これは去年辺りに書きかけたやつを今年完成させ作品です。
これからも亀ですが頑張ります。
「玲士くん!ハロウィンだよ、ハロウィン!」
「は??」
日々秋も深まっていく今日この頃、いつものように部室でミーティングを始めようとするとまた千歌がおかしなことを言ってきた。
「だーかーらートリックオアトリート!だよ!!」
勢いだけで言ってることがまるでさっぱりわからないので僕はすかさずかな姉に助けを求めるように目配せをする。
「こら千歌、ちゃんと説明しなきゃダメでしょ」
「えっとね玲士君、実は今度のイベントでやるライブなんだけど、ハロウィンをテーマにしたらどうかなってみんなで話してたんだ」
「いつもとは違う感じの衣装が着れると思うから、曜ちゃん的にはとっても賛成であります!」
曜梨子コンビがご丁寧に説明してくれた。やっぱり千歌と違って二人は頼りになるなぁ。
「なるほどなるほどそりゃいいや。それで、みんなは何の仮装したいの?」
「ヨハネはもちろん堕天使!!」
「マリーは魔女よ!!」
「ルビィは黒猫しゃん!」
皆思い思いの仮装を言っていく。きっとどれも似合うであろう。
「かな姉はなにするの?」
僕はかな姉にも聞いてみる。まあかな姉の事だからどんな仮装をしても似合うのは決まっているのだ。
「私かぁ・・・」
「なんでもいいよ!魔女に吸血鬼、悪魔に・・・かな姉ならどれもぜえったい似合う!!」
「うーん、選ぶとしたら、魔女かなぁ・・・」
かな姉はしばらく考え込んだ後そう答えた。
「かなぁん!マリーと同じのを選んでくれるなんて嬉しいわぁ!!」
すると鞠莉姉が飛びついてきた。鞠莉姉はかな姉の事に関するといつもこうなのだ。
「ちょと鞠莉、くっつかないの」
「もう!果南のいけずぅ~」
「まったく鞠莉ちゃんは・・・。あっ、そういえば玲士くん」
「ん?」
「玲士くんは何の仮装するの?」
「・・・へ?」
これまた全く予想外の質問が飛んできた。
「いやいやだって僕は裏方だし僕が仮装したって意味ないよ。それに衣装だって・・・」
「イベントではスタッフ含めてみんなが仮装する決まりなのですわ」
「それに、衣装については曜ちゃんにお任せであります!」
不参加という手はないし、どうやら僕に逃げ道はないようである。
こうして、『松浦玲士に何の仮装をさせるか』という僕からすれば何とも対応に苦慮する懐疑が開始されたのである。
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「それで、結局玲士はどうするの?」
「どうするって言ったって、いきなり思いつくもんじゃないし。僕なんてどれ着たって似合わないよ」
「あら、マリーは一ついいのを知ってるわよ、玲士にとっても似合うわ」
「お姫様は却下です!」
ここまで来て気づかない僕ではない。鞠莉姉が僕に似合うなんてことを言うときは大体これなのだ。ああ思い出しただけで寒気がする。
「やっぱり男の子なんだし騎士じゃないと!あっいまのは騎士と英語のknightをかけた・・・」
「作れそう?」
「う~ん、鎧はちょっと難しいかもしれないです・・・」
千歌の提案だけは聞いておいて、ルビィちゃんに尋ねるがやはり鎧という大掛かりなものは難しそうである。
「やっぱり定番だとゾンビとかじゃないかな。特殊メイクならお任せであります!」
「何で生きているうちから死んだ後の格好をしなくちゃならないんだ」
「リトルデーモン、それを言っちゃおしまいよ」
「そもそもハロウィンの仮装は死後の世界からやってきた悪霊に仮装することで仲間と思わせて身を守るものずら」
「ごもっともです」
この後も次々と案が出てきたがなかなかいいものにたどり着かない。そうこうしていくうちにバスの時間も近づいていた。
「皆さん、そろそろ時間ですわ。続きはまた明日になさいましょう」
ダイヤさんの一声で、ひとまず今日の所は解散となった。
いつもの如く皆と別れて、かな姉と鞠莉姉と一緒に淡島に戻った。
「それにしても、玲士も頑固だよね。仮装なんて正直なんでもいのに」
ただぼんやりと海を眺めていると、隣からかな姉の声がした。
「だって僕は何着たって似合わないし・・・」
振り向かずにそう呟くと、かな姉はため息をつき、
「こら、そういうこと言わない」
片方の耳たぶを軽く引っ張った。
「私は、玲士が何着ても気にならないし、なったことはないよ。もっと自信もって良いんだからね」
「かな姉・・・」
正直なことを言うと、自分が何着ても似合わないなんてことは本心ではない。ただの照れ隠しに近いような、もっと単純なものである。
なんだろう、僕ももっと素直になれたらいいのになぁ。
「かなぁ~ん!トリック・オア・トリートよ~!」
静寂を切り裂くように鞠莉姉の明るい声が響く。
「お菓子なんてないよ。間食は太るもとだし」
「さすがかな姉!プロポーション維持もしっかり!」
「玲士も最近よく食べてるけど、食べすぎはダメだからね」
かな姉から耳の痛いお言葉をいただく。さて、鞠莉姉はどうするのであろうか。
「じゃあ!果南にいたずらを~」
「なぬ!?かな姉にいたずらをするのは許さない・・・」
やはりそうきた、我がかな姉に鞠莉姉のいたずらなどさせてなるものか。僕はすかさず二人の間に割って入る。
「じゃあ果南の代わりに玲士に~、顎の下こちょこちょ~」
「ひゃうん」
しまった、こればかりは僕の弱点だ。途端に体の力が抜けてしまう。
「こら鞠莉、玲士がかわいそうだよ」
かな姉の一声でてが緩んだ瞬間僕はすかさずかな姉の背中に隠れた。これでなんとか助かった。
それにしても、冷えた体にかな姉の暖かさは染み渡る。
「まあ、仮装の件は考えても答えはでないから、そんな時はランニングで頭をすっきりさせるしかないね!」
練習が終わってからもランニングとは、さすがの僕でも堪える。
「あっ!見たいテレビがあったんだ!」
僕は巻き込まれぬうちに急いで家の中へと逃げ帰るのであった。
少し遅れましたがお許しください。
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