お待たせいたしました、いよいよ「3年生お姉ちゃん編」本編のスタートです!
それでは「鞠莉お姉ちゃんの想い」どうぞ!
言われるがまま鞠莉姉に連れられて、やって来たのはホテルオハラ。いつも思うが本当に豪華だ。そのまま最上階にある鞠莉姉の部屋に通される。入ったのは久しぶりだが、やはり以前と同様とても良い香りがする。
「Welcome to my home!」
「で、何の用です?」
「ちょーっと待ってて♪」
僕が聞くと鞠莉姉は背後にある大きなクローゼットから一着の服を取り出す。
ピンクと白を基調としたふりふりヒラヒラのついたいかにも女の子らしい服。
このデザインには見覚えがある。
そう、以前僕が着せられたあの忌々しい服なのである。
鞠莉姉もそれをわかっているのであるらしく、ニヤニヤしている。
「い、嫌です!嫌です!絶対嫌です!」
僕はとっさに身構える。
「良いじゃな~い、絶対似合うわよ!そ・れ・に!果南は了解済みよ!」
「えっ⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
僕はその言葉を聞いてその場でガックリと膝をつき、頭が真っ白になる。
かな姉が了解した?僕があんなに嫌がってたあの服を着るのを?
何がなんだかわからなくなる。
もしかしてかな姉はあのことを忘れていたのであろうか?
いやそんなはずはない。僕が何度も言っていたからかな姉が知らないはずがない。
あぁ、とうとう僕はかな姉に見捨てられたのか。
小さいころからかな姉はどんな時も僕を慈しみ、助け、守ってくれた。
しかし、そのかな姉がとうとう僕を見放したのだ。
今考えれば、僕はかな姉にいろいろと無理をさせていたのかもしれない。本当は嫌な頼みごとも、その女神のような優しさで無理してやっていたのかもしれない。
そうだとしたら僕はなんて悪い弟なんだ。
きっとこれはその報いだ、そうに違いない。甘んじて受け入れよう。
かな姉の思し召しとあらば、この松浦玲士は例え火の中水の中、どのような恥辱にも⋯⋯
「It's joke!も~う玲士ったら本気にしちゃって~♪」
「⋯⋯⋯⋯え?」
ジョークってことは⋯⋯⋯⋯えっ、ウソ?
言葉の意味を理解した瞬間、一気に体の力が抜ける。
見上げると鞠莉姉はニヤニヤしている。
あぁ、またしても鞠莉姉にしてやられた。
僕はやっとのことで立ち上がり、鞠莉姉の方を向く。
「で?本当は何なんです?用が無いんなら帰りますよ」
「も~う玲士ったら、そんな顔しないで。せっかくのかわいい顔が台無しよ!本当はと~っても良いことなんだから、安心して!」
とっても楽しいこと?一体なんだろうか?
あと、女の子からかわいいって言われると男と少し複雑な気分になる。
あっ、かな姉に言われるのは別だぞ。かな姉に誉められると本当に幸せだ。
「今日は一日ここに泊まってもらいマース!ちなみに、これは果南も了解済みよ!」
変なことじゃなくってよかったと思うと同時に、意外なことだったので少し驚く。
「えっ?今日?ここに?良いんですか?」
「玲士のためならNo problemデース!あなたに楽しんでもらえるようにとっておきのplanを用意したわ!」
「あっ、ありがとうございます」
「今日はマリーをお姉ちゃんと思いなさい!果南の代わりにかわいがってあげるわ!」
かな姉は唯一無二で誰にも代わりなんかできない、と思ったがせっかく僕のために色々してくれた鞠莉姉に悪いので心の中に止めておいた。
「そ・れ・と、今日だけ玲士のこと『れーちゃん』、って呼ばせて」
れーちゃん、というのは僕が昔一時期鞠莉姉からそう呼ばれていた。
なぜ急にそんな昔のことを持ち出すのか僕にはにはわからなかったが、特に嫌という訳でもないので了承することにした。
「えっ?別に良いですけど⋯⋯。あっ、そういえば僕はどこで寝ればいいんです?この部屋じゃダメでしょうから」
「Non non、そこのベッドよ」
鞠莉姉はちょんちょん、と部屋にあるベッドを指さす。
「えっ?あれって鞠莉姉のやつでしょ?⋯⋯ってことはまさかか⋯⋯」
「That's right!今夜は寝かせてあげないんだから!」
寝かせないって⋯⋯鞠莉姉はいったい僕をどうするつもりなんだろうか。
「泊まらせてもらう以上、文句は言いませんけど、あんまり変なことしないでくださいね」
「Thank you!それじゃあ れーちゃん、今日はいっぱい楽しんでね♪ Let's enjoy holiday!」
その後のホテルでのおもてなしは鞠莉姉の言葉にふさわしいものであった。
音楽ホールでプロのピアノ演奏を聞いたり、海を眺めながらお茶したりと、まさに至れり尽くせりの対応であった。
そして夕食は豪華フランス料理のフルコース。恐らく今までの人生で食べてきたものの中で一番高価なものだろう。味も抜群に美味しい。
さらには営業時間が終わってからではあるが、貸し切りで露天風呂にも入らせてもらえることになった。
「やっぱ広いな」
温泉に浸かりながらそう独り言を呟く。
振り替えれば眼前に広がる夜の内浦の海。遠くからは寄せては返す波の音。ちょうど今宵は満月でその煌々とした光がうっすらと海面を照らす。なんとも風流だ。
柄でもなくそんなことを思っていると、後ろの方で戸が開く音がした。
営業時間は終わっているのできっとホテルの人だろう。
さっきちょっとだけ泳いでいたところを見られなくてよかったと少し安心する。
挨拶をしないと失礼になると思い振り向くと⋯⋯
「あら、見つかっちゃった♪」
そこには部屋にいると言っていた鞠莉姉であった。
「まっ、鞠莉姉!?」
幸いにも僕も鞠莉姉も身体にはタオルを巻いている。
風呂に入る前にバスタオルと一緒に腰から下に巻くようにと言われて渡されたのだ。その時は少し疑問には思ったものの、きっと格式の高いホテルではそのようにするのがマナーなのであろうと納得していた。
鞠莉姉はイタズラな笑顔でそのままゆっくりとこちらに近づいて、僕の隣で腰を下ろした。
当の僕はというと、あまりにも予想外な出来事に混乱してその場から動くことができない。
「ねえ、れーちゃん」
「ふゃぁい!?」
いろいろと緊張していたので思わず変な声を出してしまった。
「どう?ゆっくりできた?」
「えっ、ええ、こうやってなにも考えずにゆっくりお風呂に入れたのも久しぶりです」
思い返せば最近はいつも何か考え事をしていて、お風呂に入っているときも例外ではなかった。
「ふふっ、それなら良かった」
気恥ずかしく、鞠莉姉の方を向かないようにしているが、それでもやはり気になってしまいチラチラと見てしまう。
つくづく思うが、鞠莉姉は本当に美人だ。
透き通るような透明感のある肌、ふさふさとした美しいブロンドの髪、見るものを魅了する美しく健康的な体つき、それに⋯⋯
「あら?どうかしたの?」
急に呼ばれたのでビクッとする。どうやらチラチラ見ていたのが気づかれたようだ。
「い、いや、鞠莉姉の肌、すごく綺麗だなぁって思って」
「ふふっ、ありがと。それじゃあ⋯⋯もっと近くで見てみる?」
そう言うと鞠莉姉は先程と同じくイタズラな笑顔でさらにこちらに近づいてきて、肩が触れあう距離まで迫ってきた。
その大胆な行動に、僕の胸の鼓動がいっそう早くなる。
すると鞠莉姉はおもむろに僕の胸に手を当ててきた。
「まっ、鞠莉姉⋯⋯」
「ふふっ、れーちゃんの胸、すっごくドキドキしてる」
突然の行動にまたさらに鼓動が早まる。
「果南お姉ちゃんはこうやって一緒にお風呂入ったりなんかしてくれないでしょ?」
「たしかにそうですけど⋯⋯」
「言ったでしょ、マリーをお姉ちゃんだと思いなさいって。だから今日は果南がしてくれないこと、い~っぱいしてあげちゃうんだから♪」
かな姉がしてくれないことねぇ⋯⋯
まぁ、たしかに普段表には出さないが、かな姉にやってほしいと思っていることは色々ある。
例えば疲れたから膝枕してほしいとか、甘えたい気分だからハグさせてとか、良い匂いがするからかな姉のベッドで寝たいとか⋯⋯
でも、そんなことはできない。
僕がそんな風に甘えてばかりいたら、ただでさえAqoursの活動やお店で忙しいかな姉の負担が増えるだけだ。
ましてやそれを鞠莉姉にやってもらうなんてできない。
「別にそんなことしなくったっていいですよ⋯⋯。それに、わざわざ言わなくったって昔から僕は鞠莉姉のことを姉みたいなものだと思ってますよ。てか、実際そう呼んでるわけですし」
「ふふっ、そうだったわね。私もれーちゃんのことかわいい弟だと思ってるわ」
鞠莉姉は僕の頭を撫でる。
鞠莉姉の行動にもういろいろと訳がわからなくなる。
「あら、顔真っ赤よ」
お湯に写る顔を見るとたしかに赤くなっているのがわかる。
「の、のぼせたんですよ⋯⋯。もう上がります」
そう言って僕はそそくさと風呂を出たのであった。
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風呂から上がると、昼間にかな姉が持ってきてくれた寝間着に着替え、鞠莉姉の部屋にあるソファーに腰かける。
先程のことの恥ずかしさから鞠莉姉の顔を直視できない。
それにしても鞠莉姉はなんであんなことをしたんだろうか。
僕は昔から鞠莉姉のことを掴みどころが無く、ミステリアスな女性だと思っている。
いつも明るく、どんな人をも魅了するそのシャイニーな笑顔の裏に、言葉では言い表せない何かがあるような気がする。
それに先程のようにいつも僕をからかって、僕が慌ててるのを見て面白がる。昔からやられてるから特に嫌とかいうわけではないが、なぜこんなことをするのか本当に謎だ。
鞠莉姉は僕をなんだと思っているんだろうか?
すると、僕の前のテーブルにティーカップが置かれる。
「もう、れーちゃんったら、また考え事してたでしょ。今日はそういうのはnothingよ!」
鞠莉姉が紅茶をいれてくれたのだ。
「あっ、ありがとう鞠莉姉」
飲んでみるとやはりとても良い味だ。気持ちが落ち着く。
「どう?今日はrefreshできたかしら?」
「ええ、おかげさまで。でも、どうして急に僕を泊まらせてくれたりなんかしたんです?」
「心配なのよ、あなたの事が。⋯⋯いろいろ大変で疲れてるんでしょ、最近?」
鞠莉姉はこちらを見つめて先程よりもトーンが下がった声で答える。
鞠莉姉の言っていることは正しい。
疲れていないと言えば嘘になる。最近はAqoursのマネージャー以外に店の手伝いや、宿題、学校での仕事等なにかと忙しい。でも家のことはかな姉や旅館の手伝いをしてる千歌だって同じだし、鞠莉姉は浦の星の理事長としての仕事がある。ダイヤさんだって生徒会やお稽古があるし、ほかのみんなだって同じはずだ。
「大変なのはみんな同じですよ。だから、自分だけ楽をするなんてできません。Aqoursのマネージャーだって、自分から引き受けたんですから、しっかりやらないとわざわざ僕を選んでくれた千歌に悪いです。それに⋯⋯」
僕が言い終わらないうちに、鞠莉姉は僕の頬に手をを当てる。
そして、まっすぐ僕を見つめる。
「玲士⋯⋯あなたは⋯⋯ストイックすぎるのよ⋯⋯」
その目は一途に悲しげだ。
「別に良いじゃないですか⋯⋯」
さらに悲しそうな目になる鞠莉姉。僕はその目に耐えられなくなって思わず目をそらしてしまう。
「あなた⋯⋯、そんなんじゃ⋯⋯壊れちゃうわよ?」
「大袈裟ですよ⋯⋯」
「みんな心配してるのよ。特に果南なんか、この前あなたが風邪をひいた時なんか心配で練習が身に入らなかったのよ」
「僕のことでかな姉や皆に無用な心配をかけたくないんです。それに、鞠莉姉達の方が僕に比べたらよっぽど立派ですよ⋯⋯」
たしかに僕はかな姉の事が好きだ。大好きだ。
でも、だからといって甘えてばかりいるのは違う。
皆を補佐するためのマネージャーが逆に皆を心配させたりなんかできない。
「玲士、そうやってすぐ自分を卑下するの、あなたの悪い癖よ」
何も言えない僕に、鞠莉姉は言葉を続ける。
「あなたのやっていることだって十分立派よ。こうして私がもう一度school idleをできたのも、あなたが私たち3年生を助けてくれたおかげ、本当に感謝してもしきれないわ」
鞠莉姉に言われて、かな姉達3年生がAqoursに入ったときのことが頭に浮かぶ。あの時は本当いろいろとに大変で、かな姉と喧嘩したりもした。
「だから、今度は私たちがあなたを助ける番。今日は目一杯マリーに甘えて」
鞠莉姉は少し後ろに下がり両手を大きく広げる。その表情は慈愛に満ちている。
あれ、なんでだろう。目頭が熱くなる。頭の中をいろんな感情が駆け巡る。もういろいろとワケわかんなくなる。
「⋯⋯やっぱり果南じゃなきゃダメ?」
鞠莉姉の笑顔に少し陰りが見える。
ダメじゃない、ダメじゃないんだ。飛び付きたいんだ。
でも、体が動かない。
鞠莉姉に心配かけたくない、その一心が見えない鎖のように僕を踏みとどませる。
「私は大丈夫だから。⋯⋯玲士⋯⋯来て」
僕の頭のなかを見透かしたような言葉を聞いて、心の中で僕を繋ぎ止めていた鎖のようなものが切れた。
僕は思い切り鞠莉姉の胸に飛び付いた。
鞠莉姉は僕を受け止めてくれたが、勢い余って二人同時に後ろにあったベッドに倒れてこむ。
ベッドの上で、僕は思いの丈を全て話した。
最近疲れてること、でもかな姉を不安にさせたくないからそれを黙っていたこと等々全部話した。目からは涙が流れる。
「ごめんね、もっと早くに気づいてあげれなくって」
鞠莉姉はさらに強く抱きしめる。
あぁ、昔から変わらない良い匂いだ。
「果南に言えないことがあったら、私に言って。相談にのるから。
一人で抱え込んじゃダメよ?」
泣きながら何も言わずにただ頷くだけの僕を鞠莉姉は優しく撫で続けた。
しばらくして顔を上げる。
あぁ、今ひどい顔してるだろうな。
「⋯⋯ごめん鞠莉姉いろいろと言っちゃって⋯⋯」
「いいのよ、気にしなくて」
その優しい笑顔を見てもう止まった涙が溢れ出そうになる。
「いろいろ話して疲れたでしょ、だからもう寝ましょ?」
僕は頷いて、二人で同じベッドに横になる。
泣きつかれたせいか、すぐに眠りに落ちた。
それにしても、意識が途切れる直前、頬に何か暖かく柔らかい感触を感じたのはまどろみの夢だったのだろうか?
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カーテンの隙間から差し込む朝日で目が覚める。
寝ぼけ眼に写る光景を見て、鞠莉姉の部屋に泊まっていたことを思い出す。昨日ゆっくりできたせいか、とても寝覚めが気持ち良い
そのまま起きようすると、身体の違和感に気づく。
隣で寝ている鞠莉姉が僕の身体をがっちりと抱いて離さないのだ。鞠莉姉は一緒に寝るときはいつも松浦姉弟のどちらかを抱き枕するのだ。
いつもは振りほどこうとするが、今日はされていて嫌な気持ちがしない。むしろずっとされていたいぐらいだ。
その綺麗な寝顔をしばらく眺めていると、ゆっくりとその瞼が開く。
「う~ん⋯⋯玲士⋯⋯Good morning⋯⋯」
寝起きの鞠莉姉の姿はどこかあどけなく、自然と子供の頃の姿が思い出される。
「おはよう鞠莉姉、そろそろ朝食の時間ですから行きましょう」
いつもより格段に豪華な朝食を食べ終え、ホテルの周りを散歩していると向こう側から見慣れた人物がやって来るのが見える。
遠くからでもわかる上品な佇まいと艶やかで美しい黒髪。
「おはようございます、鞠莉さん、玲士さん」
言うまでもなくダイヤさんである。
「ああ、おはようございます。ダイヤさんが淡島に来るってことはかな姉か鞠莉姉に用があるってことですね」
「いえ、玲士さんをお迎えに上がったのですわ」
「ほえ?」
その言葉を聞いて頭の中に?が浮かぶ。ダイヤさんやルビィちゃんと何か約束をした覚えはないのだから。
「その様子だと、鞠莉さんから聞いてらっしゃらないようですね」
「はい、何も⋯⋯」
「まぁ、良いですわ。それで玲士さん、昨日はゆっくりできましたか?」
「えぇ、鞠莉姉のおかげで今までの疲れが無くなりましたよ」
間違ってもダイヤさんの前で一緒にお風呂に入ったなんて言えない。言ったらどうなるかは火を見るより明らかだ。
「マリーもと~っても楽しかったわ!玲士と一緒にお風呂に入ったりもしたのよ~♪」
言っちゃったよこの人!
「なっ、なんですって!」
「まっ、鞠莉姉、そのことは⋯⋯」
「あら~、玲士も昨日の夜はマリーを押し倒したりして、ずいぶんとダイダンだったじゃないの~♪」
「はっ、破廉恥ですわ!!!」
たちまちダイヤさんの顔が赤くなる。
「鞠莉さん!一体どういうことなのですか!」
「さぁて、どういうことなのかしらねぇ?詳しくは玲士に聞いて♪マリーはこの後用事があるから、それじゃあ二人とも、チャオ~」
「鞠莉さん!」
「鞠莉姉!」
呼び止める声に耳を貸すこと無く、鞠莉姉はホテルへと戻っていった。
「玲士さん」
「はっ、はい!」
「立ち話もなんですので、まずは私の家に行きましょう。そこでじ・っ・く・り・と聞かせていただきますわ」
そう言うとダイヤさんは不自然な笑顔を見せる。
この笑顔はそう、ものすごく怒ってるときの笑顔だ。
「ひえっ!」
その笑顔に戦々恐々としつつも、ダイヤさんの誤解を解かなければと思いながら後をついていくのであった。
Marie's monologue
最初はただ、彼の気を引こうと思っただけ。
玲士を泊まらせようって提案したのもマリーに振り向いてほしいって思ったから。
でも、彼の話を聞いて、その気持ちが変わっていった。
彼がこんなに苦しんでいたなんて⋯⋯
気を引こうなんて考えはなくなり、彼を守りたい、助けたい、癒してあげたいという強い想いが芽生える。
だって、彼は私にとっての王子様なんだもん。
籠の中に閉じ込められていたような私を、広く自由な外の世界へと連れ出してくれた。
そして、バラバラになりかけた私達三年生をもう一度ひとつに繋ぎあわせてくれた時から、私の気持ちは止まらなくなった。
彼ともっと一緒にいたい、マリーのそばにいてほしい。
でも、ライバルは多いことは知っている。 千歌っちも、梨子も、曜も玲士のことが好きみたい。もしかしたら他のみんなも?
彼に告白しようと考えたことも何度もあった。
でも、できなかった。
もし、玲士が私を選んでくれなかったら⋯⋯
二度と玲士が私に振り向いてくれなかったら⋯⋯
⋯⋯嫌!嫌!怖い!怖いの!あの時みたいになるのは嫌!
思い出されるのは留学している間、果南や玲士と会えなかったあの時はみたいに⋯⋯
だから、彼に振り向いてもらいたくて必死なの。
ちょっかいを出すのも彼に振り向いてほしいから。
お願い玲士、マリーの想いに気づいて⋯⋯!
最後までご覧いただきありがとうございます。
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姉にするなら誰がいいですか?
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果南お姉ちゃん
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鞠莉お姉ちゃん
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ダイヤお姉ちゃん