我、此処にて舞い奏でる   作:音原織那

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 いよいよ、ポリフォニカ本編が始まったという気分が強くなってきました。
 希望としては、サックリとポリフォニカサイドを終わらせてレイヴンズサイドに写りたいところです。
 ここだけは外さないで欲しいと思うストーリー部分があればコメントをお願いします。
 気がつけば省略されている可能性がありますので。


第十楽章

 あちらの世界では星詠みと呼ばれる予知に近い占いが存在するが、それとは別に占星術と呼ばれる占いも存在している。

 これは、陰陽術や密教、神道等の術が土御門夜光と呼ばれる人物によって纏められる遥か昔に陰陽師が使用していた物だ。

 術と言ってはいるが、占星術は見る事のできる星から未来を読み解く技術であり、霊力やソレを練り上げた呪力といった物は必要としない。

 それ故に術の実力に関わらず、星を読み解く事に長けている者こそが陰陽師として優れていた者であったそうだ。

 

 何故そのような話をしているのかと言えば、術を使うことができなかった僕は占星術にも触れる機会があったというだけの話である。

 結果として、星を読み解く事はできなかったが、空を見ればどの星が何処にあるかが分かるようになった。

 そんな事ができるようになったところで、旅人にでもならない限り役に立たないのだが。

 それでもオリオン座の位置が徐々に地面に近づいているのを見ると、冬が終わると感じる事ができる。

 それだけでも趣があるというものだろう。

 

 思えば、この世界に来てから僕は星空を見る余裕すらなかった。

 この世界の常識やこの世界の文明がどの程度発達しているか等、知らなければいけない事が山ほどあったのだから。

 例えば、この世界は四面八臂の唯一神によって創造された物であるらしい。

 四つの楽器を用いて曲を奏で、世界を創造したのだとか。

 あちらの世界の人間からしてみれば眉唾も良い所だ。

 そして精霊の影響によってか、おかしな発展を遂げている文明。

 発電は全てが精霊と神曲楽士頼み。

 宇宙という言葉が存在せず、大航海時代に当たるものがないにも関わらず、ポリフォニカ大陸内を運行する飛行機が存在していたり。

 自分達が立っている世界が星かどうかすら分かっていない。

 空を見上げればあちらと変わらない星空が見えるというのに、この世界はどういった発展を遂げてきたのだろうか。

 ん……!?

 

「貴方ねぇ……現実逃避してないで、さっさと歩きなさい!」

 

「……え?」

 

 どうやら、思考に没頭してしまっていたらしい。

 現在は夜中。場所は校舎前である。

 本来なら学生は自宅に帰っていなければならない時間なのだが、今回ばかりはその校則は適用されない。

 何故なら、昼間にはっちゃけ過ぎた罰で学院内の見回りをしろと言われてしまっているからだ。

 

「わかってるよ、神曲楽士の資格持ってるんだし、多目に見てもらえると思ってたんだけどな」

 

「多目に見たからこの程度なのでしょう?」

 

 ……まぁ、適当な罰を与えておかなければ他の生徒に示しがつかないとかいう理由なんだろう。

 

「何か考えていたような気がするんだけど……思い出せないなら大した事じゃないかな」

 

「重要ならすぐに思い出すでしょうしね」

 

「じゃあ、ちゃっちゃと見回りをして帰ろう……か?」

 

 校舎の扉に鍵を差し込み、回す。

 だが、鍵を開けた際の手応えが感じられない。

 

「どうしたの?」

 

「……鍵が空いてたんだけど、不味いかな」

 

 セヴニエーラは何も答えずに頷き、回りを警戒し始める。

 その姿を見た僕は、片手にハーモニカを喚び出して、扉を開ける。

 可能性として、ありうるのは希少な鉱石でもあり単身楽団の心臓部でもある賢者の石を狙った泥棒、学内に生徒が忍び込む或いはこの時間まで残っているの何れかだろう。

 

「……あれ?」

 

 そこまで考えたところで、覚えのある霊力を感じた。

 

「……セヴニエーラ、もしかして」

 

「えぇ、フォロンの神曲みたいね。……もっとも、今度のは生きた死体みたいな神曲じゃないようだけど」

 

 聞きたい。

 普段、マトモに神曲を演奏できない彼が奏でる音を、セヴニエーラが神曲だと認めるソレを。

 

 今いる場所では霊力しか感じられない。

 

 神曲を聞く事が、できない。

 

 気がつけば、僕の足は動き出していた。

 演奏が終わる前に、その想いを耳にするために。

 

 走る。

 

 一歩踏み出す毎に、感じられる霊力が強くなっていく。

 

 跳ねる。

 

 階段をかけ上がる毎に微かに音が聞こえるようになる。

 そこで、僕は一つの事に気がついた。

 聞こえる音が鍵盤特有の澄んだ音でなく、人の声であるという事に。

 

「歌……?!」

 

 神曲を歌う、多くの人間が挑み、失敗してきていた物。

 ソレを、神曲すらもマトモに演奏できなかった彼が実現させている。

 今まで実力を隠していたのか?

 否。恐らく彼は、神曲のなんたるかを理解していないのだろう。

 だからこそ、聞いたままを演奏する。

 それしかする事ができなかった。

 ならば何故、彼が今神曲を奏でることができているのか。

 単身楽団を使っていないから神曲を奏でられないと考えているからであり、彼としては何かを思いつつ、気晴らしに歌っているつもりだからであろう。

 

『何処にいるのか』

 

『また、会いたい』

 

 そんな思いが見え隠れするような神曲だった。

 きっと彼自身の思いが込められているからこそ、神曲になったのだろう。

 そんな事を考えながら、僕がフォロンの下に辿り着いた頃。

 神曲の演奏は終わっており、聞き覚えのある歓声が上がっていた。

 

「フォロン、最終下校時刻は過ぎてるよ……プリネシカさんとペルセルテさん?」

 

 とりあえず声を掛けるべきだと思い、僕は教室へと足を踏み入れる。

 そこに居たのは、窓際で固まっているフォロンと興奮したように話しかけているペルセルテさん、その姿を穏やかに見つめているプリネシカさんだった。

 

 ……とりあえず、何が起きているのか教えてほしい。




 本来の設定通り、フォロン君は天才です。
 ユギリ姉妹としては、主人公側に傾いてくれると嬉しいなぁ、とか考えながら書いてます。
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