岡本さんから撮影の依頼を受けてから二週間が経とうとしていた…
「……んな!?」
今日が撮影当日…気合を入れて自室でポーズの最終確認をしていた神楽は、二週間前と同じ軽快な携帯の着信音で携帯を覗き込んで固まった。
『今日の撮影の相手役は、総悟だ。』
銀時からのメール内容はその一文だった。
その一文で、彼の焦りや不安が伝わってくる。
バレていた…思わず唇を噛む。
モデルをやっているということはそこまで隠す必要はない。
ただ、もしあの時のことが総悟にバレて嫌われてしまったら…と思ってしまうのだ。怖いのだ…本当は、とても。
少しして顔を上げた神楽は…何かを決意した様だった。
テレビで芸人が騒いでいる。
二週間前、神楽が出て行ってから俺は岡本さんに電話をかけた。
『カグラと撮影をさせてくれないか』
という内容の。彼は快く了解し、今に至るわけだが…
「さすがのアイツも相手が俺だって知った頃かな…」
アイツはどんな顔をするだろう…驚くだろうか……もしかしたら喜んでくれるかもしれない…
総悟の口は緩んでいた。
ピーンポーン…家のチャイムがなる。もう直ぐ出発の時間だというのに誰だろうか?
慌ててドアを開けに行く。
「どちら様で…」
「そう…ご……?どこまで…知って…るアル…カ……?」
開けた先に立っていたのは…神楽だった。
どこまで知っているのだろう。
総悟は……。
私は…私が幼い頃から心にしまっている思いを……もう諦めなくてはいけないのか……
込み上げてくる不安の涙のままに叫ぶより………彼と話しをしたい…
そう考えていたら、隣の家のチャイムを押していた。
ねぇ…貴方は…どこまで知っているの?
開く扉の奥に現れたあいかわらずの美貌。
彼の瞳に私が映った時にわずかに見開かれる。
口から音が溢れる。
声になっていたかはわからない。
思いのままに彼に飛びついて、我慢できなくなった涙が溢れ出す。
ボロボロ涙がこぼれだす。それでも、彼を見つめる。
私を…信じて欲しくて。
たとえ彼が、全てを知ってしまっていたとしても。
私を信じて欲しいから。
ただ…信じて……伝われ…………!
泣いている…。
俺の目に映った神楽は、今まで見てきたどのアイツよりも大人びて、不安そうで…そう…まるで、飼い主を探す子犬のような感じだった。
ただ、何を言うでもなく俺を映しているその瞳から逃れることはできなくて…空より青く遠いその瞳の奥に…今まで感じたことのない何かを俺は感じ取った。
助けて…でもない。苦しい…のような、寂しいのような。
でも、もっと決意に満ちている。
…あぁそうか…“信じて”欲しいのか…俺に。
何を…?なんてことは聞かない。
アイツが俺に隠してモデルをやっている理由。
そしてその奥にある何かに…アイツは立つ向かってる。
なら俺は…信じるまでだ。
何かに怯えるようにすがりついてくる神楽に、俺はしばらく優しく笑いかけ続けた。
……それが、今のアイツに対してできる精一杯の応援だと思いながら。