神器作りし吸血鬼~Vampires that made God's weapons~ 作:ぱる@鏡崎琴春夜
東欧の辺境に多くの畏敬の念を集めるそれはそれは紅い館があった。
その名は紅魔館。そこには当代最強といわれる吸血鬼のカーディナル・スカーレットが住み着いていた。付近の妖精や怪物は彼に忠誠を誓えばどんな化け物であろうと彼に庇護してもらえるある意味の楽園であった。
1492年、そんな辺境伯であった彼の元へ一つの吉報が届けられた。
数年前に結婚した女性との間にできた娘が生まれたとのだと。
それを聞き、多くの臣下は歓び、宴を開く。まさにどんちゃん騒ぎで収まることを知らないほどだった。
「生まれたのか?」
バリトンの聞いた威厳のある言葉が寝台に横たわる女性──アンナにかけられる。
「えぇ、貴方様。元気な女の子です」
産後間もないというのにこちらに、にこやかに話すアンナには頭が下がるなと思いながら寝台の近くにあった椅子に腰掛ける。
「この子が我の娘か・・・」
アンナの横で、すやすやと寝息を立てる幼子。口は歯が生えそろっていて、他の歯よりもとがった八重歯もしっかりとその存在を主張している。
「れっきとした吸血鬼ですもの。歯が生えそろっているのはよくあることでしょう?」
「あ、あぁ・・・」
我はそう曖昧に返す。
「どうしたのです?」
アンナが不思議そうにそう問いかけてくるが、我はやはりこれも曖昧に返す。
それほどまでに我は見とれていた。
我が子の・・・我らが種族にとって大ダメージを与える太陽のごとき髪の毛に・・・
1502年、娘がそこそこ大きくなってきた頃、スカーレット家に第二女が生まれる。
「・・・妹?」
「そうです」
私の問いかけにまっすぐうなずき返す紅 美鈴。
彼女は自慢の赤毛が地に着くこともいとわず、屈んで私に目線を合わせる。
「──なら、見に行きましょうか」
私は緑の中華服に身を包んだ美鈴に手を引かれ自室を出る。
「かしこまりました。ジェニーお嬢様」
妹か・・・どんなな感じなのか考えるとつい頬がほころんじゃうな。
コンコンとノックした後にガチャリと鍵のかかっていない扉を開ける。
「アンナ様、ジェニーお嬢様をお連れしました」
後ろで美鈴がそう言う。
「よくきたな」
しかし、返ってきたのはお母様の声でなくお父様の声だった。
「し、失礼いたしました。当主様がおられるとは知らず・・・」
「なに、別に問題は無い」
そう言い交わすお父様と美鈴を尻目に私はゆりかごに近づく。
そしてゆりかごの中を覗いた私は思わず、わぁ!と驚きの声を上げる。
──そこにいたのは、薄く青みがかった髪の毛を振り乱して一心不乱に惰眠をむさぼる妹の姿だった。