大変お待たせしました!果南ちゃんお誕生日記念回です!
この話を舞台となった沼津、内浦で投稿できると思うと大変感慨深いです。
それでは本編をどうぞ!
「また玲士の様子が変??」
「そうなんだよね⋯⋯」
昼休み、机を囲んで一緒にお弁当を食べている鞠莉とダイヤに最近の私の悩みを相談してみる。
「それは心配ですわね。また以前のようにお店がお忙しいのですか?」
「いや、忙しくて疲れてるって感じじゃなくて、なんかずっと考え込んでるというかなんというか⋯⋯」
私が話しかけてもすぐには反応してくれないし、なにか小声で独り言を言っている。私がなにかあったのかと聞いても「何でもないよ⋯⋯」としか返してくれない。もちろんその時は目をそらし、右手は頭を掻いている。嘘をついている証拠だ。
「それなら問い詰めちゃえばいいじゃない。玲士ってば押しに弱いんだし」
「いや、さすがにそこまでは⋯⋯」
鞠莉の言うとおり、玲士は押しに弱い。たわいもない事なら問題ないが、こう深く悩んでるとどうもためらってしまう。
「じゃあマリーが代わりに聞いてあげるわ!」
「鞠莉さん、人に言いたくないことを無理やり聞き出すのは、よくありませんわ」
「だって心配なんだもん! もしまた一人で抱え込んでたりでもしたら⋯⋯」
「こら鞠莉、落ち着いて」
私もそう言って鞠莉をなだめるも、なんだか不安になってきた。
「いくら玲士さんといえども、どうしても人に相談できないことのひとつや二つあってもおかしくないですわ」
そんなことはわかってる。でも私は玲士の姉だ。いままで相談したり、されたりするの事なんて数えきれないほどあった。だから、昔からずっと一緒にいる私にも相談できないなんて余計に心配になってしまう。
「ですから、どうしても知りたければ、本人の口からお話ししていただくほか方法は無いですわね」
ダイヤの言葉に一応納得はするものの、私の心の中のモヤモヤは募っていくばかりであった。
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「はぁ……どうするべきか……」
次回のライブへ向けてのミーティングを終え、窓から夕日が差し込む浦女の図書館の閲覧席で僕はそう呟いた。
そして僕が今読んでる本は花丸ちゃんから勧めてもらった小説⋯⋯ではなく、雑誌コーナに置いてある女の子向けの月刊誌。無論柄でも無いことはわかってるけど、なにかヒントがあるかもしれないと思って手に取ってみたのである。
どのページにも沼津では見たことの無いようなキラキラとした服装をした女の子の写真が載っている。僕なんかには到底縁のない人たちだろう。
「やっぱりこういうのは千歌とか梨子ちゃんが詳しいのかなぁ?」
そんなことを呟きながら、しばらくパラパラとページをめくりながら眺めていると、
『読者アンケート! 思わずキュンとしちゃう男子の行動ランキング!!』なんてものに出くわした。
真っ先に「プレゼント」の項目を見るが、聞いたことの無いメーカーの見たことの無い商品が並んでいるばかりであった。到底僕の予算内で買えるようなものはない。残念ながらこれも参考になりそうにないか。
特にあてもなくほかの項目を見てみる。すると『女の子が選ぶこんな男子はNG!』という見出しが目に留まった。
「えーっとなになに⋯⋯、 『人の気持ち気づけないニブニブな男子なんて超NG!』」
なんだか少し胸が痛い。かな姉にも昔から自分に向けられる気持ちに鈍いって言われてるし、やっぱり駄目だなぁ僕は。ヘマをして皆から嫌われないように気を付けなきゃ。
「玲士さん」
呼ばれる声に振り替えると、花丸ちゃんであった。
その手に鍵を持っているから図書室を閉めに来たのだろう。
「あっ、花丸ちゃん。ごめんごめん、すぐ出ていくよ」
「そんなに急がなくてもいいずら。それにしても、玲士さんが雑誌を読んでるなんて珍しいずら」
「えーっと、ちょ、ちょっと面白そうな本を探しててたまたま手に取ったらつい長居しちゃって」
さすがに自分から進んで女子向けの雑誌を読んでた事を知られるのは恥ずかしいので、とっさにはぐらかしてしまう。
「なるほど、たまには自分が普段読まない本を読むのを面白いずらね」
「あはは、そうだね。さて、そろそろ出ていかなきゃね」
そしてさっさと雑誌をもとの場所に戻して、花丸ちゃんと共に図書館を後にした。
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結局玲士の事は経過観察ということになったが、鞠莉が言って回ったらしく、数日後にはAqours皆の知るところとなっていた。
「うーん、私は特に玲士くんから何も言われてないし、変わったところも無かったけどなぁ?」
「でも千歌ちゃん、たしかに玲士君最近よく腕組みして考え事をしてたから⋯⋯」
「うーん、あれは玲士君の癖みたいなものだから⋯⋯」
私が玲士から今日は少し遅れると連絡があったことを告げると、案の定みんなが話し始めた。
「ねえ果南、ずっと考え込んでる以外に何か変わったことはなかったの?」
「変わったことねぇ⋯⋯、あっ! そういえば! いやっ、でも⋯⋯」
みんなの視線が一気に私に集まる。
実はもう一つ気になっていたことがあるのだが、これは関係あるのかわからないから、言うのをためらってしまう。
「もーう、気になるじゃないの。教えてよ果南」
「えーっと⋯⋯なんか最近玲士がファッション誌を読み始めたというか⋯⋯」
「「「ファッション誌???」」」
きっと今みんなの頭に「?」が浮かんでいるだろう。やっぱり関係なかったよね⋯⋯
「ほら、千歌がこの間参考にって何冊かくれたやつ」
「えっ、でもあれ女の子向けじゃ⋯⋯」
「家にあったものを読んでいたわけですから、そんなにおかしな事ではありませんわ」
たしかにダイヤの言うとおりで興味本意で読んでるだけかもしれない。でも、同じページを何回も見返したり、読みながら考え込むそぶりを見せたりと何かが変だ。
「やっぱりそうだよね⋯⋯」
「でも、玲士さんこの間図書室でも読んでたずら」
その言葉に、今度は視線が花丸ちゃんに集まる。
「果南ちゃんが言う通り何か考え込むようにずーっと読んでたずら。玲士さんがいままそんなの読んでるとこ見たこと無いから、変だなって思って」
花丸ちゃんからこうも言われるとやっぱり何か目的があって読んでいるのだろうが、その目的が何なのか全く見当がつかない。
「ねえ花丸ちゃん、玲士がどんなページ読んでたかってわかる??」
「そこまでは⋯⋯」
「もしかして花丸ちゃんが言ってたのってこれ? 衣装の参考用に持ってきたんだけど⋯⋯」
「それずら!」
花丸ちゃんは渡された雑誌のページをパラパラとめくり、しばらくして
「これずら!」
そう言って花丸ちゃんがあるページを指さすとみんなが一斉に寄ってきた。
「『女子が思わずキュンとしちゃう男子の行動アンケート』?? 花丸ちゃん、本当にこれなの??」
「たしかにこれずら」
「なんでこんなものを??」
謎が謎を呼ぶとはまさにこの事だろう。ますます玲士の目的がわからなくなってしまう。
みんなが考え込んでいると、梨子ちゃんがはっとしたそぶりを見せ、次第に顔が紅潮していった。
「どうしたの梨子ちゃん?」
「も、もしかして、玲士君⋯⋯、す、好きな人ができたんじゃ⋯⋯だから⋯⋯」
「ピギィ!?」
「れ、れ、れ、玲士くんにす、す、好きな人!?!?」
「レイシクンニスキナヒトガ、レイシクンニスキナヒトガ、レイシクンニスキナヒトガ、ソンナソンナ、ソンナソンナ」
「よ、曜。お、落ち着きなさい!」
梨子ちゃんの言葉の後に一瞬の沈黙の後、みんなが途端に色めき立って騒ぎ始めた。玲士から今までそんな話は聞いたこと無いし、噂も聞いたこと無い。別に玲士も年頃だから好きな娘の一人や二人いてもおかしくはないだろう。
「み・な・さ・ん!」
するとそう言いながら注目を自分に向けるために手を叩いた。
「まったく、玲士さんのプライベートに関して余計な詮索は不要です!! これ以降この話題は禁止ですわ! 果南さんも! いいですわね!」
はーい、と皆が返事をしてその場は収まったが、私は釈然としないままであった。
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ふと卓上の時計を見ると、時計の針はあと少しで上向きに重なりそうなところまできている。
僕には珍しく夜更かししてしまった。今頃かな姉は穏やかな寝息を立てているだろう。
今日もあと少しで終わってしまう。
ここ数日ずっと考えているが全くもって良い案が思いつかない。
あー、もうだめだ、寝よう。
そんなことを考えているとスマホが鳴った。
本を閉じて確認すると善子ちゃんからのメッセージだった。例によって堕天語録満載だったが、要約すると明日家に来てほしいとのことであった。無論断る理由もないので了解した旨を返信して、電気を消して布団に入る。
明日は善子ちゃんの家に行ったついでにもう一回沼津の商店街を見て回ろう。早いとこ決めてしまいたいが、かと言って適当に選ぶことはできない。
僕にとって一番大切な人のためだから。
それにしても今日はいつもよりみんなからの視線を感じたのだが気のせいだろうか?? 布団の中でそんなことを考えていた僕の意識も次第に薄れていった。
「お邪魔します」
「約束の時間より10分も前に来るなんて、さすが私のリトルデーモンね」
そして翌日、約束通り善子ちゃんの家であるマンションの一室を訪れた。
「そ、それにしても今日はいったい何をするつもり? ゲーム?」
善子ちゃんの部屋は昼間にもかかわらずカーテンは閉め切られており、ローソクのうっすらとした明かりに黒いローブを身にまとった善子ちゃんの姿が映し出されているといった状況だ。
「クックック、今はそのような下界の遊びなどに興味はないわ」
「じゃ、じゃあ何を?」
「このヨハネが冥界の王より授けられし魔力によって、悩めるリトルデーモンのことを占ってあげるわ!!」
そう言っていつものポーズを決める。
「あっ、ありがとう」
そして促されるままにリビングから持ってきたであろう椅子に座る。目の前の机の上には水晶玉やタロットカード等などいかにも占いに使いそうな道具が並べられていた。善子ちゃんも机を挟んで反対側の椅子に座る。
「これからこのヨハネが3つの質問を与えます。リトルデーモンは包み隠さず答えるのです」
「了解」
「早速始めるわよ。その1、リトルデーモン、あなたは今深淵の闇の如く深い悩みの中にいますね?」
「まあ、そうですね⋯⋯」
座って開口一番そう言って僕の瞳を見つめる。きれいな瞳だ。
いくら親しい仲だとしても、女の子から至近距離でじっと見つめられると少し緊張してしまう。
「ふふっ、思った通りね。このヨハネに隠し事なんて無駄よ」
「ごめんごめん」
やっぱり僕は隠し事はできないみたいだ。かな姉にもすぐ見抜かれる。
「次の質問よ。それはある人物についての悩みですか?」
「そうですね⋯⋯、凄いなぁ善子ちゃんは」
「さ、さ、さ、最後の質問よ」
さっきとは変わって急にどぎまぎする善子ちゃん。どうかしたのだろうか?
「そ、それは、り、リトルデーモンにとって、や、病めるときも、す、スコヤカナルトキモ、つつ、常にあ、愛を捧げ⋯⋯」
前の質問と違って急に善子ちゃんの口調が変わってどぎまぎとした、感じになる。最後の部分なんて聞き取れない。
常に愛を捧げる人物??
僕にとってそんな人物はただひとり。
無論かな姉のことだ。
それ以外当てはまるものもない。やっぱり善子ちゃんはすごいなぁ。もしかして僕が分かりやすいだけ??
「そうだね」
「ひいっ! り、リトルデーモン!! こ、このヨハネを差し置いてなんたることを⋯⋯」
え? どういうこと?
「Oh my God!」
「ウソダウソダウソダウソダウソダウソダ」
「えっ、よ、よ、よーちゃん!? だ、大丈夫!?」
「千歌ちゃん! 聞こえちゃうわよ!」
すると何やら急に後ろの方が騒がしくなる。
気になって席を立ち扉を開けると
「「うわっ!」」
扉に体をくっつけていた人物がこちらに倒れこんできて、僕もそれにつられ尻餅をついてしまった。
「「「あいて⋯⋯」」
「三人とも大丈夫!?」
「痛てて⋯⋯、あれっ、千歌に曜!? それに梨子ちゃんに鞠莉姉! なんで?」
後ろを振り替えると善子ちゃんがあたふたしている。
なんで善子ちゃんの家に四人がいるんだ??
ここはこのメンバーのなかで一番の常識人に聞いてみることにした。
「どういうこと梨子ちゃん?」
「実は⋯⋯」
梨子ちゃんからの話を総合すると、最近僕が悩んでるのは好きな人ができたんじゃないかとAqoursのみんなが勘違いして、その真偽を確かめるべく、鞠莉姉の発案で占いに偽装して聞き出そうとした、言うものだった。
「というわけなの⋯⋯、ごめんなさい!!」
そう言って梨子ちゃんは深々と頭を下げる。
「梨子ちゃんが謝ることはないよ! 謝るのはむしろみんなに心配かけた僕の方だよ! ごめんみんな!」
僕は頭を下げる。
「それで結局玲士は何を悩んでたの?」
「ああ、僕が悩んでたのはかな姉への誕生日プレゼント何が良いかな、ってだけだよ?
「「「「「へぇ!?」」」」」
みんなが間の抜けたような声を出す。えっ? なに? 僕今まずいこと言った??
「じゃあ、みんなに言わなかったのは?」
「だって知られるとカッコ悪いし⋯⋯。特に千歌なんかはすぐに口を滑らせるじゃないか。小学生の頃に秘密にしておくよう頼んだのに、結局千歌が言って知られたの忘れてないんだから」
「「「「「「なぁんだ~」」」」」」
皆その場にへたり込んだ。ますます何が何だかわからなくなる。
「じゃ、じゃあ愛を捧げるってのは??」
「何を言ってるんだみんな、僕の好きな人なんて、かな姉以外にあり得ないじゃないか!」
「やっぱり、シスコンっぷりは変わらないわね⋯⋯」
「でもみんなありがとう、『常に愛を捧げる人』って言葉で思い付いたんだかな姉へのプレゼント」
「なになに! 玲士くん!」
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どうやら玲士の悩みは解決したようだが、何を悩んでいたかは聞いても教えてくれない。まぁ、深く考えることでもないか、玲士が良いならそれでいい。
そんなことより、今はせっかくみんなが準備してくれたやっている誕生パーティーを楽しもう。
午前中はみんなでダイビングをした。そして今は陸に上がってのパーティーだ。みんなが作ってくれたケーキや順番にもらうプレゼントをみていると、やっぱり私にとってAqoursの皆はもう家族のようなものなんだと実感する。
そして玲士が近寄って来た。手を後ろにしてプレゼントを隠すように持ってくる。昔から変わらないやり方だ。
「あの、かな姉! なんか心配書けてたみたいでごめん⋯⋯。これ、僕からのプレゼント」
そう言って玲士が手渡したのはイルカをあしらったハンカチだ。
「ありがとう玲士、大切にするね」
「それともう一つ⋯⋯僕はいつまでも甘えてばっかりだから⋯⋯」
そう言って取り出したのは何枚かの小さく切られた厚紙。
よく見るとそれにはこう書かれていた。
『玲士に甘えていい券』
「だ、だっていっつも僕が甘えてばっかりだから⋯⋯」
玲士の顔が赤くなっている、照れているのだろう。かわいい。
Aqoursの皆からのいろんなプレゼントをもらってきたが、これは予想できなかった。
嬉しいという感情が溢れだしそうな私は目の前の玲士に思いっきりハグをする。
「うわっ、かな姉!?」
「嬉しいよ玲士! ハグっ!!」
どんな高価なものよりも、私にとってはこれが最高のプレゼントだ。思わず頭を撫でてしまう。
どんな時も一緒にいてくれ寄り添ってくれる一番の家族。
ありがとう、そしてこれからもよろしくね。私の大切なかわいい弟。
そんなことを思いながらちょっと抱き締める力を強めるのであった。
お読みいただきありがとうございました。
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それではまた次回。