我、此処にて舞い奏でる   作:音原織那

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第七楽章

「……はぁ」

 

 早春、木に花の蕾が付き始めた頃。

 僕はため息をつきながら学院の校門へと向かっていた。

 

「鬱陶しいわね。そんなに嫌なら断りなさいよ」

 

「生活費と学費を出して貰ってる身だからね。雑用くらいはしないといけないんだよ……それに」

 

「それに?」

 

「頼まれた学院内の案内が嫌な訳じゃないんだ。……学院長さんの雰囲気が、ね?」

 

「あぁ……腹黒の方ね」

 

 僕に学院の案内を頼んだ際の学院長さんは何かを企んでいる時のような胡散臭い雰囲気を纏っていた。

 彼がそのような雰囲気を纏っていた時、総じて良い事があったようには思えない。

 二年前の暴走精霊の時、校内の見学を許可すると言われた時も同じ雰囲気を纏っていた。

 全てが学院長さんの掌の上な気がして、気が滅入ってしまうのだ。

 

「――――曲学院前っ!」

 

 気がつけば、既に校門まで来ていたらしい。

 落ち着きをなくした小動物ように銀髪の少女に話しかけている金髪の少女が見える。

 髪の色は違うものの、二人の顔立ちは似通っており、姉妹――それも恐らくは双子であると見当がつく。

 

「来たよ来たよ遂に来たよっ!ねぇねぇプリネ、遂に本物のトルバス神曲学院まで来ちゃったよ?!うわぁ、綺麗、大きい、すっごい!」

 

 ……というよりも、テンションが上がりすぎではないだろうか。

 紫のリボンで二つに結んだ長い髪がピョコピョコと跳ねて、尻尾のようにも感じてしまう。

 

「嬉しそうだね……ペルセ」

 

 自分と同じ顔の少女がはしゃいでいる様を見て、何処か困ったかのように声を掛ける少女。

 こちらの少女は金髪の少女と同じ色のリボンで髪を飾っているが、金髪の少女と比べると地味な印象を受ける。

 その光景を見るだけでも、二人の少女は双子であっても性格がまるで違う事がわかる。

 ……ん、双子?

 そこで、学院長さんの言葉を思い出す。

 

『案内するのは双子の姉妹らしいので、直ぐにわかるでしょう』

 

 そう言って、顔写真を見る事もなく追い出されたのだが……なるほど、確かに双子のようだし、直ぐにわかる。

 

「えっと……ユギリさんでいいのかな?」

 

 ビクンッ!

 と音が立ったかのように金髪の少女は固まり、錆びた機械のようにゆっくりと此方に振り向いた。

 

「は、はははい!ユ、ユユギリ・ペルセルテです!」

 

「はい、ユギリ・プリネシカです」

 

 流石に、自分がはしゃいでいたのを第三者に見られるのは恥ずかしかったのか、真っ赤になって慌てながらペルセルテさんは自己紹介をした。

 それを見て、プリネシカさんも苦笑をしながら自己紹介をする。

 

「僕はツチミカド・ソウキです。今日は二人の案内を任されています」

 

「「よろしくお願いします!」」

 

「あ、同い年だそうですから、固くならなくても良いですよ?」

 

 再び固まるペルセルテさんと目を見開いて驚くプリネシカさんを見て、僕は思わず笑ってしまった。

 

 ……人を驚かせるのって、意外と楽しいかもしれない。

 

 

◇◆◇

 

 

「ほえ~、これが神曲学院の中かぁ」

 

 トルバス神曲学院は外見こそ昔の王宮をそのまま利用したために豪華であるが、校内の様子は通常の学校と大差がない。

 廊下も教室もありきたりといえる内装だが、それでも通常の学校とは一線を斯くす物がある。

 例えば、複数存在する実習室であったり、多くの教室が防音仕様になっていたりと様々であるが、その際たる物は――

 

「くぴ!」

 

 ――学校の見学に対してルート案内を下級精霊(ボウライ)が行っている事だろう。

 本来ならば、下級精霊だけに任せて僕のように説明する人間が同行するといった事はない筈だが……。

 

「……それだけ、この子達が重要って事なんだろうな」

 

「それか、貴方をこの子達に会わせておきたかったんでしょうね。あの腹黒は」

 

 セヴニエーラの言葉を聞いて、ニコニコと笑っている学院長さんの顔を思い出してしまい、再び溜め息が漏れる。

 あの人は何を考えているかわからない……。

 

「流石、神曲学院!案内まで精霊がやってくれるなんて、こんな間近で顕在化した精霊を見たのなんて初めてだよ~。これだけでも下見に来た甲斐があったね!」

 

 案内をしていたボウライを捕まえたペルセルテさんはくるくると回りながらプリネシカさんに同意を求める。

 それに簡単な返事を返しながらも少しハラハラしているプリネシカさんの様子を見るに、何かと舞い上がるのはペルセルテさん。

 それを見守りながら、暴走しそうなら引き留めるのがプリネシカさんの役割と二人の間では決まっているようだ。

 そうして、暴走しかけながらも見学をしていくペルセルテさんを横目に、プリネシカさんは僕の肩に乗っているセヴニエーラをチラチラと見る。

 

「あの……もしかして、そちらの猫は――」

 

 ――ぐぅ。

 

 セヴニエーラが精霊だと気がついたのか、質問を使用としたプリネシカさんの言葉に被せるように、音がなる。

 どうやら、音源はペルセルテさんのようで、少々顔が赤くなりつつ笑っている。

 

「あ、あははは」

 

「……えっと、丁度良い時間ですし、食堂で話しましょうか」




 というわけで、本編始動です。

Q.レイヴンズの作者である「あざの耕平」氏が書かれたダン・サリエルシリーズのキャラは登場するんですか?

A.……知りません。きっと帝都の何処かで単身楽団を買い漁っている姿が見られることでしょう。
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