藍より出でて藍より青し   作:もやしの化身

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おひさです(;^ω^)


どこの烏も黒さは変わらず

 

 

 

「つつしんでかんじょうたてまつる みやしろなきこのところに こうりんちんざしたまいて―――」

 

次の日早々に巫女さんが除霊を始めた。

 

『しんぐのはらい かずかず かずかず たいらけく やすらけく―――』

 

昨日ポルターガイストがあった礼美ちゃんの部屋での除霊をブースにて観察中みたいだ。みたいだ、とは、俺自身は香奈さんの手伝いをしていてブースにはいない。キッチンで中食の準備を手伝っている。

 

「これはこんな感じで?」

「ええ。青上さんは料理お上手なのね。」

「一人暮らししてますから、ある程度は。」

「そうなのね。にしても今日は暑いわね……。」

「そうですね。でも今日はそんなに気温は上がらないはずなんですが……。」

 

……おかしい。靄が渦巻いていく。それも薄靄のように広がっていたものが一点に集中して

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

ごうっと立ち上るように炎がガスコンロから飛び出る。

 

「香奈さんっ」

 

咄嗟に香奈さんの手を掴み抱き寄せる。その瞬間にも炎は渦巻き、意思を持ったように向かってくる。降り払うように左手で炎を払えば分龍が火をはじいてくれているが正直この状態ではじり貧もいいとこ。悲鳴を聞きつけて来てくれるのを待つしかない。

 

「香奈さん!?」

「麻衣!?」

「火が急に……」

「香奈さんは下がって!!消火器は?」

「あ、あっちに……」

「青上手伝えっ」

「はい!」

 

助かった。香奈さんを庇っている最中に坊さんが外側から消火器を掛けてくれたおかげで勢いが弱まった。おかげで消火に専念できる。

 

 

 

「はぁ……。」

「何とか終わったか……。」

 

消火まで数分だったが体感は比ではない。駆けつけたメンバーはもちろん、目の当たりにした香奈さんは最早ぐったりとしている。

 

「ナル!誰かいる!!」

 

麻衣がキッチンの窓を指して叫ぶ。所長が窓を持ち上げて開けるがそこは闇が広がるばかりで人影は見えない。

「……いない。」

「いたの!!中を覗いてた!小さい子供が……。」

「……でも、礼美なら寝てるはずよ……私の部屋で。」

「麻衣、よく考えろ。あの窓じゃ台か何か無いと届かない。」

 

青白い顔をしている香奈さんと典子さんを見てから麻衣を見る。

 

「見間違いじゃないのか?」

「そ、そうだったかも。」

「一応礼美ちゃんを確認しに行こう。万が一外に出てたら心配だ。」

 

ぞろぞろと階段を上る一行の最後尾で麻衣に小声で話す。

 

「麻衣がバカじゃなくてよかったよ。」

「ちょっとどういうこと!?……感情に任せて香奈さんたち見えてなかった。」

「それが分かるんならもう言うことはねぇな。」

 

少なくとも霊現象に耐性のあるメンバーならまだしも、一切体制のない香奈さんと典子さんはあの炎の次に続けて霊が現れたなんてわかったら精神に負担がかかる。

 

小さくノックをして部屋に入る。

 

「礼美、さっき台所を覗いてた?」

「ううん。」

「でも麻衣ちゃんが子供がいたって!ほんとはお庭から覗いてたんでしょ!?」

「違うもん。」

 

まずいな。礼美ちゃんに問い詰める典子さんの口調が荒々しくなる。

 

「礼美!」

「違うもん!!礼美じゃないもん!!!!」

「礼美……。」

 

 

ドンッ!!!!!!

 

 

ひときわ大きなノック音が天井から響き、それを皮切りにするように無数のノック音が大きくなり、次第に揺れ始めた。

 

「違うもん!!!」

 

 

ドンッ!!!!!!!!

 

 

「礼美じゃないもん!!!!」

 

 

ドンッ!!!!!!!!!!

 

 

「違うもん!!!!」

 

靄がまた周囲に立ちこみ始める。初めより大きな揺れが起きて典子さんの傍にあった棚が揺らぐ。

 

「お姉ちゃん!!!!!」

 

いち早く気付いた俺は典子さんと棚の間に体を挟める。

 

 

 

***

 

 

 

「お前、まーた失敗しやがったな。」

 

坊さんの巫女さんいじりは最早恒例行事となっている。そして……

 

「青上も棚とかに縁があんじゃねぇの?」

「俺としては御遠慮したいですね。」

「お祓いでもしてやろうか?」

「滝川さんに払われたらいいものも払われそうですね。」

「なんだとー!!」

 

 

リンさんに腕に湿布と絆創膏、剥がれないように包帯を巻かれている。倒れてきた拍子に花瓶が割れ腕を切ってしまった。といっても深くはなく本当に軽くだ。

 

「わーるかったわね!どーっせアタシは無能ですよ!!」

「それにしてもさっきのあれ、あの子の叫びに答えるみたいだったな。麻衣も台所で子供を見たっていうし。」

「礼美ちゃんが犯人だと?」

「暗示じゃ犯人は人間じゃないんだったっけな。結果にどんぐらいの自身があるよ?」

「百パーセント。」

「暗示が失敗した可能性は?」

 

旧校舎の一件でもわかったが、所長は不安なことは口にしない。それをわかっているからかこの“霊の仕業”という説が否が応でも濃厚、いや、確実にしていく。

 

「絶対っていったて「ナル!!温度が下がり始めました!!」」

「リン、スピーカー。」

 

 

ドンッ ガタッ ゴンッ ガタンッ 

 

 

モニターには礼美ちゃんの部屋が映っている。礼美ちゃんは典子さんの部屋で眠っているので本人は居ない。音の正体は確実に人の所為ではない。

 

「――凄い。」

「……なに?」

「温度だ。すごい勢いで下がってく……。ほとんど氷点下だ。」

「人じゃありえない。」

「そうだ、絶対に。」

 

 

 

***

 

 

 

「…………礼美ちゃんがそんなことを。」

「うん。おやつには毒が入ってる、香奈さんは魔女で魔法で父さんを操ってるって。礼美ちゃんと典子さんのことが邪魔だから殺そうとしてるって。ミニーが教えてくれたって……。」

「ほう。そのミニーというのは?」

「礼美ちゃんが持っていた人形だって。」

「あーあの西洋人形か。俺人形苦手なんだよなぁ。」

「へー、ぼーさん意外だね。意外とかわいいじゃん。」

「ちげーよ。人形ってのは本来“魂”の入れ物を模して造られてるから中身が無いんだ。その分何でも入りやすい。お前んちにある人形にもなんか入ってたりな。」

「ちょ、ちょっと不安になるようなこと言わないでよ!!」

「……とにかく、ミニーを調べに行こう。」

 

 

 

「ミニーならこれですけど。」

 

香奈さんにお願いしてミニーを見せてもらった。見かけは何の変哲もない西洋人形で何も変わりはない。

 

「この家に越してくる直前に兄が買ってやったんです。」

「礼美ちゃんの様子が変わったのはそれ以前?以後?」

「後…だと思いますけど。」

「返して!!!!」

 

部屋から急いで出てきたのは礼美ちゃんで、必死な形相だ。

 

「ミニー返して!触らないで!!」

「君はミニーと話ができるそうだね。」

「誰も触っちゃダメ!!」

 

勢いよく飛びつきミニーをつかみ取り走って逃げていく。

 




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