今回もサッカーは無しです。すみません。あと、1、2話したらやると思います。
では、数あるイナズマイレブンの二次創作の中からこの作品を読んでくれる貴方に感謝を。
本編スタートです。
筆記試験が行われていた教室で俺…ザゴメルは自分の荷物をじっと見つめていた。教室には電気がついていないが、差し込む夕陽が教室を照らしており、そこそこ明るい。
やれる努力は全てやった。体も必死で鍛えてきたし、勉強も周りよりも多くやったと断言できるくらいはやったつもりだ。
だが、それは王牙学園の合格を勝ち取るには足りなかった。
「…やっぱり俺じゃ無理だ」
俺は軍部の中ではエリートの両親を持っている。同じく軍部の両親を持つエスカバとは両親同士の繋がりで知り合った。
だが、エスカバを見ればすぐに分かるのだ。
自分が天才とは言えないことに。
エスカバには超人的な頭脳がある。試験中に知り合ったバダップには超人的な運動能力がある。もうこの事については努力とかでは埋めようのない差がある。
すなわち才能だ。
自分にはそれがない。
何でエスカバみたいに出来ないの!という感情を滲ませた両親の顔を思い出す。
両親を見返すためというべきか、そのために王牙学園の試験を受けた。だがダメだった。
パワーなどに関しては才能があるとは思ってはいた。だが、他の受験生達はパワーなんかよりも遥かに良いものを持っている。
もういい。これ以上ここにいる意味がない。試験監督によればまだ試験はあるらしいがこれ以上受けても不合格に違いない。
実技試験中に持ってきた水筒と実技試験中に着けていた受験番号のプリントされたゼッケンを鞄の中にしまう。そして、チャックをしめようとする…その腕を何者かが掴んだ。
「!?」
「何してんだよ…お前」
「…どうでもいいだろ」
「よくない。少なくともお前がいなくなったらエスカバが心配する」
「…」
「お前…途中退席するつもりか?」
「ああ。そうだよ」
「…」
「俺には才能がない。王牙学園に受かるために必要な力が足りないんだ。諦める方が賢明だよ。最後まで受験して無駄に両親に期待させちゃ、退席するよりももっと深く失望させてしまうだろうしな」
しばらくの沈黙。いつの間にか掴まれていた腕も放されていた。鞄のチャックをしめ終える。鞄を背負う。後ろから黒野が声をかけた。
「ちょっとまて」
「何だ?」
「あのさぁ…」
「『才能』って何だよ?(哲学)王牙学園に合格するためには才能があればいいって思ってんのか?」
「…そうだ。俺にはそれがな「あるだろ」…」
「少なくともお前はパワー系の種目じゃバダップさえ除けばぶっちぎりのトップだったはずだ。何かの種目でトップを取れるってその時点で凄いんだぞ」
「…」
「事実、俺は多分、どの種目でも真ん中よりちょっと上ってだけでそんなに凄いわけじゃない」
「…だから何だ?」
「まだ諦めるなよ。俺の見立てじゃお前はまだ十分合格する可能性がある。それに…ここで諦める方がカッコ悪いと思うぜ?」
「けど…落ちたら失望されるかもしれない」
「まだそんなこと言ってんのかお前」
黒野は俺の鞄をひったくるとチャックを開けて中から俺がさっきまで身につけていたゼッケン(115番)と水筒を取り出す。
「そんなの…ある英雄の言葉を借りれば…」
「?」
「『100回失敗したら、100回起き上がる。1000回失敗したら、1000回這い上がる』だ」
「…」
「今までいっぱい失望させたかもしれない。でもそれがどうした?1001回目に挑戦すればいいじゃないか」
…ああ。気づいた。彼が何故、バダップの隣に立っていられるのかが。俺と何が違うかが。
こいつは…諦めなかったんだ。何度も何度もバダップに負けても諦めずに這い上がったんだ。
「あとそれと…才能以外にも大切なものはあるぜ」
「何だそれは?」
「こ↑こ↓」
こいつは左胸のあたりをゼッケンと水筒を持ってない方の手で叩く。
「?」
「おいおい。ハートだよ。ハート」
何言ってんだこいつは。
「…フッフフフ」
やべえ。つぼった。ハートっていつのスポ魂漫画だよ。
「ハハハ!ハハハハハハ!ハートときたか!そんな非ィ科学的なものを言うとはな!」
「悪いかよ。諦めてるお前よりは遥かにましだぜ」
「確かにそうだ!ハハハハハハ!」
「ククク…はっはっはははは!」
「ハハハハハハハハハ!」
しばらく俺達は笑った。笑い終えると黒野は手に持っていたゼッケン等を差し出す。俺は黒野が差し出した、ゼッケンと水筒を手に取る。
「行くぞ、零。時間がない。もうすぐ十分経つ」
「おう!行くぞ!」
教室を出る。そのまま校庭へと急いで走る。
「ハート、…ハートか。…うん、悪くないな」
やっぱり途中退席しようとしてたな。ザゴメル。よかったよ。間に合って。というかここでザゴメルが退席していたら歴史的におかしくなってたんじゃ…。
ひょっとして俺が転生したことで物語にある種のバグみたいなものが発生してるのかもしれない。多少は警戒すべきだな。
というかよくよく考えると王牙学園は雷門との試合の後、最終的にどうなるんだろう?先のこと考えてなかったなあ。
そんなことを考えてる間に集合場所にたどり着く。確かバダップ達はこの辺にいたはず…おっ。いたいた。
「悪い!バダップ!少し遅れた!」
「遅いな。何してたんだ?」
「まあ、気にしないでくれ」
「なあ、見ろよ。あれ」
エスカバの指差す方を見る。そこには…
「あれは…ヒビキ提督?」
「ああ。俺も初めて見たぜ」
王牙学園の設立者にして、政府の上位の職についているこの国の英雄と名高い男…ヒビキ提督だ。
この男を生で見て、思ったことがある。
…強い。間違いなく。ただの小太りのおっさんだと思っていたが違う。静かな水面の中に潜んでいるメガロドンのような殺気を感じる。何を言ってるか分からないと思うが俺も分からなかった。
とにかくヤバイ。ただ者じゃない。それは受験生全員が理解しているだろう。足がガクガクする。冷や汗が頬を伝う。
「さて…十分が経った」
ビビキ提督がそう言うと同時に、溢れ出る殺気が収まる。
「誰一人として逃げ出さないというのはさすがだ。今年の受験生は豊作だな」
いや、本当にお前は何者だよ。お前一人で雷門のメンバー全員倒せると思うんだけど。
「さて…試験監督の実技試験は終わった。ここからは俺が実技試験の監督を務める」
…こんなやつが考える試験は間違いなくヤバイ。バダップと俺の予想が的中しちまった。
「戦場において最強の兵士とはいかなるものか…お前達に分かるか?…おい。そこのお前。答えろ」
「は、はいっわた「『はい』だと?」…っ!」
とてつもないレベルの殺気が放出される。殺気を当てられた受験生は腰を抜かしてその場に座り込む。…いや、気絶したぞ。後ろ向きに倒れて泡食ってる。
なぁにこれぇ?あ、忘れてた。ここ超次元だから当然か(無理矢理納得させる)。
「余計なことを喋るな。お前らは馬鹿みたいに俺の質問に答えればいい。次はお前だ」
ヒビキ提督はエスカバを指名する。エスカバはまるで軍の上官に言うかのごとく叫ぶ。
「高潔な精神!戦士としての誇り!これこそ最強の兵士の条件だと思います!」
「そうか。次はお前だ」
今度は次々に受験生を指差す。
「相手のことを完全に分析した者こそ、最強の兵士だと思います!」
「完璧な作戦を立案できる者が…」
「最強の兵士とは裏をかく能力が…」
何人かの答えを聞いたヒビキ提督は深いため息をついた。
「残念だ。どいつもこいつも解答がありきたりでつまらん」
「…」
「いいか。お前達の言うことを総合すればサバゲー世界チャンピョンやノーベル賞の学者、将棋の竜王が最強の兵士ということになる。頭がいいだけで最強の兵士にはなれん」
しばらくの沈黙。わずか数秒のことだっただろうが俺にとってはとても長い時間だった。
唐突にビビキ提督が叫ぶ。何故叫ぶ!?
「最強の兵士とは!己の肉体を駆使し!敵を蹂躙し!なぎ倒し!破壊する!そう。圧倒的な肉体言語こそ最強の兵士の条件だ!」
「俺からの試験は一つ!己の肉体を使って受けてもらう!」
「お前達には腕立て伏せ、腹筋、スクワットを合計1000回やってもらう!」
…今なんて言った?桁が一つ多くないかい?というか…。
これ本当に小学生への試験か?
ヒビキ提督はその後、細かいルールを説明する。それによれば、
①腕立て伏せ、腹筋、スクワットを合計1000回行う。
②ビビキ提督のかけ声に合わせて一回ずつ行っていく。かけ声に着いてこれなくなった者は監視している試験監督達が指示した時点でそこで脱落。脱落した時の回数に応じて実技試験の得点が加算される。
③他の筋トレに切り替えてもよい(例えば、腕立て伏せをやった後にスクワットや腹筋に切り替えてもいい)
「以上が今回のルールだ!」
俺はバダップとのトレーニングを思い出す。トレーニングメニューにはもちろん筋トレもあった。だが、100回が最高だ。そこから先は考えたこともなかった。
他の受験生達も困惑している。つい十分前の『終わり!閉廷!以上!皆解散!』以上の衝撃だ。
「どうした。さっさと散らばれ」
ヒビキ提督の声に俺達受験生は校庭のあちこちに散らばる。俺とバダップ、エスカバにザゴメルは互いの声が届く範囲で散らばった。
だが、俺達はもちろん、受験生達の顔色は良くない。ついさっきまで1500メートル走ったり、色々忙しかった。それが終わってふーっ、となってたところにこれだ。正直言って1000回いく奴はバダップしかいないかもしれない。
『では、始めるぞ!』
スピーカーでビビキ提督の声が校庭に響き渡る。ヒビキだけに。
『始め!1!2!3!』
始まった。
序盤は大半の受験生はスクワット以外を選択した。当然だ。1500走った後にさらに足腰に負荷をかけるなんて冗談じゃない。
最初、俺とザゴメルは腕立てを、バダップとエスカバは腹筋をやっていた。
だが、やはり100を越えた辺りからキツくなり、俺は腹筋に切り替えた。大体100回毎に切り替えた方が良さそうだな。
『158!159!160!』
「ぐぅ…キツい…!」
「へばるなよ。ザゴメル。まだ一人も脱落してないんだ」
そう。ここまで誰一人として脱落してない。これってもう筋力というよりかは我慢比べに近いな。
バダップを見る。…キツそうな顔だ。今までの種目では平然としていたがやはりさっきまでの試験はバダップにもそこそこの負荷をかけてたのだろう。筋肉にある程度乳酸がたまっていたに違いない。
『199!200!201!』
そうこうしてるうちに200を越える。…まだ5分の1が終わったばかり。1000までは程遠い。
俺はスクワットに切り替える。1500走った後と言ったがもう腕は棒のようになっており、腹は筋肉的な意味で痛い。ここまで来るともうどれ選んでも変わんない気がする。
てかまだ誰も脱落してないのかよ。少なくともドンケツにはなれないな。というか皆そう思ってやってるわけだから誰も脱落しないんだな。なんてえげつないシステムだ。
他の三人を見てみるとエスカバが一番辛そうだ。今、あいつも俺と同じくスクワットをやってるが、足がガクガクになってる。
「エスカバ。腹筋か腕立てに切り替えた方が…」
「…そうだな。…グッ。キツい…」
300を越えるとプルプル震えている受験生の人数は一気に増えた。で、出ますよ…(脱落者が)。
360を越えてからそれは起きた。
俺の前方10メートルほど前にいてスクワットをしていた受験者の一人が膝をついた。試験監督が彼に近づく。
「364番!記録364回!」
奇跡的に受験番号と記録が丸被りだが、そんなこと気には出来ない。まだ半分もいってないんだから。
だが、悲劇(?)はここから始まる。
「8、402番!記録369回!」
「203番!記録376回!」
「12、67、121番!記録382回!」
とにかく脱落者が続出する。やはり、364番の脱落がきっかけとなったのだろう。もうビリになることはないという安心感で力が抜けてしまったのかもしれない。
『399!400!401!』
400が宣告される頃には受験生の約半分が脱落していた。
まずいですよ!このままじゃ500行く前に皆脱落だぞ!?
ちなみに俺、バダップ、エスカバ、ザゴメルはまだ脱落はしていない。
だが、エスカバはもうハァハァ言っておりもう限界なのは目に見えている。
『499!500!501!』
そして…
「グッ…う、うおおおおああああ!…もうだめだ」
腕立てをしていたエスカバが崩れ落ちる。
「114番!記録514回!」
ついにエスカバが堕ちたか。脱落者はその場に座るという決まりでエスカバはその場に座り込む。
もうすっかり日は落ちて、辺りは真っ暗。ナイターがついている。
…やっと半分か。もう残った受験生は100もいない。
こりゃあバダップでもいけるか分かんねえぞ。
600、700と続いていく。800の時にはもう残りは俺達含めて10人もいなかった。そして、俺ももう限界だ。全身に力が入らない。
俺は地面に倒れこんだ。
「191、9番!記録810回!」
ちなみに俺の番号は191だ。ところで…何で数大きい方から言ったんすかねえ(半ギレ)!?さては貴様ホモだな!?
そして、900回を越える。残っていたのは二人だけ。
バダップと…ザゴメルだ。二人ともゾーン状態ってやつかもしれない。目も虚ろでもう俺達が見えてないんじゃと思うくらい彼らは限界を越えていた。
周りの受験生達もこちらに注目している。
ひょっとするとザゴメルも1000回いくかも。
そして、ついに大台の990を越える。
『990!』
『991!』
『992!』
『993!』
その時だった。ドサリという誰かの倒れる音。受験者達の驚愕の声。
「192番!記録993回!」
えっ?その番号って。
倒れたのはバダップだった。
主人公がもしゲームに出たら
黒野零 火属性
王牙学園の司令塔。誰もが幸せになれる世界を望んでいる。
技
???
???
???
???
①『あのさぁ…』の使い方
呆れた時に使う。
②『こ↑こ↓』の使い方
ここに見てほしいものがある時に使う。
③『で、出ますよ…』の使い方
なんか出そうな時に使う。