副作用に副作用があるのはおかしいだろ!! 作:おびにゃんは俺の嫁
「あぁー、頭いてぇ…」
俺は、頭痛と空腹で目を覚ました。
時計を見ると、短針が真上を刺そうとしていた。
ダメだ…
どうにも昨日の風間さん達との戦闘の記憶が曖昧だ。
「あの後どうなったんだっけか…」
頭の中に広がった靄を払うようにして、昨日のことを順繰りに思い出す。
「えーっと、確か…」
風間さんを
風間隊との戦闘中に、三つの
恐らく、迅さん側ももう終わることだろう。
「綾辻、嵐山さん達はどんな状況だ?」
『まだ冬島さん達を探しています。どうしますか?』
なら、まだ嵐山隊は今回の一件に、直接はかかわってないはず…
だったら計画を少し変えるか…
「嵐山さんにつないでくれるか?」
『了解です』
少しして、嵐山さんと通信がつながった。
『夏樹か?すごいじゃないか!風間隊を全員倒すなんて』
「それは風間さん達の知らないものを使ったからですよ。あと綾辻のおかげです。ありがとうな綾辻」
『どういたしましてです』
「今度なんかお礼するよ」
『夏樹先輩、俺は〜?』
「佐鳥は…なんかしたか?」
『ひ、酷いですよ〜。俺もいましたよ』
あ、そういえば、佐鳥もスポッターしてくれてたな…
忘れてた。
「ハハハ、冗談だよ。佐鳥もありがとな」
『それで夏樹、俺たちはどう動けばいい?』
「あーそれなんですけど、嵐山さん達は戦わなかったじゃないですか。
佐鳥と綾辻のサポートはありましたけど」
まぁ佐鳥のスポッターも、綾辻の情報支援も、風間さん達からはわからないだろうし
『ああ、そうだな』
「なんで、ここで戦闘があったことを、忍田さんに報告してください」
忍田さん派は中立に立ってもらうことにしよう。
『わかった。どう報告すれば良い?』
「あくまで、隊員同士で戦闘があったと、報告してもらえれば」
『了解だ』
俺は嵐山さんに、忍田さんへの伝言を頼んで、嵐山さん達と別れた。
そして俺は、ひとまず迅さんと合流することにした。
◆
「一体、どういう事でしょうか!!」
激しい怒りを含んだ大きな声が、机を強く叩く音と共に、会議室に響き渡った。
怒声の主である忍田は、怒りの対象である城戸派一党に対して、まるで虎のような鋭さを持った眼光でにらみつけた。
「何がだね忍田君?」
忍田の「タイガー怒ってるよにらみ」によって鬼怒田、根付、唐沢の防御力が下がる中、平然と城戸司令が聞き返した。
「先ほど、防衛任務に出ていた嵐山隊から報告がありました。太刀川隊、風間隊、冬島隊、三輪隊が、玉狛支部の迅隊員、佐藤隊員と戦闘していたと。どういうつもりか説明していただけますか」
「………」
「何故、論議を差し置き強奪を強行したのですか!前の会議で空閑君の件は保留になったはずだ」
「………!」
「もう一度はっきりと言っておくが、私は
忍田の眼光がどんどん鋭くなっていく。
そして周りの防御力もどんどん下がっていく。
「まだ刺客を差し向けるつもりなら、今度は玉狛だけじゃなく、嵐山隊も…いや、この私も相手になるぞ!城戸派一党!!」
その一言と共に忍田の眼光がより一層鋭くなった。
背後に虎が視えそうなほどの威圧感に、城戸派一党は城戸を含め押されていた。
「失礼します」
会議室に漂う重い空気が、ガチャとドアを開けて入ってきた人物によって霧散した。
「どうも皆さんお揃いで。会議中にすいませんね」
「どうも…」
「…!」
「迅!?佐藤も!?」
会議室の面々に緊張が走る。
「きっさまらぁ~!!よくものうのうと顔を出せたな!」
「まあまあ鬼怒田さん血圧上がっちゃうよ」
「ちょっ迅さん、あんま煽らないでくださいよ!空気読んで!」
そんなどこか緊張感のない二人のやり取りに、鬼怒田はさらに怒りを募らせる。
「何の用件だ迅、佐藤。宣戦布告でもしに来たか」
「違うよ城戸さん。俺たちは交渉しに来たんだ」
「交渉だと…!?裏切っておきながら…」
「いや…本部の精鋭を2人だけで撃破した。戦力はほぼ対等と言える今が、まさに交渉のタイミングでしょう」
夏樹と迅が話を切り出した。
「こちらの要求はひとつ。自分達の後輩、空閑遊真のボーダー入隊を認めて頂きたい」
「太刀川さんが言うには、本部が認めないと、入隊したことにならないらしいんだよね」
「なるほど…「模擬戦を除くボーダー隊員同士の戦闘を固く禁ずる」か」
「なっ!?規則を盾にとって、ネイバーを庇うつもりかね!?」
「貴様ら一体何をしようとしておるのだ!主導権を得るつもりか!」
「違いますよ。自分たちはそっちに勝とうとか、主導権がどうのとかは、考えてないですよ。ただ後輩の入隊を認めて欲しいだけです」
「そう。だから、ただでとは言わないよ。代わりにこっちは風刃を出す。うちの後輩の入隊と引き換えに本部に風刃を出すよ」
迅はそう言って、腰のホルダーの風刃を机の上に置いた。
「そっちにとっても悪くない取引だと思いますよ」
「………取引だと?そんなことせずとも私は、太刀川達との規定外戦闘を理由に、お前達のトリガーを取り上げることも出来るんだぞ」
「その場合は、太刀川さん達も没収ですよね?なら、それはそれで構わない。ですよね?迅さん」
「ああ、平和に正式入隊日を迎えられるんだ。どっちでもいい」
「没収するのはお前達だけだと言ったら?」
「城戸司令、いくらあなたでもそんな話を通させるわけにはいかない!!そんなことは本部長として見過ごせない。もしそうなれば、我々も加勢させてもらう」
「「城戸司令…」」
「さぁ、どうする?城戸さん」
「……」
「さっき夏樹も言ったけど、俺たちは、後輩を陰ながらカッコよく支援してるだけで、何も戦争しようってわけじゃない。ただ後輩達の戦いを大人に邪魔されたくないだけだ。ただひとつ付け加えるなら、うちの後輩達は城戸さんの「真の目的」のためにもいつか必ず役に立つよ。俺のサイドエフェクトがそう言ってる」
「……」
迅の話を聞いた城戸は、迷っているのか、頭に手を当て少し黙る。
「いいだろう。玉狛支部、空閑遊真のボーダー入隊を正式に認めよう。ただし風刃とは別に、もう一つ条件を認めてもらおう」
「条件…?」
城戸は、迅の言葉に頷き、迅の隣に立っている夏樹を指差した。
「佐藤、お前の本部への転属だ」
「…っ!?」
城戸の条件に周りが衝撃を受け、迅でさえ己の予知が外れたのか驚いている中、当の夏樹は平然と答えた。
「構いません。それで遊真を正式なボーダー隊員として認めてもらえるのなら」
「いいだろう。風刃と佐藤の本部への転属を持って、空閑遊真のボーダー入隊を正式に認める」
◆
グゥー
昨日のことを思い出していると、大きなお腹の音によって、現実に引き戻された。
「お腹減った…」
相変わらず頭痛がひどいが、サイドエフェクトを使った後はいつものことだから置いておいて、とりあえず朝飯だな!
いや、もう昼か…
体を起こしてベットから出る。
ベット横のサイドテーブルに置いてあった私用のスマホを手に取って、部屋を出る。
未だに痛む頭を抑えながら、一階に降りるとそこにいたのは
「起きたか夏樹。随分と遅い目覚めだな」
「……」
雷神丸に跨った陽太郎…
いや、なんか違う
なんだろう…
いつもより雷神丸が小さいような…
いや、陽太郎が大きいのか…
いやいや、そんなすぐ身長なんて変わんねぇだろ!
…!?
まさか!!
俺は、サイドエフェクトの副作用で、長い間眠っていたのか!
「どうかしたか?」
ダメだ…
もう何がなんだか分からん!
とりあえず俺は、現状1つだけ確実なことを、天に向かって大声で叫んだ。
「陽太郎が大きくなっとる!!」
そう叫んだ俺は、顔面と後頭部に衝撃を感じ、再び意識を失った。
「…きろ。…つき、起き…」
「んん〜、陽太郎…ハッ!あれ俺は何を…」
俺は、誰かに揺すられて目を覚ました。
「起きたか」
「あれ?風間さん?」
俺を起こしたのは風間さんだった。
「あれ?…大きくなった陽太郎は?」
「何を言っているんだお前は」
「ん?そういえばなぜ風間さんがここに?ってか他の人たちはどこへ?」
「なんだ、まだLINEを見ていないのか?他の奴らは防衛任務や昼食、バイトにそれぞれ出かけたぞ」
俺はスマホを確認する。
迅さん : ボス達と味自慢に行ってくる。起きたら連絡してくれよ
あぁ、ラーメン食いに行ってるのか。
あれ?じゃあさっきの陽太郎は一体…
風間さん : 昨日のことでいくつか聞きたいことがある。明日の昼ごろに玉狛に行く。
おっ、これだな。
明日の昼ごろって、そっか今か。
「すいません、今見ました。それで聞きたい事ってなんですか?」
「それは、ーー
グゥー!!
風間さんの声を遮るような爆音が俺のお腹から響いた。
「す、すいません…昨日の夜から食ってなくて」
「はぁ〜、仕方ないどこかに食いに行くぞ。聞きたいことはそこで聞く」
「了解です。着替えてきますね」
着替えた俺は、風間と共に三門市内のファミレスに行った。
「それで、聞きたいことというのは何ですか?」
俺らの注文を聞いた店員が厨房の方へと去っていくの確認して、お冷やを飲んでいる風間に問いかけた。
「昨夜の戦闘で、お前が使ったやつについてだ」
「あー、スモークですか?」
「そうだ、あの煙幕だ。佐藤はあの煙幕の中でも俺たちのことがわかっていただろう?」
「はい、くっきり視えてましたよ」
「どうやって?」
「う〜ん、なんて説明しようか…」
俺は頭の中で言葉を組み立てていく
「分かりにくかったらすんません。鋳造でイメージしてください」
「鋳造…」
「えーと、まずスモークの煙が、鋳造で言うところの、溶液を流し込まれる型、土とかですね。それで、スモークの中にいる人や物が鋳造された物です」
「なるほど…お前は、その鋳造物たる俺たちの輪郭を見ていたわけだな」
「そういうことです。まぁスモーク自体が透けて見えるわけじゃないんで、外からの狙撃に弱かったりするんですがね」
まぁ逆にスモークの中に撃ち込むのは、強いと思うんだよなぁ壁越しでも位置わかるし。
「フッ、お前ならそれぐらいスモークの範囲に弾が入ってからでも躱せるだろ?」
「買い被りですよ。流石にサイドエフェクトを使わないと躱せませんよ。それにスモークは鋳型を作るので精一杯で、オペレーターの支援が無いと本当にただの煙幕ですし」
「じゃあ昨日も宇佐美に手伝ってもらっていたわけか」
「あぁいや、宇佐美じゃなくって、綾つ…っと、なんでもないです」
「嵐山達か」
「……さ、さぁ?どうだったかなぁ?」
「ハァー、別に今更どうこうしようとは思ってない」
「あ、そうっすか?それなら良かった」
「だが、嵐山達は何故出てこなかったんだ?」
「あぁそれは、最初は迅さんと分断された後に、俺と嵐山が合流して風間さん達を一網打尽にしようと思ってたんですが、思いの外風間さん達を俺だけで追い詰めれてたんで、冬島さんを探しに行ってもらってました」
「そうだったのか…」
「お待たせしました〜ミートソーススパゲティのお客様ー」
キリのいいところで店員さんが風間さんの頼んだパスタを持ってきた。
その後、俺が注文したパスタも来たので、俺たちは一旦昼飯を食べることになった。
「聞きたいことは満足しましたか?」
ナプキンで口を拭いている風間さんに、まだ聞きたいことはあるか聞いた。
「いや、まだある」
「え、まだあるんですか?」
「当たり前だ。スモークの後も色々使っていただろう」
「ほう。例えば?」
「最後のスコーピオンだ。あのスコーピオンの固さはなんだったんだ?」
「あー、あれは簡単に言えば、スコーピオンの密度を高めたんです」
「どういうことだ?」
「えーと、スコーピオンは、自由に伸ばし変形できる。でも刃の耐久力は、伸ばせば伸ばすほど低くなる。ここまではいいですか?」
「ああ、基本だな」
「伸ばすと耐久力が下がる。これって伸ばす分を、元のスコーピオンから引き伸ばしてるからなんですよ。同じトリオン量で大きいものを作ればそりゃ脆くなるってわけです」
「逆に俺みたいにトリオン量が多いと、大きくしても耐久力は余り下がりません」
以前試しに全身にスコーピオンを纏ったが、硬さはいつも使っている形と変わらなかった。
「つまりは密度なんですよ。スコーピオンを、トリオン量そのままで伸ばすからトリオンの密度が低くなる。そして密度が低いとスコーピオンが脆くなるってわけです」
「そうか、密度か…」
「そうです。密度が耐久力を決めているわけです。ならその密度を高めれば…」
「スコーピオンは固くなるわけだな」
「その通りです。ただまぁ、色々難しいんですよ。まず密度をイメージして硬くするのが難しい」
「硬くするイメージ?」
「ええ、スコーピオンで剣を出す時と同じような感じでイメージするんですけど、それがめんどくさい。最初は既にあるスコーピオンに、形を変えないようにトリオンを送り込むイメージだったんですが、これだと、送り込むトリオンの量を間違えると、スコーピオンが割れたり、弾け飛んだりしたんですよ」
風船が空気の入れすぎで破裂する感じだろう。酷い時なんかは、割れたところから、密度を高める為のトリオンが、刃となって自分に向かって来たりした。
ため息をつきながら、突き当たった問題点を風間さんに話す。
水を飲みながら聞いていた風間さんが、コツを聞いてくる。
「下手に密度とかをイメージするから失敗するんですよ。だから同じ形のスコーピオンを、常にイメージして重ね掛け続けるんですよ。そうすれば形が崩れることもないですし、密度も上がっていくんです」
「なるほど…だが、それだとトリオンの消費が激しくないか?常にスコーピオンを生み出しているようなものだろう」
風間さんが的確に問題点を指摘する。
そう、このやり方だとトリオンを使いすぎるのだ。だが、この問題は解決策があるのだ。
俺は、風間さんの問いに待っていましたと言わんばかりに、指パッチンして話だそうとする。
スカッ
やべっ、指が滑った。恥ずかしい…
「………」
風間さんの視線が痛い!
やめてくれぇ
そんな目で見ないでくれぇ
「指パッチン教えてやろうか?」
「いえ、結構です。ってか今のことはスルーでお願いします」
「だが…「忘れてください」…わかった」
「ごほんごほん。トリオンの問題ですね」
顔に熱を感じながら俺は話を戻す。
「確かに常にイメージし続けるのは燃費が悪すぎるんですよ。だから一瞬だけ、相手と斬りあう時だけ、もっと言えば相手の刀に当たるその瞬間だけ、イメージを重ねるんです。そうすると低燃費で硬くできます。まぁタイミングはシビアですけど」
「どれくらいシビアなんだ?」
「俺は、ぶつかる瞬間の0.3秒です。生駒旋空が0.2秒とかでしたっけか。こっちは0.3秒程度なんで、まだましですね」
「0.3秒…」
「まぁ数字だけ聞けば無理そうに聞こえますけど、風間さんでもできると思いますよ。それに0.3秒じゃなくてそれ以上でも出来ますから。それに成功した時は、孤月を折れましたから、覚えられれば便利ですよ」
「ふむ。佐藤この後暇か?」
「ええ、まぁ特に予定はないですけど」
「そうか。ならこれを教えてくれないか?」
「はい、いいですよ」
「そうか、ならよろしく頼む。お礼と言ってはなんだが、ここは俺が奢ろう。まだ頼みたいなら頼むといい」
「まじっすか!ありがとうございます!じゃあアイスでも…」
「ほどほどにな…」
そう言って俺の卓上の呼び出しボタンを押して、店員さんを呼び出した。
「ごちになります」
「ああ。じゃあ行くぞ。俺の隊室でいいか?」
「はい、そこで大丈夫です」
ファミレスを出た俺たちは、風間さんの隊室に向かった。
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