「好きッ…好きなのッ!貴方のこと…愛しているわ…」
泣きながら、赤髪の少女は告白する。
「やっと…伝わった…俺も、君を愛してる。」
先ほどの少女と全く同じ色の髪をした美少年が、彼女を抱きしめる。
そしてー
「はい!カットー!!」
監督の声が響いた。
「お疲れ様、カグラ。君本当にモデル?演技力半端ないネ。」
先程まで抱き合っていた少年ーカムイが私に話しかけてくる。
「そんなことないですよ。カムイさんこそ流石って感じですね。」
ようやく慣れてきた東京弁で、カムイに返答する。
「いやぁ…2人ともすごいよー!今一番注目されてるドラマ…なんて言われてるんだから」
私が依頼を受けてから、私は必死に演技の練習をした。もちろん、多くの人に笑顔を分けるためでもあるがそれ以上に、カムイに馬鹿にされたくない一心だった。
その成果もあり、ドラマ撮影が始まった今こうして褒められているのだ。
「これからも頑張ります!」
*
「それで?例のカグラという少女はどうなんだ?」
撮影前の楽屋で、相棒から急に振られた話題に思わず本音が溢れる。
「あー。写真よりずっと可愛かった…」
初めて会った彼女の顔を思い出す。
同じ色の髪。同じ色の瞳。そっくりな顔立ち。でも、女性としての色気、魅力、美しさ。たくさんの女性とコンビを組んできたのに思わず見惚れた。
「は?どうした、カムイ。カグラに惚れたか?」
くくく…と楽しそうに笑う晋助。
どこかほんのり赤い頰を逸らす神威。
「ほっとけ……」
*
「ちょ、待っ……ん、んん…」
家に帰るや否や総悟が彼女の口を塞いだ。
玄関に座り込みながら2人は唇を重ねる。
「ぷはっ…どうしたネ!総悟。」
やっと口を解放した総悟に、神楽が苛立ちながら問う。
「……なんでもねぇや。ただキスしたくなっただけでィ。」
顔を背ける総悟に神楽は合点がいった。
「あー、なるほど。つまり総悟はカムイさんに嫉妬してるアルナ。」
「ちょ!?何言ってんでィ!そんなわけねぇだろィ!」
クールなポーカーフェイスを今は真っ赤に染めている。
その姿に神楽は、ニヤニヤしながら続ける。
「へぇ…違うアルカ。じゃあ、次のキスシーンも……」
地雷を踏んだ。
そのことに気が付き口を閉じるがもう手遅れだ。
「キス…シーン……?」
辺りの気温が三度ほど下がる。
総悟の瞳が鋭くなるのを神楽が気付かないはずもない。
「い、いや…これは口が滑っただけで…」
慌てながら全く言い訳になっていない言い訳を述べる。
「……ご、ごめんアル。」
少し視線をずらしながら神楽は謝る。
「…じゃあ、これで許してやらァ…」
そう言うと再び総悟の口が神楽の口を塞いだ。だが、今回は先程とは違い神楽の口に何かが入ってくる。
(ディ…ディープキス!?)
そう思っている間にもどんどん舌が交わって行く。クチュクチュと立つ音と、上手く入ってこない酸素に頭がクラクラする。
気付かない内に繋いでいた手に力が篭っていく。
「はぁ…はぁ…」
口を離したというのに上手く酸素を確保できない。その上、初めてのディープキスで体に力が入らない。
「ねぇ?もう一回やってもい?」
上気した頰に紅の瞳。
心を揺さぶる色気が半端ない。
「もぅ…たくさん…した…ダロ……」
「ダメ…まだ…足りない……」
あーもう。これだからこの男は…
そうして、こんな彼に胸が高鳴る私も…
手遅れだ。
「仕方ないアルナぁ…」
[newpage]
「え。まだカムイさんが着いていない?」
撮影現場に来ていた神楽は、スタッフさんから告げられた言葉を繰り返してしまう。
「そうなの。ごめんなさいね。少し散歩していてもいいから、もう少し待ってて貰えるかしら。」
「分かりました。」
今日はこの撮影だけなので時間はある。
やる事も無いので、少し散歩をすることにした。
見たことないお店。
住んでいるところより少し田舎な風景。
散歩をしているだけで結構楽しかった。
…さっきまでは。
「ねぇねぇ、お嬢さん。俺たちとイイコトしない?」
「そうそうwきっと気持ちいいよ。ぎゃっはっはーw」
それは私に絡んで来た三人の男たち。
撮影用にメイクをして貰ったので、眼鏡をかけたらダメだと判断した私はそのままの姿で出て来てしまったのだ。
「…私は忙しいの。悪いけど貴方達の相手をしている暇は無いわ。」
「あ?んだと?俺らに喧嘩でも売ってんの?」
切れたか。
心底バカバカしい。
本当面倒臭いなぁ…
股間に一発やったら逃げて行くだろうか。
「なになに?だんまり?俺らのこと怖くなっちゃったのー?」
「大丈夫。優しくするからさぁw」
そう言いながら1人の男が手を伸ばしてくる。
「下品な笑い方…あの人とは大違い…」
据わった目で神楽は彼らを見ていた。
その時ー
「ぐはっ!」
私に手を伸ばしていた男が吹っ飛んで行った。
「え……」
「クソッ、お前!誰にやってるか分か…」
どごん。
「う、うわぁぁあ!」
ボキ。
私に絡んで来た男たちは、全員奇妙な効果音を残して気絶して行った。
「お兄…ちゃん……?」
「! 神楽…」
男たちをいとも簡単に倒した少年は、神楽に抱きついた。
「大丈夫だった?怪我とか…してない?」
「へ、平気アル…カムイこそ大丈夫アルカ?」
「俺がこんな奴らに怪我するわけないじゃん。」
…確かに!!
「さ!戻ろうか。」
「うん…」