副作用に副作用があるのはおかしいだろ!!   作:おびにゃんは俺の嫁

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大変お待たせしました。
気付いたら年号代わってた。
そしてついに原作に突入です。


第10話

目を覚ますと、8時すぎになっていた。

今日は冬華の面談がある。

いつもは冬華1人に任せていたが、今回は受験を控えているので保護者同伴する必要があった。

だがいつも保護者になってもらっている優佳たちの両親が今海外に行っていて、いないので俺が出ることになった。

面談は放課後直ぐにあるのでそれまでどうしようか…

取りあえずシャワーでも浴びるか。

 

「ふぁぁー、ねみぃ」

 

少し熱いくらいのお湯を頭から浴びる。

体の芯から暖かくなっていくのが分かる。

どうやら寝ている間に少し身体が冷えてしまったようだ。

徐々に体を覆っていたまどろみが晴れていき、頭が澄み渡り、頭の中の歯車が動き始める感じがする。

昨日のことを思い出す。

 

結局、昨日の時点では原因は分からなかった。

上層部は次にイレギュラーゲートが発生したら、本部に貯蔵されているトリオンでトリオン障壁を展開して、ゲートを強制封鎖することを決めた。

しかし鬼怒田さんが言うには強制封鎖も出来て2日間だけらしい。

開発室が引き続きフル回転で原因を調べているようだ。

今は通常時の任務に就く5部隊に加えて、各支部にもう1部隊ずつ待機する部隊を配備して、イレギュラーゲート発生時に現場に急行出来るようにすることになった。

そんな訳でA級とB級の部隊総出で防衛任務にあたることになった。

因みに流石に深夜に中学生を防衛任務に就かせるわけにいかず、中学生のいる部隊を優先的に午前と午後のシフトに割り当てている。

俺は一応1人で1部隊扱いだが、B級の中で腕に少し不安の残る隊員達と混成部隊を組んで深夜のシフトに組み込まれている。

 

シャワーを終えて、テレビでバラエティーじみたニュース番組を見ながらコーヒーを淹れる。普通のニュースを見たい…

コーヒーにミルクと砂糖を沢山入れて甘くする。

これで俺のスペシャルコーヒーの完成だ。

いつもは冬華に止められてしまうが今はその冬華がいない。鬼の居ぬ間に洗濯ならぬ冬華の居ぬ間に糖分補給というわけだ。

出来たそれを一口飲むと、コーヒーの苦みを消し去るかのような甘みが口いっぱいに広がって全身が幸福感に満たされる。

いつも思うがコーヒーをブラックで飲むやつはどうかしてる。。

苦みより甘みの方が絶ッ対うまい。

苦みをうまく感じるのは舌の細胞が死んでるのだと俺は思う。

久しぶりのスペシャルコーヒーを飲み終えて、俺はノートパソコンを起動する。

完成間近になったスモークのオペレーター用の支援プログラムの最終調整をする。

 

調整がひと段落する頃には、11時半になっていた。

腹の虫がしきりに鳴きだした。

そういえば朝から何も食っていなかったな。

何か作るのも面倒だし、外に食べに行こう。

そのあとどこかで面談まで時間をつぶすことにしよう。

そう決めた俺は着替えて比較的学校の近くにある繁華街に向かった。

 

ファミレスで昼飯を食べて、本屋とかをブラブラ歩いていたら、突然ポケットの中のケータイが鳴った。

ボーダーからのようだ。

通信に出ると、沢村さんの声が聞こえる。

 

『佐藤君、今どこにいるの!?大変よ!三門市立第三中学でイレギュラーデートが発生したわ。今すぐ向かえる?タイミングの悪いことにそこに通っている隊員はみんな今学校にはいないみたいで、あなたが一番近くにいるみたいなの』

「っ!分かりました了解です。今すぐ向かいます」

『お願いね。警戒区域からも嵐山隊が向かうわ』

 

急がないと冬華が!冬華が危ない!

もう家族を失うのは…何もできないで家族を亡くすのはこりごりだ!

 

トリガーを起動して走り出す。

町の各所から警報が聞こえてきて、その警報が自分を焦らせる。

ダメだ!このまま行ったら間に合わない!

そう思ってグラスホッパーとテレポーターを併用してスピードを上げ、その速さにサイドエフェクトで強引に目を追いつかせる。

通信で本部のオペレーターから状況を聞く。

ゲートから来たのはモールモッド三体らしい。

学校に着くと、校舎の南館の壁に

モールモッドが張り付き中に入ろうとするのをC級の服を着て眼鏡をかけたやつが防いでいた。

そしてその眼鏡くんの後ろの階段にに複数の生徒がいて、上に登ろうとしていた。

だがC級にはやはり厳しいのだろう。少しずつ押され始めている。

それをサイドエフェクトで強化した脳で一瞬で把握した俺は、壁に張り付いて中に入ろうとしているモールモッドに向かってグラスホッパーとスラスターを使って勢いをつけてレイガストで壁から中庭に叩き落とす。

モールモッドを追って落ちる時、階段を上って一体のモールモッドが、さらには廊下の奥からもう一体のモールモッドが眼鏡くんのところに迫っているのが横目で見えた。

 

「おい眼鏡くん!後ろからくるぞ!」

 

まだ逃げ遅れた生徒もいた。

警告は一応できたと思うが、急がないとな。

あの腕じゃモールモッド2体相手は厳しいだろう。

そう思って下に落としたモールモッドを追って地面に着地しようと、そこにモールモッドが攻撃してくる。

それを空中で身体を捻って躱す。

そして衝撃を緩和するようにしゃがんで着地する。

そこに横から振るわれるモールモッドの爪を1歩下がって躱す。

そしてスコーピオンを起動して、レイガストでまた振るわれてきた爪を逸らして、スコーピオンでモールモッドを弱点の目から尻尾にかけて真っ二つにする。

モールモッドを倒した俺は急いで眼鏡くんのいた階へ飛び込む。

その時窓ガラスを割ったが気にしても仕方ない。

だが飛び込んだその階には眼鏡くんはおろかモールモッド2体も居なくなっていた。

壁についた傷を見ると、どうやら上の階に上ったようだ。

急いで後を追って踊り場の壁を使って三角飛びのようにして上の階へ上る。

上るとそこには一体のモールモッドが縦にかなり深く斬られて動きを止めていた。

急いでその奥に行くと教室と廊下の間の壁が崩れて、教室が廊下から丸見えになっていた。

その教室の中は椅子や机が散乱していて、プリントやら教科書やらの紙が散らばっていた。さらには壁や天井に戦った後であろう傷が無数についていた。

そしてその荒れ果てた教室の真ん中には、何本かの爪の付いたアームが切り落とされ、弱点の目をバッサリと斬られたモールモッドがこちらに尻を向けて動かなくなっている。

 

その荒れ果てた教室とモールモッドの残骸に驚いていると、そのモールモッドの残骸の奥から、中学生にしては小さめの白髪の子を抱えながら眼鏡くんが出てきた。

眼鏡くんは中学の制服に戻っている。

 

「いや~危なかったな。オサム」

「あ、あぁそうだな…」

「遅れてすまない、A級の佐藤だ。怪我はないか?」

「うん、だいじょぶだよ」

「そうか、君は大丈夫か?」

「はい、助けてもらってありがとうございます。C級の三雲です。ほかの隊員を待っていたら間に合わないと思ったので自分の判断でやりました」

「いや、それは構わないよ。遅れてきた俺が責めることはできんよ。それに君がいなかったら犠牲者が出ていたかもしれなかった。俺の妹もこの学校に通ってるんだ。本当にありがとう」

 

三雲君たちと下に降りると、ちょうど嵐山隊が現着した。

嵐山さんたちが先生たちに負傷者の確認をした後、こちらに来た。

 

「夏樹!すまない遅れた。だが、大丈夫だったようだな」

「いえ、俺も少し遅れてしまったんです。でもそれまでこの三雲君が持ちこたえてくれていたんで助かりましたよ」

 

嵐山さんに状況を説明して、三雲君と嵐山さんが話始めた。

その間に、時枝と一緒に校舎の中に現場調査に向かった。

 

「でもよかったですね。死傷者が出なくて」

「そうだな。冬華に何もなくてほっとしてるよ」

「彼どうなるでしょうね?やっぱり厳罰処分ですかね」

「まぁそうだろうな。一応報告書で厳罰を避けれるように擁護はするけど、厳しいだろうな」

「そうですよね。でも惜しいですね。モールモッド3体相手に学校の生徒を守りながら耐えて、しかもそのうち2体を倒したんですからね」

「そうだな…しかもあの残骸や戦闘の痕を観るにB級以上の実力はあるだろうな」

 

時枝と現場調査を終えて外に出ると木虎と三雲君が助けていた白髪の小さい奴が言い合いをしていた。

どうやら三雲君の処分についてでもめているようだ。

どうやら木虎は隊務規定違反をしたくせにヒーロー扱いされている三雲君に対抗心をメラメラと燃やしているのだろうのだろう。

まぁ木虎は結構な負けず嫌いだからなぁ

 

「さっきの男の人よりも遅れてきたのに何でそんなに偉そうなの?」

「…!?……誰?あなた」

「オサムに助けられた人間だよ。あぁあとさっきの男の人にもだけど」

「さっきの男の人じゃなくて佐藤だよ。佐藤夏樹よろしくな。えぇーっと…」

「おれは空閑遊真、背は低いけど15歳だよ。なぁ日本だと誰かを助けるのにも許可がいるのか?」

「いや、いらないよ」

「そうよ。確かに佐藤先輩の言う通り、誰かを助けるのは個人の自由だけど、トリガーを使うならボーダーの許可が必要よ。当然でしょ。トリガーはボーダーのものなんだから」

「なに言ってんだ?トリガーは元々近界民のものだろ」

「「…!?」」

「あ…あなたボーダーの活動を否定する気!?」

「…ていうか、おまえオサムが褒められるのが気にくわないだけだろ」

「なっ…何を言ってるの!?私はただ組織の規律の話をしてただけで…」

「ふーん、おまえつまんないウソつくね」

「……!?」

 

そろそろ止めるたほうがいいかと思っていたら、回収班を要請した時枝が来た。

 

「はいはい、そこまで。現場調査も終わったし回収班も呼んだから撤収するよ。佐藤先輩も大丈夫ですか?」

 

相変わらず空気を読むのがうまいな。

さすがデキるキノコとっきーだな。

 

「おう、大丈夫だ。それと木虎、お前の言いたいこともわからなくはないが、それを決めるのは俺達じゃなくて上の人だ。まぁ報告書には三雲の処罰が重くならんように書いとくよ。冬華を助けてくれたしな」

「そうだな。夏樹と充の言うとおりだな。一応うちの隊からも報告書には三雲君の処罰が軽くなるようにしておくよ。夏樹と同じく君には妹たちを守ってもらった恩があるからね。とりあえず三雲君は今日中に本部に出頭してくれ」

「分かりました」

「じゃあ失礼するよ。三雲君本当にありがとう…!」

「そんな…こちらこそ…」

「それじゃ俺たちはこれで。夏樹はどうするんだ?」

「俺は冬華に会ってきます。そのあと報告しに本部に行きますよ」

「そうか、じゃお疲れ様」

「お疲れ様です」

 

嵐山さんたちが去っていくと生徒たちの人ごみの中から冬華か出てきた。

 

「兄さん!」

「冬華!良かった無事で!」

「突然ゲートが開いて、あの時みたいな悲劇が起きるんじゃないかって怖かったです…」

 

よく見ると冬華の手足が震えている。

それもそうだよな。

だって冬華は、四年前に母さんがモールモッドに殺されるのを見てしまっているんだから。

あの時の冬華の真っ青な顔は、今も脳裏に焼き付いている。

でも本当に無事でよかった…

 

冬華と別れた俺は嵐山隊の後を追って本部へと向かった。

本部基地内に入って、嵐山隊の隊室にお邪魔する。

 

「お邪魔しまーす」

「佐藤先輩?」

「よっ、綾辻」

「おぉ夏樹か、どうしたんだ?」

「いや、一回報告書書くだけで玉狛に戻るのもめんどくさいんで、ここで一緒に書かせてもらってもいいですか?」

「ああ、それなら構わないぞ。俺たちも今から始めようとしてたんだ」

「今お茶いれて来ますね」

「おう、時枝ありがとう。そうだ、くる途中にコンビニでお菓子を買ってきたから、これみんなで食べてくれ」

「わざわざありがとな」

「ありがとうございます。させていただきます佐藤先輩。早速持ってきますね」

 

そう言ってお茶を入れに行こうとする時枝にコンビニの袋に入ったグミとクッキー、ポテチを渡す。

 

「何買ってきたんですか?」

「グミとポテチと後クッキーだよ」

「そんなに買って来てくれたのか。気を使わせてすまないな」

 

話しながら報告書を書く準備をしていると、時枝がお茶とさっき渡したお菓子をお皿に盛って、持ってきた。

 

「じゃあ始めるか」

 

と嵐山さんの掛け声で作業に取り掛かり始めた。

ある程度作業が進んでひと段落すると、お菓子をつまみつつ、談笑が始まった。

 

「そういえば佐鳥と木虎はどうしたんです?」

「佐鳥先輩は今日は学校の方で外せない用事があるらしく、休みです」

「そうか。どうりで静かだと思ったよ」

「藍ちゃんは、さっきのC級の子に本部基地まで同行するつもりらしくて、そのまま学校の近くに残りました」

「そういえば、佐藤先輩は今日のイレギュラーゲート以外に、昨日もイレギュラーゲートに遭遇したんですよね?」

「ああ、ビックリしたよ」

 

嵐山さん達に昨日のことを詳しく話す。

 

「でもよかったですね。佐藤先輩たちがその場にいて。いなかったらと思うとゾッとしますよ」

「そうだな。まぁ運が良かったよ」

「でもどうするんでしょうか?このままイレギュラーゲートが開き続けるのを許すわけにも行かないですよね?」

「そうだな。時枝の言う通り、今開発室総出で原因を調べているよ。流石にイレギュラーゲートがイレギュラーじゃなくなる事態にはならないと思うよ。鬼怒田さんたちもバカじゃないしね」

「そういえば、沢村さんから聞いたんだが、ゲートを強制封鎖することになったらしい」

「あぁ昨日鬼怒田さんも言ってましたよ。でも基地の貯蓄トリオンは2日しか持たないらしいです。まぁその二日間はイレギュラーゲートは開かないと思いますよ」

 

その後少し雑談をして、書き終わった報告書を忍田さんに渡して、家に帰ってきた。

結局冬華の面談は延期になってしまった。まぁ当たり前だわな。でも午後の授業をしてるあたりはさすが三門市だなぁと思うけど。

家に帰ってダラダラとソファで寝転びながら、テレビで地方局でやってる昔のアニメの再放送を見ていたら、突然臨時ニュースに切り替わった。

テレビの画面の中では、地方局アナウンサーの女性がイレギュラーゲートの発生を報道していた。

どうやら冬華の通う中学校近くの商店街、今日俺が昼飯を食べたファミレスのあるところでイレギュラーゲートが発生したらしい。

侵攻してきたトリオン兵によって、家屋にかなりの被害が出たらしい。

ニュースから流れてくる情報を聞いていると、ボーダーから支給されている携帯端末に連絡が入った。

着信の名前には林藤支部長と表示されていた。

 

「はい、佐藤です」

『夏樹、俺だ』

「ボスですか。もしかして今ニュースでやってるイレギュラーゲート関係ですか?」

『おうニュースで知ってるなら説明は大丈夫だな。でも詳細を後で端末に送っとくから確認しといてくれ』

「了解です」

『それでなんだが、この後城戸さん達上の連中で会議があるからそこに参加してくれないか』

「構いませんけど、なんでですか?」

『イレギュラーゲートの対策について話し合うから夏樹にいてもらえばなんか気づくことがあるかもしれない。それにその話し合いの前に、今日の第三中でのイレギュラーゲートでトリガーを無断使用しちゃったC級の処分を決めるんだが、当事者の夏樹がいた方がいいだろうから、来て欲しいんだ。会議は夜からだから、時間になったら迎えに行くよ。家でいいか?』

「はい、家にお願いします」

『わかった。ついでに冬華ちゃんも友達の家に泊めてもらうんなら送るから。そんじゃ頼むわ』

 

電話を切ると端末にさっきニュースで報道されていたイレギュラーゲートについての現場の状況を纏めたであろう報告書が送られてきていた。

内容を読むと、新型のトリオン兵が上空から町を爆撃していたらしい。

木虎がトリオン兵の上に登って倒そうとしたところ、突然トリオン兵が硬くなり、そのまま町に突っ込もうとしたらしい。

幸いにもトリオン兵は突然進路を変えて川に落ちたので最悪の事態にはならなかった。

さらに現場に三雲君がいて、救助活動をしていたらしい。

その救助活動でまたしてもトリガーを無断使用したらしい。

仕方ないとはいえ、一日に二回も隊務規定違反をしてしまうとは不幸というか、何というか…

それと報告書とは別に、今日の二件のイレギュラーゲートの発生でゲートの強制封鎖が決まったことの通知も送られていた。

優佳に冬華を泊めてもらえるように頼んで、この後の会議でどうやって三雲君を庇うかを考えていると、家のドアが開く音がして、ただいま帰りましたと冬華の声がした。

 

「お帰り、大変だったな。今日は」

「そうですね…四年前を思い出しそうです。大丈夫でしょうか…」

「ああ、安心しろ。冬華と冬華の周りは俺が必ず守ってみせる。もうあの時みたいな思いはさせない。絶対にな。だから、安心しろよ」

 

そう言って、俺は冬華の頭を撫でてやる。今日のことはだいぶ怖かったらしい、手がかすかに震えている。

 

「そうですね。なら安心です。でも兄さんも心配ですから、無茶しないでくださいね」

「おう、気をつけるよ。まっ、無理はするかもしれないけどな」

「もう!どうなっても知りませんよ!」

「ゴメンゴメン、気をつけるよ」

「フフッ冗談です。それより、ご飯急いで作りますね」

「ああ、悪いんだけど俺この後ボーダーの方に行かないといけないんだ。だから今日も西峰姉弟に泊めてもらってくれ」

「あれ?優佳姉さんも防衛任務があるんじゃなかったでしたっけ?」

「それが今日のイレギュラーゲートで本部がゲートを封鎖してくれるからその間だけは通常時に戻ることになったんだ。だから優佳も今日の任務はなしになったんだ」

「そうだったんですね。分かりました。でも兄さんも任務はなくなるんじゃ…」

「俺は通常任務ってのもあるんだけど、この後の会議に出てくれって林藤さんに頼まれちゃってね」

「なるほどそうだったんですね。頑張ってくださいね」

 

冬華とキッチンに行き夕飯の支度をする。

まぁ支度といっても、下準備はやっておいたので時間はそこまでかからずに夕飯ができた。

2人で席に着いて夕飯を食べ始める。

話してるうちに話題は今日のイレギュラーゲートについての話になった。

 

「そういえば冬華は三雲くんのことを知ってたか?」

「ええ、まぁ話に聞く程度で、知り合いではないですが、いじめられてる子を助けたりしてるらしいです」

「へー、いいやつなんだな」

「あの兄さん、三雲くんはどうなってしまうのでしょうか?確かボーダーはC級でトリガーを無断で使ってはいけないんですよね?」

「そうだね。最悪除隊もあり得るだろうね」

 

城戸さんは規則に厳しいからなぁ

それこそ、「ボーダーにルールを守れない奴は必要ない」とか言いそうなんだよな〜

 

「なんとかなりませんか?」

「うーん、この後の会議で話してはみるけど、正直擁護しようにも、上の人を説得するだけの話のネタがないんだよね」

 

会議に呼ばれているとはいっても、出来て三雲くんの功績を報告することぐらいだしなぁ

それじゃあ、ルールうんぬんに対しての反論にはならない。

優秀だろうが規則は規則だと一蹴されてしまうのがオチだろう。

 

「そうなんですか…学校のみんなも私も三雲くんにすごい感謝しているんです。命を助けてもらいましたし」

「わかった。なんとか除隊処分にならないように頑張ってみるよ」

 

そういえば、三雲くんが助けたクガって子はなんだったんだろうか?

あの時、三雲くんに肩を貸されていたのに怪我をしていなかった。

それにあの教室の荒れ様と比べると身なりが綺麗すぎた気がする。

トリオン体になっていた三雲くんの方が制服に土埃が付いていたのにだ。

それこそトリオン体になっていたのが空閑だったという方が納得できる。

 

「なあ、三雲くんが助けたクガって子を知ってるか?」

「あぁ、空閑遊真くんですね。彼は昨日転入してきたんですよ。でも転入早々学校を辞めるって言ったらしいです」

「なんだソイツは、とんでもない奴だな。なんで転入してすぐ学校を辞めようとすんだよ」

「なんでも空閑くんが指輪をしてたみたいで、それを外せと担任に言われたら、親の形見で外せないって言って外さないといけないなら、学校は諦めますと言ったんですって」

「へ〜でも結局指輪は外したんだろ。まだ今日学校にいたってことはさ」

「それが学年主任の先生が認めたらしいんですよ。まぁ認めたと言っても突然体調を崩した先生が席を外して話自体がうやむやになったらしいんですけどね」

 

ブラック校則だとネットに書かれたくなかったのか?でも中学でアクセサリー禁止は普通だと思うけどな。

 

「あっ、そういえばネイバーが来る直前くらいにクラスの子が聞いたらしいんですけど、何でも三門市に来る前は紛争地帯を渡り歩いていて、サッカーも知らずに育ったらしいんです。サッカーを知らないところなんてあるんでしょうか?」

「サッカーを知らない?したくてもできない国はあっても知らないなんてことないと思うけどなぁ。それに紛争地帯って物騒だね。他には何か無いかい?」

「う~ん、あぁそういえば同じクラスの不良をやっつけたとかなんとか」

「不良?」

「はい、昨日同じクラスにいた不良たちに連れられて警戒区域の方に歩いていく姿を見た子がいるんですけど、今日空閑くんには怪我一つなくて、不良の一人は足を怪我してたらしいんですよ」

「そうなんだ。一応わかってると思うけど、警戒区域には近づくなよ。冬華の周りにも注意しとけよ」

 

紛争地帯ってのはどうにも引っかかるな…

それに空閑って名前、どこかで聞いた気がするんだよなぁ…

聞いたとしたら親父かお袋からだけど、ボーダー関係者か?

まぁ後でボスに聞いてみるか…

その後、夕食を片付けている間に冬華には泊まる準備をしてもらう。

しばらくして林藤支部長が迎えに来てくれたので、冬華を西峰姉弟の家に送ってもらった後、ボスと本部に向かう。

 

「報告書は読んだか?」

「ええ、しかし一日に二度も違反されると庇うのは難しいですね」

「さすがのお前でも厳しいか?」

「さすがのって言われても俺はただの高校生ですよ」

「ハハハ、ただの高校生とは言えないだろ。まぁ無理なら仕方ないか…」

「まぁなんとか頑張ってみますよ。三雲君には冬華を守ってくれた恩もありますしね」

「そうか、がんばってくれ。迅のやつも少し遅れるが来るから何とかなんだろ」

「そういえば三雲くんについて気になってることがあるんですよ」

「なんだ?」

「空閑って名前聞いたことあります?三雲くんが助けた子なんですけど、なんか頭に引っかかるんですよ」

「俺の知ってる空閑は空閑有吾さんだ。旧ボーダーの創設メンバーだ。

お前の親父さんとお袋さんとは仲が良かったな」

 

思い出した!確か親父とお袋が話してた。ボーダーの人で、ネイバーフッドに行ったって聞いた。

じゃあまさか彼は…

頭の中で歯車が噛み合う音がして、目の前の霧が晴れて一つの推測が浮かび上がった。

 

「でも有吾さんはだいぶ前にネイバーフッドに行ったから、夏樹は会ったことはないはずだ。その三雲くんの助けた子も名字が同じだけだろう」

「それが、色々とその空閑って子怪しいんですよね。実は…」

 

ボスにその空閑遊真のことと俺の推測を話す。

俺の推測は、空閑遊真は空閑有吾の息子であり、何らかの理由で有吾さんを亡くした為にあっち側からこっち側に来た。

そして昨日の三輪隊が遭遇したバムスター爆散事件の犯人は空閑遊真であり、更にはその攻撃威力から視るにブラックトリガーを持っている可能性が高いということ。

この推測をボスに話す。

 

「まっ、所詮はただの推測なんで話半分に聞いてください」

「いやいや夏樹の推測となればかなり真実味があるだろ。まぁ本人に会ってみないと何とも言えないか…取りあえずこの後三雲君と話してみるか」

「そうですね。けどもしこの推測が当たっていたらどうなりますかね?」

「どうなるって…そりゃ忍田は歓迎するだろうな、ただ城戸さんはどうだろうな…もしほんとにその空閑遊真が黒トリガー使用者だとしたら最悪強奪するかもな」

「やっぱ、そうですよねー」

「まっ、そうなりゃその時は頼りにしてんぞ夏樹」

「ええ、自分にできることであれば頑張りますよ」

「でもその前にイレギュラーゲートを解決しないとな」

「そうですね」

「とはいっても2日後まではゲートは開かねぇだろうから肩の力抜こうぜ」

「はぁー。ボスはいつも力抜きすぎですよ」

 

ボスと俺の乗る車は本部の駐車場に繋がる連絡通路に入っていった。

 




誤字報告ありがとうございます。
だいぶ更新してなかったのに、今回も報告ありがとうございます。

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