どこまで話が進むのか、自分にもわかりませんw
第一楽章
僕が超一流の陰陽師になれると親戚一同が考えたのはその膨大な霊力量だけというわけではない。
その見鬼の力が異常な域に達していたからでもある。
高位の見鬼は霊気の流れや霊的存在を視認することだけに留まらず、術式や法理を見極めることが出来る。
だが、僕の瞳にはそれ以上に不可思議な物が見えていた。
赤、黒、白、青、翠、紫、金、銀といった八色の色が時に混ざり合い、時に色に会わせた塊となる。
そんな不可思議な光景が何を表しているのか、狂ったように術式を探し、学んでいく内にそれが解るようになった。
戦中に土御門夜光が執り行った大儀式の失敗により、東京を中 心に頻発するようになった異常現象、霊災。
それは自然界に満ちる霊気のバランスが乱れ、瘴気へと転じ、自然界の自浄作用の限界を越えた時に生じる。
この自然界に満ちる霊気のバランスこそが僕の見ている色の正体だ。
そう考えた時、僕は考えてしまった。
『色のそれぞれに霊力を注げばどうなるのか』
そんな馬鹿なことを考えてしまったのは、久しぶりに同年代の子供と話し、自身の奏でる音を喜んでもらえたためか。
全ての色が空間から無くなったことで瘴気へと転じた瞬間を見た経験があったからか。
自身が霊力を音に乗せながら、曲を奏でると幾つかの色が集まるからだろうか。
未来の自分が見れば止めたかもしれない。
全てが終わったこの瞬間。
そんな考えなど、今となっては何の意味もないことではあるが。
◇◆◇
「ここ……どこ?」
小学五年の夏、僕は公園で演奏をしながら自分の好奇心を満たすために行動した。
この時、僕は好奇心は猫をも殺すという意味を身をもって体験したと言える。
霊力を音に乗せながら、均一になるように八色の光に霊力を注いでいく。
するとそれに合わせて八色の光の塊が大きくなり、それぞれの光が離れ、空間に穴を作り出した。
それに驚いた僕は演奏を中止して穴をよく見ようと近づいた。……近づいてしまった。
穴を覗き込んだ瞬間、光が弾け、穴もその形を崩す。
そして、穴を覗き込んでいた僕は形を崩した穴に巻き込まれて落ちてしまう。
次の瞬間、僕は見た事がない公園に佇んでいた。
自分でいっても訳が解らないことには変わりない。
後ろには大きな噴水、道路までの距離はかなりある。
付け加えるのなら人の姿もあまり見えない。
……これは。
「演奏するには持ってこい?」
先程まで演奏していたフルートを持ち直し、大きく息を吸い込む。
高音の音色は自身の不安を和らげ、逆に気持ちを高揚させる。
あぁ、これだから演奏はやめられない。
楽器を触っているだけでも気持ちが落ち着くというのに、それが両親が与えてくれたものだというのなら尚更だ。
清らかな音色が響き渡り、周囲に浮いた色の塊も楽しげに揺れている。
…………ん?
色の塊が揺れている?
演奏を中断して周りを見れば、大小様々な色の塊がいろんな場所で浮いている。
明らかに人の輪郭をしているものから地面から生えていたり、浮遊した丸い形の物まで。
自身の周りを揺れていた丸い塊は何処かに飛んでいった。
背中を冷たい物が走った。
霊気のバランスは何処に行った……。
霊気を構成した要素が好き勝手に移動し、それでも霊気のバランスが崩れているようには思えない。
何が起きているのか、そもそも此処は何処なのか。
僕の中にそんな漠然とした疑問が再燃するのに時間はかからなかった。
……………………ポン
「え?」
「取り合えず、署まで来て貰っても良いかな?」
本当に此処は何処なのだろう。