社畜のおもちゃ箱   作:社畜のきなこ餅

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こっそりとTSドヴァキンさんを投稿するの巻


(TS)ドヴァキンさんの修行日誌

デルムリン島 修行生活二日目

 

 

 昨日は色々とバタバタしていたため書けなかったが、改めて日記執筆を再開する事とする。

 そんなワケで、今はブラス氏とダイに加え、島の魔物達を悪意から救ってくれたアバン氏と彼の弟子であるポップ君の為に朝食の支度中だ。

 

 メニューは、昨晩の残りであるビーフシチューを温め直したモノと、焼き立てのガーリックブレッド、島に自生している野草で拵えたサラダだ。

 材料は際限なしに突っ込んでいたっぽいおかげで、リュックの中から出し放題だから気が楽なものである。

 赤のラグナルをスローテンポ気味に鼻歌で唄いながら、鍋をおたまでかき回していると扉が開いたので、顔をそちらへ向けてみればダイ達が早朝の修行から戻って来たようだ。

 ケロっとした表情のアバン氏と比べ、ダイとポップ君は汗だくで息も絶え絶えだ、中々に扱かれてるらしい。

 

 アバン氏は二人に軽く汗を流す事を勧めると、自分に頭を下げて謝ってくる。食事の世話をさせている事が心苦しいらしい。

 気配りの出来る御仁なのだな、などと思い軽く笑みを浮かべながら、ジェスチャーで配膳をお願いすれば快く引き受けてくれた。

 そうやってテーブルにシチューの入った深皿と、小分けにされたサラダの乗ったお皿。テーブルの中央に山積みされたガーリックブレッドが用意された頃。

 腹ペコを隠そうとしていない少年二人と、ブラス氏が入って来たので朝食を皆で摂る事とする。

 

 

 昨日も食事に舌鼓を打ってくれたアバン氏とポップ君であったが、今日も美味しそうに食べてくれて嬉しい限りである。

 ダイとブラス氏も、今日のご飯も美味しいと言ってくれて何よりだ。

 時折、ポップ君の皿に自分の分のサラダをこっそり移そうとしているダイのほっぺを引っ張ってメッしつつ、皆綺麗に平らげてくれたので3人にお弁当を渡して修行へ出るのをお見送りした後。

 

 洗い物を手早く済ませ、晩御飯の仕込みを終えるとブラス氏に一声かけて秘密の鍛冶場へ向かう。

 作るモノは決まっている。

 初日にダイが折ってしまった、アバン氏の剣の代品と……ダイ達の装備だ。

 

 えっちらおっちらと山を登り、顔なじみの魔物達に手を上げて挨拶をしつつ到着したのは溶岩を引いて作った秘密の鍛冶場。

 まず作るのは、アバン氏の剣だ。

 見たところ、重装備で重い武器を振り回すタイプでもなさそうなので、ここは碧水晶の剣を作って贈る事にする。

 奮発しすぎかもしれないが……大事な息子の家庭教師代として差し出すのだ、手抜きはしない。

 

 研磨されたクジャク石、研磨された月長石、そして革紐をリュックから取り出し体に染み付いた作業工程が導くままに……。

 丹念に心を込めて、透き通るような碧色の刃を持つ一本の剣を作り上げ。

 更に、その剣を研磨台へ持っていき、研磨されたクジャク石を更に使用して作った剣を磨き研ぎ澄ませればあら不思議、レジェンダリ等級の碧水晶の剣の完成である。

 汗で体に張り付いたシャツの不快感も吹き飛ぶぐらいの、満足な出来である。空を見上げてみればまだ夕方まで時間もあるので、折角だし細工を拵えた鞘も用意する。

 

 

 そうやって作り上げた剣を背負い家へ戻ろうとすれば、森の中でポップ君とばったり遭遇。

 何やらしどろもどろになりつつ、弁解をしているが。どうも彼は魔法使いが故に、ダイが受けていた訓練は受けてないらしい。

 しかし、どこか後ろめたそうな表情もしてるので、ちょいちょいと手招きして屈ませた後、彼の頭を優しく撫でて上げる事にする。

 そして、頑張れと言う気持ちを込めて方を優しく叩き微笑みかけてみれば、何やら気合の入った顔をして明日から俺も参加するぞー!と叫んで走り出す。

 

 元気になってくれたようで何よりだ、自分の胸に視線が集中していたが年ごろの少年だししょうがないしょうがない。

 そう思いながら、未だ汗で肌に張り付いているシャツに覆われた自らの胸を持ち上げてふと気づく。

 

 自分の汗で、シャツが透けて乳首とか見えそうになってた。いかん失敗失敗。

 

 

 この日の晩御飯は、奮発してエルスウェーアフォンデュを振る舞う事にした。

 下ごしらえ済みの食材を、特製のチーズフォンデュに漬ける事で味わってもらおうという寸法である。

 そしてその目論見は、疲労困憊だったダイや、自分の胸元へ視線を吸い寄せられては気まずそうに目を逸らしていたポップ君ががっつく勢いで美味いと言ってくれたおかげで成功を収める事が出来た。

 

 のだが……。

 一口食べたブラス氏とアバン氏が、真顔になって思いきり焦ったのは内緒である。

 魔力が体から溢れそうなぐらいだと言われ、材料を聞かれたのでムーンシュガーを取り出して見せたところ、二人の真顔は硬直した。

 どうやら、月の魔力を吸い上げて作られる、エルダースクロール世界の調味料であるコレはこの世界では、精霊が作り出した食材とかそんな勢いのブツらしい。

 

 入手経路を聞かれたので、笑って誤魔化しておいた。

 

 

 

 

デルムリン島 修行生活三日目

 

 

 今日はとても危険な修行をするらしく、その承諾をアバン氏に頭を下げて求められた。

 あの飄々としたアバン氏が言うくらいだからよほどのモノだと思うが、まぁこの人ならば悪い事は無いだろうと思い笑顔で頷きつつ。

 昨日作った、レジェンダリ等級碧水晶の剣を差し出した。

 

 そうしたら、アバン氏が真顔になった。これをどこでと聞かれたので、ジェスチャーで自分が作り出した事を伝えた。

 その結果、ものすごい苦虫を噛み潰したかの様な顔で、決してその技術を人に見せびらかさないで下さいと懇願された。解せぬ。

 表情から察するに、勇者として活動してる間に人の醜い所もいくつか見てきているのだろう、故にこそ自分やダイを案じてそういってくれたのだろう。

 

 ならば、自分がする事は頷いてその気持ちに答える事である。

 自分の返事にアバン氏は真顔を解くと、何時もの飄々とした顔になりつつ……伝説の武器に匹敵するどころか、そのものかもしれない業物ですが良いのですか?とまで聞いてきたので。

 ジェスチャーで、貴方の為に作ったのだから受け取ってほしいと伝える。うまい具合に伝えられた自信はないが、なんとか伝わったらしい。

 

 

 

 そうして、今日も皆を送り出し家事と鍛冶に精を出していたところ。激しい地震により作業を中断させられてしまう。

 胸騒ぎを感じ、揺れが幾度も襲い掛かる中アバン氏達が修行をしているという洞窟へ向かって走るが、運の悪い事に鍛冶場は丁度反対側に会った事もあり……。

 

 

 途中で揺れが収まり、自分が駆け付けたその場所には。打ちひしがれた様子で泣きじゃくるダイ達がそこにいた。

 

 

 

 

デルムリン島 修行生活後1日目

 

 

 ダイから聞いた話によると、魔王ハドラーとやらが襲撃してきた事が原因らしい。

 アバン氏は弟子であるダイとポップ、そしてダイの保護者であるブラス氏を守るべく奮闘を重ねたモノの、碧水晶の剣による一撃は確かにハドラーを追い詰めたが……。

 それ以上にハドラーが強くなっていた事で不覚を取り、起死回生の道連れ魔法メガンテで対抗。しかしハドラーは首の皮一枚残す程度であるが何とか生き残ってしまい。

 

 そこでダイ達に襲い掛かろうとしたところを、額の紋章を覚醒させたダイによって見事に迎撃されて帰ったらしい。

 と言う事だけど、話の流れは大体合っているかと。目の前で包帯だらけのアバン氏に問いかけてみれば、軽い調子で笑われながらその通りだと言われた。

 気になったことがあったので、ダイとポップ君をブラス氏に任せ、自分は修行場周辺を探していたのだが……ものの見事に虫の息なアバン氏を発見。

 

 急いでポーションをぶっかけて治療をしたところ無事生還を果たしたので、事情聴取をしているところである。ジェスチャーで。

 なれば、皆に教えようとばかりにアバン氏の腕を引いて行こうとしたら待ったがかけられた。

 なんでも、非常に気が引けるし後ろめたいが……ハドラーの裏にいる大魔王への情報戦として、ここで死んだ事にしておいた方がきっと未来の為になるとの事である。

 

 

 個人的には、ダイとポップ君が打ちひしがれているから元気な顔を見せてやってほしいものだが……きりっとした真顔で言うものだから、こちらとしても都合が悪い。

 しばし互いに見つめ合う事数分、結局折れたのは自分の方であった。

 だがしかし、なれば徹底的にやってもらおうと思ったので。アバン氏の目の前でリュックから黒檀の鎧一式を取り出して手渡す。

 拾ったままリュックの中で死蔵してた一式だが、この鎧一式は顔も隠れるセットなので顔を隠して動くには都合がよさそうだと思ったのだ。

 

 押し問答になりかけたが、無理やり鎧一式と黒檀の剣、それにポーションを幾つか押し付ける形で決着する。

 鎧のサイズ調整程度なら、ある程度は融通が利くので設備もほとんどいらないから楽だったのもあるが。

 碧水晶の剣は、ダイがアバン氏の形見だと大事そうに抱えていた故渡せなかったが、アバン氏曰く。むしろダイ君にあげちゃいます、と軽い一言で決着だ。

 

 

 ジェスチャーで家庭教師代も兼ねていた事を伝えたところ、気まずそうに笑ってごまかされた。

 この男、割とモノに執着しないんだな、と言う事を今更理解した瞬間であった。

 




ハドラーさん、碧水晶の剣から放たれたアバンストラッシュでかなりやべー状態まで追い込まれた上に。
エルスウェーアフォンデュでMP自動回復が入ってた結果、ドラゴラムによる消耗が少なかったアバン氏にぎりぎり一歩手前まで追い詰められていた模様。
勝利の決め手は人質戦術だったそうです、さすがもと魔王。汚い。


『唐突なSKYRIM用語解説』

赤のラグナル:すっとこどっこいな吟遊詩人ソング、和訳が酷いからダメな歌になったんだと一時期言われていたが……。
 原語の時点で十分酷いと言う事が後程判明したという曰く付きの詩である。

クジャク石:SKYRIMでは、かなり素材レベルの高い素材で鍛冶スキルが高くないと加工できない。
 この素材が使われた武器防具は碧水晶の武具と呼ばれ、非常に美しく優美な武具となる。

エルスウェーアフォンデュ:高い魔力回復能力を持つ料理。
 素材がエール、ホールチーズ、ムーンシュガーという良く手に入りそうで意識して集めないと中々集まらない素材が必要な料理。しかし効果は抜群。

ムーンシュガー:月の光が溶け込んだ海水を、サトウキビが吸い上げる事で作られるという伝承が作中で存在する。
 カジートと呼ばれている猫人間種族の大好物だが、それ以外の種族にとっては中毒性の高い危険な調味料となる。
 これをもとに作られた、非常に危険で中毒性の高い麻薬すら存在する始末である。

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