「はーい。いいよぉ~今日の撮影はこれでおしまいねぇ。お疲れさまぁ、いい写真がいっぱいとれたわよぉ」
学校が終わり雑誌の撮影を終えるとさすがに疲れが来る。
おかま口調のカメラマン岡本さんにあいさつに行こうと足を向けると会話が耳に入ってきた。
「うーん、やっぱりいないわねぇカグラ。本当にもうモデルはやめちゃったのかしら?また始めたって噂程度に耳にしたんだけどねぇ」
カグラ…というセリフに反応して思わず声をかける。
「岡本さんお疲れさまでした。あの…今はなしていたモデルの子って?」
世間話はしないたちの沖田に話しかけられ少しうれしそうに話し始める。
「カグラっていうのはねぇ。私がカメラマン始めた時に撮っていた少女でね。赤い髪に青い瞳。とても美しい少女で一躍有名になったの。その瞳は見たものを虜にし絶対に話さないってね。私の名が売れたのもその子がきっかけなんだけど…ある日突然消えてしまってね。モデル界では多くの人が衝撃を受けたのよ。最近またモデル活動始めたっていう噂を耳にしたんだけど…どの雑誌にも載っていないから違ったのかしらねぇ。また撮ってみたかったんだけど…」
赤い髪に青い瞳そしてカグラという名まるで俺の幼馴染のことを指しているかのようだった。
アイツが…モデル?確かに俺も認める絶世の美女だ。最近はそのことを口に出すようにしてほめているのだが…たまに暗い顔をするときもあったような…?いや、気のせいだろう。可愛いと男に言われて嫌な奴がいるわけがない。うん。
「へぇ、そうなんですかぃ。俺もぜひ見てみたいもんです、見たものを虜にするっていうモデルに。」
その頃の俺は、思ってもみなかっただろう。カグラというモデルの美しさを。
―一週間前 喫茶店にて
「…本気で言っているのか、神楽。その言葉の意味を分かっているんだろうな?」
いつになく真剣な表情で訴える坂田銀八。
「わかっているアル。それでも、こうしなきゃいけないネ。もう、逃げるのだけはご免被るヨ。」
先ほど神楽が銀八の顔を見るなりいったのだ。
「私、モデル再開するアル。もしも、これであの事件が解決するのであればどうなったっていいネ。」
あの事件―神楽が5歳の時にモデルをやっていて起きた誘拐殺人事件。
何日間も何人もの少女たちと監禁され暴力を振るわれた。
目の前で何人もの人が殺され、一番の親友が殺されたときについに神楽は壊れてしまった。
夜兎の力により一人で誘拐殺人グループを皆殺しにし体力の限界まで暴れまわった。
目が覚めたら病院にいた。事件については警察にすら語ることはなく、その事件がきっかけでパピーや神威がケンカし誰もいなくなってしまった。
殺し殺される恐怖。しかしそれ以上に5歳の彼女には誰もいない家、たった一人で母親の死を見届ける悲しみのほうが勝っていた。その、悲しみに苦しみに終止符を打ちたいとそう願う神楽の気持ちについに負けた銀八は承諾した。
「いいぜ。ただし、何かあったらすぐに俺に言え。いいか?絶対だぞ??俺とお前の仲なんだ。絶対遠慮すんなよ?
どんな些細なことだってな。」
沢山くぎを刺されて首をすぼめる神楽の頭にポンっと手を置いて優しく笑いかける。
神楽は、目からあふれる涙をしばらくとめることが出来なかった。