副作用に副作用があるのはおかしいだろ!!   作:おびにゃんは俺の嫁

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第9話

「おせーぞ夏樹!」

「悪い、待たせちまったか?」

「いや時間通りだ」

「ならよかった。もうみんな揃ったのか?」

「ああ、夏樹で最後だ」

「そうか、なら行こうぜ」

 

十二月に入って寒くなり始めた頃、学生にとっては冬休み前最後の試練たる期末試験が迫ってくるの時期

俺は前日の深夜に一緒に防衛任務をしていたカゲ、ゾエ、鋼、哲次と図書館に勉強しに来ていた。

 

「しっかし当真のやつが羨ましいぜ。遠征で試験受けなくて済むんだろ」

「うーんどうだろうね。トーマくんも国近ちゃんもそれで喜んでいたけど、多分追試験になるんじゃないかな」

「だろうな。あいつら大丈夫なのか?このままじゃ太刀川さんでさえ行けた大学に行く前に、もう一年高校生する羽目になるぞ」

「夏樹、それはさすがに大丈夫じゃないか。ボーダー推薦もあるし」

「鋼、でもあれって単位を最低限とれていないとだめじゃなかったか?俺の方の六頴館は確かそうだったぞ」

「荒船くんの言う通りだよ。ゾエさん心配だよー」

「だいじょーぶだろ。あいつらもそこまでバカじゃねーだろ」

「そう言うカゲは大丈夫なのかよ。お前もあんま頭いい方じゃねーだろ」

「うるせー!俺もそこまでバカじゃねーよ」

「そういえば夏樹お前大学ボーダー推薦使わないらしいな」

「ああ、俺は給費生の試験で私立か国立のどっちかに入ろうと思ってるよ。みんなはどうするんだ?」

「ゾエさんとカゲはボーダー推薦だよ。鋼くんや荒船くんもそうだよね」

「ああ、俺も荒船もそうだよ」

「まぁそれが楽だしな」

「おっあそこが空いてるじゃん」

「そうだな。そこにしよう」

 

俺らはちょうど空いていた窓際の席で勉強を始めた。

 

「夏樹んとこすげぇ先に進んでんな。さすがだな」

「鋼くん、ここどうやるの?」

「あぁそこはこの公式を当てはめるんだ。そしたら解けるはずだ」

「なるほど、ありがと鋼くん。ってカゲ寝るなよ」

「んあ?あぁわりぃ寝てた」

「寝るなよ。カゲお前大丈夫なのか?テスト近いんだぞ」

「大丈夫だよそれくらい。なんてことはねぇ」

「大丈夫かなぁ。ゾエさん心配だよ~」

「それより、鋼この古文の課題持ってるか?持ってるなら移させてくれ」

「カゲ、たまには自分でやれよ」

「んだよ。いいじゃねーかよ」

 

たまに迷惑にならない程度の小声でしゃべりながら各々の課題や分からない所を教えあって解いていく。

しばらくして俺らは一度図書館を出て昼飯を食べに行くことにした。

幸いこの図書館は市役所の隣にあり、近くには商店街が広がっている。

 

「何食いに行く?」

「俺は何でも構わないぜ」

「ゾエさんも何でもいいけど、しいて言えば量のあるものがいいな」

「あそこの定食屋なんてどうだ?」

「定食屋ってケーキ屋が近くにある所か?」

「そうだ。前田食堂って所なんだけど、夏樹知ってるのか?」

「ああ、前に冬華と行ったことがあるよ。安くてうまっかったよ。俺も前田食堂に賛成」

「そうだな。あそこ結構量がある所だったしな」

「荒船くんも行ったことあるの?」

「ああ、前に穂刈と映画を見た帰りに行ってみたんだ。夏樹の言うように安くてうまい。それに大盛にもできなかったっけか」

「学生は大盛無料だったはずだ」

「いいねそこ。そこにしようよ。カゲもそこでいい?」

「ああ、構わねーぜ」

「そうと決まれば行くとするか」

 

俺らは前田食堂に行って、俺は唐揚げ定食、鋼はカツ丼定食、哲次は生姜焼き定食、カゲは焼肉定食、ゾエはカツカレー大盛とミニうどんをそれぞれ頼んで席に着いた。

 

「なぁ本部から連絡が来てたんだけど、お前らのとこにも行ってるか?」

「え?連絡?ちょっと待ってくれ、今確認する」

 

ボーダーから支給されてる携帯端末を開くと緊急連絡が来ていた。

カゲの端末にも連絡が来ているみたいだ。

 

ボーダー本部からA級隊員及びB級各隊の隊長各位へ

本日10時過ぎ頃、梅見屋橋2丁目付近にてゲートが発生。

トリオン兵が複数体侵攻、幸い付近にいた正隊員により対処され、被害は少なかった。

しかし誘導装置の効かないゲートが確認された。

現在、開発室のエンジニアが総力を挙げて、原因を究明中。

各隊員は念のため警戒されたし

 

どうやら誘導装置の効かないゲートが発生したらしい。

俺と哲次、カゲに来てることから、箝口令が敷かれているらしい。

まぁここにいる面子なら教えても大丈夫だろう。

俺はゾエと鋼にも端末の連絡を見せた。

 

「おいおい、大変じゃないか」

「しかし、どうしてだ?誘導装置があったはずだろ」

「知らねぇよ。エンジニアが調べてんだろ」

「おい、ニュース見てみろよ。ちょうど報道されてるぞ」

 

鋼の言う通り、食堂にあるテレビを見ると、三門市のローカルニュースがやっていた。

そこにはボーダーから同じような内容が放送され、市民に対するインタビューでは割と批判的なコメントをされていた。

 

「キビシー」

「まぁ仕方ないだろ。ボーダー本部で誘導装置が完成して以降、大規模な侵攻で警戒区域から何体か出てきちまうことはあっても、突然町中にゲートが開くことなんてなかったんだからな」

「だな。しかしなんでだ?誘導装置の故障か?」

「それはないだろ。流石にメンテナンスをしてるだろうからな。夏樹どう思うよ?お前結構な古参だろ。あっち側に行ったこともあるだろ」

「どうだろうな。あんま分からないけど、あり得るとしたらネイバーの新技術とかだろ。それかトリガーとか」

「へ~トリガーってそんなこともできんのか」

「生姜焼き定食の方ー」

「あ、俺だわ」

 

その後、各々の昼食を食べて店を出る。

 

「うまかったな~」

「うん、量も多くてゾエさん満足だよ」

「ふぁー、飯食ったら眠くなってきた。おい夏樹この後も勉強すんのかよ?もう終わりでよくねぇか」

「カゲが一番勉強しないとまずいだろ」

「うるせー鋼。お前とはそんな差ないだろ!」

「まぁそう言うなよカゲ。もうちょい勉強したら遊ぼうぜ」

 

俺らはそんなことを話しながら図書館に戻ろうとしていた。

図書館に着いて中に入ろうとしたその時

 

『緊急警報、緊急警報 門が市街地に発生します』

『市民の皆様は直ちに避難してください。繰り返します。市民の皆様は直ちに避難してください』

 

「ってマジかよ!」

「さっき話した誘導できないゲートってやつか」

「ケッ!丁度いいじゃねーか。いい眠気覚ましだ」

「ゾエお前は市役所のシェルターに行け。そこで避難してきた市民の保護と周囲の安全の確保を」

「はいよ~ゾエさん了解」

「俺達はどうする?」

「鋼はさっきの前田食堂の方に行ってネイバーを倒してくれ。哲次は反対側を頼む。でも二人は市民を救助してシェルターまでの誘導を優先してくれ」

「わかった。夏樹はどうするんだ?」

「俺は図書館や市役所の向こう側に行く。カゲお前はとりあえずネイバーを倒しまくってくれ」

「おう、任せとけ」

「「「「「トリガー起動!!」」」」」

 

俺達はそれぞれのところに向かい、ネイバーを倒して市民をシェルターに誘導する。

しかし何故、警戒区域の外にゲートが開いたんだ。

 

「た、助けてくれー!」

「今行く!」

 

そこに行くとビルが崩れていて道が通れなくなっていて、モールモッドが迫っていた。

 

「ヤバい!バイパー!」

 

バイパーでモールモッドの弱点を正確に打ち抜いて動きを止めさせる。

市民の人たちを保護したがかなりの人数がいて、一人じゃ厳しいか

 

『カゲ今こっちに来れないか?かなりの数の市民がいて、手助けが欲しい』

『わかった。今そっちに行く』

『夏樹、こっちはあらかた片付いた。そっちは大丈夫か?』

『こっちもだ。どうする夏樹?俺か荒船がそっちに向かおうか?』

『頼む。鋼はゾエに合流してくれ。哲次は狙撃で援護できるか?』

『『了解』』

 

その後、五人で市民の避難とネイバーの討伐を終えた。

しばらくしてレスキュー隊と救急車が来て、レスキュー隊の人たちと一緒に家屋に閉じ込められた人の救助活動を行って、落ち着くころにはもう日が暮れそうになっていた。

俺達は本部に向かい報告書を書いて提出した。

 

「五人ともご苦労だった。君達のおかげで幸い死者は出ずに済んだ。もし君達がいなかったら大変なことになっていたよ。今日はもう帰っても大丈夫だ」

「分かりました本部長。それでは失礼します」

「あっそうだ。夏樹くんすまないが君は残ってくれ」

「分かりました」

「じゃあな夏樹。お疲れ」

「おう、じゃあな」

 

そう言うと4人は本部長室から出て帰っていった。

 

「で、用件は何ですか?」

「ああ、実は夏樹達が対処してくれたところ以外にも5か所で同じことが起こったんだ。幸いどれも近くに正隊員がいて死傷者は少なく済んだ」

「合わせて6件もですか。原因は何かわかったんですか」

「いや、まだだ。今、鬼怒田さんら開発室が総出で原因究明に取り組んでいる。しかし現在、A級上位3部隊が遠征に行っていて不在なため、不測の事態に対応できる人員が不足している。そこで夏樹には今日の深夜か、明日の昼に待機要員として居てもらえないだろうか?もちろん特別手当もだそう」

「分かりました。じゃあ明日の昼は妹の冬華の学校で面談があるので、今日のこの後の深夜でお願いします」

「分かった。ありがとうよろしく頼む。あと鬼怒田さんが力を借りたいと言っていたので、待機中の間は開発室に行ってくれ」

「了解です。それじゃあ失礼します」

 

本部長室から出た俺はラウンジに行って、冬華に連絡を取ることにした。

 

佐藤 夏樹【冬華、すまないボーダーの方で急用が出来てしまったので今日は帰れない。明日の面談は大丈夫だから安心してくれ。今晩は西宮姉弟の家に泊めてもらってくれ。話は通しておくから。それじゃすまないがよろしく頼む】

 

佐藤 冬華【了解です。兄さんも気を付けてくださいね。あと優佳さんには私が伝えておくので大丈夫です。それじゃあ頑張ってください】

 

よし、これで冬華とも連絡を取ることが出来た。夕飯を食べて開発室に向かうとするか

食堂に来て、食券を買おうとしていると後ろから声がかかった。

 

「夏樹先輩じゃん。お疲れーっす」

「お疲れさまです。夏樹先輩」

「おお、米屋に奈良坂か。お疲れさん、防衛任務終わりか?」

「はい、ちょうど終わったところです」

「そうか」

「そういえば聞きましたよ。イレギュラーゲートに先輩遭遇したらしいすね」

「え?ああ誘導できないやつのことか。それなら昼頃にカゲ達といた時にな。詳しくは席に着いたら話すよ」

「そうですね」

 

俺達は料理を受け取って空いているテーブル席に座って夕飯を食べ始めた。

 

「で、詳しく教えてくださいよ先輩」

「陽介落ち着け。すいません騒がしくして。でも俺も気になります。何があったんですか?」

「ああ、実はな…」

 

俺は米屋と奈良坂に今日のイレギュラーゲートのごたごたについて教えた。

 

「…って訳なんだ。ってか秀次から聞かなかったのか?秀次や古寺、蓮さんはどうした?」

「三輪は本部長のところに、章平たちは本部長のところに行ってる三輪の代わりに報告書を作ってます」

「秀次が忍田さんのところにか?何かあったのか?」

「いや、それがっすよ。防衛任務中にバムスターが警戒区域から出そうになったんですよ。それで俺と秀次が現場に急行したら、バムスターはボロボロになってて、誰がそれをやったのか分からないんですよ。だから本部長に報告が来てないか聞きに行ってるんですよ。先輩なんか知りません?」

「そうなのか。バムスターをボロボロってどんなだ?」

「木っ端みじんでした。俺たちの隊が一番早くバムスターの元に着いたんですが、そこにいたのは不良の学生だけで、事情を聴いてもはっきりとしない感じでした」

「これってイレギュラーゲートとなんか関係あるんじゃないですか?」

「なるほど、わかった。この後鬼怒田さんの所に行くから、その時にちょっと聞いてみるよ」

「お願いします」

「先輩この後ランク戦しましょうよ。深夜まで時間ありますし」

「陽介、お前は少しは勉強しろ。もうすぐテストだぞ」

「ダイジョブダイジョブ」

「はぁー」

「大変だな奈良坂も。まぁなんかあったら助けるよ」

「ありがとうございます。その時はお願いします」

「おう、じゃあ俺はこれで行くわ。お疲れー」

「「お疲れ様です」」

 

米屋たちと別れた俺は開発室に向かった。

 

「失礼しまーす」

 

開発室に入るとそこには戦場が広がっていた。

 

「おい!さっき回したデータの解析どうなってる!?」

「それならまだですよ!まだ現場から回収したトリオン兵のデータ分析が終わってないですよ!」

「そんなもんは後だと言っただろ!さっき回したデータを先に解析しないか!」

「寺島さん、お疲れ様です。大変そうですね。手伝いましょうか?」

「夏樹君か。待ってたよ。鬼怒田さん!夏樹君が来ましたよ!」

「そうかわかった。おい佐藤!こっちに来てくれ」

「分かりました」

「すまんな、騒がしくて。見ての通り今日のイレギュラーゲート以降このざまだ」

「なるほど、で自分を呼んだわけとは何でしょうか?」

「ああ、今日のイレギュラーゲート発生は計6件。そのデータを見て何か気づくことはないか?お前のとこのエンジニアにも頼んではいるんだが、あいつは県外に遠征中だ」

「あぁクローニンのことですね」

「そうだ。そこで、佐藤お前ならクローニンほどではないが知識もあるだろう。だから解析の手伝いをしてくれ。こっちだ」

「分かりました」

「この後、ここで会議がある。それまでに資料に目を通しておいておけ」

「了解です」

 

渡された資料に目を通す。

しばらくすると、鬼怒田さんと寺島さんを始めとするチーフエンジニアが来て会議が始まった。

 

「まず原因は何だ?誘導装置は?」

「誘導装置はイレギュラーゲート発生時も通常に作動していました。現在も以上なく動いています」

「だったら何故ゲートが誘導されない!」

「それはまだ分かりません。ネイバー側の我々の知らない技術としか…」

「なんとかして対策を練らないと…」

「トリオン障壁で防ぐのはどうです?」

「でもそれじゃあ一時的なものだろう」

「でもそれぐらいしか…」

「夏樹君どう思う?」

「そうですね、どうも不自然に思います」

「不自然?佐藤どうゆうことだ」

「ええ、6件のうちのほとんどのイレギュラーゲートが市街地に発生しているのにそれにしては被害が少ない。確かに死傷者も出ていますが警戒区域外で突然ゲートが開いた割には被害が少なすぎる気がするんですよね」

「少ないってそれは近くにボーダー隊員がいたからだろ」

「そうです。そこなんです。A級B級の正隊員はだいたい130人くらい、三門市はそれなりに広いし人口もいる。そんな中で全部のイレギュラーゲートの近くにはボーダー隊員がいたってあまりに偶然が過ぎると思いませんか?」

「確かに妙だな。しかしそこに何の関係性が…」

「なるほどそうか!周りからトリオンを集めてゲートを開くような仕組みのナニカがあれば、イレギュラーゲートの説明がつく。でかしたぞ佐藤!」

「鬼怒田さんでもその何かを見つけない限りはどうしようもありませんよ」

「そうだな~どうしたものか…しかしそんなもの一体いつこっち側に送り込んだというんだ」

「あの~」

「なんだ雷蔵?何かわかったか」

「多分トリオン兵に忍び込ませていたのではないでしょうか。隊員に倒された後、こっそりトリオン兵から放出されているのでは?」

「なるほど分かった。じゃあ…」

 

これ以上は会議で結論は出ず、明日の幹部による会議でここまで話し合ったことを報告する事になった。

結局、忍田さんに頼まれた待機要員の仕事は何度かゲートが開いたらしいが問題なく対処され、俺の出番はなかったらしい。

朝になって、任務が終わって家に帰った俺はシャワーを浴びて、少し仮眠をとることにした。




感想、アドバイス等お待ちしています。
誤字報告ありがとうございます。

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