――俺の両親はゴッドイーターだった。
幼い頃からそのゴッドイーターとしての話を幾度として聞いていた俺は、そんな恐ろしい存在と対面して戦う事が出来、何でもこなせる両親をヒーローだと感激していた覚えがある。
「……お母さん?」
「大丈夫よ。ごめんね。寂しい思いをさせちゃって」
「だけど、安心しろよ。俺らはお土産話でも持って、絶対に帰ってくるさ」
そう言って、両親共にゴッドイーターとしての職務を全うするために家を出た。
ヒーローの後ろ姿を見届けた俺だったが、直後には両親が留守の間、代理で俺の世話を頼んだの大人の人と一緒に遊ぶ俺がいた。
その人の事は今でも覚えている。
「ハヤトくん? 今日は何して遊ぼっか」
彼女もまた、両親と同じく被害者だから。
母親がゴッドイーターとなる前からの知り合いで、時々、こういった緊急事態で呼び出しを受けた際や両親共にミッションへ行かなければいけない日には彼女が代理で来る事が多かった。
今日も……以前と同じく平和な日々が続くのだと、俺は思っていた。
両親が家を出てから数十分後。
外が急に騒がしくなり、同時に獣の唸り声が聞こえるようになった。
『キャーーッ!! あ、アラガミ……』
『逃げろーー! ゴッドイーターが来るまで逃げるんだ』
『……隠れてなさいっ! あなた達の大きさなら隠れ切れるから!!』
『でも、おかあさんが……』
『良いから。絶対に出るんじゃないよ』
小さな集落に住んでいた俺達にとっては、外の騒ぎがダイレクトに耳に入ってきた。
アラガミが外壁を突破して、この集落に現れた。騒ぎから察した世話役の女性は、当時、ロクに動けなかった俺を背負って、家から飛び出た。
……だけど、残虐なアラガミの猛攻には力無き人間はどうしようもない。
「ハヤト……くん。あなただけでも、無事で……いて」
その女性は残りの体力を全て使い、幼い俺を住居と住居の間に出来た隙間に放り投げる。
アラガミの視界からは完全に消えており、尚且つ、気付かれる事がないであろう場所だった事は覚えている。……血の臭いも、古臭い住居の壁や色も、目の前で死に逝く魂も、全て覚えている。
――後の事は覚えていない。
何が起こったのか俺ですらわからない。理解したくない。
けれども、たった二つだけわかった事がある。
世話役だった女性と俺を襲ったアラガミが、獣の咆哮をあげ、不気味な女神像のような顔をしている……つまり、『プリティヴィ・マータ』だという事。
そして、任務で家を発った筈の両親がその女性の付近で血溜りを作りながら死んでいた事。その両親を殺したのは十中八九、プリティヴィ・マータである事は間違いないだろう。
奇しくも、世話役の女性のたった一つの行動によって俺は助かった。
当時、痛みを堪える事が出来ずに泣いてしまっていれば、俺らは揃って殺されていただろう。そう考えれば、俺も努力した事にはなるのだが、あの幼い俺に少しでも力があれば、後の展開が変化していたかも知れない。
――だからこそ、俺は強さを求めた。
アラガミをぶっ殺す事が出来、同時に復讐を完遂する事も出来るゴッドイーターになりたいと。
――だからこそ、俺はゴッドイーターになってからもアラガミを狩り続けた。
憎き両親の敵を、世話してくれた女性の敵を討つために。
何より力無き自分が許せなかったから……。
もう、誰も傷付けさせない。傷付けさせたくない。
そんな仲間想いで強いゴッドイーターになりたいと……。俺はそう願った。
今回は過去話がメインで、ちょうど区切りよくしたかったので短いです。ごめんなさい。