副作用に副作用があるのはおかしいだろ!!   作:おびにゃんは俺の嫁

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第11話

本部に着いて、会議室に入る。

そこには奥に長い、所謂口の字の会議机があり、お誕生日席の議長席に城戸司令が座り、その奥に直属部隊の秀次が控え、そして左側には奥から開発室長の鬼怒田さん、メディア対策室長の根付さん、外務・営業部長の唐沢さん達がすでに座っていて、右側の席はまだ誰も座っていない。

そしてボスが右側の一番奥に腰掛け、俺はボスの後ろに控える。

城戸さんの後ろの秀次と目が合い、目礼してきたので軽く返礼する。

 

(お、重い…空気が重い…)

 

空気に耐えられなくなりそうで秀次に話しかけようと思っていると自動ドアの駆動音がかすかに聞こえて、ドアが開く。

忍田さんと三雲君が入ってきた。

忍田さんが三雲君に座るように言って、ボスの一つ飛ばした隣に座る。

三雲君と目が合った。

かなり冷や汗を掻いている。

どうやらかなり緊張しているみたいだ。

まぁこんなとこにC級が来ることもないから仕方ないか。

それにボスみたいに気の抜けた感じで、緊張もクソもないような態度でも困るけど…

全員そろったこともあり、会議が城戸さんの声で始まる。

 

「では、みな揃ったことだ、始めようか」

 

まずは忍田さんが今回のイレギュラーゲートの事の顛末を報告する。

俺と嵐山さんの報告に、商店街での木虎の報告も加えられている。

嵐山さんはともかく、木虎が三雲君のことを認めるような報告をするとは驚きだな。

会議が進むにつれて意見が2つに割れてきた。

忍田さん、ボス、俺の三人は三雲君の処罰に反対派だ。

一方、鬼怒田さんと根付さんは断固として処罰すべきとしていて、城戸さんもおそらくそっちよりだろう。

唐沢さんはどっちでもなく、状況を静観している。

 

「佐藤君、君は現場にいたんだろう。君から見て三雲君の活躍はどう思うかね?」

 

唐沢さんが話を振ってきた。

みんなの視線が俺に集まる。

俺は少し間を開けてからしゃべりだす。

 

「そうですね。自分は忍田さんと同じく処罰には反対ですね」

 

おっと、目の前の化かしあいコンビの目線がきつくなる。

 

「それはなぜかね?君のことだしっかりとした理由があるんだろう」

 

唐沢さんは何故か俺の評価が高い。

そんなに期待されても困るんですけどね…

 

「ええ、一応あります」

「ほ~う、それはどのようなものなのかね?」

「今回の2件の違反の原因はイレギュラーゲートにあります。確かに三雲君が隊務規定を違反したのは事実で、それは処罰の対象ですがそれは我々ボーダー内での事情、外から見れば三雲君はゲートの誘導さえできなくなっている我々ボーダーに代わって自分たちを守ってくれた恩人です。特に一件目の中学校は三雲君がいなければ確実に死者が出たでしょう」

「それが何だというんだね」

「なるほどな…」

 

おっ、唐沢さんは俺が言いたいことが分かったようだな。どうやら城戸さんも理解したみたいだ。

 

「そこに隊務規定違反で彼を除隊にしたなんてことになれば、ボーダーは町を守れなくなっただけじゃなく、自分たちを守ってくれた彼をも辞めさせるのかと、ボーダーのイメージが下がるかもしれません。それに三雲君の通う第三中で三雲君がボーダーを自分たちを助けたせいでクビになったと知れたら悪い噂が立つでしょう。学校ってのは噂が広まりやすいですから、下手すれば他校にも広まってしまう。そうなれば新入隊員減るでしょう。だったら三雲君を認めて、それこそボーダーのイメージアップに利用した方が得だと俺は思います。ただでさえイレギュラーゲートのせいで町の人たちは不満がたまっていますから」

「確かに一理あるが…しかし…」

 

こういう時はデメリットだけじゃなくてメリットを提示する。

根付さんはこれで考え直すかな…

その後は確かに根付さんは考え直しているのか黙っているが、鬼怒田さんと城戸さんはいまだ処罰派から変わっていない。

結局、会議が膠着状態になったので一時休憩になった。

俺は会議室を出て、自販機で飲み物を買おうとすると後ろから

 

「何にするんだい?せっかくだから奢るよ」

「これは唐沢さん、じゃあせっかくなんでありがとうございます。これいいですか?」

「ああ、構わないよ」

 

そういうと唐沢さんは俺が頼んだ乳酸菌たっぷりの牛のおしっこソーダと、コーヒーを買う。

 

「はい、これ」

「いただきます」

「しかしさっきの君の考えはなかなかに的確だね」

「そうすか。ならよかったんですけど」

「まぁ城戸司令と鬼怒田開発室長は納得してないみたいだけどね」

「まぁあの考えは根付さん狙いで考えたものですから他の二人まで説得しようとは思ってませんよ。城戸さんに至っては説得させれる考えが思いつかなかったですよ」

「まぁそうだろうね。城戸司令はルールに厳格な人だからね。それに城戸司令の考えの、規則を守れないやつはいらないって考えも理解できるんだろう」

「そうですね。確かに理解はできます。一度規則を覆すと、後に続いて規則を破るバカも出てきますから」

「なかなか辛辣だね。でもよくわかってるね。まぁ、納得はしてないんだろう」

「ええ。そりゃ城戸さんの考えは理解できます。でも彼は規則を守る事よりも人命を守る事を優先した。そんなヒーローは貴重だと思います」

「ヒーローねぇ…なるほど確かにその通りだ。君の意見は聞いていて楽しいよ。それで本当の理由はなんだい?ヒーローな三雲くんを救いたいってだけじゃないんだろう?」

「あら?わかっちゃいますか。まぁ冬華を助けてくれたからって事じゃダメですか?」

「わかったよ。じゃあそういうことにしておくよ」

「助かります。まだ確証を得られていなかったので」

「そろそろ戻ろうか」

「そうですね。飲み物ありがとうございます」

 

俺と唐沢さんは会議室にみたいに戻った。

会議を再開しようとした時、ドアが開いて沢村さんと迅さんが入ってきた。

 

「迅悠一、お召しにより参上しました」

「御苦労」

 

迅さんと沢村さんが座ったところで城戸さんがイレギュラーゲートの対策会議を始めようとする。

そこに忍田さんが三雲くんの処分が決まっていないと、待ったをかけた。

 

「結論など決まっとろうが!クビだよクビ」

「他のC級にマネをされても困りますからね、「市民にボーダーは軽い」と思わせるわけにはいきませんが、しかし佐藤くんの言うことも一理ある…中学校の信頼が無くなってしまうかもしれませんしねぇ」

「だが、1日に2度も重大な隊務規定違反をしたのだ。そもそもC級にトリガーを持たせとるのはルールを守れん奴を炙り出すためだ。バカが見つかったから処分する。それだけの話だ」

 

どうやら根付さんはこっち側になりつつあるな…でもまだ鬼怒田さんは断固反対かぁ

どうしたものか…

 

「私は処分には反対だ。三雲くんは市民の命を救っている」

「ネイバーを倒したのは木虎だろう?」

「その木虎が三雲くんの救助活動を高く評価しています。三門第三中学校に発生したネイバーの3体の内2体は彼が倒している」

「ふむ、確かにそうですねぇ。佐藤くんはその場にいたんですよね。どう思いますか?」

 

根付さんから話が振られた。どうやら味方してくれるらしい。

 

「報告書にも書きましたが、三雲くんはC級のトリガーつまりレイガスト一つで校舎の中に入ってきたモールモッド三体から逃げ遅れた多くの生徒たちを守りながら見事撃退して見せました。彼の倒したモールモッドの残骸を見ましたが腕は確かかと思います。緊急時にこれだけの働きを出来る人間は貴重です。それに今回の件の元凶はイレギュラーゲートです。彼が行動を起こさなければ多くの死傷者が出ていました。もし彼が規則を守り、助けられた命を見捨ていたのなら、そっちの方がボーダーに相応しくないと思います」

「佐藤くんの言う通り。彼を処分するよりも、B級に昇格させてその能力を発揮してもらう方が私は有意義だと思う」

「なるほど、確かに一理ある…が」

 

ここで状況を静観していた城戸さんが口を開いた。

 

「ボーダーのルールを守れない人間は私の組織には必要ない」

 

城戸さんは三雲くんに次似たようなことが起きたらどうするかと質問をした。

三雲くんは馬鹿正直に、もちろん助けると答えた。

それが反省していないととられてしまい、話はイレギュラーゲートの対策へと変わった。

 

「今、何らかのトリオン兵かトリガーかが周りからトリオンを集めてゲートを開いているという推測の元に原因を調べておる。もちろん開発室総出でな。ただ確かにバムスターに何かが潜んでいた痕跡は発見できたのだが、ゲートを開くものを発見できておらんのだ」

「それでは困りますよ鬼怒田開発室長。そろそろマスコミを抑えるのももう限界ですよ!」

「それはわかっとる。だがそのトリオン兵を見つけないと対策が出来んのだ。今はトリオン障壁でゲートを強制封鎖しとるが…それも後46時間しか持たん。それまでにその未知のトリオン兵を残骸でもいいから見つけねばならん」

「で、お前が呼ばれたわけだ。やれるか?迅」

 

なるほど、だから迅さんが呼ばれた訳か。

迅さんは既に何か視えているようで、お任せくださいとニコリと笑った。そして三雲くんの肩に手を置き

 

「その代わりと言っちゃなんですけど、彼の処分は俺に任せてもらえませんか?」

 

その発言に会議室の人たちは大小の違いはあれど驚いていた。

だが三雲くんがイレギュラーゲートの原因に関わっているのか…

俺の脳裏に三雲くんの隣にいた白髪で身長の低い彼浮かぶ。

迅さんの言葉で、俺の推測が確信に変わった。

 

結局三雲くんの処遇は、迅のいつもの「俺のサイドエフェクトが(ry」の一言で決まった。

…トンビに油揚げ掻っ攫われた気分だな。まぁこっちの有利な側に転がってくれそうだからいいんだけど。

 

「三雲くん、この後少しいいかな?」

 

会議室から出て来た三雲くんに声をかける。

戸惑いながらも三雲くんは了承した。

三雲くんと鬼怒田さん達と話し終えた迅を連れて、最近まったく使われていない玉狛第一の隊室に向かう。

 

「ボスから話は聞いてますよね?」

「ああ、電話で聞いたよ。でもこの三雲くんがね〜」

「な、なんでしょうか?」

「ああごめんね。着いたら話すよ。話すことって言うより、聞きたいことなんだけどね。まぁ悪い事にはならないと思うから安心していいよ」

「はぁ、そうですか…」

「あ!そうだ。三雲くん、改めてありがとう!妹を助けてくれて」

「い、いえそんな、僕はただ自分がするべきことをしようとしただけで…」

「 それでも君のしたことで救われた人はたくさんいる。俺もその一人だよ。だから、ありがとうな」

「は、はい!」

 

そんなこんなで本部内の玉狛第一の隊室に着いた。

部屋の中のほとんど物は初めから備え付けられているもので、誰かの私物があるわけではないが、密談にはうってつけだろう。

すでにボスが一人がけのソファに座って待っていた。

迅さんと三雲くんはそれぞれソファに腰掛ける。

俺は給湯室に行って、人数分のコーヒーを入れて砂糖とミルクと一緒に持っていく。

コーヒーをそれぞれに渡して、話し始める。

 

「さて、時間も遅いし早速本題に入るか。それでいいよな?夏樹、迅

「構わないっすよ」

 

迅さんも頷いて肯定する。

 

「じゃあ早速って夏樹が聞いた方がいいか。考え着いたの夏樹だしな。って事で夏樹よろしく〜」

 

そう言ってボスはソファに腰掛け直した。

 

「じゃあ三雲くん、率直に聞くけど、空閑遊真。この名前の子について色々と知ってるよね?」

「…っ!?」

 

質問を聞いた瞬間、三雲くんはわかりやすいほどに動揺して冷や汗をかき始めた。

顔芸はまだできない様だな。

三雲くんの返答を待たずに、俺は自分の推測を話し始める。

 

「空閑遊真。彼は向こう側から来た。そうじゃないかな?そしてその彼を君は匿っている。違うかい?」

「……」

「あー、そうだ。言っておきたいんだけど、何も俺や夏樹それにボスもその空閑遊真って子がネイバーだとしても、とりあえずは何かするつもりは無いから安心していいよ。勿論三雲くんにも処罰を与えることはないから」

「そうなんですか…?」

「何故って思ってるだろうから説明すると、今ボーダーには三つの派閥が有る。まぁ派閥と言ってもそれぞれネイバーに対する姿勢が異なる程度のもので、 決定的に対立しているわけではないんだけどね。まず一つ目が城戸司令率いる城戸派。この派閥は簡単に言えば、ネイバー絶対に許さないぞ主義。この派閥がボーダー内で最大の派閥。空閑くんがネイバーだと知れたら、確実に排除しようとしてくるだろうね。そして二つ目。忍田本部長率いる忍田派。この派閥は街の平和が第一だよね主義で本部隊員の3分の1がこの派閥。嵐山さんとかがそうだね。

そして三つ目が」

「我ら玉狛支部派だ!俺ら玉狛はネイバーにもいいヤツいるから仲良くしようぜ主義。空閑くんがネイバーでも即襲ったりしないよ。だから安心していいよー」

「迅さんに説明をとられちゃったけど、だいたいそうゆう事だから空閑くんのことを話して大丈夫だよ。まぁ玉狛支部派になら、だけどね」

「そうなんですね…」

「まっ、そんなすぐ結論は出ねーか。じゃあ、三雲くん明日にでもその彼に我々のことを聞いてみてくれ」

「わかりました」

「おっと、そうだ。後彼に最上宗一って名前を知っているかも聞いてみてくれ」

「最上宗一さんですね。わかりました聞いてみます」

『その必要はない』

 

突然、機械的な音声が聞こえ、三雲くんの制服のポケットから黒い小さな豆の様な物体が出てきた。どうやら今の声はこの豆粒から出たみたいでだ。

 

『突然失礼した。オサムのことが気になり話を聞かせてもらっていた。そしたら私が出てきた方が話が進みやすいだろうからこうして出て来させて貰った。私はレプリカ、ユーゴに作られた自律型多目的トリオン兵。ユーマのお目付役だ」

「こいつは驚いた。自律トリオン兵じゃねーか」

「ボスはこれが何か知ってるんですか?」

「ああ。まぁ知ってるって言ってもそこまで詳しくは知らない、話に聞いた程度だがな。しかしさすが空閑さんだな」

「それでレプリカ先生。レプリカ先生が出てきたって事は、我々を信用して貰ったって事でいいのかな?」

『一先ずはそう取って貰って構わない』

「じゃあレプリカ先生、早速なんだけど向こうで空閑さんに何があったか聞かせてくれないか?」

『承知した』

 

レプリカ先生から空閑有吾さんに何があったのか、そして遊真くんについてザックリと教えて貰った。

 

『簡単にではあるが、事情は今話した通りだ。詳しくは直接会った時に話そう』

「なるほどな…空閑さんにそんなことが…」

「ボスこれからどうしますか?」

「あぁそうだな。とりあえずこのことを俺は忍田に話しておく。迅と夏樹は、遊真くんに会ってくれ。それでいいか?レプリカ先生」

『ああ、私は構わない』

「俺も了解です」

「迅さんに同じく、自分も了解です。三雲くん、紹介頼めるかな?」

「わかりました」

 

明日遊真くんに会うことになって、話し合いは終わった。

レプリカ先生曰く、明日会う時にはイレギュラーゲートの原因を教えられるらしい。

俺は三雲くんと連絡先を交換して、待機任務に行くため待機場所の鈴鳴支部に向かった。




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