ジョルノが4部に出るようです   作:アズマケイ

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メモリー・オブ・ジェット2

露伴先生が気づいた違和感を検証してみたところ、予想以上に事態は深刻だった。

 

「ダメでした、いつまでたってもこない」

 

僕は首を振った。ここまで乗り付けたタクシーに戻ろうとしたのだが、辿り着けないのである。どうやら屋敷から50メートル以内には一般人は辿り着けないようだ。もしもに備えて距離をおいたのだが裏目に出てしまった。諦めて帰ってきた僕に琢馬はそうかとだけ返した。

 

「やはりそうか......さっきから同じタクシーに住所を伝えているんだが、たどり着けないと気味悪がられてもうかけてこないでくれ、だとよ」

 

電話ボックスから出てきた露伴先生はどこか嬉しそうな顔をして答えた。どうやら僕が待機しているタクシーに辿り着けないことを見越して、タクシーから近づくように手配してくれていたらしい。

 

「僕達は今まさに怪談の最中にいるのだ......なるほど、こんな感じなのか......いいネタになりそうだッ!」

 

どこに忍ばせていたのか、メモ帳にざかざかと書き始めた露伴先生を尻目に琢馬はなにやら考え込んでいる。

 

「周りから見えなくさせる、から、隔離する、に強化されてるように思うのは気のせいか?ジョルノ。明らかに俺達は今、異空間に閉じ込められている」

 

「明らかに射程範囲が伸びている......あの時は突破できたから、また出来ると思い込んでいた......まさかこうなるとは」

 

「あれから4年経っているから......成長したのか?誰かが外に持ちだしたことは明らかなわけだからな。きっと驚いたに違いない......誰にも見つからないはずの遺体が発見されて、未解決とはいえ、事件になったわけだからな」

 

「そうですね。あれは事故だったことになっているから、時効はすでに成立している」

 

「その間に老夫婦は相次いで亡くなってるから訴える遺族はもういない」

 

「いない?」

 

「そう、いないんだ。もうこの世界のどこにもな」

 

「そうですか」

 

「ああ」

 

「......やはり警戒してスタンドが成長したのかな。スタンドは追い詰められると成長するものですからね。だいたい違法建築に時効はありません。時効というのは犯罪の証拠が時間とともに立証が難しくなるから存在するのですが、違法建築は建物が無くならない限り、その立証はできますから......」

 

「ああ、そうか、なるほど。去年から妹歯だかなんだかが似たような耐震偽造をやらかしているからな......業界全体が騒がしくなっている......危機意識を持ってもおかしくはない」

 

「んん?さっきから話をきいていれば、君は双葉さんの父親がこの現象の犯人だといいたげだな?」

 

「千帆も織笠花恵もスタンド使いじゃあないから、消去法だ」

 

「スタンドの矢が行方不明だからたまたまいられた可能性もありますけどね」

 

「たしかにそうだな」

 

「どうしていいきれるんだ?」

 

「僕達は似たような現象に遭遇したことがあるんですよ、露伴先生。その時は出られたんだ」

 

「たどり着けたのに出られない......こちらがメインの能力か?」

 

「おそらくは」

 

「ところでさっきから遺体がどうとか不穏な言葉が飛び交っているんだが教えてもらえないのか?」

 

しばし沈黙した琢馬だったが、散々迷ったあとで小さな声で呟いた。

 

「実は......まだ千帆との......その、関係に......許しをもらっていないんだ、先生......」

 

「おお、そうなのか。で?」

 

「今、アンタに明かすと......いつになるか......わからないから......」

 

「ああ、なるほど。すまない、僕としたことが迂闊だったな、将来有望な原作者の未来を閉ざしてしまうところだった。わかった、その口振りだと終わったら話してくれるらしいからな、いいとも。待っていてやろう。具体的にはいつくらいだ?」

 

「......そうだな......そこまで考えたことはなかったが......冬くらいなら」

 

「今年の?」

 

「今年の」

 

「おいおいおい、君はそれまで僕や双葉さんを待たせるつもりなのか?」

 

「............」

 

「ああすまない。彼女の父親に会うってことは、それなりに心の準備がいるっていうもんなッ!野暮なことを聞いてすまないね!」

 

「..................ジョルノ、よくこの人のアルバイトをしていられるな」

 

「僕に言われても困りますよ。この人は本当に時給がいいんだ。アルバイト求人の時給をみてため息をつかなくていいのは本当にありがたいんだ」

 

琢馬は小さくため息をついたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナイフに晒されながら双葉はオリカサハナエと数時間が過ぎていた。

 

「時間だけならたっぷりあるんだから、ちょっとお話しましょうよ」

 

オリカサハナエはブツブツと話し始めた。

 

不動産購入において欠陥物件をつかまないようにすることがとても大事だということは、論を待たない。どんなに立地や建物の仕様が気に入っても、住宅として機能しない欠陥物件であったら、購入後に思わぬ出費を強いられたり、物件を手放して借金だけが残ったりという、

 

悲惨な結果を招くことになりかねないからだ。残念ながら、投資対象となる住居用物件の中には、欠陥住宅と呼ばれるものも存在する。そこで今回は、欠陥住宅を避けるために、内覧時に欠陥を見抜くポイントについて教えてあげるわ、とオリカサカナエは双葉にいった。

 

欠陥住宅とは、建物の種々の欠陥や不具合により、住居として最低限備えるべき重要な機能・性能を有しない住宅を指す。具体的には、雨漏りや床の傾き、壁や柱の傾斜、基礎の陥没、気密・断熱・通気性の不良などで、私たちの目に見えるものも見えないものもある。

 

住宅とは、人の居住を目的とした建築物であり、居住者を暑さや寒さ、風雨、騒音などの外的環境から守り、快適に過ごせるものでなければならない。こうした目的を果たせないものは、すべて欠陥住宅に該当すると言って良い。

 

欠陥住宅が広く認知されるようになったのは、1995年に起きた阪神・淡路大震災。震災の死亡者の9割近くが、建物倒壊などによる圧死であったと言われている。「倒壊した建物の多くは、建築基準法などが定めた安全基準を満たさない欠陥住宅だったのではないか」という考察と調査結果から、建物の安全性や欠陥住宅に関心と注目が集まるようになった。

 

それ以来、建築物の安全性に対する目は厳しくなった一方で、かつて世間を騒がせた耐震強度偽装問題のように、「安く、早く」を求める発注者と、設計・施工者によるずさんな施行管理や手抜きが原因で、見えない所に重大な不具合を抱えた欠陥住宅は存在し続けている。

 

消費者や投資家は、こうした欠陥住宅を購入しないよう、物件を見る目を養い、自らを守るより他に方法ないのが現状だ。

 

「知ってる?双葉千帆さん。欠陥住宅ってね、時効がないのよ。証拠は残るから」

 

双葉はにわかには信じられなかった。一級建築士である父親が欠陥住宅を売りさばいていて、その口止め料として目の前の女性が愛人で、嫌がらせしているのを黙認しているだなんて。

 

「欠陥住宅を見抜くポイントを今から教えてあげるわ。一番手っ取り早い方法は、実際に物件を内覧した時に直接チェックすることなのよ。ほら、たちなさい。私がわざわざ教えてあげるんだから」

 

 

 

ビー玉やピンポン玉を床の真ん中に置いて転がらないか。転がれば、床に傾斜がある可能性がある。

 

水の入ったペットボトルやコップを床に置いてみて、振動がないか。水面の揺れがあれば、耐震性に問題がある可能性がある。

 

建具や柱に、水平器や重りをつけた糸など垂直なものをあてがい、ズレなく垂直に重なるか。水平・垂直にズレがあれば、建物にゆがみが生じている可能性がある。

 

床を隅々まで踏んで歩いてみて、フローリングの浮き沈みや感触の違和感がないか。不自然な沈みは、土台や基礎などに陥没や腐敗が起きている可能性がある。

 

部屋の隅やクロス・木製建具にカビや黒ずみ、水の浸みた跡などがないか。該当箇所があれば、雨漏りや水漏れ、結露の可能性がある。

 

窓や戸がスムーズに開閉できない。建物全体のゆがみや、取り付け不良の可能性がある。

 

窓や戸を閉め切った時に、妙な匂いがこもらないか。薬臭さやカビ臭さがあれば、建材やのり・塗料などにアレルギー物質や有害薬品が使用されていたり、見えない部分にカビが繁殖していたり、腐食していたりする可能性がある。

 

収納部分や小屋裏などに、手抜き工事がないか。表から見えない部分に手抜きがあれば、他の部分にも重大な欠陥がある可能性がある。

 

自分で出来る検査は全て当てはまってしまった。

 

「ここはね、あなたのお父さんが私にくれたのよ。効率いいわよね、一番欠陥が多くて売れないからくれたのよ。私が文句言えないと思って。ここほどじゃあないけど、あなたのお父さんはたくさん売りさばいていたのよ。どんな気分かしら、そのお金で生きてきた気分は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

殺意のない隔離空間ほど困るものは無いと純粋に僕は思う。今までの敵はまさしく殺意でもって僕に立ちはだかってきたし、それを退けるには戦うしかなかった。だが今回のスタンド使いは一般人にしかこの能力を使ったことはないはずだ。

 

 

おそらくは特定の場所に人間を近づけさせない能力。 指定した場所は周囲の人間の方向感覚がおかしくなったかのように、視界から消え去ったかのように不思議と誰も近づかなくなってしまう。

 

「ある人間のいる場所」を指定すれば他の人物がどれだけ望もうとある人間に近づくことはできなくなる。 本体が特別に指定した人物は近づくことができるようになるほか、琢馬がいうには鼠などの小動物には影響しないスタンド。

 

一般人に対して殺意を持って使用すれば直ちに死なせることは出来なくてもいずれは死なせることが出来る能力だ。それよりも誰にも見つからない、隠して置ける、これが本命だろうか。

 

隔離するだけだから、酸素はあるし、監禁場所によっては私生活も困らないに違いない。本人が世話を焼いてやれば餓死はしない。だが一度も世話をやいてやらないとしたら。

 

「人間は食べ物を食べずに2ヶ月の間生き続けることができるらしい。水がなければ1週間もあれば死ぬが」

 

琢馬はスタンドを発動させるまでもなく、すらすらと知識を披露し始める。自分の母親が餓死で死んだのだ、どのように死んだのか知りたかったに違いない。世間話でもするみたいに告げるのだ。

 

人の身体は通常の空腹状態を過ぎると、脂肪を燃やし始め、ブドウ糖を作り出す。体ができるだけブドウ糖の燃焼をしないようにし、通常状態の体を、必要な分だけブドウ糖を生成するようにするのだ。平均的な人では、空腹を感じたり不機嫌になる前に、ブドウ糖の燃焼によって6時間保つことができる。

 

 

それも使い切ると、今度は脳がブドウ糖の消費量を減らす。いわゆる脂肪燃焼だ。脂肪燃焼は数日から2週間つづき、肝臓が脂肪酸を代謝し、ブドウ糖に変わり主要なエネルギー源となる。この化合物は、3つの違った水溶性体となり、肝臓から心臓と脳に送られる。

 

最終的には体内のプロテインを消費し始める。その結果急激に筋肉が衰えはじめたり、体の機能が低下していく。ここまで来ると自分の体を食べて生き延びているような状態で、最後が近づいていると言えるようだ。

 

食べ物なしでも最大2ヶ月は持つ。医学的に言えば、飢餓は体が充分なカロリーや栄養を取り入れていない時に起こる。飢饉や貧困から引き起こされることもあれば、医療のために自発的に飢餓状態になることもある。生物学的飢餓は、どんな原因があるにもかかわらず同じプロセスを踏む。本当にそのプロセスは同じなのだ、残酷な程に。

 

「酸素がないために死に至る時間は、5分から10分。水がない場合は、2日から最大で7日持つと言われている。状況にもよるが食べ物なしの場合は最大で2ヶ月持つと言われている。どれが残酷なのかは、希望を持っていられるだけ絶望が深まるのだから間違いなく後者だろう」

 

「わからないのは、双葉さんの父親が矛盾しているということだな。愛人と仲違いして監禁するならまだわかるが、オリカサハナエは自分からここに来たんだろう?それに双葉さんまでいる可能性があるなんて」

 

「千帆の父親は孫を見るのが夢だそうだから、一人娘を溺愛している。離婚した場合高確率で母親に親権が行く日本においては珍しく父子家庭だ」

 

「そうなのかい?ならますますわからないな......スタンド使いとはいえ双葉さんの父親のスタンドの使い方はちゃちだが、実に共感できる使い方だ。しかも現時点では犯罪に問える要素がひとつもない」

 

「被害者が勝手にその空間から出なかったからな。認知症、錯乱状態、いろんな理由を後付けされて不幸な事故死と認定される」

 

「そう、それだ。なのに今回はあまりにも矛盾しているぞ?」

 

琢馬はたんたんと屋敷を睨みつけている。

 

「どうします?今回の件は君がなにをすべきか決めるべきだ」

 

長い沈黙だった。

 

「ジョルノ」

 

「はい」

 

「ここに電話をかけてくれ。先生でもいい」

 

琢馬はメモにボールペンで走り書きをして渡してきた。

 

「いや、僕はやめておこう。万が一双葉さんの父親が僕のことを知っていたら、あらぬ誤解をされる必要があるからな。僕はここにいなかった、それが一番いいに決まっている」

 

「そうですか、なら僕が」

 

「今、まさに繰り広げられている昼ドラも真っ青はちゃちな展開がスタンドをまぜたとたんにミステリ帯びてくることを僕はなんとしても書き留めなければならないんだ。これは義務だ、僕の漫画家としての!」

 

「......俺は千帆のところにいってくる」

 

「よし、僕も同行しよう」

 

「..................わかった」

 

「ちなみに僕はなんていえばいいんです?」

 

「今起こってることを伝えるだけでいい。それだけで千帆の父親はとんでくるからな」

 

「なるほど......蓮見くんは次の犠牲者が自分にならないように上手くたちまわるわけだな。好感度を稼ぐことは大切だ。頑張れ」

 

「..................」

 

僕は思わず笑ってしまう。ばつ悪そうに僕を睨んだ琢馬だったが露伴先生が早く行こうと急かすものだからため息混じりに行ってしまった。

 

一人残された僕は電話ボックスに入り、入口を閉め、10円玉を入れて電話をかけ始める。呼び出しコールは数回。

 

「もしもし、双葉ですが」

 

どこかイラついている様子の男の声だった。おそらく早く愛人が餓死してくれと祈ってやまない、それでいて双葉千帆が死ぬことを仄めかされて警察にも相談できずいらいらしている声だ。

 

「オリカサハナエが双葉千帆を別荘に監禁している」

 

「なんだって?今なんて?」

 

「オリカサカナエが双葉千帆を監禁している」

 

「君は一体誰なんだ?なぜ知っている?ハナエの愛人か?」

 

「オリカサハナエは双葉千帆と餓死しようとしている」

 

「..................ッ!??」

 

壊れた機械のように僕は繰り返した。しばらくの沈黙の後、電話はきれた。叩き切られたといっていいかもしれない。僕は電話ボックスを出て屋敷に向かうことにした。

 

屋敷に入るとドアは空いていて、廊下には誰かが争ったような後があった。

 

「......なにしてるんです?」

 

血だらけの包丁が転がっている。傷だらけの双葉を抱き抱え、琢馬は遅かったなと無機質な目を向けた。僕が聞いたのは、全身じゃばらおりのオリカサハナエを一心不乱に読みあさっている露伴先生だ。

 

「すごい、すごいな......ここまで男を金に変えることに全人生を捧げてきた女を僕は見たことがないぞ......!」

 

どれを切り取って持ち帰ろうか露伴先生は本気で悩んでいるようだった。なにを書き込んでいるのかと思ったら、ここの乱入事件についての記憶を忘れるとあった。攻撃できない、は一般人だから書く気もないらしい。

 

「双葉さんを散々苦しめた女だ、何かリクエストはあるか?」

 

露伴先生なりの報酬らしい。琢馬は首を傾げる。

 

「ああそうか、言ってなかったな。僕は今君が言うことをこの女に実行させることが出来るのだ。この漫画を見せることでな。おっと、今、みるんじゃあないぞ。完結してない恋愛漫画は趣味じゃあないんだ」

 

「..................僕と千帆に近づかない」

 

「そんなんでいいのか?近づいたら交通事故とか双葉さんに遺産を残すと遺言を残して焼身自殺とかでもいいんだぞ?ここにくるまでだいぶん僕はイラついているからな」

 

「......なら、僕と千帆に近づいたら自殺する。遺言とかはいらない」

 

「いいだろう、これが僕の報酬だ。いいものを見せてもらった!」

 

きっとこれから来る双葉の父親も同じ目に会うんだろうなと思った。もちろんその通りになった。

 

「ごめんなさい、琢馬先輩......汐華君......岸辺先生......ありがとうございました」

 

さすがに憔悴している様子の双葉は帰りたくないようで、このまま琢馬の家に泊まるらしい。僕は露伴先生とタクシーに乗り込むことにしたのだった。

 

オリカサハナエが突然行方不明になったらしいが僕の関知するところではない。

 

 

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