分かりやすいように、いつかリメイクしなきゃなぁ〜
とりま完結目指すけど
あの悪夢から3日経った。
少し寝込んでしまったが、私はなんとか戦車に乗っている。
あの悪夢を見た後、戦車なんて見たくもなかったが今まで私が人生の多くを積み重ねてきたのが戦車道だ。
私の人生の主柱には戦車道というものが突き刺さっている。
悪夢を見たからって今更やめる訳にはいかない。
それに、みほやエリカもいるんだ。
二人の為にもやめられない。
大丈夫、私は世界で活躍する最上位の砲手だ。
戦車なんて、怖くないんだ。
⬛︎
どうやら今日の練習は模擬戦をするらしい。
仲間内での練習だ。
「クロエさん、大丈夫ですか?顔色が悪いですけど?」
「ああ、大丈夫だよ、問題ない」
なんてことはない、少し手が震えただけだ。
いつもの私だ。
「しゃんとしてくれよ?うちらの稼ぎ頭なんだから」
「はは、しゃんとするよ」
うちの装填手ちゃんも私の事を心配してくれる。
そんなに顔色悪いかなぁ?
「大丈夫なようでしたらそろそろ始めます。皆さん持ち場について下さい」
「「「「了解!」」」」
あの車長のような怒声が飛ぶ訳ではない。
みほの持つ優しい声だ。
その声にどこかホッとする。
多分、いつもの戦車道に戻ってきたからだろう。
「戦車、前進!!」
その声と共に、戦車が動き出す。
聴き慣れた、戦車の駆動音。
私の耳を包み込むが、大丈夫だ、恐怖は感じない。
「で?車長、どこに向かいますか?」
操縦手の子がみほに問う。
「そうですね、荒野に向かって下さい」
⬛︎
荒野……、そういえば悪夢で見た場所も荒野だった。
けど、夢で見た荒野と学園艦の上に存在している荒野が似通っている訳はない。
こんな所であんな事は起きない。
当たり前の事を心の中で再確認する。
「予想では、敵はこの荒野を通るはずです。しかし、周辺に高台もありません。なので、この岩場が密集する地点で待ち伏せをしようと思います。索敵の一両を除いて全員岩場で待ち伏せに適した場所を探して下さい」
どうやら待ち伏せらしい。
確実性を求めた作戦だ。
各自、隠れるのに適した地点へ移動を開始する。
こちらも、すぐに移動した。
数分後、偵察をしている味方から無線が入った。
『敵車両確認しました。数は4、全車両で移動しています』
「了解しました。引き続きそこで偵察を続けて下さい」
『了解です』
どうやらみほの予想は的中したらしい。
敵戦車は荒野を突っ切っているらしい。
「で?こっちは3両で相手するのかい?」
「はい、こちらは3両で相手します。待ち伏せという有利な状況に加え、クロエさんの砲撃精度があればやれるはずです」
「ま、当たり前だね」
「初撃は外す確率の方が高いのに偉ぶらないで下さい」
「みほ、流石に辛辣すぎない?」
地味に傷つくんですけど〜〜!
確かに初撃は外しやすいけどさぁ、そんな言うほどかなぁ。
「相手は岩場を通るはずです、それを側面から攻撃します。クロエさん、十分に接近しますから外さないでくださいね?」
「オーケー、みほは心配性なんだよ」
「なら心配かけさせないでください」
私の実力を信頼してくれているくせに、そんな事言って〜。
そんなに私の何が心配なのかなぁ?
まあ、いいや。分かんないものは分かんないし。
『みほさん!どうやら警戒されているようです!敵索敵戦車、岩場を回り込んできます』
「隠れるのは間に合いそうですか?」
『いえ、スペック的にキツイかと』
「分かりました、報告ありがとうございます」
おっと、どうやら少し予想外の事が起きたらしい。
「クロエさん、砲塔を反対側に動かして下さい。敵索敵係を撃破します」
「オッケー」
本当は完全に岩場に誘い込んで敵を一気に叩きたかったんだろうけど、このままじゃ全車両逃してしまうかもしれないから、とりあえずこちらの状況を正確に知られる前に偵察車を撃破するつもりだろう。
「クロエさん、軽戦車にあてられますか?」
「ヨユー」
「では、確実に撃破してくださいよ、相手は右方向のあの岩から来ます」
「了解」
指を引き金に引っ掛け、狙いを定める。
感覚が研ぎ澄まされていくのを感じる。
どのタイミングで来ても、外さない程に集中が高まってくる。
「クロエさん……来ますっ!」
その声と共に、軽戦車が岩から車体を出す。
私は軽戦車が視界に入ると共に引金を引く。
ズトンッ
少し軽い砲撃音が響くと共に軽戦車が白旗をあげる。
「初弾っ…命中!」
「今日は冴えてますね、クロエさん!」
ああ、そうだ!
私のフィールドはここなんだ!
私がいるべき場所はここなんだ!
他のどこでもない、戦車の中だ!
モヤモヤと掛かって思考の邪魔をしていた霧が晴れていく。
私の中に巣食っていた恐怖が吹き飛んでいく。
いつもの、一人で何もかもをひっくり返せる、最強の私が帰ってきたんだ!
思考が冴え渡っていく。
今ならどんな敵が来ても私には敵わない。
そんな高揚感が力となって湧き出てくる。
「敵はまだこちらの数を把握できていません!私たちが囮となって相手を引きつけてるうちに撃破してください!」
みほがチームに指示を出す。
戦車が動きだす。
岩陰からその身を晒す。
晒した瞬間、敵戦車3両ともこちらを向く。
いきなり、偵察していた味方が撃墜されたのだ、他の敵を警戒して一箇所に集中しない方がいいのに、見事に団子状態になっている。
「今です!」
みほの声と共に、左右に展開していた仲間の戦車が火を吹いた。
けど、白旗は一つしかあがらない。
相手の戦車も砲撃してきたが、上手くかわした。
「クロエさん、撃って下さい!」
「あいよ!」
返事を返す前には引金を引いていた。
砲塔から爆音が轟く。
敵戦車履帯に当たったらしい。
「私たちは突撃します、援護をお願いします!戦車、前進!」
その声と共に戦車が前進しだす。
まだ動ける敵戦車は逃亡を開始する。
履帯の切れた戦車が悪足掻きに砲撃してくるが、それを避ける。
ヘイトを買った履帯の切れた戦車は味方に蜂の巣にされていた。
私たちはそれを無視し全力後退を始めた戦車の追撃を行う。
「後ろにピッタリと張り付いて下さい!相手は後部装甲を晒しています!当てれば勝ちです!こちらは前面装甲だけ晒しておけば何発かは耐えられます!」
みほの指示がとび、戦車がピッタリと敵戦車の後ろを走行する。
そのまま、二台の戦車は側面が崖になっている砂利道でチェイスを始める。
「クロエさん!当ててくださいね!」
「あー、分かってます、分かってます、なんかみほやっぱ今日私に厳しくない?」
「大事な場面です!力みもしますよ!」
「あー、確かに」
妙な納得をしながら、狙いを定める。
流石の私も移動攻撃なんてできないが、そんなの高校生の中にもいない。
でも、こういう直線的な走行をしている相手なら、走ってても当てられる!
装填は終わってる、後は引金を引くだけだ。
相手の砲塔は完全にこちらを向いている。
けど、戦車の前面装甲なら何発かは耐えてくれる。
ズトンッ!
相手の戦車が火を噴く。
砂煙もまう。
どうやら、大分下部分を狙って撃ったらしい。
けど、そんなの効かない。
相手が砂煙に隠れきる前に、右方向に少し動いたのが見えた。
私はすかさず右の方に砲塔を向け、操縦手も右に寄せる。
私は引金を引く。
砲撃の音が響く。
けど、白旗のあがる音が聞こえない。
「外した!」
「はっ!左です!クロエさん、左です!」
みほがそう叫んだ途端、砂煙が晴れ、砂煙に隠れながらも左に寄った戦車が姿を現した。
「ヤバイ!側面が狙われる!」
操縦手が叫び、戦車を急いで左側に寄せようとする。
しかし、敵戦車の装填はもう終わっていたみたいだ。
砲撃音が響く!
ドンッッ!!
私たちの真横からそんな音が聞こえる。
が、砲弾は戦車の湾曲装甲によって弾かれたらしい。
「はは、相手は随分と運が悪かったね」
「そうだね。さっきまで誰かさんが必死な声でヤバイとか言ってのが笑えるね」
「は!何いってんのさ!あんたこそ早く落としなさいよ!」
「後はあんたが合わせるだけだよ、そっちの操縦がフラついてちゃ私は狙えないからね」
「何を〜〜!」
操縦手の子はそう悔しそうに言い、一瞬のうちに相手の後ろについた。
「ナイッスー!」
「クロエさん!ここら辺は足場が悪いですから注意して下さいね!」
「へいへい、ヘマしませんよ!」
私がそう軽口を叩きながら、狙いを定める。
砲塔はこちらを向いてるから、一撃で仕留めるならもっとしたの部分だ。
戦車の揺れも頭に入れながら、狙いを定めた。
私は引金に指を引っ掛け、引金を引いた。
この後に、何が起こるのかも知らないで
「誰か!誰か!先生呼んできてっ!!」
「大丈夫!大丈夫!しっかりしてよぉ!!!」
「起きて!頼むから起きて!!!」
敵チームだった子の声が響く。
鳴き声に近い。悲しみを含んだ絶叫だ。
「戦車の救急箱持ってきて!!」
「手当をします!!手伝ってください!!」
「クロエ!どうしたのクロエ!!」
なんで、こんな声が響いているのだろう?
なぜ、こんな悲しい声が響いているのだろう?
ああ、そうだ、私だ…
私が、彼女を撃ったんだ……
戦車がいきなり跳ねたんだ、悪路につまづくように、跳ねたんだ。
そしたら、砲口が上にあがっちゃって、キューポラから体を出してた車長に当たったんだ。砲弾が。
そしたらその子が思いっきり叩きつけられて、頭から血を流して気絶して、気絶して、気絶して、本当に気絶?
私は人を殺したんじゃ?あの夢みたいに、私は誰かを殺したんじゃ?
怖い、怖い、怖い!!
違う、私は人殺しなんかじゃない!!
誰も殺したくなんかない!!
私は誰かを殺したりなんかしてない!!
違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う、殺してなんか、殺してなんか、殺してなんか!殺してなんかっ!!!
「くぅ…さん」
私は悪くない、私は悪くない、私は悪くない、私は悪くない、私は悪くない、私は悪くない!私は悪くないっ!!
「くぅ…ろ…さん」
あの夢の通りになるものか!あんな殺意を!悪意を!向けられはずがない!!いやだ!いやだ!いやだ!いやだ!いやだ!いやだ!いやだ!いやだ!!あんなのはいやだっ!!
「クロエさんっ!!」
「ハッ!?」
「大丈夫ですか?クロエさん?ずっとブツブツと独り言を言っていましたよ?顔色も悪いです。説明は私たちがしておくので、クロエさんは休んだ方がいいのでは?」
「えっ、あっ、大丈夫。多分、大丈夫。説明の方も私が悪いんだから、私が先生に説明するよ」
「本当に大丈夫何ですか?」
「うっ、うん、大丈夫さ」
私は辿々しい口調のまま立ち上がろうとする、けどよろけてしまう。
みほがさっと支えてくれる。
「肩を貸しましょうか?」
「良い、一人で歩けるから」
私はそう言ってみほの手をはねのけ歩き出す。
正直言って吐きそうな程気持ち悪い。
腹の中に変な物が渦巻いて、胃がどうにかなりそうで、頭も真っ白になりそうだ。
けど、誰かの手を借りたくなんかない。
今は、誰の手も借りたくない。
みほも同じ戦車に乗ってた子も私をどう思っているのかわからない。もしかして、私を酷い子だと思っているかもしれない。
否定方な感情を持っているかもしれない。
そう考えるだけで、もう誰とも喋りたくなかった。
この日を境に、私の運命は揺れ動いていくなんて、知るよしもなかった………