不幸学生 作:ヤザヤザ
降りようとしたバスにハイジャックが起きてしまい、一人だけ降りられなかった昴。
当然、昴は焦っていた。
(ヤバイ……マジでヤバイぞ!)
「おい、運転手! 速くバスを出せ!」
「は、はい!」
バスジャックの男の言う通り、運転手はアクセルを踏んでバスを出す。
「もっとスピードを出せ! あと、そこのお前、こっちに来い!」
バスジャックの男は、昴を呼ぶ。
昴はビクッと震え、さらに焦りだす。
(クソおおおおおお! どうする! 大人しくバスジャックの男のところに行くか? いや駄目だ、人質にされて逃げれる可能性が低くなる。それなら、運転手と一緒にバスジャックの男を拘束すれば……無理だ、俺は力がないから足手まといになる。クソ、どうすれば……)
焦りながらも必死に、昴は解決方法を考える。
「おい、お前聞こえてんだろ! こっちに来やがれ!」
バスジャックの男の怒声は強くなっていく。
昴は自分の頭を抱え込む。
(聞こえてるよ! ……ん、そうだ思いついた、思いついたいたぞ解決方法! だがこれは、あまりにも危険でうまくいく保証はない。どうするやるか?)
その解決方法を実行するか悩んでいると、バスジャックの男が近くの席を蹴り激怒する。
「聞こえてるだろ! 速くこっちに来いクソガキ!」
先にほどより、さらに強い怒声でバスジャックの男は脅すように言う。
昴は瞼を閉じる。
(もうやるしかないこの方法で!)
昴はその方法を実行することに決めた。
その方法はあまりにも危険で、失敗する可能性が高い。
それでも、昴はこの方法に賭けることにした。
生きるために。
大きく息を吸って、昴は瞼を開ける。
今の昴からはバスジャックに怯えていた恐怖が消え、
(行くぞ、俺!)
昴はバスジャックの男の方に振り向き、
「ううううううっ!? 頭が痛くて聞こえなーい! うああああああ!」
強い頭痛で苦しむ演技をした。
そんな昴の演技を見た、バスジャックの男は、
「ふざけてんじゃあねえぞ、クソガキ!」
昴の演技を簡単に見抜いた。
(ですよね! 無理ですよね! わかってました)
昴の演技のせいか、強烈な怒りと殺気を出しながらバスジャックの男は、昴に近づいてくる。
「お前……、ふざけてんじゃねえぞ!」
(あ、終わった俺の人生。母さん、父さん今まで育ててくれてありがとう。神、俺が死んだ後は不幸体質を取り除き、今度は普通の人生を過ごさせろ)
最期を感じた昴は瞼を閉じて、心の中で遺言を言った。
そのとき――
突然、バスが急ブレーキをして止まる。
「「うおっ!?」」
大きく揺れるバスに、二人は驚く。
昴は咄嗟に近くの手すりに掴まるが、バスジャックの男は反応が遅れ、手に持っていた包丁を運転席の方に手放し後ろに倒れ、後頭部を強く打つ。
「ぐげっ!」
バスジャックの男は呻き声をあげた。
(……た、助かった!! 何故、急ブレーキをしたかわからないが、まあ助かったから理由なんてどうでもいいか)
昴は
「す、すみません! 猫が急に飛び出して止まって――」
運転手は運転席から出て、バスジャックの男に急ブレーキの理由を話そうとする。
その運転手に包丁が飛んでくる。
「運転手さん、危ない!」
昴は 運転手に
「え? うおっ!」
飛んできた包丁に運転手は驚き、サッと避ける。
しかし――
「ぐわっ!?」
避けた先には段差がある席があり、運転手はその席に側頭部をぶつけ俯せに倒れた。
「運転手!? せっかくバスジャックの男が気絶したらしいのに!」
昴は運転手のところに行き、声をかけたり、揺すったりする。だか、起き上がらない。
(クソ、バスジャックの男が起き上がる前に脱出しなきゃいけないのに……ん、これは)
そのとき、昴の足元の近くに包丁が落ちてあった。
(一応拾っておくか。バスジャックの男が拾ったらヤバいし……)
念のため、昴は包丁を拾う。
そのとき、運転手が起き出した。
「いてて。何でこんなに痛いんだ? 確か俺はバスジャックにあって……」
意識を取り戻た運転手に、昴は
「あ、よかった無事でしたか。今のうちに脱出しましょう。バスジャックのお――」
「観念しろ、このバスジャック野郎!」
状況を説明する昴を、
「…………はあ?」
昴は混乱した。
いきなり、自分のことをバスジャック野郎と言って襟を掴んできたのだから。
(は? 今、何て言った? 俺のことをバスジャックって言ったのか。……はああああああ!? 俺がバスジャック!?)
運転手の言ったことを、やっと理解した昴は弁解する。
「な、何言ってるんですか! 違いますよ!」
「嘘つけ! 俺を騙せると思うなよ。証拠にお前の手には包丁があるじゃねえか!!」
「この包丁はバスジャックの男が、拾わせないようにしただけです!」
「そんな嘘で騙せると思ってんのか、馬鹿じゃねえの!」
昴の言っていることを全く信じない運転手。
そのとき、気を失っていたバスジャックの男が呻き声をあげ、起き上がり始める。
「いたたた、あれ俺は……」
(マ、マズイ!)
バスジャックの男が起き上がっていることに昴は気付く。
昴は焦りだし襟を掴んでる運転手の手を、引き剥がそうとする。
「離せ! ふざけてる場合じゃないんだぞ!」
「離すかよ! このまま、お前を拘束して警察に引き渡してやる!」
「離せ! このクソジジイ!」
自分のいってることを信じない運転手に、昴は激怒した。
(早くこの運転手をどうにかしないと、バスジャックが起き上がってしまい、今度こそ俺は終わる)
昴は抵抗しながら、対処法を考えようとしたとき、
「おい、てめえ! 何してやがる!」
「し、しまった!?」
バスジャックの男の方に昴は目を向ける。
バスジャックの男はすでに起き上がり、昴を睨みつけていた。
(今度こそ、終わったな、俺……)
バスジャックの男は昴たちのところに走ってくる。
昴は瞼を閉じ、死を覚悟した。
バスジャックの男は昴に抱きつき、言う。
「バスジャック! その包丁を離せえええ!」
「…………え? ええええええ!?」
昴は
「は、はああああああ!? 何言ってるんだ! バスジャックはお前だろ!」
「違う! 俺はお前と違ってバスジャックなんて
「は!? お前何言ってんの!」
バスジャックの男の発言と行動に、昴はする。
「助かったぜ!
運転手は昴の襟を離し、自分の上着とシャツを脱ぐ。
その間に昴は包丁を離して両腕で、抱きついているバスジャックの男に全力で抵抗する。
だが、全くビクともしなかった。
「クソ、なんて力だ」
「お前、力弱すぎだろ」
バスジャックのは言った。
(く、俺は何で力が無いんだ…… そういえば、運転手は何してんだ?)
昴は運転手を見る。
運転手は自分のシャツを破って紐を作り始めた。
「おい、運転手、俺は本当にバスジャック犯じゃない。 コイツなんだぞ、コイツが本当のバスジャック犯なんだぞ!」
「何言ってるんだ、馬鹿かお前?」
運転手は呆れ果てる。
「本当だ、運転手! 俺はバスジャック犯じゃない! コイツがバスジャック犯だぞ」
「違うって言ってんだろ! 運転手さん、早く!」
「ああ、バスジャック犯。お前はもう終わりだ」
運転手は昴に近づいていく。
そんな運転手を見て、昴は
「や、止めろ、来るな……、ふ、不幸すぎる! 不幸すぎるぞおおおおおお!」
こうして、運転手とバスジャックの男によって昴は拘束された。
拘束されてる途中、昴は気づいた。
二人は頭をうったときに記憶を失っていたことに。運転手は、バスジャックの男が誰だったのか。バスジャックの男はバスジャックをしたことを。
どうも、ヤザヤザです。
ついに、四月も終わり令和ですね。
この四月、交通事故に遭いかけ自分も横花昴のように、不幸体質になってしまったのかと思いました(笑)
そんなことはさておき、不幸学生はいよいよ終わりに近づいてきました。
こんな小説を三話まで、読んでくれてありがとうございます。
四話も家庭の事情とかで執筆に時間を掛けてしまうと思いますが、引き続き不幸学生をよろしくお願いします。
それでは。