまい。紅茶淹れるの上手いんだね」

「頑張って練習しましたから。……私たちまだ自己紹介もしてないんですよね。不思議な感じです、名前も知らないのにこんなに居心地が良いなんて」

 

 カップを両手で持ち、そう穏やかに微笑む彼女。その仕草だけでもまるで絵画のようで俺はどうしようもなく彼女の虜になっていた。

 

「私は──ベアトリーチェ。ベアトリーチェと、そう呼ばれています」

「俺は圓山勇一。勇一って呼んでくれると嬉しい、かな」

「ユウイチ、ですね。分かりました。私もベアトリーチェと呼んでください」

 

 

 

 その後俺はベアトリーチェと名乗った少女と、とても有意義な時間を過ごすことが出来た。彼女が得る知識の殆どが本からという環境だったためか、俺が話す内容にも一々大きなリアクションを取ってくれて──いつも俺を出汁にしようとするオッサン共とは違い──純粋な彼女の心がどうにも眩しく、そして終始笑顔を絶やさない彼女の姿勢が とても好ましく映った。

 だからだろうか、その日の夕方俺は彼女にプロポーズをしていた。出会って数時間しか経っていないというのに、俺は彼女を離したくなくなっていた。

 

「……やっぱり無理だよな、会って数時間で結婚しよう、なんてのは」

「いいえ、そんなことはありません。──私もきっと貴方を愛していますから」

 

 嬉しいです、貴方と同じ気持ちになれて。……そう微笑を浮かべる彼女は本当に美しくて。

 

「……圓山様?」

 

 いつの間にここに居たのか、熊沢に気付くことが遅れてしまったのである。




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