シスコン弟とAqoursの日常   作:ふらんどる

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皆様お久しぶりです、ふらんどるでございます。
他作ともども更新が遅れて申し訳ありません。
それではどうぞ!


誕生日の朝 【果南ちゃんお誕生日記念】

「んぁ・・・」

 

時間通りになった目覚ましの音と、寄せては返す波の音が僕の眠りを覚ます。

 

「うぅっ・・・眠いししゃむい・・・」

 

僕、松浦玲士は朝が苦手なのだ。しかも2月、まだ日も上がりきっていない6時となるとなおさらである。

いつもなら目覚ましなんてかけずにベッドの上で毛布にくるまり暖かく幸せな空間で夢を見ているだろう。

 

しかし、今日はそういうわけにはいかないのだ。

 

気持ちを奮い立たせて急いで寝間着からジャージに着替え、軽い栄養補給を済ませて玄関へと向かう。

 

「おはようかな姉」

 

「ありゃ、玲士が早起きなんて珍しい。もしかして雪でも降るのかなん?」

 

玄関には当然の如く先客がいた。もちろんかな姉である。

 

「もう、僕だって早起きぐらいするよ。だからランニングのお供をしようかと思ってね」

 

「感心感心、じゃあ今日は普段よりもたくさん走ろうかな」

 

「ひぇっ!さすがにそれは・・・」

 

「あはは、冗談冗談」

 

いつも通りのさわやかな笑顔を見せる。僕はこの笑顔が大好きだ。

 

「それにして本当にどうしたの?いつもだったら布団をはいだって起きないのに」

 

「なんてったって今日はかな姉の誕生日だもん。一秒でも長くか一緒にいたいからね」

 

そう、今日2月10日は我が愛しのかな姉のお誕生日なのである。日付が変わる瞬間からいっしょにいたので当然ながら一番最初に『お誕生日おめでとう』と言ったのも勿論僕である。

 

「嬉しいこと言ってくれるね。さ、そろそろ行くよ」

 

「うん!」

 

外はまだ薄暗く、空気は当然ながら家の中よりもずっと寒い。吐く息も真っ白だ。

 

まずは島を離れるために朝一番の連絡船に乗る。

 

船に乗ると言っても、海の上にいる時間はほんのわずかだが僕はこの時間が好きだ。

 

「なんか船に揺られるっていいよね。なんか落ち着く」

 

「わたしも。昔から訳もないのに往復してたっけ」

 

「そんなこともあったね」

 

短い会話をしている間にもう岸に就いた。

 

「じゃあさっそく出発」

 

「こらこらちょっと待って。まずは準備運動、体を慣らさないと余計つかれるし、怪我の元だよ」

 

かな姉に言われて早速二人で柔軟や屈伸をして体を整える。それにしても運動の知識に関してはかな姉に敵うものはのはないのだとつくづく思うのだ。

 

準備運動を終えて早速僕たちは走りはじめる。ルートは海岸沿いを通って弁天島方面に向かうというかな姉のお気に入りである。

 

前を走るかな姉はテンポの良い呼吸で軽快に進んでいくが、一方の僕はというと普段は練習でAqoursのみんなと一緒に走ることはあるが、これ程の距離と時間は慣れてないのでもう息が上がってしまう。

 

「玲士、大丈夫?」

 

「だ、大丈夫大丈夫」

 

「疲れたら言ってね、無理しちゃだめだよ」

 

優しいかな姉は定期的に声をかけてこちらを心配してくれる。正直な事を言うとまだ折り返し地点にも来ていないのにもう疲れてしまっている。

しかし、せっかく自分からかな姉について行ったんだから弱いところを見せるわけにはいかない。

 

こんなところでくじけていてはだめだと景色の方に意識を向けて辛い気持ちを紛らわせる。

 

徐々に上っていく朝日に照らされる内浦の風景はどんなものよりも素晴しい。海は朝日が水面に反射して美しく輝いており、町を囲む山々の色も徐々により鮮やかなものになっていく。

 

美しい景色の中を順調に進んでいよいよ折り返しの弁天島でと少しというところまできたが、かな姉はどういうわけか徐々にスピードを落としてその場に立ち止まった。

 

「かな姉どうしたの?なにかあった?」

 

かな姉は僕の問いかけに答える事無くそのままガードレールに手をかけて海の方をじっと見つめる。

一体どうしたのであろうか。もしかして足のどこかを痛めて立ち止まってしまったのであろうか、それなら一大事だ。

 

「いや。景色がきれいだなぁって思って」

 

たしかにかな姉の言う通りここからは海が一望できる。

 

「いつもここで見てるの?」

 

「いや、いつもは弁天島まで一気に行くよ。だって途中で休んじゃうと余計疲れちゃうし」

 

「だったらどうして・・・」

 

こちらを振り向いたかな姉は少し考えるような

 

「なんとなく、かな?」

 

「かな姉らしいや」

 

そう言うと僕たちは顔を見合わせて笑った。いつもは気にも留めないこんな何気ないやり取りも、かな姉の誕生日というだけでいつもより何倍も幸せに感じる。

 

「さあ、まだまだこれからだよ!出発!」

 

「おー!」

 

かな姉と話した後だからか先ほどよりも元気が出たような気がして自然と走るペースも上がる。

 

そしてようやく折り返し地点である弁天島神社までやってきた。

 

「お参りしたら少し休もうか」

 

二人で小さな社殿に手を合わせる。ここに来た時は必ずお参りをする、これは昔から変わらない。この神社は僕たちを、この内浦をずっと昔から見守ってくれてくれている。

 

「ねえかな姉」

 

「なに玲士」

 

「いつも何をお祈りしてるの?」

 

手を合わせている時のかな姉の表情はいつになく真剣な表情であった。何をお祈りしていたのか非常に気になるところである。

 

「ふふっ、内緒」

 

「む~」

 

そして僕は持ってきたペットボトルのふたを開け中身を一気に飲み干す。

当然中身はただの水であるが、その冷たさは走って疲れた体に染みわたる。

 

「久しぶりのランニングはどう?」

 

「やっぱり朝から運動すると気持ちがいいもんだね。なんかシャキッとする」

 

「でしょでしょ。じゃあ、これから毎朝やる?」

 

「み、三日に一度くらいなら・・・」

 

光輝く朝の海を眺めながらかな姉と二人で木陰で過ごす。いつもならまだまだ寝ている時間だがたまには早起きするのも良いものだなと思ってしまう。

 

 

 

「あとかな姉、ここまで来る間いつもより走るペース落してたでしょ」

 

「ありゃ、ばれてたか」

 

「当然さ、何たって僕はいっつもかな姉を見てるからね。練習の時とペースが違う事なんてすぐわかるさ」

 

いつもAqoursの練習を見ている僕からすれば誰がどのくらいは知っているかを覚えているなんて造作もないことである。今回のかな姉は練習の時に比べて明らかに遅かった。体力に自信のない僕が後ろにピッタリくっついてこられるほどだから相当である。

 

「だってあんまり速く走っちゃうと玲士がついてこられないでしょ。せっかく一緒に走るんだから」

 

「もう、僕に遠慮なんかしなくて自分のペースで走ればいいのに」

 

たしかにいつものかな姉のペースにずっとついて行くことは僕にとっては大変であるが、だからと言ってランニングが好きなかな姉が僕のせいで自分のペースで走れないことの方が弟の僕にとって心苦しいものである。

 

「言ったな~!じゃあ、帰りは本気でいくよ。ついてこられなくなって泣き言ってもも知らないからね」

 

「かな姉がどんなに速く走ったって僕は絶対離れないんだからね」

 

子供のころから僕はかな姉の背中を見て育ってきた。だから、どんなことがあっても絶対に僕はかな姉のそばから離れない。それは僕の中でも譲れないものだ。

 

「嬉しいこと言ってくれるねぇ。さあ、そろそろ行くよ!」

 

「うん!」

 

そして僕たちは再び走り出す。先ほど言った通りかな姉のペースは格段に上がっており、むしろ普段の練習以上である。あっという間にかな姉の背中が遠くなってしまった。

 

長距離ランニングは何度かAqoursのみんなと練習でやったことがあったがこれはかなり体力を使う。息を切らす気配すらないかな姉の運動能力には我が愛しの姉ながら恐ろしささえ感じてしまう。

 

先を行くかな姉について行くのは体力がない僕にとってはとてもつらいことである。しかし、ここであきらめることはできない。残った力を振り絞って必死にかな姉に食らいつく。

 

先ほどのように景色を楽しんでいる余裕はないが、しばらく走っているとどういうわけか走っていて心地よく感じる。

 

頬を撫でる朝の冷たい風がランニングで火照った体を調度よく冷やしてくれる。かな姉がランニングが好きな理由が少しわかったような気がした。

 

そして、かな姉に送れるほど1分ほどで出発した船着き場に着いた。

 

「はあっ・・・、はあっ・・・、やった・・・」

 

ランニングを終えてかな姉の顔を見た途端にどっと疲れが出た。思わずその場にへたり込んでしまう。

 

「お疲れ様、よく頑張ったね。よしよし」

 

するとかな姉はしゃがんで僕の頭を撫でてくれた。これは思わぬご褒美だ。

 

「かな姉は疲れてないの?」

 

「う~ん、あと3往復はいけるかなん。もう一回行く?」

 

「ひえっ!それはさすがに・・・」

 

「あはは、冗談冗談。かわいいなぁ」

 

そう言って再び僕を撫でる。立て続けにかな姉になでなでさえるなんてまったくもって幸せである。

 

「久しぶりのランニングはどうだった?」

 

「最初は大変だったけど、とっても気持ちよかったよ」

 

「うむうむ。玲士がランニングの楽しさをわかってくれて嬉しいよ」

 

するとその時僕のお腹が鳴る音が響いた。朝早くから運動したことなどほとんどないのでもうお腹がペコペコである。

 

「あはは、それじゃあお腹もすいてきたことだしそろそろ帰ろうか」

 

「うん!」

 

こうして僕たちはまたも船に揺られて家に戻る。疲れているせいかなんだかとても眠くなってきたが、ここで寝てしまうわけはいかない。今日はまだまだやることがあるのだ。

 

家に着いた後は着替えて台所へと向かう。

 

「かな姉、今日の朝ご飯は僕が作るよ!誕生日ぐらいゆっくりしてて」

 

「おおっ、珍しい。それじゃあ頑張ってね」

 

作るのはみそ汁とスクランブルエッグ。実はここ数日かな姉に内緒で練習していたのだ。

 

普段料理することは乗り気ではないが、かな姉のために作るから一段と気合が入るものである。

 

そして、先週のおかげもあって特に問題なく料理を完成させてかな姉の前に持っていく。果たしてかな姉のお口に合うのだろうか。いよいよ緊張の瞬間である。

 

「うん、おいしいよ。前より上達したね」

 

かな姉の言葉にほっと胸をなでおろす。どうやらお気に召してくれたようである。

 

「へへっ、どんなもんだい」

 

ご飯を食べ終えもやることは続く。この後はAqoursのみんなで誕生パーティーがあるのだ。かな姉には内緒にしているので一旦部屋に戻る。

 

「まずはこれからAqoursのみんなに連絡して、それからお昼はみんなで作ったケーキを・・・」

 

あれ、何だろう。頭がぼーっとしてきた。だめだだめだ、僕には寝てる暇なんてない。

 

「えっとまずは千歌たちに・・・」

 

しまった、布団の上で寝転がるんじゃなかった。そう思ったときにはもう遅かった。

 

「かな姉・・・」

 

必死に起き上がろうとするが、僕の意識はだんだんと遠のいていった。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

「玲士、入るよ。どっか出かけるんでしょ」

 

先ほどちょっと用があると言ってから部屋に行ってから一向に戻ってこない。

ドアの前で声をかけても返事もないし、部屋から物音ひとつしない。ノックしてゆっくりと扉を開ける。

 

「玲士・・・ありゃ」

 

入ってみると確かに玲士はいた。ベッドの上ですうすうと寝息を立てていた。

 

「まったく・・・」

 

肩をゆすって起こそうと手をかけたが、その寝顔を見て思わず手が止まってしまった。

 

成れない朝早くからのランニングや料理でとても疲れていたのだろう。

 

実は黙ってたんだけど知ってたんだよね、ここ最近走ったり料理の練習してたこと。とっても嬉しかったよ。

 

「もう少し寝かせてあげよっか」

 

私は傍らにあった毛布を玲士にかけてあげた。

 

「玲士、いつもありがと、そしてこれからもよろしくね」

 

 




最後までお読みいただきありがとうございました。
作中の内浦の描写はアニメ情報と一年前の記憶を基にしております。この話は昨年の沼津旅行の際に思い付いたものです。
やっぱり内浦はいいところですよ本当に。

それではまた次回。次こそは早めに戻ってきます。
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