ポロロロン。
軽快な着信音が寝ているソファーを揺らす。
「………ん?」
窓から差し込む光と、鳥の鳴き声が朝を告げていた。
辺り見渡し限りの遊び道具の山。
漫画の山、お菓子の山、調子に乗った宿題の山、トランプ、ウノ…
まだ昨日の熱が冷めないとでも言うかのようだった。
起こされた原因である着信を確認する。
(…銀ちゃんからだ…)
銀ちゃんはモデル復活した私のマネージャーを務めてもらっている。
学校の先生との掛け持ちはきついだろうが、ギャラはたんまり払っているので文句は言わせない。
内容を確認すると「2時間後スタジオ」というおりのことが書かれていた。そろそろ準備を始めたほうがいいと思いソファーを下りようとすると…
「……なっ……そ、総悟!?」
重いとは思っていたが全く気にしていなかった膝の上には総悟が寝ていたのだ。
朝起きたら、ずっと片思いの相手が自分の膝を枕にして寝ていたなんていうことが早々あるわけでもないので、思わずじーっと見つめてしまう。
(……まつ毛長いアルナ…こうしていると本当にチワワアルヨ。小さい時から見慣れている顔。あの時は…隠し事なんて作らなかったヨナ…)
「ごめんネ…何も言えなくて。総悟に隠し事してて…でもこれは私の勝負だから逃げるわけにはいかないヨ…いつか全部終わったら…………聞いてネ?私の気持ち……」
いつのまにか口から出ていた言葉を最後だけ総悟の耳元で囁いてから、額に唇を当てた。
「……ごめん…行ってきます…」
それから20分もしないうちに家は総悟1人となった。
「……は?……」
熱い額の1箇所を手で押さえる。
本当に火が出ているのかと心配になるほど熱い。
『ごめんね』
と言いながら笑いかけてくる神楽の顔が何回も頭に流れる。
本当は神楽が起きる少し前から起きていたのだ。
ただ、起きたら好きな女の子の膝の上で寝ているなんていうラノベ的展開になれていないため、何分間かフリーズしてしまい挙げ句の果てに額にキスをされたのだ。
「……神楽の気持ち………?」
誰もいない神楽の家で額に手を当てながら呟いた総悟の声だけが木霊していた。
「…っというか…これでほぼ確定だな…神楽はモデルをやっていたんだ…でも一体どこで……?」
頭に流れる記憶…
「そうか!あの人なら知っているかもしれない!!」
この時を逃しまいと急いで電話をかけるのだった。
ー神楽 撮影後
「…カップルを想定した写真撮影!?」
額からながれる汗を拭きながら岡本さんから言われたことを思わず繰り返す。
「そうそう♪相手役の子は私が担当している今人気の男性モデルさんよ。彼の実力は私が保証するわ。どう?やってみない??」
「うーん…そうですね。岡本さんがそこまでいうならやってみましょう。知名度も上がるかもしれませんしね。」
モデル仕事中はアル禁止!と銀時からキツく言われなんとか標準語で喋るようにしている。
「…カップル想定…かぁ…」
思わず今朝のことを思い出す。我ながら額にキスするとは…
明日どんな顔出会うべきか悩む…
「…んにしてもまだデビューして間もないのにもうカップル想定かぁ…最近は早いねぇ…」
銀ちゃんが隣で呟く。それに対して一言言ってやろうかと思ったが、言葉が詰まった。
(デビューしてこの時期にカップル想定ってことは…私よりずっと前からデビューしている総悟は何回も綺麗なモデルさんたちと…そーいうシーンを撮っているということ…アルカ……?)
どんどん下がっていく心の気温にこれ以上下がらせてたまるか!とでもいうかのように心に中で叫ぶ。
(ううん!それなら…それに似合う女になるまでヨ!)
((今度の撮影頑張らないと……))