「うぐっ!?」
急に右腕に走った激痛によって、目が覚め、叩き起された気分に陥った俺。
「……くっそ。超いてぇ」
腕輪ごと食われたのだ、当然だろう。俺は今、半ばアラガミ化している最中なのだろう。ヴァジュラもどきに食われたはずの右腕がある時点でそんな気はしていた。だが、しかし、それは最早人間の代物ではなかった。全体的に赤黒く変色している腕のようなナニカだ。
左腕も腕輪がない状態で神機に触れてしまったのだ。アラガミ化するのも時間の問題だろう。
現に腕輪なしで触ってしまった部分から少しずつ変色が始まっており、今では肘から腕の部分までアラガミのような腕へと変貌してしまっている。アラガミの偏食因子によって人体が蝕まれているのだろう。
痛みに悶絶している俺が目に入ったのか、人間とは思えないが小さな少女が俺の右腕に手を被せるように添えると、右腕の痛みがすぅっと消えていった。
少女が手を退けると、右腕には青い宝石のような物が埋め込まれており、痛みは完璧になくなった。
「……キミってさ、アラガミ?」
「……?」
極当然な質問を行っただけなのだが、疑問を感じたのか。それとも言葉自体が理解出来ないのか少女は首を傾げていた。
「……はぁ」
溜め息を小さくついた後、俺は自分を指差した後、名前を告げる。
「ハヤトだ。鳴神ハヤト」
「ハヤト……? ハヤトっ!」
少し理解出来なかったのか不思議に思う声を上げたが、直後、それが俺の名前だと理解した少女はぱっと満開の花を印象付けるような笑みで、俺の名前を呼ぶ。
「そうだ。キミの名前は?」
「ナマエ……?」
どうやらこの調子じゃあ、名前がないみたいだな。
それだと呼ぶのに苦労しそうだから、何か名前を付けてあげようか。
「そうだなぁ」
目の前にいる小さな少女を見てから、俺は名前を告げる。
「……シオ。今日からキミの名前はシオだ」
「シオ?」
俺が少女を指差しながら告げた名前を繰り返すように、自分を指差しながら名前を発した。
「あぁ、シオだ」
「シオ……。シオ!!」
この時から俺は子供を持ったみたいで嬉しくて、生活を送る上で必要な言葉だけは教えることにした。
それが後に偶然を引き起こすキッカケとなるとは思いもしなかった。
◇
数日後――。
「……はぁ、そろそろ覚悟を決めないといけないかな」
シオはいつの間にか姿を消し、隠れ家にいるのも俺一人だった。
しかも、シオが俺に授けてくれた青いコア。あれから数日間もの間で、光が失われつつあった。その光が消えようとしている現在、俺は必死に食い物となる『アラガミ』を探していた。
今の俺に、人である意識なんて殆ど残っていないだろう。アラガミとしての本能に従っているだけに過ぎないのだから。
「食い殺したりねェ」
手当たり次第に向かってくるアラガミを全て食い殺してはいるが、癒えない。腹は減っていく一方だ。
そんな風に食料が不足している現状に苛々していると、目の前に見たこともないアラガミがいることに気付いた。
「白い、アラガミ……」
脳裏に似たようなアラガミ『プリティヴィ・マータ』の姿がチラつくが関係ない。あいつはあいつ、こいつはこいつだ。
(ぜったいに、くいころす)
食事に必至な『白いアラガミ』に向かって、俺は全力で振りかぶった一撃を振り下ろす。
◇
圧倒的な戦闘能力の差で勝ち誇ったのは、ハヤトだった。
彼は持ち前の戦闘センスを最大限に引き出し、右腕と一心同体とも言える神機モドキのお陰で無傷の完勝を得ていた。
そして、今はバリバリっという音を立てながら、ハヤトは『白いアラガミ』を食っていた。彼が食事を行っている際、青いコアは輝きを取り戻しつつあった。
(……白いアラガミを倒せば、俺は生き長らえることが出来る?)
そう結論付けたハヤトは、一刻も早くこの『白いアラガミ』を食い尽くそうと考え、自身の腕と神機が合体したような刃物を持ちながら屋根上を走り続ける。
これが後に語り継がれることとなる『深紅の捕食者《プレデター》』の始まりだった。
第一部、完!!
GE2DLCである『漆黒の追跡者』に合わせた終わり方をしたかったので、こんな形で一旦終わらさせていただきます。
この後の流れは二通りあります。
原作であるGEのシナリオ通り、主人公交代しつつ進めるか。或いは主人公視点での話――『漆黒の追跡者』のアレンジVerを進めるか。
研修期間中は絶対に書けませんし、終わっても当分は書けないと思いますので、その間に感想などで意見をくだされば助かります。
ご協力、よろしくお願いします!!