副作用に副作用があるのはおかしいだろ!!   作:おびにゃんは俺の嫁

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お待たせしました。
今回は三人称で書いてみました。
アドバイスをお願いします。



第13話

イレギュラーゲートが解決して数日後、夏樹は冬華と玉狛支部に来ていた。

イレギュラーゲート騒ぎも落ち着き、夏樹に余裕が生まれたので冬華のオペレーターの練習を再開しようということになったのだ。

 

「宇佐美、今日はよろしくな」

「よろしくお願いします。宇佐美先輩」

「うん。よろしくね?冬華ちゃん」

「じゃあ早速始めて貰っていいか?」

「そうですね。じゃ行こっか」

 

三人はオペレーターの設備がある地下に降りて行った。

 

「それで前はどこまで教えたっけか?」

「この前は各ポジションの特徴について教えて貰いました」

「あ?そうだったね。それじゃあ今日はトリガーについてだね」

「お願いします!」

 

宇佐美と夏樹は、トリガーホルダーを開けて実際のトリガーを見せたり、仮想戦闘モードで夏樹がトリオン兵相手にトリガーを使って見せること等を交えながら説明していく。

教え始めて少し経った時、地下に携帯の着信音が鳴り響いた。

 

「悪りぃ電話だ。気にせず続けててくれ。ちょっと上で話してくるから。宇佐美頼んだ」

「りょーかいです」

「悪いな」

 

そう言って夏樹は地上に上がるエレベーターに乗っていった。

 

「さぁ続けようか。シューター用トリガーについて話すね」

「は、はい!」

 

2人と別れた夏樹は着信相手を確認する。

 

「三雲くん…?」

 

携帯には三雲修と表示されていた。

地上上がったエレベーターから出た夏樹は電話に出た。

 

「もしもし三雲くんか?どうしたんだ?午後の予定にはまだ早いけど何かあったのか?」

『佐藤先輩、それが大変なことに…』

 

夏樹は三雲から電話越しでも分かるくらいの焦った声で事情を聞く。

三雲の話は今日空閑は午後に林道支部長に会う事になっていた。

その前に三雲は空閑に会ってほしい子が居て、その子についての相談をしていたところに三輪隊が襲来、空閑と戦闘になってしまったのだ。

幸い、この未来を予知していた迅が途中で介入することでその場は収まったのだが、空閑がネイバーであることと、黒トリガー持ちであることが対策を練る前に城戸さん達にバレてしまったのだ。

なので今から迅と三雲は本部に行くことになり、夏樹にも来て欲しいとのことだった。

話を聞いた夏樹は三雲に迅に変わって貰うよう頼んだ。

 

『おう、どうした?夏樹』

「いや、どうしたじゃないですよ迅さん。未来見えてたんなら教えてくださいよ」

『ほら、予知を教えてもいい結果になるとは限らないだろ』

「そうですけど…まぁ今はこの話はやめておきます。それより俺も今から向かいますけど、どうするんですか?まさか未来予知しといてここは任せたなんて言わないですよね?」

『それは大丈夫だ。タイミング見て仕掛けるからその時は援護射撃を頼むな』

「了解です。でもどうするんですか?空閑くん本人を認めて貰ったとしても、黒トリガーは見逃してくれますかねぇ」

『まぁその時はその時だよ』

「一応言っておきますけど、そうなったら俺も手伝うんで1人で暗躍しないでくださいね」

『わかったよ。そん時はよろしくな。じゃあ本部で合流な』

「わかりました。今から向かいます」

 

電話を切った夏樹は冬華と宇佐美に少し抜けることを言いに地下に降りた。

 

「おっ、帰ってきた。電話大丈夫でした?間に合いましたか?」

「ああ、悪いな突然抜けちって。それで俺が電話に出てる間にどこまで進んだ?」

「ちょうどアタッカー用の3つを教えて貰ったところです」

「そうか。宇佐美悪いんだけど、このまま教えといて貰っていいか?」

「大丈夫ですけど、どうかしたんですか?」

「ちょい野暮用ができちゃってさ。今から本部に行くことになったんだ。そう言う訳で冬華を頼んだ、宇佐美」

 

そう言うと夏樹は地上に上がっていった。

 

「何かあったのでしょうか?」

「う?ん、何だろうね?まぁ佐藤先輩なら大丈夫だと思うから。安心して大丈夫だよ。さっ続けようか」

「そうですね。引き続きお願いします!」

「はーい。それじゃあアタッカー用トリガーの説明は終わったから次はシューター用だね」

 

冬華達2人と別れた夏樹は本部で迅と三雲から合流して、会議に参加していた。

三雲と迅が先の三輪隊との経緯を説明した。

会議はその黒トリガーにどう対処するべきか城戸派の黒トリガー強奪に忍田本部長が反対していた。

 

「強奪の必要はありません」

「どうゆうことだ!迅!三雲が手懐けているからと言って、安心は出来んだろう」

「いえそうではなく、黒トリガー持ちの名前は空閑遊真。空閑有吾さんの息子さんです」

 

迅が仕掛けた。

その名前を聞き、城戸司令は衝撃を受けていた。

 

「空閑…だと…!?」

「クガ…?何者ですかな、そのクガとやらは?」

「我々にもご説明願いたいですねぇ」

 

鬼怒田室長や根付室長は現ボーダーから所属した為、空閑有吾を知らないので驚く以前に疑問を抱いていた。

そこに忍田本部長が空閑有吾について説明する。

 

「空閑有吾…有吾さんは…4年半前にボーダーの存在が公になる以前から活動していた、いわば旧ボーダーの創設に関わった人間。ボーダー最初期のメンバーの1人だ。私と林道にとっては先輩にあたり、城戸さんと佐藤くんの両親にとっては同輩にあたる」

「そういうことなので空閑有吾さんの息子である以上争う必要はないのではないでしょうか?」

「…まだ空閑の子と確認できた訳ではない。名を騙ってる可能性もある」

「それは後で調べればわかります。

それとも何か名を騙ってるという証拠があるんですか?」

「…!?」

(なるほど悪魔の証明か…これで本人でないと証拠がない限りは無闇に動けなくなったわけか)

「ではこれ以上部隊を繰り出す必要はないな。城戸司令もいいですね?」

「ああ、いいだろう」

「それでは迅、夏樹くん、三雲くんつなぎをよろしく頼むぞ」

「了解です」

「…はい!」

「そのつもりです。忍田さん」

「では解散とする。進展があれば報告するように」

 

城戸司令の締めの言葉で会議は終わり夏樹ら三人や忍田本部長に林道支部長が退出して、会議室に残ったのは城戸派の面子だけになった。

先程から不機嫌そうな顔をしていた鬼怒田室長が口を開いた。

 

「…このままで良いのですかな?城戸司令。空閑云々は置いとくとしても…」

「そうですねぇこのまま玉狛と黒トリガーが手を結べば、ボーダー内のバランスが…」

「わかっている。空閑の息子かどうかは別問題として……黒トリガーは必ず我々が手に入れる」

 

城戸司令の言葉で派閥の舵はとられた。

城戸派は黒トリガー強奪の作戦を計画し始めた。

 

「いや~、ナイス援護射撃だったよ夏樹。助かった」

「いえ、たまたま思いついただけですよ。それより、城戸さんたちはやっぱり…」

「…!?空閑はもう大丈夫なんじゃないんですか?」

「う?ん、どうかな」

「えっ…」

 

空閑の安全が確保されたと思っていた三雲は夏樹と迅の会話を聞いて再び不安に襲われた。

 

「この前にボーダーに派閥があるって話しただろ」

「はい」

「それぞれの派閥には考え方があって、その考え方が玉狛と城戸さんのとこで正反対なんだよ。だからあんまし仲がよろしくないわけ」

「なるほど…」

「まぁ城戸さん派は一番規模が大きいから玉狛が何かやっても、王者の余裕で見逃してもらえてたんだけど…」

「もし遊真がうちと手を組んだらそのパワーバランスが完全にひっくり返る」

 

不安になった三雲に2人は詳しくその訳を説明する。

 

「…!?空閑1人でそこまで…!?」

「そう、黒トリガーってのはそれぐらい強力なもんなんだよ。三雲くんも見たんじゃないかな?三輪隊に余裕で勝った空閑くんを」

「つまり城戸さん派的にはパワーバランスがひっくり返るのは避けたいだろうから、どうにかして黒トリガーを横取りしようとするだろうな」

「まっ、落ち着きなよ。俺らもなんとか動いてみるからさ。とりあえず空閑くんに会った方がいいね。午後の約束もあるしさ」

「ボスは先に戻ってるって言ってたよ」

 

3人は本部から空閑と合流するために歩き出した。

 

「おっ来た来た。オサムと迅さん…と佐藤先輩?」

「よう空閑くん、此間ぶりだな」

「なんで先輩がここに?」

「俺が呼んだんだ。会議に夏樹が居てもらった方が良さそうだったからな」

「ふ?ん、そうなんだ。それでオサム、偉い人にしかられた?」

「いや…まぁ叱られたけど…」

 

三雲と空閑が話している傍ら、夏樹は空閑と一緒にいた少女と目が合った。

 

「…!?君は…」

「あっ、雨取千佳です。あの…修くんが遊真くんに会わせたいって…」

「あ?大体のことは聞いてるよ」

「それで修くんはどうなっちゃうんですか?やっぱりクビとかになっちゃうんですか…」

「いやいや、そんなことはないから安心しなよ」

 

夏樹が雨取と話している間に空閑に三雲が事情を説明し終えたのか、迅に相談していた。

 

「これからどうすればいいですか?迅さん、夏樹先輩」

「うーん、そうだな」

「一番シンプルなのがいいんじゃないですか。シンプルイズベストって言いますし。まぁ迅さんに任せますが」

「そうだな、夏樹の言うようにシンプルなやり方が一番だな」

「シンプルな…」

「やり方…」

 

夏樹と迅の言葉に三雲と空閑は首を傾げた。

 

「うん、遊真お前ボーダーに入んない?」

 

2人の疑問に答えるように、前を歩いていた迅が立ち止まって振り返り、

空閑に提案を持ちかけた。

 

「…!?」

「俺が…!?」

 

驚く空閑に迅は玉狛支部について説明した。

説明を聞いた空閑は三雲と雨取が一緒に来るならと支部に行くことになった。

しばらく歩いて川の真ん中に建っている建物に着いた。

 

「さあ着いた。ここが我らが玉狛支部だ」

「川の真ん中に建物が…!」

「元々ここは川のなんかを調査する建物だったんだけど、使われなくなったところを買い取って基地として建て替えたらしいよ」

「いいだろ。隊員は出払ってるぽいけど…」

「一応宇佐美と冬華がいると思います」

「そっか。ただいま」

 

迅が扉を開けるとカピバライダーが基地内を巡回していた。

 

「ただいま、陽太郎。宇佐美達はどこ行ったんだ?」

「…しんいりか…」

「「新入りか」じゃなくて」

「おぶっ」

「で、宇佐美達はどこ?」

「佐藤先輩おかえりー。用事は済んだんですか?」

 

夏樹が陽太郎に宇佐美と冬華の居所を聞いているところに、上の階の奥から宇佐美の声がした。

上の階から荷物を抱えた宇佐美が顔を覗かせた。

 

「え?何?もしかしてお客さん!?やばい、お菓子ないかも!待って待って!ちょっと待って!」

 

そう言うと宇佐美は奥に小走りで消えていった。

 

「まぁとりあえず三雲くん達はこっちに来てくれ」

 

夏樹はそう言って三雲達を客間に通した。

3人に座って貰っていると宇佐美が冬華を連れて戻ってきた。

手には小南のものであろうどら焼きを持って。

 

「いや~、どら焼きしか無かったけど…でもこのどら焼きいいやつだから食べて食べて」

 

と宇佐美が三雲達3人にどら焼きをすすめる。

 

「なんで佐藤さんがここに…?」

「あぁ、そっか三雲くんは冬華と同中だったな。冬華は俺の妹なんだ。今度ボーダーにオペレーターで入隊するから、今日はその予習ってわけなんだ」

「そうだったんですか…」

「よろしくね。三雲くん」

「オサム、佐藤先輩の妹と知り合いなのか?」

「空閑はこっち来たばかりだったな、同じ学校の同級生だ」

「そうなのか。じゃあよろしくな。さと、佐藤…なんか同じ名前が2人で紛らわしいな」

「まっそうだな。じゃあ俺は夏樹でいいよ。三雲くん達もそれでいいから」

「私も冬華で大丈夫です」

「お、そうか。じゃあよろしくなフユカ」

 

そんなやりとりをしている横で空閑のどら焼きを密かに盗み出そうとするカピバライダー。

それに気づいた空閑と目が合い、お互い目を煌めかせた。

 

「あっ、陽太郎!あんたはもう自分の食べたじゃん!」

「あまいなしおりちゃん、ひとつでまんぞくするおれではない」

 

そう言ってニヤリと笑う陽太郎の頭にチョップが振り下ろされた。

 

「おぶっ」

「わるいなちびすけ。おれはこのどらやきというやつに興味がある」

「ぶぐぐ…おれのどらやき…」

 

こうしてカピバライダーの夢は潰えたと思われた。

しかしそこに陽太郎にとってまさに天からの救いとも言える提案が雨取からなされた。

 

「よかったら…わたしのあげるよ」

 

この言葉を聞いた陽太郎は顔を輝かせどら焼きを頬張った。

そしていつものカピバライダーによるプロポーズ?が行われた。

ちなみに冬華もすでにそのプロポーズを受けており、本人は苦笑いしただけだったが、その場にいた兄である夏樹と、林道ゆりを巡って陽太郎とライバルである木崎は鬼の形相をしていた。

 

閑話休題

 

そんな玉狛支部でよく見られるようなゆるい雰囲気をに唖然としていた三雲に夏樹と宇佐美が声をかけた。

 

「ここの雰囲気に驚いているみたいだね。三雲くん」

「そうですね…なんていうかここは本部と雰囲気がかなり違いますね」

「そう?」

「まぁうちは人数も少ないからね。緩くもなるさ」

「でもはっきり言って強いよ」

「!」

「うちの防衛隊員は迅さんと佐藤先輩の2人以外に3人しかいないけど、みんなA級レベルのできる人だよ。玉狛支部は少数精鋭の実力派集団なのだ!」

「宇佐美、少数精鋭とか実力派集団だとかは自分で言うのは違くね」

「まぁいいじゃないですか?キミもウチに入る?メガネ人口増やそうぜ」

 

三雲くんをボーダーメガネ人間協会に協会の名誉会長が直々に勧誘していると、雨取が夏樹と宇佐美に質問を投げかけた。

 

「あの…夏樹先輩と宇佐美さんも向こうの世界に行ったことあるんですか?」

「うん、あるよ。佐藤先輩もありましたよね」

「ああ、かなり前でけどね」

 

さらに雨取は2人に質問する。

 

「じゃあ…その向こう側の世界に行く人ってどういうふうに決めてるんですか?」

「それはねー、A級隊員の中から選抜試験で選ぶんだよね」

「ちなみに選抜試験でさらにA級の中から、黒トリガー相手に善戦できる実力を持ってる隊員が選ばれるんだ」

「大体は部隊単位で選ばれるから、アタシもくっついて行けたんだけど」

「A級隊員…ってやっぱりすごいんですよね…」

「400人のC級、100人のB級のさらに上だからね。そりゃツワモノ揃いだよ」

 

説明を終えたところにタイミングを見計らってか、迅が入ってきた。

 

「よう3人とも、親御さんに連絡して今日は玉狛に泊まってけ、ここなら本部の人達も追ってこないし、空き部屋もたくさんある。冬華ちゃんも泊まって行きなよ」

「迅さん、ボスは?」

「もう部屋にいるよ」

「わかりました。じゃあ先に行ってます」

 

そう言うと夏樹は部屋を出て行った。

 

「それじゃ宇佐美面倒見てやって」

「ラジャー」

「遊真、メガネくん来てくれ。ウチのボスが会いたいって」

 

夏樹に続いて迅達も部屋を出て行った。

 

「失礼します。2人を連れてきました」

「おっ、来たな。お前が空閑さんの息子か。はじめまして」

「どうも」

 

遊真と林道支部長が邂逅した。

 

「お前のことはここにいる3人から聞いてる。玉狛はお前を捕まえる気はないよ。ただひとつだけ教えてくれ。お前、親父さんの知り合いに会いに来たんだろ?その相手の名前はわかるか?」

「サトウ ハルキ、モガミ ソウイチ。親父が言ってた知り合いの名前は…サトウ ハルキとモガミソウイチだよ」

「そうか…やっぱり春樹さんと最上さんか…2人はボーダー創設メンバーで、お前の親父さんのライバルだった。最上さんは迅の師匠だった人だ」

 

そう林道支部長が言うと、迅は帯刀していた風刃をそっと机の上に置いた。

 

「この迅の黒トリガーが最上さんだ。最上さんは5年前に黒トリガーを残して死んだ」

 

その言葉を聞いた空閑は風刃へと手を伸ばした。

 

「…そうか…このトリガーが…」

「ああ、そうだ。もう1人の春樹さんは言わなくても分かると思うが、夏樹の父親だ。4年前の大規模侵攻で亡くなった。それでだ。もし2人が生きていたらきっと本部からお前のことを庇っただろう。俺は新人の頃に空閑さんにお世話になった恩がある。その恩を返したい。お前がウチに入れば俺も大っぴらにお前を庇える。本部とも正面切ってやりあえる。…どうだ?玉狛支部に入んないか?」

 

結果から言うと空閑はボーダーに入ることになった。

最初は林道支部長の誘いを断った空閑だったが、その後屋上で夏樹と迅に自らの過去を話している時に、同じくレプリカから同じく空閑の過去を聞いた三雲から、雨取と自分が遠征部隊に選ばれる手伝いをして欲しいと頼まれた。

2人を手伝うという新たな目的を得た空閑は入隊することになった。

三雲達3人がそれぞれ、入隊届と玉狛支部への転属届を出して、支部長室から出ていった。

そこに迅が話をきりだした。

 

「さてと、どうしますかね?」

「夏樹どう思う?」

 

そう林道支部長は夏樹に今後起こりうることを聞いた。

 

「ボスと迅さんと考えてることと同じですよ。城戸さん達は確実に攻めてくると思いますよ。このまま勢力図が代わるのを見過ごすとは思えないですし…」

「やっぱそうあよなぁ…どうしたもんか」

「でもとりあえずはまだ大丈夫でしょ」

「そうですね。来るとしても遠征部隊が帰ってきてからでしょうからね」

「だな。それじゃあなんかいい案があったら教えてくれ。俺に出来ることがあったら教えてくれ」

「「了解です!」」

 

話し合いを終えて夏樹と迅は支部長室を後にした。

 

その後、夕食にみんなで迅の頼んだピザを食べて、みんなが寝静まった丑三つ時。

夏樹は目が覚めてしまい、気晴らしに支部の屋上に来た。

夏樹がしばらく夜空を眺めていると、誰かが階段を上ってくる足音が夏樹の耳に入ってきた。

 

「誰かと思ったら、ナツキ先輩じゃん。寝ないのか?」

 

ドアを開けて屋上に来たのは空閑だった。

 

「誰かと思えば、ナツキ先輩じゃん。こんな時間に何してるの?」

「寝れなかったから、外の空気を吸いに来ただけだよ。遊真こそこんな時間まで起きていたのか?そんなに警戒しなくても今日のところは襲われることはないと思うぞ」

「イヤイヤ、そうじゃないよ。おれはトリオン体に成ってから寝る必要がないんだ」

「そうなのか、まぁだとしても目を瞑って横になるくらいはしたほうがいいと思うぞ。精神は疲れるだろうからな」

「フム、やってみるよ。あっそういえばナツキ先輩も迅さんと同じくサイドエフェクト持ってるんでしょ」

「まぁな。迅さんから聞いたのか?」

「うん。それでどんなのなんだ?」

「脳の使用率を操作できるってのが俺のサイドエフェクトだよ」

「使用率?どう言う事だ?」

 

夏樹の言ったことがよく分からなかったのか空閑は頭を傾げて、頭上にハテナマークを浮かべていた。

 

「ハハハ、難しかったかな。簡単に説明すると人間の脳ってのは全部が全部いつもフル稼働ってわけじゃなくて普段は使われていない部分もあるんだ。俺のサイドエフェクトはその使ってない部分を使ったり、逆に使ってる部分を使わなくすることもできるんだ。まぁどちらにしても使うと副作用があるから不便ではあるんだけどな」

「なるほど、分からん」

 

空閑はさらに首を傾げさせ、頭上のハテナマークを増やした。

 

「まっ、頭を良くできるもんだと思ってくれればいいよ」

「そうか。もう一つ質問していい?」

「ん?別に構わないよ」

「ナツキ先輩は親をネイバーに殺されたんでしょ。ネイバーのこと憎んでいるか?重くなる弾の人みたいに」

「重くなる弾って、あぁ秀次のことか。しかし直球な質問だね。う~んそうだねぇ、まぁ率直に言えば憎んではないよ」

「そうなのか」

「まぁね。そりゃ親父たちを亡くした直後は途轍もないショックだったけどな、けど俺の場合は冬華がいたからな。それにボーダーの仲間たちのお陰ってのも大きいけどな。あいつらといた時は楽しいことで悲しさを忘れられたもんだ」

 

そう言いながら夏樹は何かを思い出すように虚空を見つめた。

夏樹はボーダー本部が出来てからの部隊を組んでのランク戦や、新トリガーの構想を一緒に練ったり、技術の教え合ったりした頃を思い出していた。

空閑を置き去りにして物思いに耽っていることに気づき、咳払いをして話を戻す。

 

「おっほん、まぁそれに俺は向こう側に何度も行ったこともあるし、向こうにいる奴ら全員が悪じゃないってのも知ってるからな」

「そうなのか」

「それに幸い考えることならサイドエフェクトのおかげでいくらでもできたからな。考えても考えても俺は復讐するよりも、もう二度とこんなことが起きない様にしようという考えに纏まったからな」

「そうなんだ。ありがと」

「おう、なんかあったらまた聞いてくれよ」

「うん。じゃあおやすみナツキ先輩」

「おう、と言ってももう朝になりそうだけどな」

 

そう言うと夏樹は少し白んできた空を見ながら、ドアを開けて屋上から中に戻ろうとする空閑にもう一言付け加えた。

 

「そうだ、迅さんも言ってたけど、こっから先はきっと楽しいことが起こると思うよ。そん時は全力で楽しめよ」

「そうだね。そうさせてもらうよ」

 

そう笑みを浮かべて空閑は屋上から中に戻っていった。

 

「もう朝か…さてとどうしたものかなぁー」

 

夏樹はそう呟いてコーヒーを口にして考えに沈んでいった。

 




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