我、此処にて舞い奏でる   作:音原織那

18 / 18
 はい、今回は珍しく時間が空いておりません。
 まぁ、比較的というだけですが……。
 文章の状態が戻ってきているのかすらよくわかりません。
 きっと駄文であることには変わりがないのかもしれませんね。
 そんな作品でよければ読んでいっていただけると幸いです。


東京レイヴンズ
第十七楽章


 何故自分が故郷に戻ってきたのか。

 

 かつて、エデンと呼ばれる場所から追放された者達の様に、僕は彼処で暮らす者達が知る必要のない知識を持っていた。

 彼の楽園において、知恵という果実を人間は手にする必要がなかった。

 そのようなものは生きていくために必要なかったからだ。

 ならば、何故その果実は楽園にあったのか。

 僕が思うに、果実そのものが人間の今後を決める試練だったのではないだろうか。

 果実を食べなければ神が全てをお膳立てをし、果実を食べてしまったのであればその知恵を以って自立させる。

 楽園から追放をしたといってもそれ以降、神が人間に関わることがなかったというわけではないのだからどちらにしても神としては構わなかったのではないだろうか。

 

 そう考えた時、ポリフォニカ大陸のある世界を作った存在は知恵の実と言うべき物の存在を人間に与えなかった。

 なにせ、この世界の創世神話は全てが精霊寄りの内容であったのだから。

 それ故にあの世界に違和感を持ってしまった僕は防衛機構とでも呼ぶべき物によってポリフォニカ大陸から弾き出された。

 あの鍵盤楽器……いや、あの世界を作ったと言われる四つの奏世楽器が一、『無限鍵盤(インフィニット・ピアノ)』に触れたその瞬間に。

 

「……まぁ、違和感を持ったというだけで、何に違和感を感じたのかさえ理解してはいないのだけれども」

 

「……ソウキ?」

 

 直感的に理解した事に対して呟いた僕にセヴニエーラは訝しげな様子で尋ねてくる。

 それに対して何でもないと返しつつ、僕は再び眼下の光景に意識を向けた。

 何かの祭壇と思われる場所に在るナニカ。

 一つはミイラのような見た目で背中に四つの白い羽根を生やしたナニカ。もう一度言うが翼ではなく羽根である。

 そしてもう一つが背中に二つの白い羽根を生やした白い巨人。ただし、巨人といってもその形状はエネルギーで出来たシルエットのようにしか見えないナニカであった。

 

「……セヴニエーラ、僕の目がおかしくなったとかじゃないよね?」

 

 どちらの存在も恐らく精霊、もしくはそれに類する存在だろう。

 けれど、そのどちらもが自分の知っている常識ではあり得ない存在だった。

 故郷において精霊などという存在は見たことがなかった。

 ……まぁ、それについては霊災すらまともに体験をしたことがないのだから知らなかったというだけで済ますことはできるだろう。

 だが、あのような精霊はどちらも見た事がない!

 片方は明らかに精霊が構築した肉体ではなく人そのものの肉体である上に、背中の羽根は徐々に端から崩れているのが見て取れる。

 そして、もう片方はあれだけのエネルギーを持っているのにも関わらず二枚の羽根しか持っていない。基本的に精霊はその位階が上がる毎に振るう事の出来るエネルギー量が多くなる。逆に振るうエネルギー量が多いのならば位階も相応であるはずだし、後から精霊の位階が変化する程の何かが起きる事も余程の例外が無い限りありえない。

 

「あの巨人については、まだ自然に発生する事もあり得るけれど……」

 

 セヴニエーラは酷く言い辛そうに口を開く。

 どこか怒りを抑えるかのように、狼狽を隠すかのように……そして、憐れむかのようにその言葉を紡いだ。

 

「……もう片方は、ありえない。あれはーー」

 

 

 

 

 ーー精霊奇兵、その出来損ないの成れの果てよ。

 

 

 

 

 精霊奇兵。

 かつてポリフォニカ大陸で猛威を振るったテロ集団、『嘆きの異邦人』が作り出した人と精霊を融合させて1つの存在にするという忌まわしい技術によって作り出された存在。

 そうして生まれた存在は半人半精霊とも呼ばれ、肉体的損傷に弱いが精神的には安定している人間と、肉体的な損傷には強いが精神的な攻撃に弱い精霊。両者を融合することで、理論上は互いの弱点を打ち消すことができ強靭な存在となるという計画だったらしい。

 だが、多くの場合融合に耐えられず、人格が破壊され唯の操り人形と化し、人格が破壊されなかった場合でも大抵は何かしら重大な問題点を抱えるとのことで、基本的には使い捨ての駒として運用されていたんだそうだ。

 しかもセヴニエーラが言うには、本来と違ってアレは死体に精霊を押し込めているらしい。

 恐らく、肉体の記憶によって精霊の人格が混乱しつつ崩壊しているのが今の状況で、このまま放置すれば精霊雷を維持することすらできず暴走し、いずれ肉体の耐久の限界が来たところで爆弾のように四散するとの事。

 

 ……反吐が出る。

 

 セヴニエーラの説明を聞いて僕が初めに思った感想はそれだった。

 そしてそれは意図的であれ、偶然であれ、あの存在を作り出した者が存在するという事だ。

 

「……セヴニエーラ、悪いけど手伝ってもらえる?」

 

「言われるまでもないわ。見てるだけで気分が悪くなるもの!」

 

 このままにはしておけないし、作り出した者が同じ事を繰り返す前に止めなければならない。

 そう考えながら僕達は再び夜空に身を投げ出した。




 という事でレイヴンズサイドが始動というわけですが、実際の所二つの世界観をクロスさせている関係上、どんどんどちらの原作からも離れていくことが現段階で確定しております。
 初っ端から白の精霊だったり精霊奇兵だったりしている時点で展開がわかってしまったという方も居そうな気がしなくもありませんが(笑)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。