エジプトの至高、ファラオの黄金のマスク、ついにS市へ!国立カイロ博物館所蔵黄金のファラオと大ピラミッド展。5月22日から6月26日まで。
エジプトの巨大なピラミッド群は、約4500年前のエジプト古王国時代のファラオたちによって建造されたもので、その美しい姿はいつの時代も人々を魅了してきました。
謎に包まれたピラミッドとファラオをテーマとする本展では、吉村作治氏の監修のもと、世界一のエジプト・コレクションを誇る国立カイロ博物館の至宝約100点を展示するとともに、高精細な映像も駆使してファラオや王家の女性、ピラミッド建設を支えた人々の暮らしなどを紹介します。
歴代ファラオの像や、3大黄金のマスクの一つと言われる「アメンエムオペト王の黄金のマスク」、美しい彩色がされた「アメンエムペルムウトの彩色木棺」など第一級のコレクションを展示します。
料金は以下の通り。一般1,500円、高校・大学生1,200円、小・中学生800円。10名以上の団体は、当日料金より各100円引きこのほか各種割引があります。詳しくはお問い合わせください。
休館日は毎週月曜日(5月2日は開館)。
「なァ?どーよ、ジョルノ。お前こういうの好きじゃねえか?」
にひ、と笑いながらツタンカーメンの黄金のマスクがでかでかと映っているチラシをさし出てきた仗助先輩。僕はそれを受け取ったまま首をかしげた。
「他に誰もいないなんて珍しいですね、仗助先輩」
「よくぞ聞いてくれましたァ!聞いてくれよ、ジョルノ!康一も億泰も今日に限って予定があるとかいって断られたんだよ!重ちーはまだ入院中だしー、承太郎さんは吉良ん家を調べるとか言ってでかけちまうし、ジョースターさんは静の面倒みるのに忙しいみてーだしィ!こんな天気の良い日につまんねーぜ!」
「まさかそのためだけに僕を家に呼びつけたんですか?」
「そーだぜ、わりいかよ?最近ジョルノ、バイトだバイトだって付き合いわりーじゃねーかァ。やっとこさ爆弾魔の居場所がわかったからか、最近行方不明になる女の人ニュースにならなくなったわけだし、少しは遊ぼうぜー。エジプトといやあお前の生まれたとこなんだろ?興味あるんじゃねえの?」
「まあ、ないと言えば嘘になりますけどね」
「だろー?」
「ちなみに露伴先生の所にいくって選択肢はなかったんです?」
「ばーかいえ、恐ろしいこと想像させんじゃねえッ!どうせ亀だらけにする気だろッッ!ジョルノと違って俺は絶対嫌な顔されんだからなッッッ!」
ぶるりと体を震わせた仗助先輩は数日亀に埋もれる夢を見てうなされたことを思い出したのか顔色が悪い。家に居ても特にする事が無く、かといって買い物の予定も約束もなかったために、暇で暇で死にそうでたまらないというのがホントのところのようだ。宿題をするという選択肢がないのが仗助先輩らしいのかもしれない。
「ゼイタクに美術カンショーに休日を一日使うのもありかと思ってな!」
「そういうことならいいですよ。僕も気になっていたところなんです」
「よっしゃ、じゃあ決まりだな!早速行こうぜ、ジョルノ」
「いいですけど。途中で寝ないでくださいね、仗助先輩」
「俺を誰だと思ってんだよお前なァ」
「だって今とってつけたように思いついたでしょう、仗助先輩。初めからそのつもりなら電話でよかったじゃあないですか」
「だってよォ......仕方ないじゃあねえか、お前とゲームの趣味がことごとく合わないなんて思わなかったんだよッ!今時格ゲーした事ないなんてお前ホントに男子ガクセーなのか?」
「無茶言わないでくださいよ。僕は半年前まで施設にいたんだから。やったことあるわけないじゃあないですか」
「友達ん家でやるとかァ」
「ゲームより漫画や映画が好きな人なんだ」
「まじかァ......マリパ......ううーん、NPCいるとシラケるんだよなァ......仕方ねえ、やっぱエジプト展一択だな!ジョルノ詳しそうだし、色々教えてくれよ」
「そんなことだろうと思いましたよ。わかりました、いきましょう」
やりい、と仗助先輩は笑う。ここからS市美術館に行くには徒歩10分のS市駅に行くのが最寄りとなる。僕達はさっそくでかけることにしたのだった。
この美術館は広瀬川が近くを流れる文教地区の中にあり、本館とその西隣にこの町出身者の作品を展示する別館の記念館にわかれている。
地元であるM県および東北地方に縁の深い、明治維新以降の絵画、版画、彫刻、工芸作品を中心にコレクションしており、さらにカンディンスキーやクレーらの作品も収蔵している。このほか、具体美術協会の作品45点、随筆『気まぐれ美術館』で知られる画廊主・随筆家洲之内徹の洲之内コレクション、長岡現代美術館を運営していた旧大光相互銀行の大光コレクションも有名だ。
これらの作品を展示する常設展および年に数回の特別展が企画されるほか、併設されている県民ギャラリーにおける一般市民の展示発表も行われている。
また、館内の創作室や設備を開放して随時創作指導等を行なっており、ただ鑑賞するだけではない幅広い芸術活動を支援している。これは、開館時に掲げた理念の「見るだけでなく新しい自分を発見する美術館」を踏襲したものである。
年間総観覧者数は、都道府県立美術館基本調査票によると19.9万人となっており、全国の都道府県立美術館56館中9位か10位の集客力となっている。観覧者以外の利用客も含めた近年の年間入館者数は約25万人。
本館は2階に展示室、1階に本館エントランスホール、展示室、創作室、造形遊戯室、講堂、図書室、映像室、レストラン「カフェモーツァルト フィガロ」、ミュージアムショップ。地下1階に県民ギャラリー、佐藤忠良記念館がある。
別館には1階に展示室、コーヒーショップ「カフェモーツァルト パパゲーノ」。地下1階にはアートホール。
美術館の内外には以下の四つの庭がある。中庭を除き、それぞれの庭には彫刻が置かれている。
前庭には美術館の導入部に当たり、本館、別館、県民ギャラリーそれぞれの入り口へと続く。中庭は列柱に囲まれた庭であり、作品の展示やワークショップ、コンサートがここで行われることもある。
北庭はケヤキなどの落葉樹に包まれた回遊式の庭で、広瀬川を望める。アリスの庭は本館と別館である佐藤忠良記念館の間に位置する庭で、前庭と北庭を結ぶ通り道でもある。この庭に対する佐藤忠良記念館の側面は弓なりのハーフミラーガラスでできており、独特の情景を描き出す。
入口に置かれているパンフレットを片っ端から読みあさっていた僕は、ようやくトイレから出てきた仗助先輩に声をかけられて立ち上がった。
「いやー、わりいわりい。まさかこんなに混んでるとは思わなくてさァ」
「僕も初めて来ましたが、みんな考えることは同じなんですね。平成に入ってからエジプト展が東北地方で行なわれるのは初めてみたいだ」
「まじかァ!やっぱ初日だから混んでるんだな」
「そうですね。親子連れやカップルが多いみたいだ」
「げえッ......まじか......うわ、来るところ間違えた?」
「なにを言ってるんです、仗助先輩。今の時期どこも行楽地は大混雑ですよ。わかりきってることじゃあないですか」
「そうだけどさァ......すげー行列ね......」
「これでも読んで暇つぶししてましょう。整理券もらって立ってたらそのうち回ってきますよ」
「それもそうだな!って、パンフレットじゃねえか。ジョルノって映画とかで買うタイプ?」
「仗助先輩はかわないんですか?」
「いやだって、ネタバレとかかまされたら損する気分にならねえ?」
「僕は先に原作読む方なのでよくわかりません」
「まじか。まあ、美術館ならネタバレもなにもないよな!世界ふしぎ発見のクイズする訳じゃあないんだし」
「そうですよ。解説読まないと楽しくないですよ、こういうのは。退屈であくびばかりするよりずっといい」
「そりゃそうだ......ってパンフレット高ッ!」
「そんなものですよ。いきましょう、仗助先輩」
実は俺より楽しむ気満々だなと仗助先輩が呟いた気がしたが、僕は気付かないふりをしたのだった。
エジプト展は大盛況だった。
石像は、今にも動き出しそうなほど生き生きと見える。生の哀愁を表象しているような、灰がかった肉づけで仕上げられた像だ。見事な色彩が施された壁画は、解剖学の教科書から写生したような精密な浮き彫りである。
「あ、これ見たことあるぜ」
「ミイラになりたい人がいましたね、そういえば」
「げえっ......たしかにそうだ......あれ、臓器を保管するためのものだったのかよ」
「いれます?」
「冗談でもやめろ、シャレにならねえよ」
針金で支えられたカーネーションをコップに投げ入れたみたいな、女学生くさいリリシズムがある。懇意な家の門口のような親しみを感じさせる絵もある。
古代エジプトの絵画は芸術というより絵描きが暇つぶしに書いた落書きみたいな気軽さがあった。みつばちハッチの死に損ないのような絵だが、生々しい絵具を投げつけたような、わけのわからない絵でもある。美術館にあるということは何らかの価値があるのだろう。
先に進むと木造のレプリカが並ぶ。
この大胆な構図で彫刻刀をふるってラクダを木の塊の中から取り出したらしい。木の塊の中に閉じこめられていた架空のラクダを解放する。アートも宗教も似たようなものだ。
西洋にもたらされた影響としてヨーロッパの絵画もあった。オフセット版の裸婦像は艶消し珠玉のような、なまめかしい崇高美があり、作品を見るもののすべてを魔法の渦のように自分の世界にひきずりこむものもある。わけのわからない絵でさえ抽象画って言うのか、木が木に見えない。馬は馬じゃない。これでいいらしい。
本物の画家が描く絵は祈りにも似ている。
パピルスの紙に金絵具で、右上から左下へ波紋を作って流れて行く水が描いてあるが、非常に優雅な筆致に見えた。僕はその青暗い平面に浮き出している夢のような、又は細い煙のような柔らかい金線の美しい渦巻きに魅せられる。
それは周囲が白紙になっているために空間に浮いているように見える。僕は一目見て驚かずにはいられなかった。少しの修練も経てはいないし幼稚な技巧ではあったけれども、その中には不思議に力がこもっていてそれがすぐ僕を襲った。
僕の中のエジプト信仰がそうさせているのかもしれない。
それは明らかにほんとうの芸術家のみが見うる、そして描きうる深刻な自然の肖像画だった。抽象画は悪くいえば誤魔化しが利く。たしかなデッサン力を持っていなくとも腕が分らない。でも芸術は運命である。一度モチーフに絡まれたが最後、捨てようにも捨てられないのである。この作家はエジプトと出会うことで救われたのだろう。
「案外おもしろいもんだなあ」
「そうですね、テレビでしか見た事がないやつでも覚えているものだ」
「これなんかは珍しくねえか?」
「ここまでくると中世ですけどね」
仗助先輩が指さしたのは、シャムシールという刀剣の一種だ。中近東に見られる、わずかに曲がった細身の片刃刀。シャムシェール、 シャムセールとも呼ばれる。
シャムシールとは英語のソードなどと同じく、本来ペルシア語で「刀剣」を意味する普通名詞であり、名称そのものに刀や剣、刀身の曲がりなどの形状についての意味は有しない。
アラビア語のサイフ、マフムード・カーシュガリーの『テュルク語集成』などに見られるセルジューク朝時代からイルハン朝時代にかけての中央アジアから中東一帯のテュルク語ではキリチや、チャガタイ語、オスマン語ではクルチも、本来は刀剣一般を、通常は曲刀を意味する。
エジプトやアラビアなどではシャムシール、西洋ではシミターと呼ばれ、西洋のサーベルなどに影響を与えたといわれる。
これら曲刀を意味する各国語は、新月刀などと和訳されることがある。ただし、偃月刀は本来は中国の曲刀で、シャムシール等とは形状もやや異なり頑丈なつくりをしている。
「......ナイル川から見つかったんですね、これ」
「うへー、こんなにバラバラなのに集めたのかよ。しかも川ん中から?すげえなあ」
「500年前......そんなに昔の刀がどうしてナイル川に?」
「さあ?」
「あ、ありましたね。盗難されたあげくに破壊......これはひどい」
隣には盗難前の刀の写真がかざられており、レプリカも置かれている。今はほんの刃先しか残っていない、可哀想な骨董だ。
「あ、承太郎さんたちがエジプトにいったっていう年じゃねーか。まさかDIOの仕業か?」
「僕はもう社王町にいたころだな......やはり物騒だったのかもしれませんね。ナイル川から引き上げられたなんてあまりにも意味深だ。川に沈められるなんて穏やかじゃあない」
「たしかにな」
「今度会ったら聞いてみます?」
「そうだな、また新しい話が聞けるかもしれねえ。こないだはほんのサラッとだったもんな」
さぁ次は1階のフロアにいくとしよう。
「た......助けッ!ぎゃああああ」
「いきなりなにするのッ!いやああああッ!!」
心地よい静寂を破る断末魔が響き渡る。階段降りてすぐの所にいた僕らは、一目散に逃げ惑う人々に巻き込まれそうになる。阿鼻叫喚が2階から1階に広がっていく。誰もが一刻も早くここから逃げようと叫んでいた。
「何があったんすかァ?」
「早く逃げた方がいいッ!学芸員がいきなり小刀を持って暴れ始めたんだァッ!」
「怪我してる人もいるみたいなのッ!」
「あたしポケベルしか持ってないぃい!誰か!誰か救急車と警察呼んでええぇ!!」
僕達は顔を見合わせると迷うことなく階段を登っていった。
悲鳴を上げたのはやはり被害にあった客だった。家族連れを襲ったらしく男の胸が横一文字に裂けて鮮血がほとばしる。零れ落ちた血液が廊下に広がっていく。
「うッ!ひでえッ!」
たまらず仗助先輩は顔をしかめる。駆け寄ってスタンドを発動させようとした僕達だったが、切りつけられた被害者の傷口は深く、致命傷だとわかる。
「......ほぼ即死ですね」
「クソっ......犯人はどこに行きやがった!」
仗助先輩の怒りに充ちた声が響く。旦那が切りつけられ、妻が子供を庇い、子供もやられてしまったようだ。
「こ、こいつッ!おい、ジョルノ!あの刀がなくなってるぞッ!」
僕は目を見張った。盗難防止のブザーが鳴り響く中、ショーケースは傷一つない。そして、近くにいたはずの案内や解説を兼ねていた男が消えて、血みどろの足跡が続いている。
「スタッフルームです!スタッフルーム!」
僕は無我夢中で叫んだ。仗助先輩が足跡を追いかけて走り出す。ドアをあけると、そこには返り血を浴びながら笑いを浮かべている男がいる。人を斬ってもなお笑うことに何のためらいもない、サイコパスじみた残虐な男が。
その異常な表情以上に目を引くのは、その男が手にした小さな刀だった。今は包丁ナイフになってしまった、かつては中世の人間が戦に使ったそれが、刃を妖しく光らせている。
男は右手でそのまま引き廻そうとしたが、刃先が腸にからまり、ともすると刀は柔らかい弾力で押し出されてきて、僕は眉を寄せた。
刀の先が胸に入る。先端が肋骨のあいだへ喰いこんだ。男は悲鳴をものともせずに力をこめた。数センチのめり込む。筋肉がショックで縮み、刃先が前へ進まない。強引に突き続ける。
ここで断念するわけにはいかないとばかりにねじり込むように体重をかけて数ミリずつの感じで進めた。不意に抵抗がゆるむ。相手の体内に、チーズに突き立てた果物ナイフのように、奥深くめり込んでいった。
人間の内部とは思えない遠い遠い深部で、地が裂けて熱い溶岩が流れ出したように、恐ろしい劇痛と共に血しぶきが飛ぶ。
次は咽喉元へ刃先をあてた。一つ突いた。浅かった。頭がひどく熱してきて、スタッフは抵抗して手がめちゃくちゃに動いた。刃を横に強く引く。口のなかに温かいものが迸り、目先は吹き上げる血で真っ赤になった。
小刀が身に食い入るたびに、まりをたたくような、まるくこもった音が立つ。
鮮血が舞うよりも先にその臭いが鼻を刺激した。にたあと男は笑う。あたたかい、とつぶやく。ナイフを握り締めた手に伝わってきた、人の温かな肉を切り裂く感触は素晴らしいものだったと笑うのだ。目の前の男は今、人を殺めた。なんの躊躇もなく。
スタッフの腹部、臍の右上にナイフの切っ先が当たる。力を加えると、表皮に刃がめり込んでいく。腹直筋を切り、毛細血管、神経を割く。ナイフが肉を破り、穴を空ける。肝臓に到達したところで、一度、止まる。
スタッフが涎混じりに、呻いた。ナイフが外に引き出されるのと同時に、刃先が離れた血管から、次々と血が漏れる。間を置かずして、次にスタッフの胸にナイフを向けた。左の乳房の膨らみから数センチ下に、力を込め、刃を突き出す。
ナイフは脂肪を通過し、肋硬骨の隙間を縫って、さらに奥に進み、心筋に突き刺さる。スタッフの目は見開かれている。ガスを吐き出すかのように、ひゅうっと口から息を出す。ナイフがもう一度、外に出ると、スタッフの顔から色が消え、尻から後ろへ倒れた。
「気をつけろよ、ジョルノ!い......異常者だぜ、こいつ!目つきがフツーじゃねー!」
「......ッ」
「くらえィッ!」
叫ぶと同時に通り魔の男が流れるような動作で男が最後のスタッフに斬りかかる。弧を描いて宙を滑った刀身がまた1人の命を刈り取った。
「この小刀......どうやってショーケースを通り抜けたんだ!?」
「そういや、割ったり鍵開けたりした形跡なかったな!?ま、まままさかスタンド使いかよっ!?こいつはやべーぜ、ジョルノ。扉を閉めてくれ!逃がしちゃいけねーやつだッ!」
僕はすかさずゴールド・エクスペリエンスで壁を殴る。ドアやドアノブから木々を生やし、簡単に突破できないように溶接じみた嫌がらせをすることにした。仗助先輩は男の前に立ち塞がった。