神器作りし吸血鬼~Vampires that made God's weapons~   作:ぱる@鏡崎琴春夜

3 / 7
 結構ほのぼの回


少女ハ目覚メタ

「しばしもやまずに鎚打つ響き~♪」

「嬢ちゃんもう覚えちまったのかい?」

「えぇ、だいたいは」

 何人かの背の低い男たちがふいごを動かし、鉄を暖めた、叩いて伸ばす。

 

 紅魔館の麓にあるお父様が統治するドグウェルの工房。最近私はここに入り浸っていた。

 始まりはちんけな物で、いつも煙が出ている方向に進んだら偶然見つけた程度のところだった。

 

 この工房は東洋の刀打ちを取り入れた結果一族から追い出されたドグウェルの工房。

 しかし、私は今はそのドグウェルが頼みの綱だった。

 

 この間見つけた一冊の本。それはドグウェルたちが書いた錬金や鍛冶の術を記しまとめた物だというところまでは紐解けた。だが、残りの内容はさっぱりであった。だからこの工房で地道に作業をみたりしながら翻訳を手伝ってもらっていた。

 

「これって刀鍛冶の歌なの?」

 歌詞を音で覚えることはできたがその詞の意味はさっぱりである。

「んにゃ。それは野鍛冶っていってな、刀を打たず鎌や鍬なんかを打って生計を立てる奴らの歌さ」

 一仕事ついたのか頭領は私の座る椅子の対面に座って横に置かれた塩味のお茶を飲む。

 

「ふーん・・・じゃあなんで仕事途中に歌なんて歌うの?」

 歌う暇があるならもっと身体を動かして早く商品を作ればいいでは無いか?そうここに来ては歌う姿を見ていて常々思ってた。

「嬢ちゃん、トンチンカンって言葉知ってるか?」

「?いえ、知らないわ」

 頭領はそうかと言って炉などの方を指さす。

「ちょっとその音聞いてみな」

 私は訳がわからないながらも耳を澄ませる。

 

 

 ・・・トン・・・テ・・・カンッ・・・トン・・・テン・・・カンッ・・・トンッ・・・テンッ・・・カンッ・・・

「トンテンカンがどうしたの?」

 私は尋ねる。

「じゃあ今度はこれを聞いてみろよ」

 あくまで私の問いに答えること無く取り出したインゴットを鎚で叩く。

 トン・・・チッ・・・カン・・・

 私はインゴットからした音を聞いてハッとする。

「わかったろ嬢ちゃん?前に教えたが金属ってのはただ叩きゃいい物じゃねェんだわ」

 確かにそう頭領から聞いたことがあった。

 

「一定のリズムに一定の温度に一定の速度・・・良い物作るにゃこの一定が大事なんだよ」

「なるほど。その一定がとりやすいのが歌なのね」

 頭領は賢い嬢ちゃんだと褒めてくれる。

 

 ふいごを動かすのも一定のリズムでやらなければ火の勢いが変わってしまう。鎚で叩くリズムも一定で無ければ切れ味に影響する。だからこそなにか変わらない物でリズムをとる。時計をみるのでは一瞬の空いた時間ができる。何かを印にしてもそう言う印がわかりにくかったり、まず無い場合もある。

 だから歌なのだ。全員で歌えば自然と一つのリズムに終着する。それこそが必要なことだったのだ。

 

「まぁ、歌は連携も強くできるしな。同じ釜の飯食って、同じ部屋で寝て、同じ歌を歌う。それだけで絆は強まるからな」

「よくわかったわ。ありがとう頭領」

 頭領はいいってことよとはにかむ。

 

 するとそこへ何人かのドグウェルたちが水分補給しに来る。

「いやー、頭領はロマンチストっすねぇ~」

「いやはや教師役も板につきますなぁ」

「このままロマンチストな熱血教師やっちまえよ」

 軽口とできあがった品を持って職人たちは私たちの座るテーブルに着く。

 

「はいお茶よ。回してね」

 そう人数分入れたお茶を隣りに座ったドグウェルに渡す。

 

「うるせぇっ!そんな軽口たたけるんならもう一仕事すっぞ!さっさと塩茶飲めやッ!」

 頭領が怒ったーと笑いながらドグウェルたちは数回お茶をおかわりした後鍛冶場に戻る。

 怒る頭領は少し怖いが、塩茶を飲めと言うあたり頭領は優しい。

 

「嬢ちゃんッ!景気づけだ歌ってくれよっ!」

「・・・わかったわ」

 少し恥ずかしくもあったが私は口を開いて、歌を歌う。

 

「しばしも止まずに鎚打つ響き~♪」

 トンッ!テンッ!カンッ!と音が響き始め、ふいごの送風でゴォッと火が飛ぶ。

 

「飛び散る火の花、はーしる湯玉♪」

 鎚を振るう腕からは汗が飛び散る。だがそれがまた、この場所の熱気を上げていた。

 

「ふいごの風さへ、息をもつがづ~♪」

 火をより熱くさせるふいごの風は強く吹く。

 

「仕事に精出すっ むーらの鍛冶屋ッ♪」

 あぁ、楽しい。心の底からそう思えた。

 

 

 

 その工房はトンチンカンの音は鳴らない、響くのは楽しげな歌声とトンテンカンの力強い音だけだった。




 作中の歌は1912年に初出した曲である村の鍛冶屋です。
 興味があればYoutubeなどで検索してみてください。
 なお、1912年に世の中に出ただけであって昔からあった曲として作中で扱っています。

 著作権はどう考えても切れてますのであしからず・・・

以下歌詞
一、
暫時(しばし)も止まずに槌打つ響
飛び散る火の花 はしる湯玉
ふゐごの風さへ息をもつがず
仕事に精出す村の鍛冶屋

二、
あるじは名高きいつこく老爺(おやぢ)
早起き早寝の病(やまひ)知らず
鐵より堅しと誇れる腕に
勝りて堅きは彼が心

三、
刀はうたねど大鎌小鎌
馬鍬に作鍬(さくぐは) 鋤よ鉈よ
平和の打ち物休まずうちて
日毎に戰ふ 懶惰(らんだ)の敵と

四、
稼ぐにおひつく貧乏なくて
名物鍛冶屋は日日に繁昌
あたりに類なき仕事のほまれ
槌うつ響にまして高し
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。