我、此処にて舞い奏でる   作:音原織那

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 勢い余って書いてしまいました。
 ISの方はどうするんだという方も多いかもしれませんが、就活に卒論とイライラしながら息抜きに書こうとプロットが書かれたファイルを入れたメモリを探したのですが、どうやら紛失したようです。
 そのうち時間ができたらゆっくりとプロットを作り直しつつ投稿いたしますので、そちらはしばらくお待ちください。(2月27日記載)


前奏曲

 僕が産まれた時、一族中の人間が狂喜乱舞したらしい。

 赤子に見合わぬ膨大な霊力、それは彼等にとっては希望とも言えたのだろう。

 超一流の陰陽師になる事ができると思わせられる程の素質を持った子供が分家の次男として産まれたのだから。

 分家の人間は本家の式神になるという『しきたり』、運の良いことに本家で産まれた次期当主と僕達兄弟は同い年であった。

 年を重ねる毎に強まる絆、互いの思いを尊重し合いながら自分達の家を再興する。

 そんな夢を見ていたのだろう。

 

 ――だが、彼等の喜びは長くは続かなかった。

 

『先天性術式不全』

 

 それが僕の掛かっていた病気の名前であった。

 それが発覚したのは三歳の中頃。大人達が膨大な霊力を持った僕に簡単な術を教える事でその道の興味を持たせようと画策した時の事だった。

 霊力を操る事は出来た。

 放出する事も体内に留める事も出来た。

 それを見た大人達は更にやる気を出して術式を印を教え始めた。

 だが、ほぼ全ての術式が霊力を通しても何も起こらない。

 初めて行う術なら失敗する事もあると初めの内は楽観視していた大人達だが、時間が経つにつれて何かが可笑しいと思い始めた。

 

 きっとそれが全てが変わった瞬間だったんだろう。

 

 僕の病気が判明したとたん、大人達は僕を相手にしなくなった。

 話しかけても鬱陶しい物を見るかのように睥睨し、何処かへ歩いていってしまう。

 両親は変わらず接してくれはするが、何処かよそよそしく。

 一族の会合にも連れていって貰う事ができなくなった。

 だが、その時の僕にとって一族の会合は同い年の子供である本家の女の子に会う唯一の機会だった。

 両親と兄が本家に入るのを見た後、僕は本家に入り込もうと壁をよじ登り、その光景を見た。

 

 見て、しまった。

 

『いいよ。俺が夏目ちゃんのシキガミになって、ずっと守ってあげる』

 

『ほんとうに?じゃあ、約束して?』

 

 そして、約束の呪文が紡がれる。

 これは遠い昔の記憶、僕の心に大きく罅が入った記憶だ。

 

◇◆◇

 

 

「久しぶりに見たな……あの夢」

 

 目を開けてゆっくりと周りを見回す。

 ギターにピアノ、三味線にトランペット。

 様々な楽器が転がっているいつも通りの自分の部屋。

 あの光景を見た後、僕は狂ったかのように自分が使う事の出来る術を探し続けた。

 それは徒労に終わったとも言えるし、成功したとも言える。

 誰かが作った式神を維持する。

 僕にできたのはそれだけだった。

 自分で式神を作る事はできないし、維持するために勝手に霊力を搾取していくからこそ出来たともいう。

 それがわかった後、僕は全てを投げ出した。

 家の事など知らないし、自分がやりたい事をやる。

 そう言った時、父さんも母さんも複雑そうな顔をしながら喜んでくれた。

 

 取りあえずは音楽にでも手を出してみよう。

 

 だが、使えるものを使わないのは勿体ない。

 

 そう考えた僕は、父さんに頼んで楽器の形をした式神を作ってもらった。

 式神にしてしまえば持ち運びに便利であるし、普段使わない膨大な霊力も勝手に使用してくれる。

 その結果が今現在の僕の部屋だ。

 そんなことを考えながら転がっている楽器を式符に戻し、立ち上がる。

 

「さて、今日はどこで演奏するかな」

 

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