シスコン弟とAqoursの日常   作:ふらんどる

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みなさんこんにちは、ふらんどるです。

令和初投稿です。今後もよろしくお願い致します。

UA11000突破しました、読者の皆様本当にありがとうございます。
これからも皆様に面白いと思ってもらおうと努めていきます。


それでは、「松浦姉弟と風邪」どうぞ!


松浦姉弟と風邪

「ごめんねかな姉、風邪なんかひいちゃって」

 

この日、松浦玲士は珍しく風邪をひいた。昨日の夜からなんか体の調子が変だな、とは思っていたが案の定今朝起きたら熱が出ていた。

しかも運悪く親は不在で、かな姉はAqoursの練習だ。

 

「本当に一人で大丈夫なの?」

 

「大丈夫。こんなの薬飲んで寝れば直ぐに良くなるよ」

 

「それなら良いんだけど⋯⋯何かあったら無理しないですぐに連絡してね。お昼は作り置きしておいたお粥あるからそれ食べて」

 

「了解、いってらっしゃい」

 

 

 

 

かな姉を見送った後、もう一度熱を測ってみると、さっきよりも高かった。

 

かな姉の前では隠していたけど正直に言うと結構キツい。

 

体がさらに熱くなっていくような気がする。

 

⋯⋯あれ?風邪ってこんなに辛かったっけ⋯⋯?

 

ベッドの上でそんなことが頭をよぎったが、次第に僕の意識は途絶えていった。

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

休憩の号令がかかると、辺りが騒がしくなる。

 

「ふぅ~喉渇いた~、玲士君水筒取って~」

 

「もう、千歌ちゃん!今日は玲士君風邪でお休みだって言ったでしょ!」

 

「あっ!ごめん、そうだった⋯⋯」

 

梨子ちゃんに指摘されて千歌は思い出したようだったが、私は家で寝ているであろう玲士のことを練習中もずっと頭の片隅で考えていた。

 

「まったく、みなさんは少し玲士さんに頼りすぎですわ。聞いた話では最近は後片付けも玲士さんに任せきりだというではないですか。今日に限らずこれからは最低限のことは自分でやるように!」

 

ダイヤがそう言うと、はーい、と他の皆が答える。

 

 

「それと果南さん、全体的に少しステップが遅れていましたわよ」

 

「えっ、そうだった?ごめん」

 

「あら、ダンスに関してはいつもperfectな果南にしては珍しいわね」

 

自分では自覚が無かったが、やはり玲士の事を考えていたせいだろうか。

 

「もしかして玲士さんのことではなくって?」

 

「うん、ちょっとね⋯⋯」

 

さっきからなんだか嫌な予感がする。朝家を出る時も無理して大丈夫そうに振る舞ってた感じがした。

 

 

 

「果南ちゃん!」

 

呼ばれて振り向くと、声の主である千歌が必死そうな表情をしている。

 

「お願い!近くで玲士君を看ててあげて!もし玲士君に何かあったら私⋯⋯」

 

「千歌っちもそう言っていることだし、今日は玲士のところに居てあげたら?」

 

 

そう千歌や鞠莉に促されて迷っていた私もようやく決心がついた。

 

 

「うん、わかった。みんなごめんね」

 

 

私そう言って私は屋上を後にし、急いでフェリー乗り場に向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

僕は今、何処にいるのだろう?

 

 

 

 

 

辺りには吸い込まれそうな闇が広がる音も光も何もない暗い、暗い空間。

 

 

 

 

 

誰かいないかと辺りを見回しても誰もいない。

 

 

 

 

 

その時突然地面の感覚がなくなり、ドボンと大きな音がして僕の体は水の中に落ちる。

 

 

 

 

 

暗く冷たい水の中、体がどんどん沈んでいく。

 

 

 

 

 

息が苦しい。

 

 

 

 

 

子供の頃、海で溺れた時の記憶がよみがえる。

 

 

 

 

 

もがいてももがいてもどんどん体は沈んでいくあの感覚。

 

 

 

 

昔と違って今は周りに誰もいない。

 

 

 

だから誰も助けてくれない。

 

 

 

嫌だ!嫌だ!怖い!誰か助けて!

 

 

 

 

 

 

最後の力を振り絞り、上に手を伸ばす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すると、誰かが僕の手を掴んだ。

 

 

 

 

 

体がぐんぐん引き揚げられていく感じがする。

 

 

 

 

あぁ、助かった⋯⋯

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「⋯⋯し!玲士!玲士!」

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~

 

 

 

連絡船を降り、急いで家へ向かい玲士の部屋に入ると、私の不安は的中していた。

 

ベッドで寝ている玲士は、息づかいが荒く、かなりうなされている。

 

これはかなりまずい状態だ。私はベッドに駆け寄って玲士の手を握り、起こそうと揺すりながら声をかける。

 

「玲士!玲士!玲士!」

 

 

私の声が届いたのか、玲士の瞼が徐々に開いていく。

 

 

 

 

「⋯⋯かな姉⋯、うぅ!」

 

目が覚めた玲士に思いっきり抱きつかれる。今までにないくらいの強い力だ。よく見ると涙を流している。よほど怖い夢を見ていたのだろう。

 

「よしよし、怖かったね。怖かったね。もう大丈夫だよ」

 

そう言いながら頭を撫でて玲士を落ち着かせる。

しばらくすると玲士は私から離れて顔をあげた。

火照った肌と眠りから覚めたばかりのトロンとした目。

ちょっとかわいいと思ってしまう。

 

かなり汗をかいていたのでタオルで汗を拭いてあげる。

 

「はい、これ飲んで」

 

持っていたスポーツドリンクが入ったペットボトルを渡すと、喉が乾いていたのか一気に半分ほど飲み干した。

 

「ありがとうかな姉。ごめんね、わざわざ戻ってきてもらって、それに⋯⋯」

 

「こら、そうやってなんでもすぐに謝らないの!みんなも心配してるから、今は治すことに専念して」

 

そう言うと玲士はうん、と小さく頷いた。

 

「お昼までまだ時間あるからまだ寝てていいよ。今度は私がついてるから安心して」

 

「⋯⋯ありがとうかな姉、おやすみ」

 

「はい、おやすみ」

 

しばらく経つと、玲士は寝息をたてた。先程とは違って穏やかな寝顔だ。

 

 

 

 

 

玲士を寝かしつけた後、何をしようかと考えていると何やら表が騒がしい。

 

「あっ!果南ちゃん!」

 

外に出てみると千歌を先頭に、Aqoursのみんなが勢揃いしていた。それに全員手に何かを持っている。

 

「どうしたの?みんな揃って?」

 

「玲士さんのお見舞いに来たのですわ。私は大勢で押しかけるとご迷惑だと言ったのですが、みなさんがどうしてもと聞かなくて」

 

申し訳なさそうにダイヤが言う。

 

 

 

「いつも玲士にお世話になってるから当然デース!みんなでお見舞いの品を持ってきたのよ!マリーはこれ!とってもrefreshできるわよ!」

 

そう言って見せてきたのはおそらく外国製であろう紅茶の茶葉。起きたら玲士に飲ませてあげよっと。

 

「私はこれを。風邪の時は喉に通りやすいものが良いでしょうから」

 

そう言って持ってきたのはダイヤの好物である抹茶味のプリンだった。

 

「ありがとう、でもこれってダイヤが好きなやつなんじゃないの?」

 

「練習が終わった後に食べようと思っていたのですが、玲士さんに食べてもらった方が良いですわ」

 

「ルビィはリンゴを持ってきました!玲士さんが食べやすいようにウサギさんの形にしてきたの!」

 

「マルは玲士さんが退屈しないように本を持ってきたずら!短編だからとっても読みやすいずら」

 

「ヨハネはこれよ!我が魔力が込められたこれさえあれば、このヨハネが張り巡した結界の力と共に邪気からリトルデーモンを守るわ!」

 

善子ちゃんが差し出したのは、いろんな飾りが付いたストラップ。これで玲士の悪夢も良くなる⋯⋯のかな?

 

「千歌はこのミカン!ビタミンCパワーがあれば風邪なんてすぐに治っちゃうよ!」

 

千歌から受け取ったミカンを見るとどれも色が濃く、皮のきめも細かい。ただ持ってきたんじゃなくってちゃんと選んできたんだろうと推察できた。

 

「私はアイスを買ってきたの。これ、玲士君が好きだったら良いんだけど⋯⋯」

 

そう言って見せてきたアイスはまさに玲士の好きなものだった。梨子ちゃんって玲士のことよく見てるんだな。

 

「私はこれっ!曜ちゃん特製の船乗りカレー!それと⋯⋯これ!玲士君とっても喜ぶと思うよ!」

 

そう言ってカレーが入ったタッパーと、もうひとつ何かが入った紙袋を手渡した。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

目が覚める。今度はなんだかとっても良い夢を見た気がする。

熱もだいぶ下がったようで寝る前よりかなり楽だ。

ふと僕の机に目をやると、寝る前には無かったものが置いてある。

 

それを見ると僕が寝ている間みんなが家に来たんだろうと推察できた。

 

どっさりと積まれたミカンは千歌、いかにも高級そうな袋に入った紅茶の茶葉は鞠莉姉、なんだかよくわからないストラップは善子ちゃんだろう。

 

あとでみんなにお礼言わなきゃ。

 

その時、部屋のドアが開く。目をやると僕の目に入ってきたのは、

 

 

 

 

 

 

ナース服を身に纏ったかな姉だった。

 

「玲士、起きてたんだ。熱はどう?」

 

「あぁ、かな姉。どうやら僕はまだ寝てなきゃダメみたいらしい。だって幻覚が見えるんだもん」

 

「えっ!幻覚!?大丈夫!?」

 

「うん、かな姉がナース服着て見えるもん」

 

 

 

「びっくりした~、それは幻覚じゃないよ」

 

「ほぇ?」

 

かな姉に言われて目をこすったり、耳を引っ張ってみてもそのままなのでどうやら本当らしい。よく見ると以前曜ちゃんの家で着ていたときのと同じようのものだ。

 

「玲士が喜ぶからって曜が持ってきたんだけど⋯⋯」

 

でかしたぞ曜。後でなんか奢ってあげようかな。

 

ちょうどその時僕のお腹が鳴った。

 

「ほら、お昼まだ食べてないんでしょ。お粥暖めたから食べて」

 

時計を見ると1時をとっくに過ぎていた。

 

かな姉に着いていくと言った通りにお粥は暖められており、それを見てますますお腹が減ってきた。

 

「いただきます」

 

一口食べただけで口の中に味が広がる、風邪をひいた体に染み渡る味だ。

 

いっそのことダイビングショップに食堂を併設したらどうであろうか?そうしたらお客さんも⋯⋯

 

 

いや、駄目だ!申し訳ないけどかな姉の料理をほぼ独占して食べられるなんていう特権を手放すのは惜しいもんね。

 

玲士、と呼ばれて顔をあげ目の前のかな姉を見るとお粥をスプーンで掬って僕の前につき出す。

 

僕はテーブルから少し身をのりだし、そのスプーンの先端にのったお粥を食べる。

 

今回は前みたいに大勢の人がいるわけでもなく、ここに居るのは僕とかな姉の二人きり。だからなんの遠慮も要らないのだ。

 

「どう?美味しい?」

 

自然な笑顔で聞いてくるかな姉を見て、あぁ、やっぱりかな姉の弟でよかった、そう心から感じる。

 

「うん、すごく美味しいよ」

 

かな姉に食べさせてもらうと、自分で食べたときよりいっそう美味しく感じる。これはいったいどういうことであろうか?詳しく調べる必要がある。

 

「かな姉もう一回!」

 

「ダメ、一回きり」

 

「そんなぁ~」

 

もう一度してもらえることはできなかったが、きっとかな姉の優しさの味といったところだろう。これも弟の特権!

 

お粥を食べ終えると、特にやることがなくなった。先程たっぶり寝たので寝ようにも寝られない。

 

「それにしてもこんなにお見舞い貰ってなんかみんなに悪いなぁ」

 

「それぐらいみんながいつも感謝してるってことだよ。それにしても玲士が風邪をひくなんて久しぶりだね」

 

「たしかに。昔はよくひいてたけど、その時はいつもかな姉に看病されてたね」

 

「ふふっ、そうだったっけ」

 

そう言ってかな姉は僕を撫でてくれる。

 

こんなことなら風邪をひくのも悪くないな、そんなことを思いながら僕はかな姉と一緒にゆっくりと午後を過ごすのであった。




最後まで読んでいただきありがとうございます。
感想、評価、文字の誤脱等の報告お願いします。

以前に投稿した話も加筆訂正しているのでよろしければそちらもご覧下さい。

次回からはいよいよ『3年生お姉ちゃん編』が始まります、ご期待ください!

それでは、また次回。
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