教皇スロカイ様に拾われました   作:マハニャー

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 ホントは前回でここまでやるつもりだったんだけどな……

 一応イメージとしてはローマ(教廷)からモナコかマルセイユ辺りまで行った感じ。今より数世紀後が舞台なので現在の地理とは大分違うと思うし、教廷の国土もよく分からないのでもしかしたらちょっと違うかもしれないけど大目に見てください。


0-2 お出かけしましょう(後編)

「……はぁ……ようやく着いたか」

 

 トロトロとバイクを走らせながら、ウルフェンは深い溜め息を零した。……主にここに辿り着くまでの顛末を思い返して。

 遊び心が旺盛なのは結構だが、できれば俺を巻き込まないでほしい。切に願うウルフェンだったが、そこはかとなく満足げなスロカイの様子からして、あまりに淡い希望だった。

 

 適当に()から見て決めた目的地だったが、海辺の港町にしては思ったよりも大きな町のようだった。

 古代(この時代においては)ヨーロッパの趣の建物が立ち並び、広い道をたくさんの人が行き交っている。

 海岸には港があり、波止場にはたくさんのヨットやフェリーが停泊している。一部の砂浜は海水浴場にまでなっているらしい。

 

 スロカイにフードを被らせて、バイクに乗ってゆっくりと雑踏を進む。

 

「町に来たはいいけれど、これからどうするの?」

「あー、まずは服だな」

「服?」

「ここは連邦だからな。教廷の服じゃ少し目立つから着替えねーと」

 

 杞憂かもしれないが、用心に越したことはない。

 

 この町のように多くの観光客を受け入れている町ならば、お忍びでやってきた上流階級御用達の洋服店があってもよさそうなものだが。

 しばらく見て回っていると、それらしき店舗を見つけたので、バイクを降りて入店する。

 豪奢な内装と見るからに高そうな商品と、いかにも一見さんお断りの高級店と言った様相である。どうやら今は客が居ないようで、数人の店員が品物の確認をしているだけだった。

 

「いらっしゃいませ。本日は何をお求めでしょうか?」

 

 流石は高級店か、すぐさま店員の一人がやってきてにこやかな笑顔で話しかけてきた。凄まじい営業スマイルだ、と感心しながら、ウルフェンは傍らのスロカイを指差した。

 

「彼女の服を見繕って欲しい。今日一日この町で遊ぶから、それに即した服にな」

 

 パサリ、とフードを外したスロカイの美貌を目にして、店員の営業スマイルがついに崩れた。

 どうやら他の店員も同じのようで、そこかしこで明らかに動揺した物音が聞こえる。

 こんなことで大丈夫なのか、と心配になったが……何故か目の前の店員の目が異様に輝き出して、店内のそこかしこから店員が集まってきたのを見て、思わずスロカイを背中に庇って一歩後退ってしまった。

 

「まぁまぁまぁ! 大変にお綺麗なお嬢様ですわね!」

「三十年ここに勤めてきて、こんな美少女は初めてよ!」

「ふふふふ……腕が鳴るわ」

 

 ……本当に大丈夫なのだろうか、これは。とんでもなく不安である。

 ジェットエンジンには喜々としていたスロカイも流石にこれは恐怖の対象のようで、明らかに引いていた。

 教皇モード一歩手前の冷たい目で騒ぐ店員たちを睨みつけるスロカイ。ウルフェンも同じ気持ちである。

 まあ少なくとも真剣にスロカイの服を選んでくれるようなので、そこは安心と言うべきか、言わざるべきか。

 

「……私、この中に行かないといけないのかしら」

「……あー、まあ、頑張ってくれ」

 

 ダークラビットをウルフェンに預けて、いかにも嫌々と言った様子で歩き出すスロカイに心底同情するウルフェン。

 後でプリンを買ってやるか、などと考えながら、一人壁の華になるのだった。

 

「こちらのお洋服はどうでしょう?」

「いえ、こっちよ!」

「そんなに地味なのがこの方に似合うはずがありませんわ! 絶対にこっちです!」

「ちょっとあなたたち、一番に優先すべきはお客様の意向でしょう! ……私はこれが一番似合うと思うのですが、どうでしょう?」

「「「あーっ!!」」」

 

 姦しいことである。

 興奮しきっている店員たちに苦笑を零すウルフェンに、最初に接客をしてきた店員が話しかけてきた。

 

「申し訳ありません、うちの店員が大変に失礼を……」

「あー……まあ、ちょっとやり過ぎかもしれないが、あまり気にするなよ。……ちゃんとあいつに似合ったのを選んでくれるんだろう?」

「もちろんですわ。責任を持って、お嬢様にぴったりのお洋服を用意させていただきますとも!!」

「頼もしいことで……」

 

 意気込んで答える店員に苦笑を深めるウルフェン。

 

「まあそこら辺は任せるさ。俺は服のこととかさっぱりだからな。アイツだってどうせなら似合ってる服の方がいいだろ」

「そうですね。……つかぬことをお聞きしますが、お客様たちは恋人同士の御関係で?」

「いいや……ただの主人と従者の関係さ。顧客の情報を聞き出そうとするのはご法度じゃねぇのか?」

「出過ぎた真似を致しました……。とても近しいご関係に見えたので、つい野次馬根性が」

 

 この店の店員、ちょっと明け透け過ぎやしないだろうか。全く堪えた様子のない店員を前に、入る店を間違えたのではなかろうかと本気で悩むウルフェンだった。

 低姿勢ながら根掘り葉掘り聞き出そうとしてくる店員を適当にあしらいながら、スロカイの着替えを待つこと十分ほど。

 ようやく店員たちに揉みくちゃにされていたスロカイが戻ってきた。

 近付いてくるスロカイを何気なく振り返って……ウルフェンは、思わず固まった。

 

「待たせたわね、ウルフェン。……ウルフェン?」

「…………え、あ、お、おう」

 

 明らかに様子のおかしいウルフェンに不思議そうに首を傾げるスロカイ。その拍子に、一本に結わえられたサイドテール(・・・・・・)が揺れる。

 今の彼女の装いは、裾に瀟洒な刺繍の施された、純白のオフショルダーのワンピースに、つばの広い白の帽子。まさに深窓の令嬢と言った様相である。

 見る者に清楚な印象を与えるその服装は、常の傲慢な彼女を知る者としては違和感を覚えそうなものだが、今のウルフェンにはそんなことを考える余裕はなかった。

 普段とは違う服装、髪形、印象のスロカイに、どうしようもなく心を奪われていたウルフェンには。

 

 二の句を告げずに押し黙るウルフェンに何を思ったか、スロカイはグイッと顔を寄せて、

 

「もしかして……私に見惚れた?」

「――ッ、ばっ!?」

 

 耳元で甘い声で囁かれて、ウルフェンは思わず仰け反った。

 その顔は耳まで真っ赤で、図星を差されたことを何よりも雄弁に語っていた。

 

「照れるな、ウルフェン。そなたは未来永劫余のものだ。であれば、そなたの目はただ余にのみ向いていればよいのだから」

「ここでそっちのモードを使うな! ……あーもう、終わったんなら早く行くぞ!」

 

 照れ隠しに叫び、足早に店を去ろうとしたウルフェンだったが、突如横合いから伸びてきた腕に両肩を掴まれて動きを止めた。

 見れば、瞳に異様な輝きを宿した店員が、薄ら笑いを浮かべてじっとウルフェンを見つめていた。

 ……あまりに不気味な光景に、衝動的にぶん殴りそうになった。

 

「な、何だよ……?」

「まだ終わっていませんよぉ……?」

「ええ……せっかくあれほど綺麗に仕上がったんですもの……」

「エスコートする男性にも……相応の格好が必要でしょう……?」

「おい、待て、ちょっ……や、やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!!!」

 

 必死に叫ぶが、もちろん聞き入れてくれるはずもなく。

 幽鬼もかくやな、服屋の店員とは思えない異様な腕力に引きずられて、ウルフェンの姿は店の奥へと消えていった。

 

 

 

§

 

 

 

「まだ街に来たばっかなのに異常に疲れた……」

 

 店員たちの着せ替え人形にされること優に三十分。

 ようやく解放されたウルフェンは、バイクで雑踏を走りながら今日何度目かも分からない深い溜め息を吐いた。

 だが苦労した甲斐もあって、少なくとも今のスロカイの隣に並んでも見劣りしない程度には身だしなみを整えることが出来た。

 

 そのスロカイはと言えば、バイクの後部座席に乗って、物珍しげに街並みを眺めていた。

 レンガ造りの家々を、行き交う人々を、緑を纏う街路樹を、その全てに視線を向けては小さく唸っている。数えるほどしか教廷の外に出たことがない彼女にとっては、こんな当たり前すらもが目新しい。

 

「それで、スロカイ。まずはどこに行きたい?」

「そうね……じゃあまずは、食事にしましょう。それから町の中を散策して、海にも行ってみたいわ」

「食事、散策、海……ね、了解だ。海に行っても泳げねーぞ?」

「構わないわ。海を見てみたいだけだから」

 

 ……そう言えば見たことがなかったな。

 この季節なら海水もそこまで冷たくはない。泳ぐことは無理でも、砂浜で遊ぶぐらいのことは出来るはずだ。

 

 帽子を手で押さえながら楽しそうに微笑む彼女に、我知らず微笑み返しながら、今日は目一杯楽しませてやろうと改めて誓うのだった。

 

 和やかに談笑しながら進んでいると雰囲気のよさげなレストランを見つかった。

 どうやら店内で食べるか、店舗の外のテラス席で食べるか選べるらしく、スロカイの意向でテラス席に座ることにする。注文を終えた二人は、テラス席に丸いテーブルに向かい合って座った。

 

 コーヒーを啜りながら、向かいのスロカイを見やる。

 いつもとは違う装いの彼女は、その大きな帽子を膝に乗せて紅茶のカップを傾けている。

 類稀なる美貌から常に人の目を惹きつけてやまない彼女だが、どうやらそれはこの場でも例外ではないようで、周囲の人間は彼女にチラチラと視線を向けている。

 スロカイ自身はこれっぽっちも気にした様子はない。日頃他人を凡人と呼んで憚らない彼女だ。衆愚に見られたところで毛一つほども動揺はしまい。……だがウルフェンには、それがどうにも気に入らなかった。

 

 やや憮然とした気分でスロカイを見つめていると、スロカイもウルフェンの視線に気が付いたのか顔を上げて微笑みかけてきた。

 その微笑みに、サイボーグ化されたことによって大幅に強化された心臓がドクンと高鳴る。

 

「そう言えば、まだ聞いてなかったのだけれど……この服、どうかしら?」

「どう、って?」

「あなたの感想を聞いてるの」

「そりゃぁもちろん……あー、似合ってる、と思うぞ?」

 

 どうにも真っ直ぐ素直に褒めるのは気恥ずかしく目を逸らしてしまったが、スロカイはご満悦の様子で、

 

「そう。ふふ……まあ、私に呆然と見惚れていたあなたの反応を見れば、一目瞭然なのだけれどね」

「ぐぬ」

 

 図星なので何も言えない。と言うか何を言っても藪蛇になるだけなので口を噤むしかない。

 まぁ……ウルフェンの拙い褒め言葉で嬉しそうにするスロカイを見れば、そんな不満などたちまちの内に消し飛んでしまうのだが。

 そんな心の動きに、子供のような独占欲を見つけて微妙な気分になるまでがワンセットである。

 

「いいのよ、あなたはただ……この私だけを見つめていれば」

 

 この少女がウルフェンだけのものになることなど有り得ないと、分かっているのに。

 ウルフェン=ノービスと言う男の全ては、とうの昔から彼女のものだ。だがそれが逆になることは決してない。

 彼女の隣に居たければ、それ相応の力を付けるしかないのだ。

 

(……やってやるとも)

 

 ああ、そうだとも。スロカイに救われ、彼女のために生きると誓った時から、覚悟はできている。

 もし彼女を脅かす者が現れたならば、有らん限りの力を持ってこれを滅ぼそう。

 もし彼女が傷ついたのならば、ただ傍に寄り添おう。

 ……もし、彼女が世界の敵になってしまったならば、俺だけは、彼女の傍に侍り続けよう。

 あらゆる理不尽から、不条理から、彼女を守り抜こう。

 それこそが、ウルフェンが自らに課した誓いであり……彼が生きる意味なのだから。

 

「……私だけを見つめていればいいと言ったけれど……そうも凝視されると流石に居心地が悪いわね」

「ん、ああ、すまん」

 

 妙な雰囲気になりかけたところで、注文していた料理が運ばれてきた。

 テーブルに並ぶ特産の海産物中心の料理の、何とも食欲をそそる香りに、スロカイの瞳が俄かに輝き出した。斯く言うウルフェンも、今日は色々あり過ぎて消耗していたのでかなり空腹だ。

 そのまま二人は無言でナイフとフォークを手に取り、黙々と食べ始めた。

 

 料理の味だけを見れば、ただのレストランで出されるものよりも、普段教廷で口にしているそれの方が上だろう。

 けれど、何故かいつもより美味しく感じられるのは……二人きりで遊びに来ているというシチュエーションのせいだろうか。

 何となく向かいに視線を向ければ、スロカイもまたウルフェンへと視線を向けていた。もし同じことを考えてのことだったら、少し嬉しい。

 

 食後のデザートには、やはりと言うべきかプリン。それも、各種フルーツやクリームで盛りつけられた、目にも鮮やかなプリンパフェである。

 今日一番に嬉しそうにスプーンを手に取るスロカイに微笑みながら、ウルフェンもまたチョコプリンパフェへと手をつけた。

 

 次々に小さな口へプリンを運ぶ彼女は、傍から見ていても分かるほどにとても幸せそうだ。教皇として君臨している威厳はどこへやら。どうしようもなく蕩けきっている。

 だからだろうか、ついこんな提案をしてしまった。

 

「スロカイ。俺のも食うか?」

「……いいの?」

「おう。俺もそこまで甘いものが好きってわけじゃないしな」

 

 そう言って、自分のパフェをスロカイの方へ差し出すウルフェンだったが……何故かスロカイはそれを受け取ろうとはしなかった。

 そして、無言で目を瞑り、口を開けて……

 

「……何してんの、お前」

「見て分からないの?」

「分からないから聞いてるんだよ……」

「私にプリンを食べさせなさい」

「自分で食えよ」

「命令だ。余にプリンを食べさせよ」

「何故に……」

 

 と、何だかんだ言いつつも。

 結局はスロカイの言葉に逆らえずに、唯々諾々と従うことになるのだ。

 今回も例外ではなく、少しの……いや、かなりの気恥ずかしさを堪えて、プリンを一匙掬ってスロカイへと差し出した。

 顔を赤くしたウルフェンに、スロカイはさも愉快そうに笑って……パクリ、と小さな口の中に収めた。

 

 さっきまでウルフェンが使っていたスプーンがスロカイの口の中にあると言う事実に胸がざわめくも、普通逆じゃないのかという疑問も湧いてきたりする。

 

「美味しいわ」

「……そうかい」

「あなたが食べさせてくれたからかしら?」

「……ふざけろ」

 

 それだけ言って、ウルフェンはテーブルに突っ伏した。

 

 

 

§

 

 

 

 食事を終えた二人は、当初の予定通り町の散策へ乗り出した。

 バイクをゆっくりと走らせながら、目的も定めぬまま町の中を見て回る。

 露店の店頭に並べられた商品を冷やかしたり、めぼしい店を見つけたらバイクを降りて行ってみたり、おやつにクレープを買ったり。

 教廷に閉じこもっていては絶対に味わうことのできない『非日常』を、ウルフェンとスロカイは存分に楽しんでいた。

 

 あらかた街を回り終えた二人は、いよいよ本日のメインイベントであった海へと向かった。

 この町は港町だけあって、水産物だけでなく一部の砂浜を海水浴場として観光施設にしているらしい。

 

「ほー……こりゃすげぇな」

 

 路肩にバイクを止めて、二人で砂浜へと歩いていく。

 

 上から見た時も思ったが、やはり綺麗な海だ。

 降り注ぐ陽光を反射して、ガラスをちりばめたように輝くエメラルド色の海。ザザーン、と耳に心地よい潮騒。

 広い砂浜にはいくつものパラソルが立てられ、水着姿の人々が楽しげに走り回ってはしゃいだり、日光浴をしている。

 

 どうやら水着や浮き輪といった道具は近くの売店で手に入るようだが、二人は特にそれらに興味を示すことはなかった。

 海で遊びたいとは思っているが、別に泳ぎたいというわけではないのだ。

 

 砂浜に足を踏み入れたところで、スロカイは履いていたサンダルの片方を脱いだ。あの店員たちも海に来ることを予期していたのだろうか。

 そーっと、素足を伸ばして砂に触れて……予想以上に熱かったのか、びくっと肩を揺らしてすぐに引っ込めてしまった。

 

「熱いわね……」

「砂浜なんだからそりゃ熱いだろ」

 

 流石にこの熱砂の上を素足で歩くのは勘弁だ。

 スロカイもサンダルを履き直して、ゆっくりと波打ち際まで歩いていく。

 恐々と近付いていくスロカイに焦れたように、小さな波が岸に押し寄せ、スロカイの足を攫って行った。

 

「きゃっ……冷たいわね」

「そりゃ水だからな」

 

 最初は驚いていたが、徐々に水の感触が楽しくなってきたのか今度こそサンダルを脱ぎ捨てていた。

 楽しげな笑顔で、ぱちゃぱちゃと戯れるスロカイに微笑んで、ウルフェンも水に足をつけたところで……顔面に海水をかけられて仰け反った。

 

「わぷっ!? ……やってくれたな、スロカイ」

「油断しているあなたが悪いわ」

「普通警戒しないだろうが!」

 

 叱りつけようとしたが、心底楽しそうに笑うスロカイに何も言えず、無言でブルブルと首を振って水を落とす。

 服も少し濡れてしまったが、この天気なら少し遊んでいれば乾くだろう。

 

 まあ、それはそれとして。

 

「そっちがそうくるなら……そぅらっ!!」

「きゃっ…………お返し、よ!」

「くそっ、こいつめ……!」

「ふふふっ」

 

 互いに水を掛け合って、仕返しをして、その仕返しをして……そんなことをしている内に、いつの間にか二人とも夢中になっていた。

 ぐしょぬれになる服も、お忍びの遊覧だということも、護衛の任務も、何もかも忘れて、ただただ夢中になった。

 声を上げて笑って、子供のように無邪気にはしゃいだ。

 

 楽しかった。スロカイと二人で、何も考えずにただ笑い合う。この時間がどうしようもなく楽しくて、どうしようもなく愛おしかった。

 

「なぁ、ウルフェン」

「……いかがなされました? 教皇陛下」

「楽しいな。……うむ、余は楽しいぞ」

「……左様で」

 

 俺もだ、とは、中々言い出せないウルフェンだった。

 

 

 

§

 

 

 

 結局日が沈むまで遊び倒して、【the・SIN‐Ⅱ】に乗ったマティルダと本気の摸擬戦をすることになったのは、笑い話だろう。

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