神器作りし吸血鬼~Vampires that made God's weapons~ 作:ぱる@鏡崎琴春夜
時に人は侵しては成らぬ領域に足を踏み入れる。
それは神が与えるはずの無かった感情によって起きた悲劇であり喜劇。
そして万物は領域を侵した者を罰する。
「今日も一日頑張ったわ・・・」
大きな鎚を振り下ろすこと数時間。適度な休憩を取ってはいても体力の消費率は半端ではない。
「よう!お疲れさん!」
そんな私ににこやかに声をかける頭領。
「あっ頭領。翻訳できた?」
数日前に来たときには最終項も半分翻訳できたと言っていたのでそろそろできた頃だとみていいだろう。
「あぁ、できたぞ・・・こっちに本と翻訳文がある」
こっちへ来いと言われわたしは椅子を立ち上がり、頭領の後をついて行く。
「いいか嬢ちゃん?この翻訳文は渡すが、内容は使えたもんじゃねえ。それを念頭に置いてくれ」
そう言ってバサリと数枚の紙束を私に渡す。
「使えたもんじゃ無いかは自分で決めるわ」
そう私は答え、紙に目を通した。
──万物再構築の項
この術は秘術であり禁術であるが、首が守りし知識の泉の水を飲まんとする者のためにこの術を書き残す。
万物再構築はすべての物質を一度エーテルにまで戻し、再び望む形に構築し直す術である。
唯一の神が教えた言葉を愛す信者共からすれば決して赦されてはいけない罪ではあるだろう。だが、そうであっても私はこの術を体得した。
術を使うには少しコツがいる・・・しかし、その前に今一度尋ねる。
泉飲まんとする者よ、貴殿は大切な縁者や宝すら破壊し、別物にする術を使いたいと申すのであれば次を読むがよい。
「・・・エーテルにまで戻すですか」
「あぁ、鉄を金になんてもんじゃねえ。蟻を金のインゴットにするようなもんだ」
私の発言にそう頷く頭領。
私は信仰していないが、キリスト教では確か神が人間を作ったとしている。それにギリシャ神話では神をもして人を作ったとも・・・
それを一度分解して好みに再構築は確かに悪となるか・・・
「まぁ、知ることが目的でしたし。こういう結果もよいでしょうね」
本当はこんな面白い結果で心底うれしいのだが・・・
「まぁ、嬢ちゃん気を落とすなや。これからも俺を手伝ってくれよ?」
「えぇ、喜んで」
頭領が手を出し、私もそれに応じて握手が成立する。
いつもならこのまま着替えて帰るところだった。
しかし今日は事情が違っていた。
着替えたところまでは同じだが、そこからが違った。
「それでは──」
そこまで言ったとき外で声が聞こえた。
一瞬言語理解ができなかった。がしかし、それがやは理解を拒否した通りの言葉だと理解する。
「頭領!──「だめだ。仕事道具は相手を傷つけるもんじゃねえ」
ハンマーを貸して。という台詞が口から出る前に頭領が止める。
「いいか!職人は商売道具に自分以外の血はつけねぇんだ!自分の商売道具血にぬらすようなバカは職人じゃねぇ!」
職人としてのあり方は命に関わっても曲げないと頭領はその気迫で語っている。
「わかった。でもその代わりこの鉄剣もらっていくよ」
そう言って私は傍らにあった片手直剣を手に取る。
「お代は後でもらうぞ」
「がめつい頭領だこと!」
私は店を飛び出し、急いで声の方向に走った。