我、此処にて舞い奏でる   作:音原織那

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 久しぶりの更新です。
 筋書きが決まっているのに文章が出てこないというのは初めての経験した…………。
 また、介護職って慣れるまでは趣味に時間を費やせる精神的余裕があまりないんだなと実感しました。
 駄文ではありますが、楽しんでいただけたら幸いです。


第十四楽章

「で、ダングイスに契約精霊ができたっていうのが変わった事って訳ね」

 

 ……実際のところは、他にも理由があったりするが、僕にしか見えない物は証拠にはならないだろう。

 例えば、契約精霊と神曲楽師の間には僕の世界の式神と術者の間のように薄い霊力のラインが結ばれているが、彼らの間には結ばれてはいない……とか。

 まぁ、そういった視点で見るのならば、他にも疑問に思う人物は何人かいるのだが。

 学院長とか、学院長とか、学院長とか。

 

「まぁ、普通に考えれば本人の努力が実ったで済むんですが……」

 

「今回の場合は可笑しいってわけね」

 

「えぇ、彼は精霊を神曲の奴隷に近い何かと勘違いしている節がありますから」

 

「……本当に、長期間学園に在籍していたのかしら?」

 

 ユフィンリーは軽く溜息をついてから立ち上がり、ダングイスに何か変化があるようなら連絡をするようにと言って、去って行った。

 

 そもそも、何も起きないという事自体があり得ない。

 そんな事を思いながら、少し離れたところで騒いでいるダングイスとその契約精霊を見る。

 僕の見た精霊の姿は額に二枚の羽を生やしたタヌキ。

 本人はアライグマを主張しているが、あれはタヌキであった。

 自身の精神の変化を恐れないのであれば、精霊は形どっている姿を変える事が出来る。

 それ故に、自身の世界において人を化かすとされるタヌキの姿をしているのは何とも皮肉が効いている。

 おそらくだが、今まさにダングイスはあの精霊に化かされているのだろう。

 ……さて、どうなることやら。

 

 

◆◇◆

 

 

 あの後、学院長に侵入者について聞きに行った。

 しかし、返ってきた言葉は――

 

『些事ですので貴方が気にする必要はありません』

 

 ――というものであった。

 

「あの言い方ってさ、もう犯人の目星はついてるって事だよね」

 

「ええ、しかも泳がせている最中でしょうね」

 

 僕が元居た場所に帰る手がかりが見つかったなどという言葉で話を逸らそうとする程だ。

 その手がかりも何時から見つけていたのか、怪しいものだろう。

 

「はぁ…………ん?」

 

 結局、手がかりについての話すらも授業時間が近づいているという理由の下、まともに話す事すら出来ず学院長室から追い出されてしまった。

 まぁ、次の授業時間に関しては遅れる訳にはいかないので仕方がないのだが。

 そんなことをセヴニエーラと話しながら、授業場所の教室へと向かっていると、見覚えのある後姿が目についた。

 

「おーい!」

 

「む……ソウキ、だったか?」

 

 声を掛けないのも不自然だろうと、前を歩いていたフォロンとコーティカルテに声を掛けるが、どうやらタイミングが悪かったらしい。

 あからさまに、不機嫌そうな顔で僕を一瞥し、また前を向いてしまった。

 

「あ……あはは、ソウキ達もこのまま教室に行くの?」

 

 コーティカルテの態度に困った顔をしつつ、フォロンは僕らに問いかけてくる。

 この後僕らが受講するのは、ただの授業という訳ではない。

 去年まで学んできた事を後輩である基礎課程の生徒に教える事で自分達の復習と後輩の学習を助けると言った目的がある授業時間だ。

 しっかりと去年までの授業内容が身に付いていなければ恥をかいてしまう上に、後輩の勉学の妨げにもなってしまう為、責任を持って行動する事が求められている。

 

「うん、そのつもり。……まぁ、単身楽団が上手く扱えない僕に教えられる事があるのかといえば、未だに疑問だけどね」

 

「フン……どこも似たような物に決まっている。授業ごっこには変わりないのだからな」

 

「まぁ、ソウキの場合は単身楽団が扱えないからという理由でフォロンと二人で授業ができる分、他よりも形にはなっているでしょうね」

 

 まぁ、その代わりと言っていいのかはわからないが、僕等が教えるクラスの生徒は少々癖のある生徒が混じっている。

 例えば――

 

「あっ、フォロン先輩とソウキ先輩!おはようございます!」

 

「おはようございます」

 

 ――ユギリ•ペルセルテにユギリ•プリネシカ。

 年度末にあった騒動で一緒になった二人はトルバス神曲学院への入学を果たしていた。

 そして、二人は僕等の担当だと言うかのように入学初日にして、このクラスへの配属が決定されていた。

 そして、同い年だから敬語なんて使わずに対等な関係で話して欲しいと言っても聞いてくれないのが現在の悩みでもある……。

 

「うん、おはよう。なにか集まっていたみたいだけど、どうかしたの?」

 

 教室に入ると、僕らが入ってきた事に気がついた二人が挨拶をしてくるが、他の生徒は僕らの姿に気付くことなく教室の中心に目を向けている。

 一体何を見ているのか、予想がつかないわけではないが念の為ペルセルテに確認する。

 

「あぁ、それなんですけど――」

 

 ペルセルテはすぐに僕の質問に答えようとしたが、幸せの絶頂とも言える声によって遮られる。

 

「――やぁ、フォロンくん、ソウキくん。調子はどうだい?」

 

 僕らのクラスの問題児と言っても過言ではない男、コマロ•ダングイスが生徒達の中心から出てきてそう言った。

 その肩にはいやらしい笑みを浮かべたタヌキが乗っている。

 

 それを見て、また面倒な事になりそうだと僕はひっそりとため息をついた。

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