シスコン弟とAqoursの日常   作:ふらんどる

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皆様お久しぶりです。 ふらんどるです。
前回早めに更新できそうと書いたのに、遅くなってしまい大変申し訳ございません。
いろいろと一段落したので執筆に専念できる時間が多くなると思うので、次回はなるべく早めに更新したいです。
それでは『果南お姉ちゃんとの休日』、どうぞ!


果南お姉ちゃんとの休日【松浦玲士の休日 Day3】

ゆらゆらと揺れて少し不安定な船の上からゆっくりと桟橋に降りる。

 

「ただいまかな姉」

 

「おかえり、今日は厳しくされなかった?」

 

淡島に着くとかな姉が桟橋で待っていてくれた。

いつもと変わらぬ自然で優しい笑顔で僕を迎えてくれる。

 

「優しくしてもらったから大丈夫」

 

「あはは、よかったよかった」

 

そう言って笑うかな姉に、僕は帰ったらやると決めていたあることを実行する。

 

「ハグっ!」

 

その言葉と同時に、僕はかな姉に思いきり抱きつく。ここなら誰も見てないだろうから、周りの目を気にする必要もない。

 

抱きついた瞬間に何とも言えない素晴らしい香りが鼻孔を擽り、肌の柔らかな感触を感じる。

こうやってかな姉に抱きついていると今までの疲れが全てなくなり、自然と心が落ち着く。何より、あぁ 帰ってきたんだなぁ、ということを強く感じる。

 

 

かな姉は一瞬驚いたような声を出したが、すぐに状況を理解したのか、いつもと同じように僕を優しく抱き締めてくれた。

 

「こらこら、いきなりどうしたの?」

 

「だって、丸一日会ってなかったから⋯⋯」

 

いつも一緒にいると、一日会わないだけでも寂しく感じてしまうものである。

 

今朝淡島から出る前に家に寄ったのだが、運悪くかな姉は日課のランニングで不在で会えなかったのだ。

 

やっぱりかな姉に抱きついていると安心する。

 

「あはは、玲士はいつまでたっても甘えん坊だなぁ。私も玲士がいなくて少し寂しかったよ」

 

よしよし、とかな姉は頭を撫でてくれる。昨日今日と鞠莉姉、ダイヤ姉に撫でられたが、やっぱりかな姉に撫でられるのが一番だと実感する。

 

「やっぱりかな姉のが一番良いや」

 

しばらく抱きついてかな姉成分をたっぷり補充したところで、かな姉から離れる。

 

「ほら、もうご飯の準備できてるから、そろそろ戻るよ」

 

「はーい」

 

かな姉に促されて家に入る。するとすぐにどこからともなくおいしそうな良い匂いがするのを感じる。

 

リビングに入るとその正体がわかった。

 

テーブルにはお刺身をはじめ、僕の好物が多く並んでいた。

 

「今日は玲士が好きなお刺身だよ、いっぱい食べて」

 

この豪華な料理をかな姉が僕のためにつくってくれたと思うと、かな姉の弟で良かったと改めて感じる。

 

「いただきます!」

 

早速椅子に座ってかな姉特製の夕食をいただく。思えば最近は夕食の時も考え事をしていて、あんまり味わってなかったっけ

 

どんな凄腕の料理人が、どれだけ高級な食材を使って作った料理でも、僕にとってはかな姉の手料理に敵うものはない。

 

「お味はいかがかなん?」

 

「美味しいよ、やっぱりかな姉の料理は一番だね」

 

「あはは、喜んでくれてよかった」

 

 

しばらく美味しく食べていると、僕はあることに気づいた。

左手の指に絆創膏が貼ってあったのだ。

 

「あれっ、かな姉その指どうしたの?」

 

「ああ、これ?」

 

箸を置いて手を見るかな姉。

 

「もしかしてこれを作っている途中に包丁で⋯⋯」

 

考えを口に出した途端一気に不安になる。

僕にとってかな姉は何よりも大切な存在だ。

もしかな姉が僕のために何かしてるときに怪我でもして活動に支障が出るようなことになれば死んでも死にきれない。

 

「違う違う。衣装整理してたらボタンが取れそうなのがあって、直してたらちょっと針が当たっちゃっただけ。こら、そんな心配そうな顔しないで」

 

「よかったぁ~」

 

かな姉の言葉に安堵する。それにしても僕はそんなに変な表情だったのだろうか。

 

「それよりも玲士、鞠莉から聞いたよ。結構疲れてるのに、無理して頑張ってたんだって?」

 

まさかのカウンターに少しギクリとする。鞠莉姉はもう話してたのか⋯⋯

なるべくかな姉には知られないようにしようと思っていたが、もう隠しきれることではないので、僕は小さく頷く。

 

「ごめん、みんなに心配かけてたみたいで⋯⋯」

 

「こら、そうやって何でもすぐ謝ないって前にも言ったでしょ。こっちこそごめんね、一番近くにいるのに全然気づいてあげれなくて」

 

「かな姉が謝ることないよ!悪いのは無理してた僕なんだし⋯⋯」

 

僕はかな姉に心配をかけてしまった申し訳なさと、なによりその優しさと胸が一杯になり、目をそらしてしまう。

 

「これからは無理しないで、疲れてたり何かあったら私に話して。相談にのったり、助けてあげたりするから」

 

「あっ、ありがとう⋯⋯」

 

僕はかな姉の優しさに胸がいっぱいになる。

 

「なんでも一人でやるのは立派だけど、たまにはお姉ちゃんを頼って。それと、母さんたち、向こうの店が一段落したから近々帰ってくるから、だから家のことは楽になると思うよ」

 

「へえ、そりゃ良かった」

 

そんな会話をしながら僕とかな姉は夕食を食べ夜を過ごしたのであった。

 

 

 

~~~~~~~~~~~

 

波の音で目が覚める。

 

布団にくるまりながら手探りでスマホを取り、時刻を見ると8時を過ぎていた。いつもなら大遅刻だが、今日は祝日なので特別だ。

やっぱり月曜日の朝にゆっくり寝てられるというのは本当に幸せだ。

 

その時部屋のドアが開くことがして、こちらに近づいてくる足音が聞こえる。

 

「こら玲士、そろそろ起きて」

 

かな姉が起こしに来てくれたのだ。

 

「あと5分だけ⋯⋯」

 

いつもならここで無理矢理にでも起こされるのだが、今日だけは違った。

 

「もう、仕方ないなぁ。ちょっとだけだよ」

 

かな姉の温情で久しぶりの二度寝ができたのだ。

 

ベッドから出たあとは、ゆっくりとかな姉特製の朝食をいただく。

いつもなら船の時間があるので急いで食べるのだが、今日はゆっくりと食べられるのでいつもより一段と美味しく感じる。

 

「今日はどうするの?予約は入ってないし」

 

朝食を食べ終え、一通りのことを終わらせた僕はかな姉の方を見る。

 

「今日は絶好のダイビング日和だよ!はやく準備して!」

 

こちらを向いたかな姉の瞳はキラキラと輝いている。

 

「了解!」

倉庫からボンベやゴーグルなどを倉庫から用意し、いつも通りの手順で準備をする。

 

「そういえば玲士、潜るの久しぶりでしょ」

 

たしかに僕はかな姉と違って地上勤務が主なので、お客さんがいないときにたまに潜るといった程度だが、しかも最近は忙しくてその時間さえなかったのだ。

 

「その久しぶりに潜るのがかな姉と一緒で光栄だよ。なんたって家の自慢の看板娘なんだからね!」

 

以前小耳に挟んだ話によればかな姉は女性ダイバー界隈である程度名の知れた存在らしい。

さらにかな姉がAqoursの一員として有名になったこともあって、スクールアイドルとしての話を振られることも多くなり、Aqoursのお手伝いをさせてもらっている僕としても嬉しいかぎりだ。

 

しかし、噂によればダイビングよりかな姉目当てにお店に来る客がいるとかいないとか⋯⋯

 

もし万が一僕の愛しのかな姉に良からぬことを企む不届き者が来ようものならこの松浦玲士がただじゃおかないぞ!

メタメタのケチョンケチョンにしてやるんだから!

 

「こらこら、そうやってお姉ちゃんをからかわないの」

 

「からかってなんかないよ!だって本当のことだもん!」

 

「はいはい。早く準備して、そろそろ行くよ」

 

準備した僕たちは小舟で海へ出る。

かな姉はボードの操舵もできるのだが、二人で潜ってしまうと無人になってしまうので残念ながら今回は使わない。

ちなみに僕は来るべき試験に向けて絶賛勉強中だ。

 

しばらくして今回潜る場所についた。

 

「玲士、いくよ!」

 

「OK!」

 

「「せーのっ」」

 

 

ドボンっという大きな水音がして大量の泡で視界が遮られるが、その泡が消えると水の冷たさを感じ、綺麗な青色が視界いっぱいに広がる。

 

かな姉はこちらに手招きをしてどんどん深く潜ってく。

僕は遅れまいとその後をついていくと、ほどなくして海底が見えてきた。

 

海底には様々な貝が所々にあり、小さな魚の群れが周りを泳いでいる。

 

その美しい海の中をかな姉は慣れたように優雅に泳ぐ。

 

姿はまるで人魚姫のようだと昔から思っている。

 

しばらく泳いだ後二人同時に海面に顔を出し、ゴーグルをとって顔を見合わせる。

 

向き合ったその顔は笑顔に満ちている。

スクールアイドルとしてステージの上で踊っているときの笑顔とは違う自然な本当に美しい屈託のない笑顔。

 

「どう?久しぶりだけど疲れない?」

 

「全然!かな姉とだったらまだまだまだ、何時間だって泳いでられるよ!」

 

「よしっ!じゃあもう一度いくよ!」

 

「うん!」

 

それからしばらく僕はかな姉と一緒に美しい海の中を泳いだのであった。

 

 

陸に戻ったあとはボンベなどの手入れや後片付けを念入りにする。これを怠るといくら優しいかな姉といえども僕を叱る。

まあ、商売道具なわけだし、僕もしっかりしないとね。

 

そしてようやく全ての作業を終えて一息つく。

 

「どうだった?久しぶりに潜ってみて」

 

「やっぱり海の中は良いね。海の中は冷たくて気持ち良いし、何よりスッキリするよ」

 

「あはは、私と同じだね」

 

「そりゃ僕はかな姉の弟だからね」

 

かな姉も僕と同じことを感じていると知って少し嬉しく感じる。

 

「確かにね。そろそろお腹も空いただろうしお昼にするよ、準備して」

 

「はーい」

 

言われて食器などを準備をして昼食をとる。

お昼はかな姉特製冷やし中華。ほどよい酸味がきいており格別に美味しかった。

 

 

 

 

 

さて、普通午前中に運動をしてお昼を食べた後に人間はどうなるだろうか。そう、眠くなるのが常である。

 

「⋯⋯ダメだ、眠い」

 

僕も例に漏れず現在強烈な睡魔に襲われている。

あまりの睡魔に、自室で昼寝をするために部屋に入ろうとドアノブに手をかける。

 

 

ふと何の気なしに横を見るとかな姉の部屋のドアが目に留まった。

 

いつもなら特に何もない限り気に止めることはないが、今回だけは違った。

 

 

 

今かな姉のベットで寝たらどんなに気持ちいいことだろう。

 

 

 

あとから考えるに、多分たぶん眠さと疲れでどうにかなってたんだと思う。端から見れば異常な考えだ。

 

 

しかし僕はそのままかな姉の部屋のドアの前まで移動し、ドアノブに手をかけゆっくりと開ける。

 

そこにかな姉は居なかったが、特有の良い薫りがする。

 

きれいに掃除・整頓された部屋。

所々に海や貝殻、海洋生物をあしらった飾りがある。

 

 

部屋の脇にあるベッドの上には僕の部屋にあるのとおそろいのイルカのぬいぐるみがひとつ。子供の頃に淡島マリンパークの売店でセットで売られていたものをかなりねだって買ってもらったものだ。

 

そのベッドに向かって僕は一歩一歩ゆっくりと歩を進める。まるで蜜を求める昆虫が花園に引き寄せられるように。

 

しだいに心臓の鼓動が早くなっていくのがわかる。

 

あと少し⋯⋯

 

いよいよ腰を屈め目の前にある楽園のような空間に飛び込む体制に入ろうとした。

 

 

 

「玲士!」

 

「わっ!かっ、かな姉!?」

 

僕は驚いて腰を抜かす。

 

「どうしたの、私の部屋なんかに来て」

 

「なっ、何でもないよ⋯⋯」

 

はぐらかそうとするが、かな姉には全てお見通しだった。

 

「嘘だね。玲士、別に怒ったりしないから正直に話して」

 

かな姉はじっとこちらを見つめる。

どういうわけか僕は昔からかな姉に対して隠し事ができない。

この目を向けられたら僕は全てを話すしかないのだ。

 

「じ、実は⋯⋯」

 

僕は正直に今やろうとしていたことを白状した。

 

「はぁ⋯⋯、まったく⋯⋯いつまでたっても子どもっぽいというかなんというか⋯⋯」

 

話を聞き終えたかな姉は当然のことながら呆れたような顔で僕を見る。

 

「すみません⋯⋯」

 

自分でも今回はやり過ぎたと分かりやすくうなだれる。

 

「仕方ないから、これで我慢して」

 

そう言うとかな姉はおもむろにかなりはクッションの上に座り、膝をぽんぽん、二回と叩く。

 

この行動が意味するもの、そう『膝枕』である。

 

「ふぇっ!えっ!?いっ、いいの!?」

 

予想もしていなかった反応に一瞬なにがなんだかわからなくなる。

 

あまりの衝撃にこれが現実なのかと思いかなり強く頬をつねってみるがやはり痛い。夢なんかではなく本当に現実のようだ。

 

次に、もしかしたら疲れで幻覚が見えたのではないだろうかと思い、念のため目を擦ってみる。

 

「どうしたの玲士?いいの?」

 

しかしかな姉は変わらずクッションの上に正座してこちらを見上げている。

 

どうやら幻覚や見間違えでもないようだ。

 

いや、現実にしてもさすがにこれはおかしすぎる。考えてみれば昨日の夕食も僕の好物だし、良いことが続きすぎている。

 

もしかして一生分の幸せをこの三日間ですべてを使いきってしまったのであろうか?

明日になったら一気に不幸に襲われるのではないだろうか?

 

僕は恐る恐るかな姉に聞いてみる。

 

「なっ、なんで?いつもならしてくれないのに⋯⋯」

「だって鞠莉がしてあげてって言うから⋯⋯。ほら、そんなに遠慮しないで」

 

こちらを見上げながらかな姉は言う。かな姉は意識してやっているわけではないだろうが、その上目遣いに僕は心を奪われる。

 

「じゃ、じゃあ⋯⋯」

 

きっかけを作ってくれた鞠莉姉に感謝しつつ、かな姉のお言葉に甘えて僕は腰を下ろしての横になり、そしてゆっくりとかな姉の膝に頭をのせる。

 

 

頭を膝にのせた瞬間、ほどよい柔らかさと体温の温かさを感じ、なんとも言えない心地よい感覚がする。

 

そして一気に体の力が抜けてリラックスした状態になる。

 

昔からここだけは誰にも譲れない僕だけの特等席だ。

 

上を見上げるとかな姉と目が合う。一緒に暮らす姉弟だから目が合うなんて特に珍しいことでもないが、今回ばかりはなんだか少し気恥ずかしく感じる。

 

「どうだった?この三日間」

 

かな姉が僕に聞いてきた。

 

「ああ、ゆっくりと休めて、最近の復習もできたし、何より今日こうやってかな姉と過ごせたりして、本当に楽しかったよ」

 

僕がそう答えるとかな姉は優しい笑顔になった。

 

「よかったよかった。実は、玲士が忙しくて疲れてるみたいだったから三人で話し合って玲士にどうやってゆっくり休んでもらえるか色々考えてたんだ。一昨日は鞠莉、昨日はダイヤ、今日は私の番ってわけ」

 

そんなことがあったなんて僕にとっては寝耳に水の話だが、

今は驚きというよりもいろいろ感じていた疑問が解けた納得感の方が大きい。

 

「ありがとう、僕なんかのためにわざわざいろいろしてもらって⋯⋯」

 

「いつも頑張ってくれてる玲士に、私たちからのせめてものお返しだから気にしないで。それと、玲士はもっと人に頼って。」

 

「ありがとう。明日からまた頑張るよ⋯⋯」

 

「頑張りすぎないでね」

 

かな姉の膝の上という至上の場所でリラックスしたせいもあって、先程から一段と強くなっていた睡魔もいよいよ限界が来た。

幸せな感覚につつまれながら、ゆっくりと僕の意識は途切れていった。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

しばらくすると、私の膝の上で玲士はすうすうと寝息をたてた。

 

それにしてもこの歳になっても私のベッドに潜ろうとしていたとはさすがに驚いた。玲士は成長してるように見えるけど、まだまだ内面は子供だ。まあ、そこがかわいいんだけど。

 

しばらくして部屋の扉が開き、見知った顔が現れる。

 

「果南~Good afternoon♪」

 

「お邪魔しますわ」

 

「あっ、鞠莉、ダイヤ」

 

実は先ほど二人からこちらに来ると連絡をもらっていたのだが、片付けや昼食のためにすっかり忘れていた。

 

私は口の前で人差し指を立てて、寝ている玲士を起こさないように合図をする。

 

二人はゆっくりとこちらに近づいてきて、私の膝の上の玲士の寝顔を覗きこむ。

 

「ふふっ、玲士ったら、かわいい寝顔は昔と変わらないままね♪」

 

「本当にそうですわね。体を縮こめて寝るのも、昔のままですわ」

 

二人に言われて玲士のあどけない寝顔を見ると確かに昔と変わっていない。

 

成長したけど、やっぱり玲士は変わらないままなんだなぁ、って改めて実感する。

 

「⋯お姉ちゃん⋯⋯」

 

その時玲士が寝言を言った。

なにか楽しい夢を見ているのだろう、少し寝顔の口元が緩む。

 

「あら、玲士ったら夢の中でも甘えてるのね♪」

 

鞠莉は玲士の優しく頭を撫で、ダイヤもそれに続く。

 

「それにしても二人ともありがとね、昨日一昨日と玲士の面倒見てくれて」

 

そんな二人に私は感謝の意を伝える。

 

「かわいい玲士のためなら当然デース!それに、昔三人で約束したでしょ」

 

まだ小学生のころ、こうやって眠っている玲士を囲んで三人で約束した

『玲士はみんなの弟だから、何かあったら三人で守ってあげる』と。

 

「⋯⋯でも、私は玲士を傷つけた。自分の意地とわがままで⋯⋯」

 

しかし、そんな約束をしたにもかかわらず私はあの日、彼を深く傷つけてしまった。

2年前、私が一度スクールアイドルを辞めたあの日。

 

その時玲士は私のことを必死で止めようとした。

きっと、私の心の奥底にあった本当の気持ちを見抜いていたんだろう。

 

でも、その時私は必死で止める彼を突き放した。そして⋯⋯

 

私達がスクールアイドルをやめて鞠莉が留学してから、お互いのすれ違いが解けて私達がAqoursに入るまでの2年間、彼にとってはどれだけ辛かっただろう。

 

思い出すだけで罪悪感で胸が一杯になる。

 

「それなら私達も同罪デース。果南だけのせいじゃないわ」

 

「鞠莉さんの言うとおりですわ。果南さん、そんなに自分を責めないでください」

 

「鞠莉、ダイヤ⋯⋯」

 

二人は私の肩に手を当てて言った。

 

「いつまでもそんなだと、また玲士に心配かけるわよ。それに、果南がそう思うなら、これから取り返せば良いのよ、ねっ」

 

二人の言葉に胸を打たれる。「いつまでも過去を引きずってちゃいけない」私が再びスクールアイドルを始めたとき玲士が教えてくれたことだ。

 

「そっか⋯⋯、そうだよね。鞠莉、ダイヤ、ありがとう」

 

私はもう一度膝の上に目をやる。

 

そして、そこにいる子供のように眠るかわいい弟をひと撫でした。




最後までお読みいただきありがとうございました。

『松浦玲士の休日』シリーズは今回で終わりですが、次回は三年生編の番外編をお届けする予定です。

また、私事になりますがTwitterを始めましたのでよろしければどうぞ。@Flandre0525です。

よろしければ感想、評価、文字の誤脱等の報告お願いします。

それでは、また次回。
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