足で大きくブランコを一振りするたびに軋り音は、たえず歯ぎしりのようにきいっ、きいっ、きいっと金属のこすれあう規則正しい音がする。揺れるブランコの後ろに立って、子供の背中を一定のリズムで押し続ける錆びた鉄のぶらんこが揺れる音だ。
小学生達がランドセルを近くの長いベンチに置き去りにして、どちらが遠くまで靴を飛ばせるのか競っている。昨日まではどこまで遠くにジャンプできるか競争していたらしいが、ひとりが足を踏み外してコケてしまい、ブランコが直撃してからはもうやらないことになっていた。
通りすがりのリーゼント高校生が痛いの痛いの飛んでいけで、本当に怪我も傷もたんこぶも痛みまでも飛ばしてくれなかったら、きっと大変なことになっていたに違いなかった。
きっと今日も会えるだろう、と小学生達は考えていた。この間、他の学ラン姿の友達とゴミ箱をひっくりかえしたり、仕分けしてニヤニヤしたり、喧嘩したり、よくわからないが楽しそうに去っていったから。改めてお礼を言おうと考えていた。
ここはS市の市街地から近距離ながら、自然林や人工林に囲まれた緑豊かな大規模な公園だ。
美しく手入れされた近代庭園やスイレンが咲く大池、森林浴ができる園路、彫刻を眺められる広場など、まるで森に迷い込んだかのような景観が広がる。子ども連れにはうれしい、フィールドアスレチックも完備。遊具はローラー滑り台やつり橋、ロープ縄でできたアスレチックなどが一体化したコンビネーションタイプ。自然の中で元気いっぱいに遊びたい子どもが一日中自然の中で思いっきり遊んでリフレッシュしたい時におすすめの公園でもある。
広場を囲んだ樹々が太陽の日差しを受けてきらきらと立っている。5月に入り、暖かくはなってきたが夏はまだ遠い。公園の樹木の枝が影を作り、そこはまだ肌寒く感じる季節である。潮が満ちるように賑やかさの始まろうとしている。
そのアスレチック広場から少し外れると遊歩道があるのだが、公園の薄暗いトイレは、壁は落書きと蜘蛛の巣で汚れ、小便の匂いが鼻につく。近くには水銀灯が一本高く立っていて、その明かりが犯罪を防ぐために隅々までを照らす設計になっている。その奥の雑木林がセットになっており、芝生を縁どる散歩道では、ホームレス達は、朗かないびきをあげて眠っていた。
ちなみに思いっきり走り回れる広々とした芝生広場や花壇の花々が美しい池はそのつっきった先にある。
本来ならホームレスたちがコソコソしている程度で、静かなはずの遊歩道で、一人の中学生がうずくまっていた。七色に変わっていくコンクリートに、さっきからジャララララララと古びた音がたくさん鳴り続けている。リレー競争のバトンみたいに目まぐるしく、たくさんの小銭がその中学生の前に山積みになっていくではないか。
塵も積もれば山となる。濡れ手に粟を掴むように、まさに彼は今、ボロ儲けしているのだ。こないだ唸るほどの大金を逃してしまったために、余計に気合いが入っている。
「にしししっ」
小銭が貝殻の裏のようにきらきら光る。どれくらい溜まっただろうか。眼の飛び出るような大金になっただろうか。気がせいてしまうのは、こないだ500万円なんて大金の小切手を見てしまったからにほかならない。入れ物の中のお金が水から上がったばかりの魚のようにイキイキと躍動していた。
かたちのあるもので、お金を積んで買えないものはあまりない。だから少年はお金を貯めるのだ。
いれずみのような十円。茶色い五十円。錆びまくっている五百円。しっとりとしている一円玉。青いカビのはえた見たことがないコイン。
よく見ると全ての硬貨には、虫のような不気味な造形の生き物がいる。四方八方からわらわらと集まってくるではいか。
「んんー?見たことないお金だどー?もしかして、昔使ってたお金ってやつかなあー?おっ、こっちは穴が二つあるど!これは価値がありそうだあー!」
ニコニコしながらジャラララと小銭を容器に入れていく。どんどん増えていくお金を後で選別して骨董商をやっている知り合いのお兄さんに売りに行かなくてはいけないと少年は張り切っていた。
「みんなこの調子で拾ってきてねー!しししっ、いちまんえん位にはなったかなあー!数えるの楽しみだなあー!」
あまり賢そうではない顔つきをしている少年は、ぶどうヶ丘中学の制服を着ていたが、明らかにサイズが横にあっていなかった。ゆうに100キロは超えていそうである。足元で無数に蠢く生き物たちに囲まれて間の抜けた笑い声を上げた。
彼の名前は矢安宮重清。通称重ちー。彼はハーヴェストという無数の昆虫に似た群生型スタンドの使い手である。社王町中から硬貨という硬貨を拾い集めている途中だった。
「五百万円は仗助たちと三等分になったけど......やっぱり......やっぱり!おらが一人で集めたお金は、おらのものだど......!」
ここまで言ってから、キョロキョロと重ちーはあたりを用心深く見渡した。見知った顔がいないことを確認するなり、ほっと息を吐いた。なんのために場所をいつもの場所から変えたと思っているのだ。仗助たちに見つからないよう、またこっそり集めているところだったのだ。居場所がバレたら意味が無いではないか。
今はおそらく十万円くらいだ。毎日集めたら何日くらいで五百万円になるだろうかと考え始めるが、両指を超えたあたりから数えるのが面倒になったのか幸せそうな顔で笑った。誰がいる訳でもないが誤魔化したとも言う。
容器いっぱいに硬貨を敷き詰めていた重ちーはいつもと違う感触に手を開いた。その拍子に指の間からたくさんのお金が転がっていく。ハーヴェストたちは直ぐに山の方に戻してくれた。
「うわわわわ、まあたお金が曲がってるど......」
そこにはぐんにゃりと曲がっていたり、ドロドロにとかしてまた固めたり、変な形をした硬貨がたくさん固まっていた。
「ううーん......最近多いなあー。困るど......お金はぐちゃぐちゃになってたら銀行も骨董屋の兄ちゃんも受け取ってくれないのに......」
ため息をついた重ちーはどうしようかなあとほほをかいた。ここのところ、破損した硬貨が多いのだ。この国ではお金を傷つけることは禁じられているため、重ちーがわざとやったと言われたら困る。
「......うーん......うん?」
重ちーはハーヴェストたちを見ていて、ふと気づいた。
「どーしたんだど......それ......痛くない?またいじめられたんだど?」
ハーヴェストはスタンドだ。スタンド使いにでも見つかって攻撃でもされたのだろうか、と重ちーは何体かのハーヴェストを手にした。
「酷いやつもいるもんだど」
幸いハーヴェストは数が多すぎてちょっとやそっとの個体を破壊されたところで重ちーにフィードバックはない。だが歪んだ硬貨が増えるにつれて、そこにいったハーヴェストがこうして傷だらけになったり、穴だらけになったり、ドロドロになったりすることが増えてきた。そこにたくさんのお金があり、壊しているのはわかっていたが重ちーはよくわからなかった。
「うわっ、わわわっ、ハーヴェストが溶けてるううっ!?」
重ちーを取り囲んでいるハーヴェストのある地点に凹みが出来たかと思うと、お風呂の栓でも抜いたかのようにハーヴェストが次々と消えていくではないか。ハーヴェストたちは驚いて逃げ惑い、あっという間に溶けていった個体たちのいた場所はなにもいなくなった。
「......?」
そこにあるのは、ドロドロに溶けかかっている五百円玉。重ちーは恐る恐るそのお金を拾い上げた。チクッとなにかが刺さる気配がした。痛いと五百円玉を投げた途端、重ちーは目を丸くする。
「うわあああっ!?!」
重ちーの悲鳴が上がった。なんと指先がないのだ。手がないのだ。現在進行形で腕がどんどん溶けているのである。
「だ、誰かっ......仗助っ、仗助えええっ!」
とっさに仗助のクレイジーダイヤモンドが脳裏をよぎった重ちーはぶどうヶ丘高校に行こうと走り出す。その間にも溶解は進み続けていた。このままでは死んでしまう。どうしてこんな時に限っていつもの場所から移動していたのかと、重ちーは本気で後悔していた。
「大丈夫ですか、矢安宮君?!」
「あっ、ジョルノっ、ジョルノー!仗助呼んでほしいどー!助けてー助けてえ、オラ死にたくないいっ!!」
たまたま通りかかったのだろう季節外れの転校生を見た時、重ちーは助かったと思った。ジョルノは仗助や億泰と仲がいいのか、よく一緒にいるところを見たことがあったのである。
「わかりました、わかりましたから落ち着いてください、矢安宮君!僕は仗助先輩と違って治せませんからすっごい痛いですが、我慢してくださいね、死にたくないでしょう?」
「!?!」
「ゴールド・エクスペリエンスッ!!」
ジョルノの後ろから金色のテントウムシをモチーフにしたと思われるスタンドが現れたとき、重ちーは驚きのあまり反応が遅れた。ゴールド・エクスペリエンスと呼ばれたそれは、重ちーの肩まで溶解しかかった腕から何かをとる。重ちーの溶解が止まるが、どろりとジョルノの指先が溶け始めたではないか。
「うわわわわあ───────ッ!ジョルノ、ジョルノが溶けちゃうどー!そんな、どうしよう、オラのためにッ!?!」
「大丈夫です、死ななきゃ安い」
ジョルノは驚くほど冷静にスタンドの手の中にあるものを見つめた。
「ゴールド・エクスペリエンス」
その小さな針が蛇に変わる。そしてジョルノは惜しげも無くその牙に指を突き立てた。僅かに眉が歪むがそれだけだ。よし、とだけ言ったまま、ジョルノはその蛇を重ちーに投げつけた。
「うぎゃあああっ!?!」
「安心してください、これでスタンド毒は解毒出来たはずです」
「な、なななななっ!?」
「空条さんに話を聞いていてよかった......運がいいですね、矢安宮君。君は運がいい。その幸運に感謝すべきです。僕のアルバイトの帰りが遅かったら、君は今頃煮凝りになっている」
「わ、訳わかんないこといってないでとってー!蛇とってほしいど、ジョルノおおっ!」
「ああ、すいません。さすがに解除は出来ないので......そうだな......これでいいか」
飲みかけのペットボトルを捨てて、ジョルノは蛇を中に入れてしまった。ほっとしたのか、ズルズルとその場に座り込んでしまった重ちーに、ジョルノは近づいた。
「だいぶやられましたね、矢安宮君。大丈夫ですか?」
「大丈夫だけど大丈夫じゃないど......でもありがとう」
「お礼はまだいいですよ」
「へ?」
「ちょうどいいから、僕がまた腕をつけてあげますよ。仗助先輩の家までは遠いですからね、さすがに目立っていけない」
「ほんとに!?ほんとに腕つけられるんだど!?!ジョルノすごい!」
「まだ実験中なんですけどね、大丈夫ですよ、きっとね。僕自身でやったことはなんどもあるので」
「なら頼むど!」
「さっきも言いましたけど、僕は治すんじゃあない。もう一回埋め直すんだ、しかも麻酔なしで。物凄い痛いですよ」
「えーっと、どれくらい?注射?」
「もっとかな」
「じゃあ......億泰のパンチ?」
「もう一声」
「まさか仗助のパンチ?」
「ラッシュくらいは覚悟してくださいね」
「や、やっぱり仗助に直してもらいたいど......」
「やだなあ、僕達同じ中学の仲じゃあないか」
「ジョルノ目が怖いど!笑ってない!」
「本人の合意を得て出来るなんてめったにないんだ、さあ、こっちに来てください。男に二言はないでしょう?」
「うわああああ───────ッ!!」
重ちーはもう二度とジョルノに治療されたくないと思ったのだった。
「体が馴染むまで時間がかかりますし、これがなんなのか、少し話をしましょうか」
「ううう......痛すぎて頭に入らないど......」
「そんなに?それは大変だな、痛み止めでもします?」
「そ、それはもっと嫌だど......ジョルノ、また蛇出してくるど......!」
「よくわかりましたね」
「やっぱりいいっ!」
「なら我慢してください。男でしょう、アナタ」
観念したかのようにがっくりと肩を落とした重ちーは、自分の片腕を持っていかれたスタンドについて聞くことにしたのだった。
「ついこの間、この街にスタンド使いを増やしていた音石明ってやつが捕まったんですがね、そいつ、遊び半分でドブネズミにもスタンドを付けてしまったんですよ。仗助先輩たちが既に回収したらしいんですがね」
たちが既に回収したらしいんですがね」
「そうかあ......でもみんな捕まったならよかったど......パパやママが酷い目に合わなくてすむど」
「そのはずだったんですよ、今日までは」
「今日?まさかまだドブネズミがいたんだど?」
「そのまさかです」
「なんだってー!?」
ジョルノはそのスタンドの凶悪性は既に体感したはずだと重ちーに告げる。「毒針」で攻撃し、それを掴んで調べようとしただけで、手をドロドロに溶かしてしまうというのだ。
「動物ってのは基本三大欲求しかないから、遠慮なくスタンド能力を使ってしまいます。人間みたいにタガがないから厄介だ。しかもスタンドのせいで知能が飛躍的に上がってしまうらしくてですね」
その性格は極悪そのもの。「自分のナワバリにいる者は人間だろうが仲間だろうが皆殺し」「てめーさえよけりゃあいいという…もはや、この地球上に生きてていい生物じゃあないなこいつは…」と仗助と一緒に交戦した人が評するほど残忍かつ狡猾で本能的。
スタンドで溶かした肉塊を冷蔵庫に入れ保存食にする。本来ネズミは行うことのない、同じ足跡を踏んで元来た道を戻る動きで追跡を撒く。仕掛けられた罠を持ち去り、逆に仕掛け返す。自身のスタンドが撃った毒針を岩に当てて跳弾させ命中させる。自身の残した痕跡を計算に入れた上で、スタンドの特性を発揮しやすい位置に、追跡者を誘い込む。など枚挙に暇が無く、ネズミの習性を熟知している人達を翻弄した。
本体の精神力により千差万別の姿や能力になるスタンドの中で、全くの同型・同能力という異色のスタンド。姿は4脚に支えられた大きな頭部に巨大な単眼を備えた小型ロボットのような外見をしている。ネズミが発現した割にはメカっぽい。
その能力は、スタンドさえも溶かしてしまう「毒針」を発射する長射程の『固定砲台』で、能力を使う際は大きく反転して逆側に備え付けられたロングバレルの砲身が標的に向けられ、後側に回った単眼の様に見えるものはターゲットスコープの役割を果たす部分となる。針の射程距離は5m以上。ちなみに脚に見える部分はスタンドを固定する台のようなもので、スタンド自体が移動する事は出来ないようだ。
スタンド能力の根幹となるその「毒針」の性質だが、これは対象を瞬時に死へ至らしめるものではなく、着弾した瞬間に 『スタンド毒』 とでもいうべきもので侵し、そのものの中身を徐々に溶かしてしまう。毒針に触れたものは生物でなくとも溶かすことが出来る。5~6発被弾させれば人1人程度なら容易にドロドロの肉塊に出来る。なお、溶かしたものを煮こごりのように固めることも可能。
「しかもネズミはスタンドがそれぞれ特徴が微妙に異なってるんですよ」
3~5発のバースト射撃、跳弾や偏差射撃も可能。射撃の際はスコープを覗く必要な個体。単発式、若干宙に浮いてる。スコープを本体が覗かずとも自動発射可能な個体。
「問題はここからです。遺体を回収したはいいんですが、オスとメスだってことがわかった。しかもそいつらはつがいだった。つがいでスタンドを持った自分たちは他のネズミとは違う!という意識があったみたいですね。食物連鎖の上位生物である人間を食う立場になろうとしてあそこまで狂暴になったのかもしれないそうです。あのまま自分たちの子孫を増やして遺伝でスタンドネズミを量産し生物界の頂点目指したかったのでは、という疑惑が持ち上がったころ、出産の形跡があった」
出産の言葉に重ちーはざあっと血の気がひくのがわかった。
「スタンドというものは、誰かが覚醒すれば親近者も覚醒する可能性があるそうです。でも動物にもその可能性が適応されるのかわかりませんでした、この瞬間まで。でもアナタのおかげで残念ながら適応されることがわかった。しかもアナタの証言によれば随分前から歪んだ硬貨や溶けたハーヴェストがいたという。なら、答えはひとつですね」
重ちーは悪寒が止まらない。知らなかったとはいえ、自分の最愛の両親も被害に遭うかもしれない危険なスタンド使いの存在に気づいていながら、深く考えたり調べたりしなかったことを。そのせいで地球上に存在してはならない悪魔のような存在がこの街に増殖しつつある事実に。
「......なんてことだ、なんてことしてくれたんだ......音石明......!」
ジョルノは静かに憤りを感じていた。そこにあるのは穏やかさすら感じる冷徹な怒りだった。
「嫌な予感はしていたんだ......サクラにスタンドの矢を撃ち込むようなやつが、ずっと黙っていたようなスタンド使いだ......おかげで被害が拡大している......」
「何匹......何匹いるんだど......この街に......その虫食いの子供たちは!ジョルノ!」
ジョルノは淡々と事実を述べる。音石がドブネズミにスタンドの矢で貫いた時期がそもそもの問題だったのだと。
かつての日本家屋では、天井に営巣するクマネズミと、台所や下水道に穴居するドブネズミが、生活の場を棲み分けていた。ハツカネズミは、もともと他の2種と比べると少ない。その後、第二次世界大戦後の都市化とともに、地下街や下水道など湿った場所を好むドブネズミが勢力を伸ばしたが、1970年ごろからの高層ビル建築ラッシュとともに、乾燥した高いところを好み登攀力に優れ、配管等を伝ってフロア間を自由に行き来することができるクマネズミが目立ち始めた。
現在、家の屋根裏に生息するのはクマネズミであるが、近年は再開発の影響で地中に生息しているドブネズミがすみかを追われて都心に出てきており、渋谷や銀座の繁華街では、ドブネズミも頻繁に見られるようになった。
「街の中に......!」
ぞぞぞっとしたのか、重ちーは制服を握りしめた。
「虫食い達は農家をテリトリーにしていたが、自分が一番という思想です。自立した瞬間に子供たちは敵となる。追い立てられたに違いない」
本来捕食者となるはずのネコ・イタチ・フクロウ・ノスリ・アオダイショウなどから逃げるため、子供たちは天敵が少ないこの街に逃げ込んだ。そうジョルノは考えた。ハーヴェストが社王町限定のスタンドだからまず間違いないのだ。
いつの間にか家の中に密かな気配を感じさせ、夜中には天井裏で運動会を始めるねずみ。ねずみは人のいない時間帯や人のいない場所を狙って行動しているため、家の中にいても気づきにくく、増えてからねずみの発生が発覚することもある。
ねずみは繁殖力に優れており、個体自体の寿命はそれほど長いわけではないが、短い寿命の間に異常な繁殖力で数を増やしていく。寿命は短いものの、生存期間の多くが繁殖期間となっており、短い妊娠期間を経て一度に多くの子供を産む。ねずみの種類別では、クマネズミやドブネズミは寿命が3年ほどで、生後3ヶ月くらいから2歳くらいまで繁殖が可能。つまり、音石はたまたまその番を矢でいってしまったのだ。
早い時期からの繁殖開始と短い妊娠期間によって、ねずみは脅威のスピードで繁殖を進めていく。そもそもねずみの異常な繁殖力は、野生動物としての種の保存に関係している。捕食される側になりやすいねずみは、異常な繁殖力をもって捕食し尽されるのを防いでいる。
ねずみは野生の世界では捕食される側として弱い立場だ。たくさんの子を産むことで種を維持している。そのため、絶えず妊娠と出産を繰り返すスタイルを取っており、特定のシーズンに発情期を迎えることはない。1年中が繁殖する時期なのだ。
「間の悪いことにドブネズミの繁殖のピークは、春と秋なんですよ」
「じゃあ......どうやって捕まえる?」
「ねずみの活動時間は日没直後と夜明け前がピークとなり、昼間はあまり活発に動きません。ねずみの存在に気がつくのが夜なのも夜行性の動物だからです。悪いことは言わないから昼間の方がいいですよ」
ジョルノはため息だ。
「ドブネズミは妊娠期間が20~21日、1回の出産で7から9匹程度を生み、1年で5、6回くらい妊娠します。つまり、1年で大体30匹以上繁殖可能ということです。死者とか被害がやばいことになるな、間違いなく」
ねずみは見た目以上に警戒心が高い。だから、警戒モードになったら先ず「見つからない」と思った方がいい。本当の油断が来るまで耐えるしかない。ジョルノは空条さんも回復役の仗助先輩が居たからこそ攻略出来たけど、一人で虫食いを攻略するのは非常に難しいと考えていた。
「ほっとけば一年ほどすれば勝手に寿命で死ぬが、孫にまで発現したら目も当てられない」
これアンジェロよりやばいんじゃないか?とジョルノは言いながら気づいてしまう。ネズミのスタンド使いが鼠算式に増えまくって親二匹が人間の煮こごり生成。子ネズミの能力が煮こごり生成に近い能力にでもなってみろ。マンションとか集合住宅に住まれでもしたら一瞬でネズミの国が出来るじゃないか。
「毒針を防ぐことができる。本体を見つけだすことができる。本体に攻撃を当てることができる。これをスタンド一体で賄うのは大変です。人を呼んだ方がいいですね」
そうだ、とジョルノは重ちーに聞いた。
「明日、学校サボりませんか?ねずみの駆除は予防と同時にしなくちゃあいけないからな」
「わかったど!」