イナズマイレブンIN王牙 転生者の記憶   作:Balu

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 第八話です。
 You⚪ubeで最近、イナズマイレブンアレスの天秤を見ました。灰崎の声とバダップの声が若干似てました。ああいうのを『中の人繋がリーヨ』というんですね。
 では、数あるイナズマイレブンの二次創作の中からこの作品を読んでくれた貴方に感謝を。
 それでは本編スタートです。


第八話:いいよ!来いよ!(VSグラファ・ドメイン)

 サッカーバトル開始前、俺達はコートの隅っこで作戦会議を行っていた。セシルはこの試合から棄権した方がいいとしばらく主張していたが何とか説得できた。

 

「はぁ。で、勝ち筋は見えてるの?何の作戦も建てないならボロクソにやられるわよ」

 

「いや、あまり見えてないよ。でも…攻略の鍵ならもう見つけたぜ」

 

「え?」

 

「見たことがあるんだよ。相手チームの二人の選手」

 

 俺はキーパーとフィールドプレイヤーの二人を指差す。恐らく俺達と同い年かそれ以上、まあ、中学生くらいだろう。

 

「会ったことがあるのか?」

 

「いや」

 

 バダップの質問を俺は否定する。すでにグラファ達はコートに立っており準備万端のようだ。

 

「サッカー雑誌で見たことがある。まずあの帽子を被ったキーパーは長岡(ながおか)っていって数年前に海外のユースチームでプレーしてた選手だ。んで、あそこの眼鏡は(さかき)で小学校低学年の日本代表に選ばれた選手」

 

「他は分からないのか?」

 

「分からねえ。グラファは初対面だしあそこの女性の選手…女の選手については詳しくないんだ」

 

 女性の選手…おかっぱの黒髪で左足にサポーターを身につけている選手は小さくジャンプを繰り返している。ウォーミングアップのようなものだろう。

 

「ム・チャンフイよ」

 

「…え?」

 

「ム・チャンフイ。韓国の神速と呼ばれた短距離走者(スプリンター)。しばらく見ないと思ってたけどまさかこんなところにいたとわね。ちなみに長岡や榊は前から『グラファ・ドメイン』にいたけど、この娘は初めて見るわ」

 

「それでも知ってるのか…やりますねえ!」

 

「色々訳あって知ってたのよ。…あと淫⚪ネタ止めてくれる?汚い」

 

「センセンシャル…なあ、ところで…………だろ?」

 

 俺はセシルの耳元であることを質問した。セシルは目を見開く。

 

「え?何でそんなこと知って…あ、まさか!」

 

「ああ。これで間違いねえ。俺の言う通りにしてくれ。先取点をとるぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さあ!両チームの選手!位置につきました!先程凄まじいプレーを見せた初登場のダークホース!《オーガ》!対するはあまりの強さに出禁になった我らがタブー!《グラファ・ドメイン》!はたして勝利の女神はどちらに微笑むのか~!』

 

 DJ-YOU(ディージェイユー)が叫ぶと周りのギャラリーも熱狂的に応援する。

 

「グラファ!新参者に負けんじゃねえぞ!!」

 

「『オーガ』!スーパープレー見せてくれ!!」

 

「バカヤロー!勝つのはグラファ達に決まってんだろ!」

 

 応援はどちらかと言えばグラファ達の方が多い気がする。まあ、さっき来たばかりの俺達に比べれば有名人のあいつらを応援した方がいいんだろうけど。

 

 それでも完全なアウェーって程じゃないのは助かる。

 

『では、キックオフは挑戦者sideの《グラファ・ドメイン》から「いらん」…は?』

 

 グラファはセンターサークルにボールを置くとそのまま離れる。そして、その場にあぐらをかいて座った。

 

「『オーガ』!お前達にキックオフは譲ってやる!よし!遊んでやれ!チャンフイ!榊!」

 

「ラジャー!!」

 

「へーい」

 

 俺とバダップはセンターサークル内に立つ。

 

「なめられてるな…。グラファは動かず、三人で戦う気なのか」

 

「安心しろ。バダップ。一点とればあいつも考え直す。今は俺のさっきの作戦通りに動いてくれ」

 

「分かったが…本当にそれでユースの元キーパーを破れるのか?」

 

「いや、100%とは言いきれない。だが、確率的にはこのやり方が一番、先取点の確率が高い。あと、この作戦の鍵はエスカバとセシルが握ってる」

 

 俺は長岡を見る。帽子のつばによって顔の左半分しかが見えないが、ニヤニヤ嗤ってることは分かる。あいつもグラファと同じように俺達をなめてるんだろう。

 

 十五分を示したタイマーのカウントが始まる。

 

 俺はキックオフしたボールを…相手チームのチャンフイにパスした。

 

「…!!?」

 

 咄嗟のことで驚くチャンフイ。慌てすぎたのか本来は左足でトラップするところを右足でトラップしてしまう。

 

 だが、彼女はそこをしっかりフォローしてボールを取った。ギロリと彼女は俺達を睨みつけ、なまりまじりの日本語で叫ぶ。

 

「何ダ!?私達をなめてるノカ!?」

 

「まさか!かかって来いよ!」

 

「言われなくテモ!!」

 

「いいよ!来いよ!」

 

「待て!チャンフイ!これは僕達を嵌めるための罠「ウルサイ!」…チッ!バカが!」

 

 榊がチャンフイを制止しようとするもチャンフイはそれを無視してゴールに向かってドリブルする。すごいスピードだ。さすが元陸上選手と言うべきか。

 

 それを追いかける榊。このままではチャンフイは俺とバダップ、さらにセシルの三人と競りあわねばならない。

 

 そしてボールを奪われれば、カウンターで俺&バダップ&セシルVS榊という、三対一という最悪の戦況を迎えることとなる。

 

 そのために榊はフォローのためにチャンフイを追いかけねばならない。

 

 だが、俺とバダップはチャンフイと榊を無視して相手陣地へと向かっていく。

 

「!?」

 

「フン!逃げたカ!腰抜けメ!」

 

 相手が自分を恐れて逃げたと考えるチャンフイ。

 

 榊は一瞬驚愕したような表情になるもすぐにチャンフイを追いかける。当たり前だ。このまま行けばディフェンスはセシル一人。チャンフイ&榊VSセシルとなる。相手の得点チャンスだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一人暴走するチャンフイの後ろを僕…榊徳馬は疾走していた。ディフェンスは女一人。対してこちらは二人で攻めている。得点の機会だからこそ落ち着いてプレーすることが重要だ。

 

「チャンフイ!落ち着け!あの女を突破すれば、キーパーはあの雑魚だけだ!」

 

「分かってル!」

 

 チャンフイが僕に右足でボールをパス。それを僕はダイレクトでチャンフイに戻す。そのボールはそのまま僕へダイレクトで渡る。それが高速で繰り返される。

 

 するとボールは二つに分身。二つのボールをそれぞれチャンフイと僕はドリブルする。

 

「「デュアルパス!」」

 

 本来なら相手が戸惑っている隙に両側から抜く、という動きがデュアルパスの特徴だ。だが、女は僕の方へと一直線に進んでいく。チャンフイの方には目もくれずに。

 

 二分の一の確率に賭けているのか?だけどデュアルパスは超高速でパスしあう技だ。つまり、どっちかのボールが偽物とかいうわけではない。

 

 どっちも本物だ。故に高速パスを中断すればボールは一つに戻る。

 

 僕はチャンフイにアイコンタクト。向こうも分かっているらしい。女を僕の方に引き付けた上でチャンフイがボールを保持する、この方法を使えば、チャンフイに対するディフェンスは一人もいなくなりキーパーとの一騎討ちだ。

 

 チャンフイは受け取ったボールを僕に返さずに高速パスを中断。僕の足元からボールが消え失せる。

 

「やれ!チャンフイ!」

 

「任せロ!クンフー「おりゃあああああ!」…!?」

 

 チャンフイがシュートを撃とうとした瞬間にそれは起こった。何者かがチャンフイのボールを奪ったのだ。

 

 え?僕の思考は停止する。相手のフィールドプレイヤーは先程、僕達を無視して突き進んだ二人と今デュアルパスで突破した女一人の合わせて三人のはず。

 

 じゃあ今のプレイヤーはどこから湧いてきた?

 

 僕はフィールドを確認する。…後ろに先程の二人と女一人。そして、今チャンフイのボールを奪った一人。キーパーも合わせれば相手チームのメンバーの数は五人となる。

 

「一体どういう「榊!ボールを奪エ!そいつはキーパーダ!」…そういうことか!」

 

 ゴールを見るとキーパーがいなくなっている。よく見ればチャンフイからボールを奪ったやつはキーパーのつけるグローブを着けていた。

 

「クソッ!ボールを「もう遅い!バダップ、零!決めろ!」」

 

 キーパーがボールを遠くへ蹴る。コントロールはそこまでよくないが前線にいた、少年二人にボールが渡る。

 

「チャンフイ!戻れ!」

 

「分かってル!」

 

 キーパーは長岡だ。簡単にきめられないとは思うが…嫌な予感がする。

 

 僕達は自陣に戻るために全力で走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺はエスカバからのロングパスを受け取った。隣にいるバダップに指示を出す。

 

()()いくぞ!」

 

「…分かった!」

 

 俺は左サイド…つまり、相手から見て右へ、バダップは右サイド…相手から見て左側ギリギリへと移動しながらゴール前まで進んでいく。それをグレファはあぐらをかいたまま見送る。

 

 そのまま俺とバダップはゴールライン付近まで移動する。俺はセンタリングをあげる位置へ。バダップはゴールの方へと迫る。

 

 だが、この場合でも普通のGK(ゴールキーパー)は気にしないことだろう。俺とバダップの二人を視界の中に入れておけば問題ない。

 

 そう。普通のキーパーなら。

 

 俺はセンタリングをあげた。何てことない普通のセンタリングだ。それをバダップはオーバーヘッドでシュート。

 

 普通のキーパーなら取れるよ。うん。普通のキーパーなら…ね。

 

 ゴールネットが揺れた。

 

『ゴール!先取点は《オーガ》!何とこのコートでセーブ率100%を誇っていた長岡から点をもぎ取った!どうした長岡!全く反応できてなかったぞ!』

 

「クソッ!」

 

 長岡はボールを取ると地面に叩きつける。相当悔しいのだろう。

 

「通常、センタリングが上がる際…キーパーは一瞬だけゴール前の状況を把握してからセンタリングのボールを見るってのが鉄則だ。けど、あんたの場合、自分から見て右側からのセンタリングは対処できない」

 

 俺は長岡の帽子を剥ぎ取る。隠されていた顔の左半分が明らかになる。

 

「あんたが隻眼(せきがん)だからな」

 

 本来左目がある位置には何もない虚ろな眼窩があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ゴール!先取点は《オーガ》!』

 

「よっしゃあ!バダップがきめてくれた!しかも零の作戦通りだ!」

 

 私…古芝(ふるしば)セシルは隣で喜ぶエスカバを見る。驚きだ。ここまでやるとは。あの難攻不落の長岡から一点を奪うことがどれ程すごいことか私は知っている。

 

 ギャラリー達もこの信じられない一点に盛り上がっていた。

 

「すげえ!すげえよ『オーガ』!」

 

「あのグラファ達に勝っちまうかも…!」

 

 私は作戦会議のことを思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ、ところで、そのチャンフイって過去に怪我して陸上辞めちゃっただろ?」

 

「え?何でそんなこと知って…あ、まさか!」

 

「ああ。これで間違いねえ。俺の言う通りにしてくれ。先取点をとるぞ」

 

「零。先取点をとるってどうやってとるんだ?相手は元ユースだぞ」

 

 エスカバの質問。それに零は答える。

 

「その前に考えてみろよ。何でこれだけのビッグネーム達がこんなところに来てるのか」

 

 しばらくバダップとエスカバは考える。私はさっきの質問で分かっていた。

 

「グラファの実力に惹かれたから…か?」

 

「いや、そういうわけじゃない」

 

 エスカバの回答を否定する零。

 

「サッカーや陸上の最前線にいたけど、故障しちゃったからここにいるんだよ」

 

「…そういうことか」

 

 零の言いたいことにバダップは気づく。そう。海外のユースの選手、日本代表、韓国陸上界のホープ。そんな第一線で活躍する人間が何故ここにいるか。

 

 辞めたからだ。病気や怪我で。

 

「長岡はクロスプレーで片目を失明。榊は心臓の病気で何年もサッカーが出来なかった。それで、チャンフイは…」

 

 零が私の方を見る。私は補足を入れた。

 

「半月板断裂…その後遺症…」

 

「そうして、ブランクが出来たり、怪我とかの影響で第一線から退いた人達をグラファは集めた…というわけか」

 

 バダップが零が言いたかった残りをすべて言い切る。エスカバはへぇ~と納得した顔をしていた。確かに、初心者を育てるよりかは経験者や元から運動能力の高い選手を集めれば遥かに効率良く強いチームを作れる。

 

「今回は長岡の左目の死角を狙う」

 

「そのためにセンタリングする…ってところ?」

 

「そういうことか」

 

「どういうことだよ?」

 

 零の作戦に私とバダップが納得する中、エスカバは首をかしげる。

 

「エスカバ。もし、相手がセンタリングしたらお前はまずどこを見る?」

 

「そりゃあ、ゴール前を一旦見てフィールドの状況を考えるよ」

 

「そうだ。けど、長岡にはそれができない」

 

「出来ないってどういうことだ?」

 

「そうだな。とりあえずバダップとセシルのいる方向を向いててくれ。そこをとりあえずゴール前として…」

 

 そう言うと零はエスカバの体の右側へと移動する。

 

「さて、ここで俺がセンタリングをあげるとする。まず、エスカバはボールを持ってる俺の方向に体を向けるよな」

 

「ああ」

 

 エスカバが零の方向を向く。私とバダップを左側に置くような向きだ。

 

「言ったよな。ゴール前を見て、誰がシュートするか確認するって。当然だけど首をゴール前に向けるなんて時間はないぞ」

 

「ああ。大丈夫。横目で見ればいいから。バダップもセシルもちゃんと見えるぞ」

 

「そうね。()()()()()()()()()()()()()()

 

「え?」

 

 私の発言を聞き私の方を横目でエスカバは見る。

 

「聞いてなかったの?長岡は左目が見えないのよ。この状態で左目をつぶればどうなるか貴方にも分かるでしょう?」

 

 私の言葉を聞いてエスカバは左目をつぶる。 

 

「…見えない。バダップ達が…ゴール前が全然見えない。やばいよ。こんなんでシュートを止められるわけない」

 

「そう。この死角を狙う」

 

 零はそう言って私とバダップのいる方向へ戻る。

 

「そのためには相手のフィールドプレイヤー全員を俺達のゴール前に引き付けておく必要がある」

 

「じゃあ大丈夫よ。グラファはいつも試合序盤は相手の実力をなめてかかって座ってる。チャンフイと榊は私とエスカバの二人がかりで抑えるわ」

 

「えっと…俺、キーパーだけど?」

 

「さっき言ったでしょ。貴方は元々キーパーじゃないし向こうのシュートを止めるキーパー技はこちらにはない。キーパーが居ようが居まいが関係ないのよ」

 

「つまり、俺もフィールドプレイヤーとして動けと」

 

「そういうことだ」

 

 バダップが頷いた。もはやシュートを止められないのならキーパーをなくしてしまい、ディフェンスの一員として動かす。

 

 文字通りの『背水の陣』。だからこそ、相手はキーパーをフィールドプレイヤーに変えるなんて発想に至ることはない。この作戦はある意味奇襲性が高い。

 

「でも、もしこの作戦が相手にばれたら…」

 

「ああ。正面突破しかもう手段はない。まあ、別に問題はないよ。スポーツなんて最後は力と力のぶつかり合いだ。作戦なんてその延長でしかない」

 

「…そうね」

 

 私は零の能力に敬服する。これほどとは思わなかった。『グレファ・ドメイン』の弱点を一瞬で見抜く、洞察力。こいつは本物だ。

 

 

 

 

 

 …さすが転生者。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くくくく…はぁーはっはっはっはっ!」

 

 会場内に響き渡る笑い声。それははたして強敵が現れたことに対する嬉しさを示しているのか。はたまたこの程度の相手に一点とられたのか、という仲間への嘲笑か。

 

「おもしれえ!こいつは退屈しなさそうだな!」

 

 今まで座って試合を傍観していた男はゆっくりと立ち上がる。

 

「長岡。ボールを寄越せ」

 

「…分かった」

 

 男は仲間からボールを受けとるとセンターサークルに置く。

 

 会場のボルテージがこれでもかというほどに上がる。

 

『な、な、なんと!グラファが立ち上がった!それほどまでに《オーガ》は強敵ということでしょう!』

 

「さあ…始めるか」

 

 まだ試合は始まったばかり。客達も、DJも、敵チームの選手達も、味方でさえも皆が分かった。

 

 ここからが本番だということを。




オリジナル選手名鑑

長岡修二(しゅうじ) 風属性 GK(ゴールキーパー) 

隻眼の男。かつてはあらゆるシュートを弾き出すことから『城塞』の異名を持っていた。


津波ウォール
キルブリッジ
???
???

ム・チャンフイ 火属性 MF(ミッドフィルダー)

韓国の神速と呼ばれた陸上選手。味方には優しいが敵には容赦しない。


デュアルパス
クンフーヘッド
???
???

①『やりますねぇ!』の使い方
よくやるという意思表示をする時に使う。しかし、最近は賛美の意味あいもあるらしい。
②『いいよ!来いよ!』とは
伝説の言葉である。この作品にあるように挑発には使ってはいけない。
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