長年体にくっついていたために、そいつは今では男の皮膚の一部のように感じられる。指をポケットから出した拍子に、指先にコトリと触れて、するすると逃げて行くものがある。指輪だ。水晶の念珠が真ん中から二つに切れ、珠が霰のように四方へ飛び散る。
それを拾い上げた男は、宝石の光彩が虹のように輝くそれらを集めていった。新しいチェーンを出す。にぶく光って美しさが遠くからやってくるような奥ゆかしい感じの首飾りのように、チェーンが伸びていた。
細い革ベルトの華奢な時計は太い手首にめり込んで今にもはじけそうだ。細い金メッキのブレスが腕に何本も巻かれていて、日に焼けた肌に映えている。紺色の丸い石がついたちゃちなピアスがあり、小指に一本だけ小さな指輪がはまっていた。飾り気のない、ごく当たり前の銀の指輪だった。キラキラと眩しくて思わず目を背けたくなるロレックス、胸に下がっている金の鎖、天井のライトで左手の指輪が時々光る。カットされたそれぞれの面に同じ大きさの灯りが光る。
彼の身につけた小ぶりではあるけれど高価なアクセサリーは、血を求める吸血鳥よろしく、反射のための微かな光を希求している。
青い宇宙、浮かぶ星座、煌めく銀河。空想の夜空をモチーフに透きとおったアクセサリー。思わず覗き込みたくなるような小さな世界が不似合いな男だ。
その胸には金いろの輪つなぎの重々しいネックレスが揺れており、それがあたかも、神輿のように威のある胸の七五三縄を思わせた。
繊細な下着でも綿の小さなタンクトップでも細い鎖の上品なネックレスでもなんでもいいけれど、何もつけていない体の表面に何かひとつのしるしのようなものがあるのは素敵だ。そういうのはベッドのなかとか薄闇のなかとか体温の延長上なんかで、目にとても注意をさせる。この男のようにごちゃごちゃし過ぎていると下品にしか見えない。
いくつかの金色のアクセサリーが肌の魅力を注意深く封印するみたいに配置されている。
フェイクパールのロングネックレスがまだ首にかかっていた。ファッションの縦ラインを強調するために長いのを買ったのか、ずっとつけていると肩がこるとばかりに首を回している。
「ゴールド・エクスペリエンス」
ジョルノがスタンドを発動させても男は吉良吉影と熱心に会話をしたままである。
黄金色のヴィジョンが男のつけているアクセサリーに触れた瞬間、いきなりツバメが生まれた。ツバメは男の肩に止まった。
「思った通りだ」
「これは?」
「僕が生み出した生命は、本来の持ち主のところに帰る習性があるんだ。手に入りさえすればどうにでもなる。吉良吉影は新たな自分となりここにあるものは全て自分のものじゃないと考えているから使えなかったんだな。でもこの男は違う」
「なるほど、アンダーワールドで掘り起こした物品を生命に変えやがったのか!」
「そういうことだ。ありがとう、ドナテロ。君のおかげでようやく吉良吉影を匿っているであろう男の正体が明らかになりそうだ」
ドナテロは嬉しそうに笑った。
「調べてみたんだけど、高所作業員かもしれない」
「なんだそれ」
「あそこで作業する人のことだよ」
ジョルノが指さす先には山間部などでよく目にする鉄塔がある。発電所から各地へと電気を送るための電線を張るための建物だ。吉良吉影の家に訪れていた謎の男は、主にこの鉄塔に電線の設置、張り替え工事を行っている会社の社員だとわかったのだ。
工事センターは独身寮も兼ねており、ここから資材や道具を持ち出して各地の工事現場へ向かうのだ。
鉄塔間に張られる電線は架空送電線と呼ばれ、発電所から変電所へ、もしくは変電所間を結んでいる。この会社では東北地方を中心に、さらに北海道や九州の現場での作業も行っている。
電線は大体30~40年くらいで張り替えをする。1km以上の張り替えをする場合は40日間ほど工期がかかり、今は夏だから張り替えは少ない。
この工事に不可欠な「電工」と呼ばれる高所作業員は、日本国内に約5700人ほどいるそうだ。建設や採掘に従事する技能労働者は、全国で266万人。専門職とはいえ、その数は全体の0.2%に過ぎず、一人一人の存在が貴重だという。
工事は、張り替える電線を鉄塔まで運ぶことから始まる。鉄塔間に張ったワイヤロープと、延線車と呼ばれる大型機械に巻き付けた電線を接続し、逆側から引っ張りながら電線を張り変えていく。
電線自体は大型機械を使って張り替えていくが、張った後にこそ多くの作業が待っている。電線のゆるみの調整、がいしの設置、接触や振動、着雪を防止する機器の取り付けなど、これらは実際に作業員が鉄塔、電線の位置まで上って作業をしなければならない。電線工事の現場は、地上100mを超えるのもザラなのだそうだ。
電線を張り替える際、一時的につるしておくための器具、金車。標準的なもので10~15kgもの重量があり、これらも全て作業員が高所まで持っていく地上での準備が高所作業の質につながる
「100m超......怖いな」
「落下しないようにするのはもちろん、ボルト一つ落とすことも許されない仕事だからね」
電工は、胴綱と呼ばれる命綱を体に装着しており、さらにボルトやナット、工具類一つ一つにもひもを結び付けて自分につないでいる。
多くの工具を扱う高所作業では、たった一度、手元が滑るだけでも大事故につながる可能性がある。技術の向上を目指すことは当然だが、それ以上に安全配慮を徹底することが重要なのだそうだ。
高所作業の際は命綱を装着するほか、工具類にいたるまで全てひもにつないで落下を防止する。
工事現場へ行く前に行う作業の一つ。電線を装着したカムアロングを引っ張る際に使う“セミ組み”。ウインチで引く張力を調整できる。危険なのは高さだけではない。電線工事の現場は高電圧にさらされており、高いところで50万ボルトにもなるのだという。
鉄塔上ではビリビリするため、電気を逃がす回路が組み込まれた作業着や、電気を通しやすい靴を履いて作業をしている。
作業中は体に電荷がたまって感電しないよう、導電性服と呼ばれる電荷を逃がす作業服などを着用する。また、高電圧の電線は空中放電するため、直接触れなくても感電してしまう。現場では区画対策を行って隔離し、近付かないようにしているのだ。
だから、すぐにわかったのだ、とジョルノはドナテロにいう。
こういった感電対策をはじめ、配電盤のチェック、使用する器具の組み立てなど、事前の準備作業は多い。これらを取り仕切るのも大事な仕事の一つなのだ。
電線を伝って移動するための器具、「宙乗り機」。電線につるし、木材の部分に座って使用する。電線がたわんでいる部分を通ると結構なスピードが出るとか高所と高電圧、現場は常に危険と隣り合わせ。
1回の工事で25~40人の作業員が携わる。
「この業界では、自分の仕事だけしっかりやればそれでいい、という風潮があるらしい。今はそれでは現場を回せなくなってきてるようだけど、古い体質は変えられない。よく知らないらしいよ」
上と下、上司と部下、高所と地上それぞれで作業する人、という両方の意味で、双方で活発に意見交換ができるようコミュニケーションをとることが重要だろうに。その方が効率的かつ安全に作業が進められるのだから。
「ってことは、会社に聞いても無駄なのか」
ジョルノはうなずいた。
「だから、アンダーワールドは必要不可欠なんだ」
血の繋がった兄弟同士、色々話すものもあるだろうという気遣いもあって仗助とドナテロが入れ替わり、ジョルノは作業員の男を探すことになった。
「新聞が欲しいなんて意外だね」
「兄貴がいなきゃ買わねえよ、日本語は読めない」
「読めって?」
「オレのスタンドは説明した通りだぜ。その土地の記憶を引っ張り出すにはピンポイントで知ってないと効率悪いんだよ。昨日はそれがよく分かった」
「ああ、空条さんのいってたあれか」
「何時間かかったと思う?5時間だぞ、5時間!ステーキハウスに連れてってもらえたけど、日本人て歯が弱いのか?あんなに柔らかい肉は始めて食った。フライドポテトはうまかったけど量がすくねェ......詐欺だろれ」
「日本人は赤身より脂身を重宝するからね。それにアメリカ人の食生活に合わせてたらあっという間に病気になって死ぬから仕方ない」
「ふうん......。うまかったけど、やっぱりアメリカの肉のが好きだな」
「肉を焼くことに命をかけてる人と一緒にしちゃあいけない。日本人はご飯と食べるために全てのおかずが存在しているんだ」
「ご飯......ああ、承太郎が食ってたあれか......箸っていうんだっけ?棒切れ2本でナイフとフォークとスプーン兼ねるとかやっぱ日本人は器用だな」
「だろうね」
ドナテロはニヤニヤ笑う。
「あん時は普通に食べてたよな、エジプトの飯。今じゃ無理だろ」
「何食べてたかな、よく覚えてない」
「アエーシだよ、アエーシ」
「アエーシ......」
平たく成形した生地を高温のかまどに入れて瞬時に表面を焼くため、中の蒸気が逃げずに膨らみ、中に空洞ができるパンらしい。
「ピタパンみたいなものかな」
「ピタパンのがわかんねえよ」
アエーシは2つの食べ方ができる。1つはちぎってディップやピューレをすくって食べるもの。ディップにはフール(ゆでたソラマメを潰したもの)、タヒーニ(練りごまとレモンとにんにくを混ぜたもの)、ババガヌーシュ(焼きナスのピューレ)がある。
アエーシのもう1つの食べ方は、半分に切ってポケット部分に具を入れるサンドイッチ風にする。
「やっぱりピタパンじゃあないか」
「だからわかんねえよ」
ドナテロは肩を竦めた。
「兄貴はトルシー挟むの好きだったよな、大根やにんじんの漬物。コシャリもよく食ってた」
「よく覚えてるね」
「思い出せるまでよろしくっつったのはアンタだ。オレはゼイトゥーンに、コフタやターメイヤ入れた方が好きだったからよく覚えてる。肉食えってよく言われてただろ」
「呪文みたいだな......」
「上からオリーブ、ひき肉団子、そら豆コロッケ」
「よくわかるな、材料」
「料理に使われてる食材当てるのが得意なんだ、昔からな」
「へえ」
「兄貴はそれを利用して嫌いなやつをオレに押し付けようとしてた。特にハマム・マシュイ。鳥の丸焼き。鳩が多いけどたまに鴨にしたやつはこの世の終わりみたいな顔してたな」
「......そんなに小さい頃から嫌いだったのか、僕」
「そういう時は決まってオレが食えるからラッキーだったな」
ジョルノは不思議そうな顔をしている。ドナテロの方がよく知っているのが不思議でならないらしい。
「代わりにオレは豆料理が嫌いだったから助かってた。エジプト料理といえば、豆ってレベルだからな。保存がきくタンパク源とはいえ、しょっちゅう出されたら嫌になる」
「たとえばどんな?」
「嫌いな料理を聞くのかよ、普通」
「僕は好きな料理なんだろう?」
ドナテロはやっぱり覚えてんじゃねえのか、とジョルノに疑惑の目を向ける。ドナテロがわかりやすいだけだとジョルノは涼しい顔だ。
エジプトを代表する豆料理はフール。フール自体が豆という意味だが単にフールといえば、主にソラマメを蒸気を封入しながら水煮にし、刻んだ玉ねぎや白チーズを薬味にふりかけ、たっぷりの油をかけて食べるものを指す。
この料理は、エジプトの朝食時にはアエーシをセットで出てきたからドナテロは嫌という程覚えているらしかった。
あとはフール・メダンメス。古代エジプト時代から食されている伝統的な料理で、ソラマメをメインとした煮込み料理で、レモン汁やクミン、オリーブオイルをかけて食べる。ゆで卵をスライスしたものがよく乗っていた。
「デザートはよく横取りされてたしよ......」
「甘いものは今でも好きだよ」
「兄貴と食いに行く時はぜってー頼まねえ」
ドナテロは遠い目をしている。
「そこまで食い意地はもうはってないと思うんだけどな......何年前の話をしてるんだ」
「かわんねえだろ、4歳だろうが14歳だろうが」
バスブーサはパスタなどに使われる小麦で作って焼いた生地にハチミツやレモン汁、ローズウォーターなどで作ったシロップに漬けたケーキ。とても甘く、とろけるような食感でだったはず。
オマーリはココナッツのスライス、ピスタチオ、レーズンなどのドライフルーツに砂糖、パンをミルクに入れてオーブンで焼いたデザート。一見、グラタンのようにも見えるが、とろけるような甘いパンが最高においしかったはず。
フティールは古代エジプト時代から食べられていたとされるイーストを使わないパン生地を重ねて焼いたパイのような特徴のある伝統的な食べ物。これが月型に形成されるようになってフランスに伝わったものがクロワッサンになったともいわれ、フティール・メシャルテットはシロップをかけて食べる庶民的デザート。
「疑問形ばかりだな」
「だから兄貴に横取りされたっつってんだろ」
「覚えてないことを怒るなんて無駄だと思わないか?」
「終いにゃはっ倒すぞ、テメー」
ジョルノは笑った。今日の捜索が終わったらスーパーに寄ってみようかなんていうものだから、ドナテロはデザートだけじゃないだろうなと疑いの眼差しを向けた。
「この町レンタサイクルないのかよ」
ドナテロに言われて始めてそんなサービスがあることにジョルノはきがついた。
ジョルノは知らなかったのだが、自転車を有料で貸し出す事業のうち、数か月にわたるなど長期の賃貸借ではなく、数時間くらいの短期の賃貸借のサービスをレンタサイクルというらしい。
数分くらいのごく短時間の賃貸借で自転車を共有するシステムの場合は、一般的に、自転車シェアリング、バイクシェアリング、シェア自転車などと呼ばれ区別されているようだ。
環境の保護や、都市での渋滞や騒音、大気汚染の緩和を目指すために、市民の交通機関の選択肢として、都心部において安価または無料で自転車を提供するコミュニティ自転車プログラムを実施する動きが各国で見られているようだ。
この町では、自治体などが主体になり、自治体の各所にステーション(自転車貸出返却所)を設けて行う「コミュニティサイクル」と呼ばれるシステムがあった。このシステムでは、多くの場合、自転車をどのステーションにも乗り捨てで返却することができる。盗難や転売を防止するため、明るい色で塗装したり、単一の設計のものを使用するなどの工夫がされている。
ドナテロ曰く、アメリカではライト兄弟が1890年代にはまだ目新しかった自転車を販売する店を経営していた。また自転車を体験してもらうため貸し出しも行っていた。このビジネスが成功したことで飛行機の開発資金を調達することが可能となったというのだから驚きである。アメリカではそんな昔から馴染みがあるサービスだとは知らなかった。
そういうわけで、ジョルノとドナテロはレンタサイクルに駆け込んだ。さすがにツバメをずっとおいかけるのは大変だからだ。
1時間103円(以後30分ごとに103円)、1日パス1,029円。そこそこな出費だが仕方ない。
S市は他の観光名所と比べ極端にレンタサイクルのサービスが少なく、最近サービスを開始しなんとか他の都市並みになったらしい。暫定的らしいが外国人を含めた観光客の増加に伴い規模が拡大され2000年以降もサービスの提供が行われることが決定したという。
もともとS市はレンタサイクルのサービスが普及していない街だったようだ。その理由としてはメインとなる街の中心部がアーケードで自転車の通行に向かないことや郊外のS城跡周辺などは意外と急な坂道が多いことなどがあげられる。とはいえ定禅寺通りをはじめとした街路が美しいSタウンでは歩道と車道の間にちゃんと自転車専用道路が整備されている区間も多数有り、レンタサイクルならではの楽しみ方が隠れているのも事実。
ちょうど良かったといっていいだろう。
こうしてジョルノとドナテロはひたすら自転車でゴールド・エクスペリエンスで生成した作業員の探知機を追い回し始めたのだった。
「電動自転車導入しろって要望出した方がいいんじゃねえの?」
「アメリカ進んでるんだね......考えもしなかった」
「知らなきゃ気づかねえだろ」
「たしかに」
徒歩よりはだいぶん楽になったが、やはり自転車でもきついものはきつい。この町の行政にはてんで興味はなかったが要望書未満の意見を受け付ける場所はあったはずなので、なんとなく提出しようかという気になった。
「英語で連投すればインパクトがあるかもしれないな」
「そりゃいい。あとでやろうぜ」
「5時までに作業員を見つけられたらの話だけど」
「全くだ!」
ずいぶんな時間をかけて2人がやってきたのは鉄塔近くの公園だ。昼休みだからだろうか、似たよう人々がたくさんいるのがわかる。ビジネス街からは離れているからよくいるサラリーマンはみかけない。
「どっかに作業員の男がいるってことか?」
「おそらく......だがおかしい......なんだこれは」
「どうした、兄貴」
ジョルノは顔を開けた。血相変えて叫ぶのだ。
「あいつは只者じゃあない!」
「は?」
ドナテロもつられて見上げる。そこにはジョルノとここまで追いかけてきたツバメがカラスに襲われていた。
「なんだよ、ただのカラスじゃねえか」
「カラスはツバメの巣は狙うが、親鳥は狙わないものだ。飛翔力が違いすぎるからな!」
「じゃあカラスの巣が近くにあるんじゃねえのか?」
「あの鳴き方は若鳥だ。番がまだいない時の鳴き方なんだ」
ほんとかよ、という顔をするドナテロにジョルノはうなずく。
「ほら、見てくれ」
ジョルノは視線をなげた。
「普通のカラスが遊具を浮かせるか?」
ドナテロとジョルノの間を作業員たちがあわてて走り抜けていく。
「ぎゃあ!」
人間がミンチになるのは案外簡単なんだなとドナテロは他人事のように思った。生温かな血しぶきが顔にかかったことでようやく目の前のひっくり返ったジャングルジムに何人か作業員たちが押しつぶされてぺしゃんこになったことを知る。
「ドナテロ!」
突き飛ばされる衝撃と同時に重力に逆らいきれずジャングルジムが横倒しになったことを知る。
「いってえなあ!もっと優しく投げろよ、こっちはさっきまで肋骨折れてたんだぞ!」
「無茶言わないでくれ、悠長なことしてたらジャムになったかもしれないじゃあないか」
「嫌な想像させんなよ」
「ドナテロ、どれくらい戦える?」
「無理だ!ヴィジョンはあるけど攻撃力はてんでない!フォークすらもてない!」
引っこ抜かれたシーソーの片割れがひしゃげた状態で飛んできた。ドナテロの目の前にさっきまであったはずのジャングルジムが正常な状態で復元され、弾き返してくれた。
「......訂正するぜ、自分くらいは守れるらしい」
「シッカリシロヨ、ドナテロ......わたしに何時マデ頼るツモリダ......」
「馬鹿言え、そもそもわかりづれーんだよ、アンダーワールド!!」
「酷いナァ......イマノわたしヲ望ンだのは君のクセシテ」
「その調子なら大丈夫そうだね」
「兄貴は大丈夫かよ」
ジョルノは笑った。
「大丈夫だよ、弟に無様な格好は見せられないからな」
ポルターガイスト現象あるいはポルターガイストは、特定の場所において、誰一人として手を触れていないのに、物体の移動、物をたたく音の発生、発光、発火などが繰り返し起こるとされる、通常では説明のつかない現象。いわゆる超常現象、心霊現象の一種ともされているやつだ。
物体の移動としては、主として建物内部に設置された家具や、家具内に収納された日用雑貨などが挙げられる。発生する状況は一貫性が無く、住人が就寝中に移動し、起床後いつのまにか移動しているのを確認されるものもあれば、住民が起きている時に移動し、移動している状況を直接目撃されるものもある。動き方にも一貫性は無く、激しく飛ぶこともあれば、ゆっくりと移動することもある。
ドイツ語で、poltern(騒々しい音を立てる)+ Geist(霊)、すなわち「騒がしい霊」という意味の合成語である。日本では心霊科学研究会の浅野和三郎が「ポルタアガイスト=騒々しい幽霊」と和訳、幽霊屋敷に起きる現象として紹介した。
思春期の少年少女といった心理的に不安定な人物の周辺で起きるケースが多いとされており、その人物が無意識的に用いてしまう念力(反復性偶発性念力 によるものとする説もある。
つまり、そういった能力を有する者が無意識的に物を動かし「ポルターガイスト現象」を発生させてしまう、とする考え方である。
例えば岐阜県富加町のポルターガイストでは、超心理学研究者の小久保秀之は「(地磁気の異常が脳に作用して)無意識的な念力現象が起こっているのではないか」との仮説をあらかじめ抱き調査用の測定器を準備した(但しその仮説は調査後に見直すことになった)。
「カラスって思春期があるのか?」
ふと思った疑問を口にしたところで返ってくるとは思えないが、ジョルノは飛んでくる遊具をゴールド・エクスペリエンスで蝶に変えた。
科学の法則では説明できない現象もスタンドなら説明することができる。ごつい男が投げつけて来ているのだ。木馬が鈍い音を立ててチェストの上に落ちた。まるで地球に重力があることを突然思い出したみたいに。
「ああくそ、近づくな!」
ジョルノは大男のヴィジョンを振り払う。空中に放り投げられるはずだったジョルノの代わりに、近くにあったベンチが宙を舞った。
記念碑が投げられてものすごい音がしたり、街灯がふいに舞い上がったり、手当り次第と言った様子である。
ジョルノはドナテロのところにまで飛んでくる障害物を蝶にかえつづけた。
石がひとりでに飛び出してこなごなに壊れたりする程度ならジャングルジムが防波堤になってくれるから助かる。もっとも空から雨のように石ころが落ちてくるのは防ぎようがないのだが。放り投げられた遊具たちは地面に落ちつぶれて形が崩れた。
力を失ったガラクタはステンレスから剥がれるように転がっていった。
あるいは数回の大円を描きながら、太陽の光にきらきらと輝きつつ沈黙した緑の中へ落下していった。
「ゴールド・エクスペリエンスッ!」
ジョルノは拾った石を投げつける。岩から成長し始めた蔦が大男をぐるりと回して締め付け始めた。
「たたみ掛けるんだ!」
足元から伸びてきた巨木が噴水のオブジェに大男を押しやり、転倒させる。そして大蛇のごとく木の幹の中にスタンドを丸ごと飲み込んでしまった。内側から突き破ったそいつは、次の瞬間に自身を破壊していく。
「なんだあれ」
「僕が生み出した生命はカウンター能力があるんだ。ダメージがそのまま返ってくる」
「うわっ、こええ」
ドナテロはカラスが断末魔を上げるのを聞いていた。
「無駄なことばかりして......諦めたらどうだ」
自転車が浮遊する。
「あ」
ゴールド・エクスペリエンスで見事にひしゃげた自転車2台。そして、絶命する瞬間に岩に変わることで免れようとしたカラスの銅像が出現した。
「まずいな......非常にまずいな......なんて説明すればいい?」
「......兄貴」
「僕の名前はわれてるからバックレるわけには......」
「兄貴」
「ううーむ」
「だから兄貴」
「なんだい、ドナテロ」
「アンダーワールドで過去の自転車掘り起こしてさ、持って行きゃいいんじゃねえか?」
ジョルノは瞬き数回顔が輝いた。
「それだ!」
ジョルノたちは遊具を過去から持ってきて、もとのやつを動物にしてごみ捨て場に持っていくことにする。そのあと作業員探しは続行されるのだ。
スタンド名:ジャイアントマン
本体 :奇病にかかったカラス
破壊力 -A
スピード -A
射程距離 -C
持続力 -B
精密動作性-C
成長性 -D
能力:ポルターガイスト現象を起こすスタンド。シンプルゆえに強力。ラップ現象も起こせると思われる。