GOD EATER ―深紅の復讐者―   作:片桐 奏斗

8 / 13
第7話 復讐対象《プリティヴィ・マータ》

 

 

 今やお馴染みとなった旧市街地エリアにて、俺は忌々しい視線を感じた先へと向かっていた。

 

「……この辺りから、だったよな」

 

 手にしている神機がとても重く感じる。

 普段の生活だとあっという間に過ぎ去る一秒が、途轍もなく長く。風一つの変化に対して敏感に感じ取ってしまう。

 

「何も、いねぇよな」

『――ヒバリです。帰投ヘリ、間もなく到着します。合流ポイントへ向かってください』

「りょうか……」

 

 了解。と返事する前に、密かに感じ取っていた違和感の正体が判明した。

 高みから見下ろすように姿を現している憎きアラガミ……『プリティヴィ・マータ』だ。

 奴は俺だけでなく通信先にまで聞こえるように、通信している最中に猛々しい鳴き声をあげる。

 アラガミは基本的に獲物を見つければ、一も二もなく獲物に食い付く。それがゴッドイーターだろうが、あいつらからすれば人間は絶好の餌だ。

 

『ハヤトさんっ!?』

「あー、悪い。完全に認識されちゃってるから、ヘリに向かうのは無理っぽい」

 

 戦闘で邪魔になる無線を切る前に伝えておくべき事だけ、伝えておく事にする。

 

「俺の前にいるのは第二種接触禁忌種の『プリティヴィ・マータ』。――以上。通信切ります」

『ハヤトさん!! ちょ、ちょっと……』

 

 通信先で煩く騒ぐヒバリさんを完全に無視して、無線を一方的に切る。

 俺がスイッチを入れるまで絶対に反応しないようにも設定をした。

 

「さぁ、とっとと地獄に墜ちてもらおうか。クソ猫」

 

 比較的、軽さを重視してもらっている神機を片手で持ち、刃先をマータへ向ける。

 俺のその小さな行動を敵対行動と取ったのか、奴は自身が乗っていた高台から飛び降りる。俺目掛けて……。

 

「チィッ」

 

 マータの爪を全開に開いた飛び付き攻撃を左へサイドステップを行い回避した後、隙があり過ぎる胴体へ切り掛かる。

 だが、刃は通らず、硬い鎧によって跳ね返される。

 神機が跳ね返された事により出来てしまった隙を狙い、その場で氷を操ってみせ、俺へと氷柱を飛ばす。

 

「……こんにゃろ」

 

 それらの攻撃を華麗に避け、次の攻撃パターンを考えていると不意に真上から氷柱が落ちてきた。

 

「なっ!?」

 

 あまりに予想外な攻撃にびっくりしながらも、上から降り注ぐ氷柱を盾でガードする。だが、いつまでも降り止まない氷柱に対して、俺は嫌な予感を感じた。

 

(あんまり考えたくない事なんだけどさ……。マータが何匹も、この場所へ集まっているなんて事ねぇよな)

 

「……でも、それしか考えられないんだよな」

 

 俺が現在進行形で戦っているマータは視界の中心に捉えていたし、どうあっても視界の外から攻撃なんて不可能だ。設置型の攻撃を仕掛けたならともかくとしてだが、アラガミにそこまでの知能はないはず。

 となると、最終的に行き着く結論は、マータが何匹もいる。いや、現在は二匹と言った方が良いだろうが。これからも増え続ける可能性すらある。

 

「それでも、戦うしかねぇよな!!」

 

 荒廃し続け、天井すらも吹き抜けてしまったビルの壁を強く蹴り、マータの頭上まで跳ぶ。そして、頭上から脳天目掛けて神機で貫く。

 気色悪い女神像が崩壊し、怯むマータ。だが、攻撃の手は終わらない。

 

「喰らっとけ!」

 

 着地と同時に捕喰形態(プレデターフォーム)を取り、マータを喰らい尽くす。

 目前のアラガミから大量のオラクル細胞を喰らった俺の神機は能力を発揮し、並びに俺の能力すらも開花させる。

 

「神機……解放っ!!」

 

 神機解放(バーストモード)へ移行した瞬間。

 俺の視界は鮮明になり、気分よりも遅く時が過ぎ去るのを感じた。マータの行動は先程と比べると一段と遅くなっており、こいつと比べると俺の行動速度は倍ぐらいだ。

 そんな事も知らずにマータは立派な腕を俺へと向けて振り下ろすが、その場に俺は既にいない。

 

「おっせぇよ」

 

 苦戦していたはずのヴァジュラの禁忌種との戦いが楽に感じられる。

 今の今まで俺を苦しめていたマータの存在が、俺を一段と強くしたのかも知れない。

 

「……取り敢えず、死んどけ」

 

 ショートブレードによる連続攻撃をマータへ叩き込んだ後、ダウンしたマータに精一杯の力を注ぎ込んだ一撃を振り下ろす。

 思わず断末魔を上げながら堕ち逝くマータに向かい俺は――。

 

「黙れ」

 

 再び捕喰形態を取り、マータのコアを喰らう。

 耳障りな断末魔なんて聞きたくねぇんだよ。特にお前ら(マータ)のは、な。虫唾が走る。

 

「……さてと、もう一体は……逃げたか」

 

 全ての感覚が平常の倍以上となっている俺は、周囲のアラガミの場所すらも特定出来る。

 おそらくアラガミを喰らい、アラガミと同じ『オラクル細胞』で出来ている神機を解放する事で発動出来るのは、俺だけかな。

 そして、今まで出来なかったのに、今回で急に発現した理由は、この神機が喰らったオラクル細胞の分だけ力が出たって感じか。或いは、母さんらを殺したアラガミと同じ種類の奴らを目にした事により復讐を成し遂げる為の力を発揮したかのどちらかだ。

 

「まぁ、何にせよ。疲れたな」

 

 ふと、手にしている神機に目を落とす。

 目立った外傷は特にない。が、氷柱の連続攻撃を受け続けた際に傷付いたのであろう盾に細かい割れ傷……(ひび)が入っていた。

 

「……マジかよ。ま、リッカも耐久性には欠けるかもって言ってたし、当然か」

 

 マータのあの氷柱攻撃も認めるのも癪だけど、結構重かったし。

 奇襲と言わんばかりに攻撃を受けなければ、ガードする事もないし、リッカに怒られる事もなかったんだろうな。どちらにせよ、ヒバリさんとツバキさんには説教を受ける事が確定しているけどな。

 

「あ、そうだ。ヒバリさん」

 

 無線の電源をオンにし、ヒバリさんと連絡を取り合う事にする。

 

『……ァ……ャトさん。ハヤトさん、応答してくださいっ!』

「はい。ハヤトですけど」

『良かった。やっと繋がりました』

『おい、ハヤト。無事なんだろうな』

 

 電源を入れた瞬間にヒバリさんの声が鮮明に聞こえた。もしかして俺が電源を切った後もずっと声を上げていたのだろうか。

 それに、なんでそこにいるのさ。リンドウさん。

 

「えぇ、無事ですけど。……ちょっと神機は壊れちゃいましたね」

『……初めて禁忌種相手にそれなら上出来だ』

「えっと……。リンドウさんがいるって事で嫌な感じがするんですけど、その場に他の人がいたりなんて事……」

『帰って来てから覚悟するんだな。ハヤト』

 

 俺の問い掛けに対して答えが返ってきたのだが、その声はリンドウさんの声ではなく、姉の声だった。

 ……しかも、結構お怒りの様子で、声にドスが効いていた。

 

「つ、ツバキさん……」

 

 咄嗟に言い訳を考えて、どうにかして許して貰えないかなと思い話そうとしたのだが、訴えるように必至な言葉とは裏腹に耳元には「ツー……ツー……」と無機質な機械音が鳴る。

 ついさっき自分もした行為だが、実際に行われるとちょっとあれだな。

 

「ちょっと、ツバキさんっ!?」

 

 帰りたくなくなる気持ちを必死に押さえ付けて、迎えのヘリの場所まで歩みを進める。

 

 




次回から更新速度が更に遅くなります。
ゲームを振り返りながらやりつつも、話に矛盾が発生しないように考えて書くのしんどいですね……。(今更っ!!


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。