副作用に副作用があるのはおかしいだろ!! 作:おびにゃんは俺の嫁
風間さんにスコーピオンの硬化を教えた翌日、俺のボーダー用の端末に異動指示が来ていた。
異動先は開発室、肩書きは開発室直属の教導部隊らしい。
城戸さんの直属には置かない所から考えると、城戸派に加わると言うより、今回みたいな動きをさせないよう行動を制限するつもりなのだろう。
とりあえず、本部に行く前にボスのところに挨拶に行くことにした。
「失礼します」
「おう、入っていいぞ〜」
支部長室のドアをノックすると、中からどこか気の抜けたいつものボスの声で返事が来た。
ドアを開けて中に入ると、ボスが待っていた。
「よっ、おつかれさん」
「お疲れ様です。本部に異動になったんで、その挨拶にと」
「あぁ、迅や忍田から聞いてるよ。開発室直属らしいな。頑張れよ」
「はい、ありがとうございます」
「いつでも戻ってきてくれて構わないからな。城戸さんも悪巧みしなきゃそれぐらい許してんだろ。荷物もあのままでいいから」
「わかりました。それじゃ俺はこれで」
「おう、頑張れよ!」
「はい!じゃ失礼しました」
そう言って部屋から出ると、そこには迅さんが待っていた。
「よっ、ぼんち揚食う?」
「いただきます」
そう言って、迅さんが差し出したぼんち揚の袋からいくつかぼんち揚をもらい、その1つを口に入れる。
「…本当に良かったのか?」
「何がです?」
「本部への異動だよ。だって夏樹お前…」
「いいんですよ。俺はそれほどまでに遊真に共感?したんですよ。それに、そんなこと言ったら迅さんこそ、良かったんですか?風刃渡しちゃって。師匠の形見じゃないですか」
「最上さんは怒ったりしないよ。むしろそれで解決するなら喜ぶと思うよ」
確かに最上さんならそうだろうな…
「まぁそうですね。でもそれを言ったら、俺も父さんや母さんに「配属先をいちいち気にするな!」って言われちゃいますよ」
「あー、確かに榛名さんなら言いそうだな」
迅さんはなにかを思い出すように頷いた。
そういえば、迅さんって母さんに何度か怒られてたことがあったっけか…
「それに今回は、自分から暗躍を手伝ったんで、迅さんが責任を感じる必要はないですよ」
「そうか…悪いな」
「あっ!じゃあ悪気があるなら、桐絵の説得お願いしますね〜あいつ絶対めんどくさそうなんで」
桐絵のことだ、「勝ち逃げするつもりか!」とか言って面倒くさいことになりそうだからなぁ
「が、頑張ってみるよ…」
「じゃあそう言うことで」
そう言って迅さんと別れた俺は、配属先に行く前に自分の部屋の掃除をして、異動先の開発室へと向かった。
◆
「失礼します」
開発室に着いた俺は、そう言って鬼怒田さんのところへ向かう。
「夏樹くん、室長ならデスクにいるから、そっちに行って」
「了解です。ありがとうございます雷蔵さん」
雷蔵さんに言われた通り、鬼怒田さんは自分のデスクで書類の山と格闘していた。
「鬼怒田さん、佐藤です」
「おお、佐藤来たか」
声をかけると鬼怒田さんは手を止めてこちらを向いた。
「こっちだ。隊室に案内する。説明はそれからだ。ついて来い」
そう言って鬼怒田さんは、デスクの書類の山とは分けられた分厚い書類の束を持って、歩き出した。
俺の隊室に向かうのかと思ったら開発室の出口には向かわず、こないだのラッド騒動の時には無かったドアに向かった。
「こんなドアありましたっけ?」
「昨日作っておいたのだ。お前の隊室に繋がっておる。そっちの方が楽だからな」
なるほど確かになにかと便利なのかもしれないなぁ。
いやでも壁ぶち抜くか?
基地はトリオンでできてるから簡単なのかもしれないけど…
隊室に入ると、中にはデスクと応接用だろうか、ソファと机が置かれていた。
「家具やらなんやらの配置は後でやってくれ。欲しいのがあったら、トリオンで作ってやるから」
「わかりました」
「じゃあ早速だが、色々説明せねばならん。そこに座ってくれ」
鬼怒田さんはそう言って自分もソファに腰を下ろした。
俺も鬼怒田さんの対面のソファに座った。
「それにしてもやってくれたな、風間隊と冬島隊相手に勝つとは」
「いや〜新しいモノで初見殺ししただけですよ〜」
「まぁいい。だが後でその新しいトリガーは見せてもらうぞ」
「ええ、大丈夫ですよ。後で持って行きます」
「うむ。じゃあ早速だが、お前が配属されるところについて話そう」
「開発室直属なんですよね?だとすると新トリガーの実戦試験とかやるんですか?」
「そうじゃ、それも含まれておる。だが他にもある」
そう言って鬼怒田さんは、書類の束から1つの冊子を取り出して、俺に渡した。
冊子はなにかの報告書のようで、グラフやら表やらで色々な数値を表していた。
「それは後で読んでおけ。まぁ内容は、戦闘員の質の低下についてだが」
「質…?ですがそれなら、新しいトリガーや戦術で向上していると思いますが…」
「上の方の一部を見ればな。だが隊を組んでいないB級個人隊員や、C級隊員の質は落ちておるのだ。その冊子にも書いてあるが実際に、各種訓練の結果、C級隊員のB級への昇格スピードなど落ちてきているものが増えておる」
「なるほど…」
確かに、木虎たちみたいな才ある新入隊員は最近見かけない…
「原因は色々あるが…単純に言えば我々が大きくなりすぎたことだ」
「そればかりは仕方のないことではないかと、人数が増える以上最低値が増えるのも必然ですから」
まぁ他にも、技術の進歩で種類が増えたトリガーから自分に合うものを見つけられなかったり、師匠を探せないとかも原因なんだろうなぁ…
「だが、仕方ないで済ますわけにもいかん。後進育成は太刀川やお前みたいな隊員が引退して、後方に回ってからでは遅いからな」
「まぁそうですね。それで俺にそれをやれと?」
「そうだ。お前には、行き詰まった隊員へのサポートや、B級に昇格したての隊員の防衛任務の引率、各種トリガーの効果的な運用方法の流布、その辺りをやってもらう。簡単に言えばお悩み相談室をやれと言うことだ」
「了解です」
「詳しくはこれに書いておる。後でしっかり読んでおけ」
鬼怒田さんはそう言って残りの書類を渡してきた。
「わかりました」
「それを読んで何かわからんことがあったら、わしのとこまで来い。わしはデスクにおる。それじゃあな」
「うす」
鬼怒田さんは開発室へと戻っていった。
俺はソファからデスクに移動して、渡された書類を読んでいく。
「ふぅ〜」
書類に一通り目を通した俺は凝り固まった体をほぐすように伸びをする。
書類によると、俺のお悩み相談室は明日各隊員の端末に告知され、来年から稼働するらしい。
お悩み相談は予約制で、普段俺が防衛任務に入っていた時間に相談室をする感じらしい。その為防衛任務は、基本免除、大規模侵攻や人手の足りない時のみ参加するらしい。
オペレーターは明日来るらしい。不安だ…俺が何かやらかして、玲みたいに怒らせたりしないだろうか…うん、ビジネスライクな関係を心がけよう。
そしてなんと言っても大事なのが給料だ!!なんと驚き、ざっと計算したら今以上に貰えるじゃないですか!これは少し自分にご褒美を買っても許されるはず!……多分…
書類をあらかた読み終えて、必要事項を書いていると、コンコンと扉を叩く音がして、作業を止める。
「ん?どうぞ〜」
ノックしてきた相手を部屋に迎える。入ってきたのは秀次だった。
「失礼します」
「随分と顔色が悪いな。まぁなんだ…とりあえずそこに座ってくれ」
目にひどい隈ができた秀次にソファに座るよう促し、俺も作業をやめ、秀次の正面に座る。
「その顔を見ると、思い悩んでるとこを月見さんあたりに行くよう言われたのかな?まぁとりあえず話してみなよ」
「はい……夏樹先輩は何故ネイバーを庇うんですか?奴らは倒すべき敵ですよ!」
「確かにな…だが遊真は別だ。あいつは確かにネイバーなのかもしれない。だが敵ではないことは確かだ。ネイバーにも敵じゃない奴はいる」
「だけど…ネイバーは俺の姉さんを…あんただって!…俺と同じように奴らに親を殺されてるのに憎くないんですか…?」
「憎しみはある」
「っなら!」
身を乗り出す秀次を手で制して、話を続ける。
「憎しみはある。でもそれはネイバーにだけじゃない、あの時の自分にもだ。何度あの時に戻れたらと思ったか…何度自分の無力さを嘆いたか…だが過去には戻れない…もう失ったものは帰らない」
「……」
「それに俺には冬華を、妹を父さんたちに変わって立派に育てなければならない。それがあの時弱かった俺の義務なんだ。ネイバー云々はそれに比べれば、どうだっていい」
「だけど、それはネイバーを庇う理由にはならない!ネイバーの味方をしていいわけがない!!」
「秀次、玉狛は別にネイバーの味方ってわけじゃない。ネイバーの中でも話のわかる奴、仲良くできる奴とは敵対しないってだけだ。こっちを攻めてくる敵には容赦はしないよ」
「……」
「それと、
そう言って俺はソファから立ち上がり、デスクの横のバッグから手帳を取り出した。
「秀次、ボーダーの以前…旧ボーダーについてはどれくらい知ってる?」
「あまり…先輩がそこにいたことぐらいです…」
「そうか。じゃあ説明するけど、旧ボーダーは今のボーダーのような防衛機関と言うよりも近界との交流がメインだったんだ。今の玉狛のエンブレムあるだろ、あれは旧ボーダーのものと同じなんだ。上の3つの丸が
そして手帳から一枚の写真を取り出して、秀次の前に差し出す。
「これは…?」
「旧ボーダーのメンバーだよ。まぁそこに写ってるのは子供だけだけど」
写真は玉狛支部の建物の前で、まだ小学生だった俺や桐絵、中学生だった迅さん、他にも高校生だったゆりさんやレイジさんも写っている。
確か、母さんが大人も含めた全員の集合写真を撮った後、子供だけで撮ろうって言ったんだっけか…
「こんなにいたんですか…」
「ああ、この写真を撮った6年前くらいは全員で22人いた。だが今ボーダーに残っているのは9人だけだ」
「……ほかの人はやめたんですか…?」
「ああ一人はな…ほかの人たちは死んだよ。5年前くらいにさっき話した同盟国の一つが敵国と戦争になった。同盟関係だったから俺達もその戦争に参加したんだ。下手すればこっちの世界も巻き込まれてたかもしれなかったからな。それでその戦いで死んだ人もいた。
「なっ……」
「まぁそんなわけで、みんな厳しさをわかってる。その上で、今のスタンスをとってるんだ。秀次が目の敵にしてる迅さんだって旧ボーダーの仲間だけじゃない、母親だってネイバーに殺されてる」
「そうだったんですか……でも俺は認められません!姉さんを殺した奴らと仲良くするなんて…ネイバーは敵だ…」
「それでもいいさ。復讐を否定するつもりはないよ。俺だって目の前に両親の仇がいたらどうするかわからないからな。だが、復讐するにしてもむやみやたらに噛みつくのはよせよ。そんなんじゃ復讐相手にたどり着く前に燃え尽きちまうかもしれないからな」
「はい……」
「まっなんにせよ自分でよく考えてみるといいよ。何かあれば相談にのるからさ」
「そう…ですね…少し考えてみます」
「おう、でもその前に睡眠だな。鏡見てみろひでぇ隈だぜ」
「気を付けます。それじゃあ有難うございました」
秀次はそう言って出ていった。
写真を手帳にしまおうと手に取ると、写真に写る幼い自分と目が合った気がした。
もう大丈夫だ…
もう守られるだけじゃない…今度は俺が守るんだ!
オペ子どんなキャラにしよう…
何かいい案ありませんか?
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