異世界で虫を食べる話 作:山田ムシ太郎
「ドクミよ、次の我々の任務は何だ?」
「知りませんよ……」
「ブゥァカが! そんなんだからそんなんだ!」
新たな仲間であるドクミは本当に行く当てがないようで散々な事をやられたにも関わらずおとなしく付いてくる。まあ食料はその辺りの地面の上で一杯蠢いているから旅の仲間が一人二人増えた所で問題はない。しかし、しかしである。人間は飯だけ食っていればいいのか? 果たしてそんなものが本当の人間だと言えるのだろうか? 否、断じて否である。
「ドクミよ、人間が人間らしく生きる上で必要な要素を三つ述べよ」
「え? えっと……食べ物と飲み物? それとお金?」
「ブゥゥァァカめが! そんなんだからそんなんなんだぞ! よく聞け、まずは第一に食べ物、これは正解だが飲み物も一緒に考える。そして次に必要な物は衣だ! 人は裸では生きていけない! そして最後に重要なことは住! つまり住むところだ!」
「住むところ? 家?」
「その通り! 断じてこんな路地裏は住居ではないのだ! というわけで家をゲットしにいくぞぉ!」
とは言ったものの家を手に入れるには金が必要だ。しかし俺たちは見事なまでの一文無し、つまり金では家が手に入らない。金を使わずに済む住む所(激うまギャグ)を手に入れるためにはどうするか。
「答えはこれだ!」
「なんですかこれ……」
「見て分からんか? 捨て猫作戦だ!」
というわけで現在俺たちは路地裏に転がっていた適当な木箱を拝借してその中で体育座りをしている。小汚い路地裏からは離れて比較的に治安が良さそうに見える場所まで移動し、そこで誰かに拾って貰おう作戦だ。
「悪魔って頭悪いんですか?」
「誰が悪魔だ、俺は天才美形ショタ異世界転生者だ」
「ちょっと何言ってるか分からないんですけど……」
「仕方ない、知能の低い貴様のために懇切丁寧に説明してやろう。まず俺は天才美形ショタ転生者であることは周知の事実、そしておまけで猫耳ロリもセット、こんなお得なハッピーセット、余程のマヌケでないならばその価値に気が付く筈だ」
「ちょっと何言ってるか分からないんですけど……」
「ネタを繰り返す出ない! んん、つまりだこんなにも素晴らしい物が落ちてたら誰だって拾いたくなるだろう、もし拾いたくならなかったならそれはきっと人間でない何かだ!」
「むしろ人間でない何かのほうが餌か何かだと思って拾ってくれるんじゃ……」
「シャラップ! そして拾って貰った俺たちは見事に三食昼寝付きの素晴らしい宿を手に入れることが出来るわけだ」
「ちょっと何言ってるか分からないんですけど……」
「だからネタを繰り返すなと言ってるだろうが」
「真面目に考えてこんな粗大ゴミみたいな者を好んで拾う人なんていないと思います」
まあ実際はその通りだろう。俺も半ばふざけているだけで実際に拾ってくれるなんて思っていない。あわよくば乞食のように金を恵んでくれたら御の字だ。ドクミの言う通り、俺たちはこの社会の粗大ゴミである。役に立たない廃棄奴隷と病気か化け物かにしか見えない俺、こんな連中を拾ってくれる存在がいるわけがない。むしろ迫害を受けるまで考えられる。
一応地面には拾って下さいとは書いているが、意味があるかは分からない。
「それ拾って下さいって書いてあるんですか?」
「なんだ文字も読めんのか?」
「読み書きなんて習う余裕はありませんよ。一応簡単な物ならなんとなく知っていますけど、私は全く見たことない文字です」
ふむ、そういえば深く考えずに書いたがこれ前世の文字だったな、これじゃあこの世界の人間は誰も読めないかもしれない。というかこの世界の文字は理解出来るように神様がやってくれたみたいだけど、どうにも書く方は対応していないようだ。
「実はこれはドクミは虫食いの変態ですと書いてあるんだ」
「え?」
「やーいやーい、虫食い変態幼女!」
「誰が変態幼女ですか! それに好きで食べたんじゃなくてあなたが無理矢理食べさせたんじゃないですか!」
「でも甘くて美味しかっただろ?」
「う……、確かに想像していたものとは違いましたけど……」
「これが虫のパワーだ。分かったか変態幼女」
「虫が凄いのは分かりました、けど変態じゃあありません!」
「お、ちょっと待て変態幼女ドクミ、あれを見ろ」
ドクミと下らないやり取りをしていると興味深そうにこちらを見つめる視線に気が付いた。少し離れた所から幼女がこちらを注視している。
「見て見ろあれを、あれは間違いなく俺たちを拾うかどうか悩んでいる感じだ」
「そんなわけないでしょう、あれはどう見てもただの哀れみの視線です」
「バッカお前、哀れまれてるなら最高に好機じゃないか。ほらもっと不幸なオーラと拾って下さいオーラを全開にしろ」
そうしてなんとなくどんよりした雰囲気を醸し出していると幼女が近寄って来た。年頃はドクミとそう変わらん、しかし獣耳でもないしエルフ耳でもないので恐らくは普通の人間。前髪が目元近くまで下がってきて目元がはっきり見えない、というか切れよそれ絶対鬱陶しいだろ。服装は可もなく不可もなく、ファンタジーではよくありそうな布の服だった。
「何をしている?」
「捨て転生者と捨てネコ耳ロリです。ペットに如何ですか?」
「ペット……」
「そう今ならなんと無料! 考えても見てくださいお客さん、普通にペットを飼おうと思ったらまず動物を手に入れるための金が掛かります、更に人間とは違って犬猫は躾をしっかりする必要があります。対して俺たちは人間、一度言って貰えればきちんと理解出来ますから躾の手間は全く無し!」
「無料……」
「更に更に、俺たちは自分の飯は自分で手に入れることが出来ます。つまり餌代の心配も無し!」
「餌代……」
「必要なのはそう、屋根があって雨風が凌げる快適な住居! それだけです! こんなお得な話はこの機会を逃したら二度とありません!」
「住居……、物置なら空いてるかも……」
「物置! それは素晴らしい、一言で物置と言っても様々、少し手を加えればあっという間にペット小屋に早変わり!」
「うん……飼う……」
「毎度あり! それじゃあ早速向かいましょう、こういったことは早い方がいいですからね」
いえい、無口ヒロイン系幼女のペットとなることを対価に住居を手に入れられそうだぜ。
「悪魔じゃなくて詐欺師だったんですね」
「し! ドクミ人聞きの悪いことを言うんじゃない!」
「家はこっち……」
「ああ、はい直ちに向かいます、ほらいつまでそんなとこで座ってんだ変態か? 早く立てドクミ!」
「酷い!」
「うるせえ行くぞ」
ドクミを立たせ、さっさと歩き始めたご主人様予定の幼女を追いかける。それにしてもマイペースな幼女である。しかもチョロい。こんなのでこんな暗黒社会で今までどうやって生きてきたのか謎だ。
無口ヒロイン系幼女のペットになった!
幼女のペットに成り下がる主人公はなろうにもいない……いや普通にいそうだ。