不幸学生   作:ヤザヤザ

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第5話です。



第5話

サイレンを鳴す無数のパトカーから、バスは逃げていた。

 

そのバスに、警察はスピーカーで『そこのバス、止まりなさい』と言い続ける。

 

バスの運転手は額に汗を流す。

 

「クソ! しつこい奴らだぜ」

 

運転手は舌打ちをして言った。

 

「やべえ、いつの間に無数のパトカーが……」

 

後ろの窓から麦は状況を見て焦っていた。

 

そしてまたしても降りれなかった昴は、

 

(さて、どうやってここから脱出しようか?)

 

この状況に焦ることなく落ち着いて、優先席に座って足を組んでどうするか考えていた。

 

(……駄目だ。いくら考えてもやはり、あの運転手を気絶させてバスを止めるくらいしか方法が思いつかない)

 

昴は運転手と麦を見る。

 

二人は今の状況に焦っていて、余裕が無さそうだった。

 

(よし、今ならできるぞ。俺の力が弱くても不意打ちならできる。今の運転手は焦って周りが見えてない。バスジャックの男……確か町田だっな、町田も運転手と同じ状況。だから成功する確率はおそらく高い)

 

席から立ち上がり運転手にゆっくりと近づき、運転手の近くまでくると昴は一度止まって様子を見る。

 

(……よし、気づいてない。今のうちにコイツの頭をハンドルに勢いよくぶつけてやる!)

 

昴は運転手に近づく。

 

そして運転手の頭に勢いよく押そうとする。

 

そのとき、昴の左肩を麦は強く掴む。

 

「お前、何しようとしてる?」

「ちちち、違うんですよ! 運転手さんの頭にゴミがついてて、それを取ってあげようとしただけです!」

昴はすぐに後ろを振り向き、麦に言い訳をする。

 

「そうか? 俺は押すように見ていたが……、まあいい。それより、お前も手伝え」

「え? 手伝えとは?」

「わかんねえのかよ? あの警察たちから逃げることをだ」

 

昴は呆然とした。

 

昴を拘束したくせして、麦の逃走に 幇助(ほうじょ)してくれと頼んできたのだから。

 

すぐに昴は理解して、麦に顔を(しか)めた。

 

「あなたは俺に何をしたか覚えていますか?」

「ああ、悪かったよ。だからこれでチャラな」

ポケットから、麦は黒い財布を取り出し昴に渡す。

 

「これって言われても―」

「いいから受け取れ!」

「はい!」

 

麦は昴に怒鳴って従わせる。

 

「こ、これは!?」

 

そのとき、運転手が言った。

 

「な、何が起きたんですか、運転手さん?」

「麦って言ったけ? こっちに来てくれ」

 

運転手の言われた通りに麦は運転手のところに行く。

 

「こ、これは!?」

 

麦は口を開け瞼を大きく開き驚いた。

 

「あ、あんなのどうすれば……」

 

麦を小さく呟く。

 

(何だ? 凄いリアクションして驚くなんて。まあいい、こっちは財布の中身を確認)

 

昴は先ほど貰った財布の中身を調べた。

 

「な!? 空っぽじゃないか! あの野郎、空っぽの財布を渡したのかよ」

「おい。クソガキ、ちょっとこっちに来い!」

「え! あ、はい」

 

昴は貰った財布をポケットにしまい、麦のところに行く。

 

(うわ、ヤバい。もの凄く怒ってる……)

 

炎のような危険な雰囲気を出してに怒っているようだった。

 

「前の光景を見てみろ」

「前の光景って……、あ、警察だ」

 

バスの数百メートル先に、大量の警察が待ち伏せしていた。

 

「あの大量の警察を何とかして来い」

「は!? ただの学生がそんなことできるわけないだろ!」

「うるせえ! 俺はこのままだと無実の罪で捕まってしまうだぞ!」

(いや、無実じゃないから。お前のやってることはただの逃走だからな。あと、お前のことなどどうでもいい)

「落ち着け! 麦。コイツを使っても役に立たない」

 

運転手は麦を落ち着かせる。

 

その光景を見て、昴はため息をついて手を顎に触れて考える。

 

(普通の奴ならこのままいけば、コイツらは捕まり自由が戻ってくるだろうが、俺の場合そうじゃないだろう。どうせ俺も共犯者として捕まる。ならここはなんとしてでも逃げてもらはなければ……やはり、賭けに出るしかないか。まあ、悪い方に行く未来しか見えないがやらないよりはマシだろ)

 

昴は深呼吸をして言う。

 

「運転手さん。もし、助かるかどうか不可能に等しい作戦があるなら、やりますか?」

「は? やるに決まってるだろ。お前バカか」

「そうだ! やるに決まってるだろ! バカか」

(バカってなんだよ。コイツら!)

 

バカ扱いに運転手と麦への怒りを堪えて、昴は言う。

 

「それなら作戦があります」

「「何だって!? こんなバカに作戦が思いつくなんて!」」

(もう殴っちゃていいかなコイツら!)

 

さらに強くなった怒りを堪えて喋り続ける。

 

「まずバスを180度回転し走る。つまり、逆走する形になります。そして、追いかけてくるパトカーに突っ込む。これで逃げられるどうかは……運次第です」

「自滅行為じゃねえか!」

 

麦は昴を殴った。

 

(痛! 殴ったな、親父にもぶたれたこないのに! ってそれより、コイツ。普段俺が前置きに『不可能に近い』って言ったのに!)

 

昴は蛇のように目を細めて麦を睨む。

 

そのとき、運転手が言う。

 

「いや、麦。このバカの作戦に賭けてみるしかない」

「そんな、こんなの自滅しに行くようなもんですよ」

「確かにそうだ。だが、やってみる価値はある。どっちみち、このままでは終わりだ」

「そ、そんな……。分かりました。運転手さんが言うならこのバカの言うことに従います」

 

麦は上官に敬礼する兵士のような表情になる。

 

(コイツら俺に助言貰っておきながら、まだ俺をバカ扱いか)

 

昴は舌打ちを必死に堪えた。

 

運転手は深呼吸して覚悟を決める。

 

「お前ら、何かに掴まれよ!」

 

運転手の呼びかけで、麦は手すりに掴まり、昴は近くの椅子に座って手すりを掴む。

 

「いくぞ!」

 

運転手は急ブレーキを踏みハンドルを右に回す。

 

バスは円を描くように回る。タイヤから耳に響く音を発てながら180度のところで運転手はブレーキを辞めてアクセルを踏む。

 

急に方向を変えて突っ込んで来たバスに、警察は驚いて反射的にブレーキを踏む。バスはパトカーにぶつかる。

 

「うおおおおおお!」

 

バスに強い衝撃がはしり、窓ガラスが割れドアに他のパトカーが当たってドアが外れる。それでも運転手はそのままアクセルを踏み続ける。

 

「どわっ!?」

 

バスの衝撃で足を踏み外し、麦は床に頭を強く打った。

 

(ざまあみろ)

 

昴は心の中で言った。

 

「うやあああ!」

 

運転手はハンドルを左右に回して、バスの正面にぶつかったパトカーを振りほどく。

 

「よし! 今のうちに」

 

大量のパトカーを振り切ってバスは走る。

 

★ ★ ★

 

「よっしゃあ! 振り切ったぞ。おい、麦! 俺やったぞ」

 

あの後バスはいろんな道を走った。そしてついに警察を振り切ることに成功した。

 

運転手は涙を流して喜び、後ろを振り向き麦に呼びかけた。

 

しかし、麦は何も反応しない。

 

「おい、麦? ……おい、しっかりしろ!」

 

起きない麦に運転手は運転しながら叫ぶ。

 

そんな麦から昴はおそるおそる離れていた。

 

(コイツがあのとき、頭を打ったとき、スカッとした。だが、冷静になって考えてみたら逆にヤバい状況かもしれない。もしかするとコイツは――)

 

「うっ……いてえな、ちくしょう。あれ、俺は確か……」

 

麦は意識を取り戻し起き上がる。

 

「麦、生きてたんだな! 心配したぜこんちくしょう」

 

運転手は麦を見て喜び泣きをする。

 

そんな運転手を麦は眺め、

 

「おい、運転手! 何であのとき、止めやがった!」

運転手に襲いかかった。

 

運転手は反射的に麦の両手を掴む。

 

「ど、どうしたんだ麦!」

「何で俺の名前をしっている。ていうか、包丁はどこやった!」

 

運転手をハンドルに押し倒し麦は問う。

 

ハンドルは運転手と一緒に左右に回り、バスを左右に走らせる。

 

「やはり、コイツは()()()()()()()()()!」

 

昴は言った。

 

急いで外れたドアに昴は急いで向かう。

 

そのとき、バスが横転した。

 

「「「うわわわわわわ!」」」

 

車内は激しく揺れ、昴と麦と運転手はいろんなとこを強打する。

 

横転したバスは滑り、大きな建物の近くにあるバス停に止まった。

 

そこで昴たちは意識を失った。

 

★ ★ ★

 

「うっ、身体中が痛い……」

 

バスが横転してしばらくして、昴は意識を取り戻し起き上がった。

 

バスの外からは騒がしい声が聞こえるのと眩しい光が差し込み、車内は少し明るい。

 

(何故外は騒がしいんだ? あ、バスが横転したからか)

昴は一番前の割れた窓に向かうが、何かを踏む。

 

白目向いてる麦だった。

 

「顔を踏んで行こう」

 

昴は麦の顔を踏んで進む。

 

運転席のところまでくると、呻き声が聞こえた。

 

昴はその声のほうを振り向く。声の主は運転手だった。

 

「うっ……、あれ? ここはどこだ? 確か猫が飛び出してバスジャックの男に事情を話そうとして……」

 

「……逃げよう」

 

記憶が戻った運転手を無視して、割れた窓ガラスを蹴って大きく広げ、昴は怪我をしないように出る。

 

周りには誰もおらず、横転したバスに巻き込まれた人はいなかった。

 

バスから出ると昴は大きくため息をついた。

 

「もう今日は帰ろ……。疲れたなってここは!?」

 

帰ろうとした昴は激しく驚く。

 

ここは昴の目的地であるショッピングセンター――らんらんぽーと。

 

「……せっかくだし、ガンプラ買って帰るか」

 

昴は正面にある入り口に向かう。徐々に嬉々とした様子で歩く。

 

(買ったら明日からゆっくりと組み立てよう)

 

「やはり、来たか。遅かったじゃないか、横花君」

「誰だ。今日はもう勘弁……お、お前は!?」

 

正面の入り口には荻縄朝日が立ちはだかっていた。

 

「朝日……、頼む。見逃してくれ」

「見逃す? ああ、掃除の件のこと。掃除は明日させるよ」

「そうか! ありが――」

「掃除はね!しかし、石鳥さんを嘘をついて見捨てたのは別だ!」

 

昴の言葉を遮って言った。

 

「確かに、俺は見捨てた。だが、仕方なかったんだ」

「何が仕方ないんですか、昴さん?」

 

昴の後ろから声がかけられる。

 

昴はおそるおそる後ろを振り向く。

 

そこには石鳥結菜がいた。

 

「私を騙した。その覚悟はできてますか?」

 

結菜は拳を握って近づく。

 

(前には荻縄、後ろには結菜だと!?)

 

荻縄も昴に近づく。

 

「横花君。僕は普段は暴力を好まない。しかし、君は殴られなければならない! 人を見捨てて自分の目的を果たす。僕はこれを許さない! あと、掃除もサボったことも許さない!」

 

「掃除と見捨てた件は別じゃないかったのかよ!」

 

昴は唾を飲み込む。

 

(このままでは、ゴリラ(結菜と荻縄)たちに殴られ病院送り。やるしかない! 俺はこの状況を乗りきってガンプラを手に入れる!)

 

 

 

 

 

 





どうもヤザヤザです。

この前、友人と遊びに行ったときにトイレに入ったらトイレットペーパーが無いという状況に遭遇して焦りました。

そんなことより、5話です。

ついに、バスから脱出してショッピングセンター。

次はいったいどうなるのか? 果たして、昴はプラモを買えるのか?

次回はなんと最終回!

それでは

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