デルパイルイル開始から完了までを、RTA的なスピードで完了させました。
(なお主人公は騒動には言うほど絡んでなかった)
船の中 初日
ここに、自分が捕獲された証として日誌を遺す。
結論から言えば、自分はゴメちゃんと共に勇者でろりん一行とやらに捕獲され、今は船倉の檻の中にいる。
遡る事半日ぐらいであろうか、ダイが飛び出して行った後妙な胸騒ぎを覚えて、家の裏手に放置したままの黒檀の両手斧を手に取った頃滅多な事では使わない筈の全員集合の笛の音が鳴った。
その音が気になったであろうブラス氏と共に、音が鳴る方向へ揺れる胸に難儀しつつ小走り気味に向かったところ、この島では一度も見たことがない一行が魔物に囲まれて佇んでいた。
それぞれの役割に特化したかのような衣装を纏った一団に首を傾げていると、ブラス氏が勇者と口にするも何かの違和感から杖を向けて誰何の声を上げ……。
ブラス氏の言葉に鬱陶しそうにこちらを睨んだ、一団のボスらしき男(後にでろりんという名だと判明、もしかしてこの名前のせいで彼はグレたのではないだろうか)の合図とともに、集まった魔物達へ一団が襲い掛かる。
この島に住まう魔物達は、野生をどこかへ置き去りにしたかのような陽気で平和的故か、反撃もままならず蹴散らされていく状況に、ブラス氏が怒りと共に呪文を唱え自分もソレを援護すべく斧を構えて吶喊した、のだが。
黒檀の両手斧で、ゴリラのような顔をした戦士を平打ちで弾き飛ばしたまでは良かったが、自分を脅威と判断したのか一団からの集中砲火が自分へと殺到し。
ローブや衣服を刻まれ、素肌を露出させられながらイオラとかいう呪文で吹き飛ばされてしまう。正直な所シャウトを使うべき状況であったが、何がどう作用するか判断できず二の足を踏んでしまった自分のミスであった。
そして爆風で自分が転がされたところで、ゴメちゃんを抱えたダイが戻ってきたのだが。
自分とブラス氏、そして友達である魔物達を傷つけられた惨状に、ダイは怒りの叫び声を上げながら敵の一団へ立ち向かうがバギの呪文で吹き飛ばされ。
抵抗空しくゴメちゃんを、ずるぽんという僧衣姿の女性に奪われてしまい、自分もへろへろとかいう戦士に担がれてしまった。
典型的な魔法使いと言える恰好をした老人が、自分も攫おうとする事に異議を唱えたが、どうやら自分みたいな姿形の種族は珍しいらしく献上品にされるらしい。何と言う事だ。
コレが自分とゴメちゃんが拉致された経緯である。
何故か彼らの船の中にあった檻へ放り込まれた自分であるが、女性として同情されたのか傷塗れの体はずるぽんに治療され、まぞっほからはボロ布と化したローブの代わりと彼の着替えらしいローブを借り受ける事が出来た。
黒檀の両手斧はへろへろとやらに強奪されてしまったが、まぁインゴットはいくらでもあるし幾らでも作れるから良しとしよう。
しかし、エピックでもレジェンダリ等級でもない素の黒檀の両手斧であそこまではしゃげるというのは、彼らは彼らなりに装備で苦労しているのかもしれない。
船の中 二日目
今日も今日とて檻の中である、暇でしょうがないが手元にあるのは日記調代わりの手帳ぐらいしかないから困ったモノである。
ブラス氏とダイが元気ならよいのだが、とりあえず今現状で脱走して船を奪っても、意志疎通が困難なこの体ではデルムリン島へ戻る事は絶望的としか言いようがない。
故にこそ、彼らの目的地に着いた瞬間何としてでもゴメちゃんを奪取し、そのままデルムリン島へ帰らねばならない。
だがそうは言ったものの、やりようがない。故に暇であるという最初の問題へ戻ってきてしまう。
どうしたものかと、指先で尻尾の毛並みを整えていた自分であったが、足音が近づいてきたのでそちらを見てみると、勇者もどきことでろりんがやって来た。
彼が言うには、自分が使っていた斧は誰が作ったものだという話だった、とりあえず自分を指さしたら嘘をつけと叫ばれるも真実だからどうしようもない。
ついでに自分が言葉を発してない事に気付いたのか、言葉を喋れないのかと聞かれたので頷いておくと、気まずくなるでろりん。
やはり、酷い名前のせいでグレているだけで、彼の性根は言うほど曲がっていないのではないだろうか?
ともあれ、しばらく見つめ合う自分とでろりんであったが、檻の隙間から刃こぼれした鋼鉄の片手斧が檻の中へ放り込まれ、更に武具の手入れ用品まで放り込まれた。
なんでも本当にあの斧を作ったのならこの斧をマシな状態にしてみろ、らしい。正直精錬設備も鍛冶場もない現状に無茶を言うものだが、暇だし何とかして見る事にしよう。
船の中 三日目
出来る限りの事はやれたであろう、暇だったとはいえ少々没入しすぎたかもしれない。
ついでに、暇だったので握り部分へ細工まで施した自信作だ、設備の関係で上級程度にしか仕上げられなかったのが心残りなので今度リベンジをしたいところである。
なお、仕上がった鋼鉄の片手斧にでろりん達は息を呑んでいた、その程度で驚かれても正直恥ずかしいとしか言いようがない。
まぞっほが、まさか妖精の鍛冶師とか呟いていたのだが、自分の今の体であるエリーンは妖精の一種なのであながち間違いじゃないのかもしれない。
思わぬ拾い物だとでろりんが高笑いをしているが、捕らぬ狸の何とやらではないだろうか。自分は狐であるが。
ロモス王国 初日
色々とあったが、無事船はロモス王国とやらの港へ着き、自分が入ったままの檻もまた降ろされた。
しかし、まるで見世物のように荷台が丸見えの馬車で運ばれるのは少々恥ずかしいモノがある、見物人の男達の目が自分の胸元へ集まっているのまで丸分かりだ。
男のチラ見は女のガン見とはよく言ったものだと思うが、ここまでガン見されると視線が矢のように突き刺さっている錯覚まで感じる始末である。
最悪、シャウトを使って脱走を考えていたがコレではそうもいかないし、ゴメちゃんが入った檻はでろりんが抱えている以上やりようがない。
よって、自分はこのまま城へ運ばれていく事となったわけだが……。
演出とやらで、ゴメちゃんを抱えた状態で献上された。
周囲は完全装備の衛兵に囲まれているので、シャウトで吹き飛ばして逃走も少々面倒そうである、さすがに子供がいるのに賞金首になるわけにもいかない。
そのまま、何やら着替えさせられた挙句また檻の中へ戻されたのだが、玉座のすぐそこに設置された状態で集まった見物人の視線が大集合の有様だ。
どうしたものかと、ふわふわのドレス姿のまま腕を組んで考えていたところ、ダイが何か叫ぶような声と共にパーティ会場に魔物が出現。
煌びやかな会場が一転して、てんやわんやの大騒ぎの様相を呈してきた。
正直好機にもほどがあるので、ドレスアップさせられていた際にくすねていた針金のような金属で即席のロックピックを拵え、頑丈な割に作りは簡素だった檻の鍵をこじ開ける。
自分の突然の動きに衛兵達は大声を上げるも、胸元に抱いたままのゴメちゃんを手放さず、捕まえようとする衛兵を避けながらダイの姿を探し。
自分が見つけるよりも先に、ダイが母ちゃんと叫びながら自分へ抱き着いてきたので、片腕で抱き留めて無茶をした愛しい息子へ頬擦りを返してあげる事にする。
ダイの話では、有志を募って自分とゴメちゃんの奪還を決行しにきたらしく、キメラ達で脱出しようと叫ぶので頷き、同時に風切り音と共に襲い掛かって来た剣をダイを抱き締めたまま横へ飛んで避ける。
二人してゴロゴロと転がり、ダイとゴメちゃんを自分の胸元へ押し付けるような形になりながら体勢を立て直してみれば、そこに居たのはでろりんとへろへろにまぞっほの3人衆であった。
へろへろに至っては、自分から強奪したままの黒檀の両手斧を手にした状態である。惜しくはないけど返してほしいものである。
ダイにゴメちゃんを押し付け、手伝いに来てくれた友達の撤収準備をするようジェスチャーで伝えると、ダイを追いかけようとする3人の前に立ちはだかる。
彼らは彼らで嫌いになり切れないし、この城の人間達に隔意があるわけではないのだが、息子と息子の親友の一大事だ。ちょっとぐらいヤンチャをしても許されるだろう。
自分には戦闘の時の詳細を語る才はないので、結果だけ記すとしよう。
へろへろ達めがけ、武装解除のシャウトを全力で叩きつけてへろへろがとり落とした黒檀の両手斧を取り返すと、3人まとめて平打ちして薙ぎ倒した。
その後も、小競り合いじみた戦いと呪文の応酬こそあったが、最終的には揺ぎ無き力でまとめてトシコシダーして沈黙させた。
何人かの衛兵と、不幸にも巻き込まれたロモス王も吹っ飛ばされていたが、ダイとゴメちゃんの安全が最優先なので赦してもらいたい。
ふと見てみれば、スライム達を網袋に入れてダイを恫喝していたらしいずるぼんが、自分が放つシャウトに血相を変えてダイを問い詰めていたモノの、ダイも知らないのだから首を横に振るしかない。
少しばかり頭に血が上って大暴れしてしまったが、ここまで来たら毒を食らわば皿までだ、徹底的に大暴れして追撃がないようにしようと気合を入れたところ。
ダイとゴメちゃんが必死の形相で飛びついてきて、もういいから。大丈夫だから!と自分を押し留めてくる、殺すつもりはなかったのだがどうやらダイ達を心配させてしまったらしい。
結末を述べてしまうとするならば、今回は互いの不幸な行き違いとロモス王の目が曇っていた事が原因と言う事で、ロモス王がダイと自分達へ謝罪する事で決着した。
更に、今回の件ででろりんへ授けられる予定だった、覇王の冠という秘宝までもがダイへ渡されるらしい。この王様みたいなのがタムリエルにも居たら、あの情熱大陸も少しは平和だったのだろうか。
問題はその後なのだが、今回の事態を招いたということで気絶していたでろりん達がひっとらえられそうになっていたのだが、さすがに気の毒に思えたので庇ってやる事にした。
ダイは納得いってない様子だったが、彼らの目は腐りきって無かったことと、挽回の機会を与えてやってほしいとロモス王へ伝える。ジェスチャーで。
無論上手く伝達いくわけがなかったのだが、途中から溜息と共に通訳してくれたダイによって、無事意思疎通は完了した。
ついでにお詫びとして、さっきまで振り回していた黒檀の両手斧を進呈する事にする。そこそこの示談金になってくれれば何よりだ。
デルムリン島 帰還初日
無事ダイ、ゴメちゃんと共にデルムリン島へ帰ってくることが出来た。
ふわふわのドレスは、似合っているからと言う事でロモス王から進呈されたのだが、正直家事に不向きなので家のクローゼットへ仕舞い愛用していたローブに近いモノを引っ張り出して着直す。
ダイは少し残念そうにしてたが、ああいうのは正直慣れないから着たくないものだ。ソレに今後も着る機会はないだろう。
後日、この考えがスイートロールよりも甘い事を思い知る自分であったが、この時は知る由もなかった。
ロモス王に示談金代わりに渡された黒檀の両手斧は、王様的には覇王の冠と釣り合うレベルではないにしても、結構驚きの一品扱いされたらしいよ。
別のDQ5モノと違い、こっちは基本原則ライトで優しく緩いノリです。
なので、シャウトぶっこんで魔族扱いされたり討伐されたりするTSドヴァキンはいないのだ。