八幡のジレンマ   作:みるみるみるとん

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初めて書きます。よろしくお願いします。


一話

 

 

 

最近ずっと雨が降っている。

しとしとと地面の渇きを癒すように、雨が降り続いていた。街行く人々は当然のように傘をさし、天からの雫を浴びまいと最新の注意を払っていた。

 

「こりゃ止みそうにねーな」

 

夕飯の買い物を終え、ただただ降り注ぐ雨に嫌気が差しながらも一歩ずつ自宅へと歩みを進めた。

傘はさしているものの足元はびちょびちょでちょっとばかりうんざりしている。

 

今日小降りって言ってたじゃん!!

 

そんなどうでもいいことに突っ込みを入れながら駅のホームに向かう途中、後ろからカツカツとヒールの音をたてながら傘もささずに走り去る女の子を見つけた。

本来ここで転けるか荷物を落とし、それを俺が華麗に拾い上げ、傘をスッと渡すのがラノベの主人公なのだろうが、俺はそんな事はしない。ていうかまずなかなか転けてくれないんだよな。

 

そして、俺がハーレム主人公になることを夢に見ながら一人妄想に浸っていると

 

ガサッ

 

と、荷物が落ちる音がした。

 

えっ?!まじ!?

 

傘代わりにしていた鞄から荷物を落としたらしい。彼女の周辺には様々なものが飛散し、追い討ちをかけるかの如く雨が空から降り注いでいた。

 

ちっ!仕方ねーな!

 

若干のニヤケを抑えながらも彼女を助けるべく彼女の元へと向かう。

 

「大丈夫ですか?」

 

まるで王子様のような立ち振舞いで彼女を傘で覆い、落ちた荷物を拾い上げる。

 

あれ?俺、かっこよくね?

 

「ありがとうございます。」

 

彼女はにこりとこちらに笑みを浮かべ、落ちた荷物の雨粒を降り落としていた。

 

あっ!そうだ。

 

俺は、鞄に入っていたタオルを取りだし彼女に手渡す。

 

「あの、これ、よかったら」

 

「すみません」

 

彼女は軽く会釈をしてタオルを手に取り、濡れた髪の毛の水滴を拭う。

俺は予備のタオルで飛散した荷物の水気をとり、彼女の鞄に入れていった。そして、最後のキーホルダーらしきものを手に取ろうとした時、

 

「待ってください!」

 

彼女は少し大きな声を出した。

 

「すみません。」

 

まあ、そうだよな。よくよく考えたら女の子の私物を触ってるわけだし、嫌がるのも無理ない。

俺は、手を引っ込め、少し後退りをする。

 

「い、いえ、そういう訳では」

 

彼女は申し訳なさそうにうつむいた。

 

俺は、どうすればいいのか分からずなぜか名前を聞いてしまった。

 

「あの、お名前を聞いてもいいですか?」

 

彼女は少し困惑した様子ではあったが、

 

「雪ノ下、雪ノ下雪乃です」

 

彼女は丁寧にそう答えた。

 

「ところであなたは?」

 

将来のハーレムの一角のなるであろう雪ノ下さんのことを考えていたことで自らの名を名乗ることを忘れてしまっていた。

 

「比企谷 八幡です」

 

ちょっとかっこよく言おうと思い、張り切りすぎてしまった。

 

「」

 

彼女は刹那驚いた風に見えたが、すぐさまとても悲しそうな表情を浮かべ、左手にあるブレスレットを握りしめていた。

 

そんなに変な名前?まあ、確かにかっこよくはないけど、こればかりはどうしようもない。

 

「ご、ごめんなさい!」

 

彼女は、そう言い放つと立ち上がり駅のホームへと向かった。

 

なんでフラれたの?ハーレム計画は?

まあ、大体結婚式何てのも『出会いは最悪で』

が常套句で始まるものが大概だしな。

 

「帰るか」

 

よくわからん人ではあったが人助けができたのは八幡的にポイント高い。

あと、ハーレム計画とかよくよく考えたらだるいわ、やめよ。

 

雨は相変わらず降り続いてはいたが、フラれた俺の心を癒すようにやや小降りになっていた。

 

「今ごろかよ」

 

そんなことを呟きながら自宅へと帰っていった。

 

 

 

 

 

 

「だたいまー」

 

「おかえり、お兄ちゃん!」

 

なんだかんだ言って家が一番落ち着くんだよな。慣れた環境が一番楽だ。大学デビューで金髪にしてそわそわ辺りを警戒しながらびくついているような緊張感が外にはある。

 

「お兄ちゃんどうしたの?びしょびしょだよ」

 

そういえば、服が濡れていたのを思い出した。やべーさみー。

 

「いや、ちょっと。色々あってな」

 

「ふーん。まあ、どうでもいいけど、さっさと風呂に入ってね。あと、顔がきもい。」

 

「え?」

 

どうやらニヤケてしまっていたらしい。

 

きもい?ひどくね?

まあ、とりあえず風呂にでも入るか。

 

濡れたジャージを洗濯機に放り込み、小町が沸かした風呂に入る。

 

「ふぅー。」

 

芯まで冷えきっていたため少し熱めの湯が体全体に染み渡る。

辺りとの気温差で湯気が立ち込め、湯船一面が真っ白となった。一人は楽でいいな。そんなことを思い浮かべていた。

 

ふと、今日の彼女のことを思い浮かべる。彼女は別れ際に悲しそうな表情をしたが、あの相貌は俺に対する嫌悪ではない。ならばなぜ?

それにあのブレスレットをなぜ彼女が持っているのだろうか。たまたまか?

考えていてもわからないことはわからない。それに十年以上前の物とはいえ、別の人が持っていてもおかしくはない。

 

きりがないことくらい分かっていた。けれどなぜか大切なことのような気がしてならないのだ。目を閉じてもその答えにたどり着くことはできず、濃い靄が立ち込めたまま辺りの視界を遮断している。

思い違いであって欲しい。ただそう願いを込め、目の前の水面を見つめていた。

 

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございました。まだまだ続きます。
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