アクセラレータは自室の前の階段の踊り場で幻を見たと思った。しかし何度見てもかつて彼と暮らしていたラストオーダーそっくりの少女だった。
彼女はとても退屈そうに踊り場から足を投げ出したばこを吸っていたがアクセラレータに気がつくとそれを慌てて隠した。
「こんにちは」
「やあお嬢さん。学校はどうだった?」
「相変わらず退屈よ。私の名前はエヴァよ、おじさんの名前は?」
「アクセラレータだァ。では良い一日を」
「ありがとう、アクセラレータ。バイバイ」
アクセラレータはエヴァの後ろを通り過ぎ自室のドアの手前で止まり振り返った。
「エヴァ」
「アクセラレータたばこ吸ってたことお父さんに言わないで!お願い、もうやめるから」
「・・・言ったら君の腕のアザが増えるからかァ?」
エヴァの腕には青アザがあった。
「・・・違うわ。これは階段からこの間落ちたのよ・・・約束してくれる?」
「ああ」
アクセラレータはそこで会話を切り上げて自室に入った。そしてすぐにドアノブの鍵穴をくり抜いて作った覗き穴で外を見る。
エヴァはまたたばこを吸い出した。だがアクセラレータのとなりの部屋の扉が開いた瞬間にタバコを踊り場から捨てた。部屋から三人の男たちが出てきた。
「いいか。明日の12時までに俺様のヤクとカネを見つけ出せ!さもないと分かってるな」
最初に出てきた男は金髪のオールバック姿の高級なスーツを着た中肉中背の30代くらい。彼はそれだけ言うと階段を降りていった。
「へい!承知いたしやした!」
次に出てきた男は小太りでスウェットを着た中年はひたすら低姿勢だった。
「オイ、あんまり彼を怒らせるな。これは親切で言ってるんだ、嘘なんかつくんじゃねえぜ」
三人目はガタイのいい27.8歳くらいのジャージ姿の男が小太りに顔を近づけて言った。
「・・・嘘なんかついていやせん」
「・・・チッ。後悔すんなよ」
そう言うとガタイのいい男は階段を降りていった。
小太りの男は二人の男がいなくなったことを確認し小さくくそっと言いエヴァの頭を叩いた。
「痛い!」
「宿題やったのか!?」
「うん」
「なら部屋の掃除しろ!それとたばこは吸うなって前に言ったろ!今度見つけたら半殺しだからな!」
「・・・はい、ごめんなさい」
そう言ってエヴァと小太りの男は部屋に入っていった。
アクセラレータは覗き穴を閉じた。
「俺には関係ねェ」
アクセラレータは仕事のカバンをダイニングテーブルに置いた。コートとニット帽を掛ける。コートの下には数々の暗殺器がぶら下がっていた。それを外す。窓から顔を出し、ベランダに出しておいた観葉植物を室内に入れる。アクセラレータのルーティンだ。それからソファに座り肘掛に拳銃を置いて電気を消して寝る。そんな生活を20年近く繰り返してきた。
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