神器作りし吸血鬼~Vampires that made God's weapons~   作:ぱる@鏡崎琴春夜

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 必要が故に必要という言い訳を重ね心の安寧を保つのである。


必要ト感情

 私が自分の住む館に帰り着いたとき。そこには自分の記憶とはかけ離れた館であった。

 少ない窓の大半は割れていて至るところから火の手が上がっている。

 また、壁はえぐれていたり、血がべったりとついている。

 

 まさにそこは紅い館だ。だが今は紅というより本当にスカーレット(緋色)だと思えた。

 

 私はバッと飛び上がり、館の屋上から館に侵入する。

「まずはみんなを探さないと」

 思い浮かぶのは家族と昔から私の面倒を見てくれた美鈴。

 今はみんなの安全の確認が最重要事項だった。

 

 

 あぁ、左目が見え辛い・・・

 そう感じて髪留めでとめた髪の毛を右から左に変える。

 髪の毛を右から左に移したことにより、隠れていた鷹のように獰猛そうな黄金の右目が現れ、慈愛を表すかのような穏やかな碧色の左目が髪の毛に隠れる。

 それはあたかも、静かな夜から激しく照らす昼間へと変わることを表しているようだった。

 

 そして彼女は気づいていなかったがそれは彼女の内包する恐ろしさを解き放つロックを解錠したのと同義だった。

 

 

「さてと、俺たちを襲撃したクソ野郎共に逆襲してやろうじゃネェか」

 ニタリと口角が持ち上がり、その表情は血にまみれることを歓びと感じる強者の表情だった。

 

 

 二重人格、言ってしまえばそれだけの簡単な説明。

 ヘンリージキルとハイドのような慈愛と狂気がジェニーの内包する二つの面だった。

 彼女はこの変化を慈愛の面のみが気づいていない。

 普段のように落ち着いていれば基本は慈愛の面が、気が高ぶるならばたちまち狂気に染まったもう一人のジェニーが出てくる。

 

 その鍵はただ髪の毛を移動させ右目を隠した状態から左目を隠した状態にすればいいだけのお手軽感。

 だが、大概の多重人格もそのようなモノだ。

 

 

 

「貴様誰だッ!」

 ちょうどジェニーが入れ替わった少し後に銀の剣を携えた男が現れる。

「簡単じゃネェか。敵だよッ!」

 そう言ってジェニーは相手に肉薄する。

 

 あわてて相手も応対するために剣を身体とジェニーの間に滑り込ませる。

 滑り込むのは間に合った。銀は基本的には吸血鬼や魔物には効く代物。銀剣の男は防いだと確信した。

 

 だが、それはあまりにも誤算だった。

 

「ゴフ・・・」

 ボタボタと目の前に垂れる紅い液体。

 これは何だ?自分が今吐きだしたモノか?

 そう疑問が巡り、おそるおそる自らの腹部を見る。

 

 そこには剣先が無い銀でコーティングされた剣と腹部に深々と刺さった腕。

 やはり男の思考は謎に包まれる。

 だが、その思考に終止符を打つようにもう1本の腕が今度は胸を貫通する。

 ここで男の意識は永遠の闇の中に堕とされた。

 

「軟弱だな・・・だが、これならばみんなは生き残ってる可能性が大きいか?」

 突き刺した両の腕を引き抜き、つかんでいた心臓を握りつぶす。

 聖職者の血なんぞ飲みたくも無い。そう倒れた男を侮蔑のまなざしで見てから歩き出す。

 銀コーティングの剣をもろともしなかった理由は簡単、差し込まれる剣を能力で液状にすれば差し込むための力と重力で剣先は崩れる。俺は腕の周りの水蒸気を氷に変えて銀をガードそれだけである。液体状態が熱くても当たる直前に固体に戻せば何も問題は無かった。

 

 どこを巡るべきか?

 エントランス?それともお父様の部屋か?いや、ここは防御力を考えて地下だろうか?

 背中に背負った鉄剣の重みを感じながら一番近いお父様の部屋を目指す。

 

 

 

☆Now Loading☆

 

 

 

「嘘だろ・・・オイ・・・・・・」

 お父様の部屋、そこに居た・・・いや、あったのは槍に貫かれたお母様と幾振りもの刀剣で刺されたお父様だった。

 

「おい、お父様!お母様!」

 現実が受け止められない。こんなのキツすぎんだろ・・・この光景は表にゃ見せたくねぇのに・・・右目が霞んで来やがった。

 

 

「あ、あっ…あぁ・・・」

 声が出ない。

 目の前の光景に思考や喉、身体が凍り付く。

 

「j、じぇ、にい」

 か細く小さく弱々しい声。しかし、その声はよく聞いたことのある声。

「お父様!」

 その声で身体の時間が動き出したかのように動き出す。

 

「お前は…無事だっ…た…んだな」

 途切れ途切れのその声は震えている。

「こッ、公妃…はど…うし…て、る?」

 もう紅く染まって真っ赤な顎へ新しい赤がプラスされる。

「もう、どうにも・・・」

 そう言うのが私にはやっとだった。

 

「じぇ、にー…お前に…たの。むことが・・・」

 なんなりと、そう答える。

「地…カ…にい…る。いも、う…と・・・たちを…守っ…てく…れ」

 そう言ってお父様は最後の力を振り絞って私の頭に手を載せた。

「わかり───」

 了承を伝えようと涙でにじむ顔でわかったと伝えようとしたとき、頭に乗せられた手がだらりと下がる。

 それは勿論お父様の死を表す他でもないものだった。

 

「お父様ァッ!!」

 そう私は叫んだ。

 

 

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