今回も今回とて、当たり前のように時間が空いた上で文章の質も落ちているだろうと理解しつつ投稿させていただいた音原織那です。
どっからどう考えても生存報告が小説投稿になってるとしか思えない現状に、自分でもびっくりですが言い訳をする事はしません。
どうせまた時間が空いてしまう予感しかしないので。
「……………………っ」
上を見上げればネオンの海、下を見下ろせば星の海。
血の気が引いてしまうような浮遊感。
現在僕は絶賛落下中である。
それもまだ春が少し過ぎたはずの時期なのにも関わらず真夏としか思えない程の熱気をこの身に受けながら……である。
普段であれば慌ててしまうであろう状況ではある。
だが、それもすぐに終わる。
「――随分と、落ち着いているのね?」
静かな声とともに銀の紐状のものが僕を釣り上げる。
「自分が何もしなくても、助けてくれる相棒がいるからね」
改めて、周りの状況を確認する。
見覚えのある風景、明らかに春から外れた気温、…………明らかに見覚えのない白い巨人。
「此処……何処?」
「……弾き出されたんだよ。多分……ね」
「……何処へ?」
――ポリフォニカ大陸から、僕の故郷へ……さ。
◇◆◇
時間はその日の夕方まで遡る。
「……ふぅ、これでだいたい終わりかな。思ったよりも時間がかかっちゃったね」
午後の授業で、神曲を演奏したダングイスとそれを止める事ができなかった僕とフォロンは罰として実習室の掃除をするように指示された。
まぁ、止めるどころかコーティカルテが応戦しようとしていたのを見逃してもらえたと考えれば安いものかも知れない。
「精霊の手を借りずに自分たちの手でって条件付けられちゃったからねぇ……」
「普通なら当然の事ですけど、ソウキ先輩がいますから……」
「それよりも、主犯がサボってるのが納得いきません!」
僕の呟きに言葉を返してくれたプリネシカとペルセルテは見ているだけで何もできなかったからといって掃除を手伝ってくれた。
……まぁ、以前に神曲を奏でて掃除を精霊にやってもらった僕がいるからこその条件だとはわかっているんだけど、2人には申し訳ないと思っている。
「あー……それね?ダングイスにはある意味すごい特技……というか才能があるから」
「才能……ですか?」
「そう、都合の悪い事は全部忘れる。もしくは都合のいいように記憶を改竄する。簡単に言ってしまえば現実逃避の才能があるって事なんだけどね」
「そ、ソウキ?それはさすがに言い過ぎじゃ……」
僕の発言に顔を引きつらせたフォロンが反応するが、隣でコーティカルテが頷いているのを見ると彼女も同意見のようだ。
「そいつの言うとおりだ。あの本当に契約したかどうかもわからんタヌキが突然消え去ったとしても、恐らく次の日には全てを忘れて今まで通りに行動するだろうな」
意見の方向性に関しては大きな差がないけど、言ってる事はさらに酷い。
普段からちんちくりんだの、本当に上級精霊なのか疑わしいだの、フォロンに精霊が喚べるわけがない等と主従揃って言いたい放題言われたからなぁ……さっきの騒ぎで憂さ晴らしができなかったのを根に持っているみたいだ。
そんな事を考えていた時、覚えのある感覚が近くで発せられた。
窓の外にはどこか歪な人影と蒼い輪郭の光。
「……これはっ」
僕が気がついたのに一拍遅れて何かに気が付いたコーティカルテが窓の外に視線を向けながら6枚の羽を展開する。
それと同時に人影とその周辺で霊力が拡散し、蒼い輪郭はその光を増す。
「ねぇ、セヴニエーラ。嫌な予感がするんだけど」
「あら、奇遇ね。私も嫌な予感しかしないわ」
……今回の罰掃除だが、最終的に学院長の温情でこの程度に済ませた云々と教師が言っていたような。
前回にしろ前々回にしろ、学園長が関わった事柄で学校に残った時は大抵事件に巻き込まれていたような……。
――ガシャン!
そんな事を考えている間に蒼い輪郭の光が窓を破りながら室内へと侵入。
その光は徐々に形を成していき、半人半獣の形態――リカントラへとその姿を変貌させる。
「――精霊?!」
「まさかこの前みたいに暴走してるんじゃ……」
先日のコーティカルテの一件を思い出したのか、顔を青ざめるペルセルテと近くに置いてあった単身楽団へと手を伸ばすフォロンの姿を見ながら僕は考える。
先程から外で拡散され続けている霊力、その一部がこの精霊に力を与えていることからこの精霊は契約精霊だということだ。
しかも、もしこれが何者かの思惑によって行われているのだとしたら、侵入直後に攻撃を仕掛けてこない理由は何か。
其処まで考えた時、考えたくもないことを考えてしまった。
霊的な繋がりが感じられないにも関わらず精霊契約を結んだという生徒の存在、先日学院に侵入したという泥棒、そのどちらもが今回の事と関係しているとしたら……。
先ほどから感じている拡散されている霊力の大部分がつい先程にも感じた覚えのあるもので間違い無いのだとすれば……。
今目の前にいるのはバルゲス・ゴルト・グリディアム。コマロ・ダングイスの契約精霊であると自称していた精霊という事になる。
ダングイスの霊力はバルゲスには一切供給されていないところを見るに、ダングイスの陰に隠れるように神曲を演奏して霊力を拡散している者こそが契約者なのだろう。
それが何者で、何の目的があるのかはわからない――
「……バルゲス・ゴルト・グリディアム、だっけ?正直に言って、そんな簡単に形状の変化を行うなんて正気の沙汰じゃ無いと思うんだけど」
「なっ!?」
「えっ!?」
「ほぅ……?」
――が、それに付き合う理由が僕にはそもそも無い。
驚き方も人それぞれではあるが、バルゲス本人もフォロン達も皆、驚いたような声を上げる。
……まぁ、一柱だけ興味深い者を見るような目で声を上げた者もいたが。
「ダングイスはそこの所どう思う?」
◇◆◇
やばい!
俺がそう感じたのは俺の正体を見破ったあのガキの眼を見た瞬間だった。
理性や感情の前に感じたソレは俺の姿を参考にした獣特有の本能とでもいうべきものだ。
即座にガキども周辺の天井を精霊雷で吹き飛ばし、仮の契約者(ダングイス)を置き去りに元々の契約者である女性の下へと走る。
想定外の行動に慌て、文句を言いはじめる彼女に計画の中止と本命の調査だけを行うように申告しながら、俺は本来の調査目標であった学校内では『開かずの扉』と呼ばれている地下階段を目指し、彼女を抱えて走り始めた。
走り始めた筈だった……。
突然体に力が入らなくなり膝をつく。
契約者であったライカは何が起こったのか察したのか、俺の腕から抜け出して振り返ることもせずに走り去っていった。
突然の事に思考が纏まらない。
何故俺が膝をついているのか。
何故俺の胸元から翆色の光を纏った腕が生えているのか。
何故、何故何故何故何故何故ナゼナゼナゼナゼナゼナゼ……。
「ダメじゃないですか、しっかり戦闘をしてくれないと……この調子なら戦力として手元に残しておくのは諦めたほうが良さそうですね」
身体の全てが粒子に変わる直前、そんな言葉を放つ翆色の人型を見た気がした。
◇◆◇
バルゲス・ゴルト・グリディアムの正体を言い放った直後。バルゲスは僕達の頭上を吹き飛ばし、消えていった。
頭上から落ちてくる瓦礫を思わず使ってしまったのであろう精霊雷でプリネシカが僕たちを護ったり、ソレを見て衝撃を受けてしまったペルセルテが周りの状態も確認する事なく走り去ってしまい、その後をプリネシカとフォロンが追いかけ、フォロンの後をコーティカルテが追いかけていくという事態があったが、僕としてはその直前に起こった現象に衝撃を受けてしまったので行動できず、その場に佇んでいた。
「ソウキ、もう動いて大丈夫よ?」
「あ、うん」
セヴニエーラの言葉にハッと気がついたものの、今も尚その場にある光景から目を離すことができない。
地下からせり出してくるかのように現れ、逃げるバルゲスの背中をその腕で貫いた学院長の姿が。
いつも通りに笑いながら此方に意識を向けつつ歩いてくるその姿が。
人でありつつも人でないことを表しているようでとても悲しく感じた。
その後の事はあまり覚えていない。
学院長に連れられて、巨大な鍵盤楽器のように見える何かの下に連れていかれ、鍵盤に触らされた。
そして生じた見覚えのある穴にセヴニエーラと共に落とされたというところだろう。
どうしてそうなったかなどはわからない。
だが、気がついた時には僕の身体はセヴニエーラと共に夜空に投げ出されていた。
そして全ては冒頭へ戻る。
ちなみに、ダングイスは瓦礫が降りしきる中、怪我をした様子もなくその場に立ち尽くしていた事だけは明言しよう。
という訳で、ざっくりとポリフォニカサイドはこれにて終了。
もちろんちょくちょくと絡んでくる部分は出てくる予定ですが、しばらくはレイヴンズサイドになる事でしょう。
まぁ、混ざり切った世界観ですんでレイヴンズも原作通りに全てが進む訳ではない事だけは宣言しておきます。