副作用に副作用があるのはおかしいだろ!!   作:おびにゃんは俺の嫁

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お待たせしてすいません。



第20話

 

 秀次が部屋を出て行った後、引き続き束になった書類を処理していた俺の元に、唐沢さんがやってきた。

 

「コーヒーとか出せなくてすいません。今この部屋、何もなくて」

「いやいや、構わないよ。こっちこそ仕事の途中にすまないね」

「いえ、大丈夫ですよ。それでどうしてここに?」

「まずは部隊長就任おめでとう。で、話はその部隊のことなんだけど……」

「はぁ……部隊のことですか……」

 

 唐沢さん、つまり営業部が関わることなんてあるのか? 

 

「そう。明日配属されることになってるオペレーターについてなんだ」

「オペレーターですか……何かあったんですか?」

「ああ実は、君の部隊に配属されるオペレーターの子なんだけど、大企業のご令嬢なんだ」

 

 大企業のご令嬢って……大丈夫なのかよぉ……唯我みたいなやつはごめんだぞ

 

「それ大丈夫なんですか?」

「ああ、それは大丈夫だよ。一回会ったけど真面目で優秀そうな子だったよ。彼みたいなことにはならないから安心して大丈夫だ」

「そうすか……」

「うん、三輪隊の月見さんと友人らしいんだけど、月見さんも問題ないって言ってたからさ」

「それならいいですけど……」

「で、彼女なんだけど最初は戦闘員として入隊しようとしたらしいんだけど、ご両親に止められて、我々の方にもくれぐれも頼むぞって念を押されていてね……スポンサーになる代わりに、彼女の配属先に条件をつけたんだ」

「条件……?」

「そう。まず戦闘員には配属しないこと」

 

 まぁそりゃそうだわな。俺だって、冬華がオペレーターになってくれてホッとしてるしな。

 

「後、配属先にも条件があって、夜間の活動が少ないところ、メディアに露出することがないところ、まぁ他にも色々あるんだけど、大きいので言えばこの2つかな」

「夜間の活動……メディア露出……それで開発室直属に?」

「そう。なんでもここは、お悩み相談室みたいなことと、新開発トリガーのテストが主な仕事で、防衛任務は基本ないだろう?」

「そうらしいですね。たしかにそれなら深夜に仕事は基本ないですけど……」

「あぁ、別に佐藤くんが深夜に防衛任務をする分には問題ないから安心していいよ」

「そうですか」

「メディアに露出することもないと言っていい。それに、普通の部隊に配属してそこで特別扱いをするより、部隊自体が特殊なとこに行ってもらった方が面倒が少なくて済む」

「まぁ……それなら納得ですけど……」

「そう言うわけで頼むよ」

「頼むって……俺に決定権はないですよ。それにその人に問題はないんですよね。なら大丈夫ですよ」

「そう言ってもらえると助かるよ。いや〜その子のお父さんが、俺の大学の部活のOBでね。個人的にもお世話になった人だから、断りづらかったんだ。それにスポンサーになってもらえば、こないだのイレギュラーゲートで手を引こうとしていた他の企業もスポンサーに残ってくれるかもしれないからね」

「それなら良かったです」

「うん。じゃあよろしくね。俺はこれで失礼するよ。まだ仕事が残ってるからね」

「はい。お疲れ様です」

 

 そう言って唐沢さんは出て行った。

 しかしお嬢様か……不安だ。不安しかねぇ……

 明日は身だしなみに気をつけないと……

 後、この部屋もどうにかしないと……いや、明日来るお嬢様と相談した方がいいかな。

 まぁ今日はとっとと必要なことだけ済ませて帰るか……

 最近家に帰れてないしなぁ

 

 俺は机の上にある書類の量を見て、とりあえず気分転換兼飲み物を買いに行くことにした。

 

「あっ、部屋にドリンクサーバーあったら便利じゃん」

 

 

 ──翌日──

 

 久方ぶりに感じる自宅で冬華の料理に舌鼓を打ち、ゆっくり休んで英気を養った俺は、件のオペレーターとの顔合わせのために、隊室でオペレーターを待っていた。

 

 コンコンコンコン

 

 急かす感じのない、耳ざわりのいいノックの音がした。

 どうやら来たようだ。

 

「どうぞ」

「失礼するわね」

「失礼します」

 

 2人の女性の声と共に隊室へと入ってきたのは、三輪隊のオペレーターである月見蓮さんと、新しいオペレーターの女性だった。

 その女性は、肩に少しかかったセミロングの、絹のような艶を持った黒髪に、陶器のようにするりとした肌、まさに立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花と言う言葉を体現したかのような美人だった。そして着ている服も高級感漂う上品な白のワンピースで、それでいて鼻につくほどの高級感はなく、どことなく清楚なイメージを持たせる格好をしていた。

 

 どエライ美人キター!! 

 

 と、思わず心の中で叫んでしまった。

 危なかった。もう少しで声が出るとこだった……

 それにしても美人すぎだろ。男子校生活で美人のレベルがわからなくなってる俺でも、この人は他とは格が違うってわかる……

 

「紹介するわね。佐藤くん、あなたの隊の新しいオペレーターの相川葵よ。葵、彼が葵の隊の隊長の佐藤夏樹くんよ」

「佐藤夏樹です。よろしくお願いします」

「相川葵です。どうぞよろしくお願いします」

 

 そう言って、お互いにお辞儀をする。

 相川さんのお辞儀はまさに見本のように完璧で、その節々から、上品さが見て取れる。

 やっぱりお嬢様なんだなぁ

 

「と、とりあえず立ちっぱなしなのもなんなんで、どうぞそこに座ってください」

「ええ、ありがとうございます」

「佐藤くん、そんなに硬くならなくて大丈夫よ」

 

 月見さんはそう言って、相川さんの隣に座る。

 そう言われても……相川さんは年上だし、初対面しかも異性に、硬くなるなって無理なんだよなぁ……

 そう思いつつ、月見さんと相川さんの対面に座る。

 

「初対面である以上は仕方ないけど、2人とも少し砕けてもいいのよ。葵、あなたもいつも私と話すときみたいな感じで大丈夫よ」

「わかったわ蓮ちゃん。それじゃあ改めて、よろしくお願いしますね佐藤くん」

「さぁ、あなたもよ佐藤くん。葵がスポンサー企業の令嬢だからって、そんなにかしこまらなくてもいいのよ。ね? 葵」

「そうですよ。普通に接してくださいね」

 

 違うんだよなぁ……

 別にスポンサーのご令嬢だからとかじゃないんだよな。企業の御曹司とかなら、俺の学校にも沢山いる。

 美人すぎんだよ! 男子高校生ならみんなこうなると思う。

 まぁでも、確かに今後オペレーターをお願いする上で、このままって訳にはいかないよな……

 

「はい、わかりました」

 

 そう言って俺は、肩の力を少し抜いた。

 

「ええ、それでいいわ。さてと、じゃあ改めて自己紹介しましょうか」

「わかりました。相川さん、どうぞお先に」

「ええありがとう。それじゃあ改めて、相川葵です。趣味はピアノです。まだ拙い部分もあると思うけど精励確勤に頑張るわ。よろしくお願いしますね」

「はい、こちらこそよろしくお願いします。自分は佐藤夏樹、好きなものは甘い菓子です。自分も隊長を務めるのは初めてなので、何か迷惑をかけるかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします」

 

 自己紹介をすると、相川さんから手が差し伸べられる。

 思わず、その白魚のような手に見惚れそうになるのをこらえ、握手を交わした。

 

「ふふっ、でもよかったわ優しそうで。

 怖い人だと思っていたから」

「?」

 

 初対面だよな……俺のこと知ってるのか? 

 首を傾げていると、月見さんが横から訳を話してくれた。

 

「葵は、佐藤くんのあの会見を見ていたのよ」

「あぁ〜そう言うことですか」

 

 

 ◆

 

 

 四年前 ボーダー広報イベント

 

「ボーダー本部基地完成から3ヶ月。この度新しく正隊員に加わった若者たちです」

 

 根付メディア対策室長がそう言って、夏樹、嵐山、柿崎の3人を紹介する。

 そして会見は順調に進み、夏樹たち3人への質問時間になった。集まった記者たちは、フラッシュを焚かれている3人に様々な質問を投げかける。中には「彼女はいるのか?」などもあった。それらを3人のうちだれか1人が答えていた。

 3人を応援していこうというムードが漂い始めた頃、ある1つの質問がその空気をぶち壊した。

 

「次に大規模な侵攻があったら、街の人と自分の家族、どちらを守りますか?」

 

 さっきまでの雰囲気は一変し、シャッターの雨も止んでいた。

 

「それはもちろん家族です。家族を守るためにボーダーに入ったので」

 

 嵐山がきっぱりと躊躇いなく答えた。

 

「自分も嵐山さんと同じで家族です」

 

 嵐山に続いて夏樹もそう答えた。

 2人の回答に記者たちはざわつく。そして質問をした記者が「街は守らないのか」と聞き返した。

 

「先の侵攻で親や兄弟をなくした方もいる。そうした言い方は良く無いんじゃないかな」

 

 そうさっきの記者とは違う記者が言った。どうやらボーダーに批判的な記者が揚げ足を取ろうとしたようだ。

 記者に嵐山が何かを喋ろうとしたが、それより早く夏樹が口を開いた。

 

「自分は先の侵攻で両親を失いました」

 

 夏樹は感情のこもっていない口調で淡々とただ事実だけを言うように喋った。

 記者たちと横にいた根付メディア対策室長に衝撃が走る。記者たちはさっきからあまり喋ることのなかった少年が喋ったことに、根付メディア対策室長は夏樹の境遇に。

 夏樹は一呼吸置いてまた喋り出した。

 

「残された家族は妹だけです。残った唯一の家族を守ろうとするのは悪なのでしょうか? 他人に任せるのではなく、自分で自分の大切な存在を守ろうとするのはいけないことだと、あなたはそう言いたいんですね」

「そ、そんな事は……」

「ボーダーを批判したいのであればすれば良い。でも残された家族に配慮していないような質問は違うと思います。そう言う質問は良くないんじゃないですか?」

「……っ! すいませんでした……」

「自分ではなく遺族の方々に謝るべきだと思いますが……まぁ自分が言えたことでもないので」

 

 会見場が静まり返る。

 そして冷静になったのか、夏樹は一瞬ハッとした後再びマイクを取って

 

「それに自分はなにも家族以外は守るつもりがないと言う訳じゃありません。家族の、妹の安全が確認できたのなら、街のために全力で戦えます。自分はこれで失礼します」

「さ、佐藤くん……」

 

 そう言うと、隣の嵐山の静止も聞かずに夏樹はマイクを机に置いて一礼して会場から出て行った。

 

「えっと……彼と同じように自分も家族が大丈夫だと確認できたら、戦場に引き返して戦います。家族を亡くされた方も、そうでない方も、ここにいる皆さんの家族もこの身がある限り全力で守ります。家族が無事なら何の心配もないので、最後まで思いっきり戦えると思います。その時にボーダーに仲間がいると心強いので、たくさんの人にボーダーを応援してもらえると嬉しいです。ご支援よろしくお願いします」

「ボーダーでは新しい人員を募集しております。それは戦闘員だけではなく、後方で支援するオペレーターやエンジニアなども募集しています。街を守りたいと言う思いでなくとも、全然構いません。ご協力のほどよろしくお願いします」

 

 そう根付室長が話して会見は終わった。

 

 

 ◆

 

 

 そんなわけで、俺はとんでもない黒歴史を作り上げ、初対面の人にはあの会見の人だ、と思われるようになってしまったのだ。

 でも怖いかぁ……まぁあの時は秀次と同じで余裕なかったからな

 

「なるほど。まぁ今は違うんで、安心してください」

「そうね。あの時とは雰囲気が違いますものね。こう……余裕があると言うか、落ち着いたと言うか」

「そうっすか。それは良かったです」

「2人共、自己紹介はもういい?」

「ええ、自分は大丈夫です」

「私も大丈夫よ」

「そう。じゃあさっそくだけど少し合わせてみましょうか」

「了解です」

「葵、いける?」

「ええ、頑張るわ!」

 

 そう言って、相川さんはガッツポーズをしてみせる。

 

 いや、かわいいかよ……

 

 

「みんな色々なものを置いてますよ。漫画、ゲーム機、将棋盤、チェス盤、ルームランナー」

「後、炬燵だったり、珍しいので言えばキッチンかしら」

「その2つは加古さんのとこですね。そういえば月見さんのとこは……」

「うちは普通よ。畳があるくらいかしら……」

「色々なものが置けるのね」

「相川さんは何か置きたいものとかあります?」

「炬燵をぜひ置いてみたいわ。私、炬燵に入ったことないのよ。あとキッチンもいいわね。その2つを置いた加古さんって方とは気が合いそうだわ」

 

 あー、確かに気が合いそうだわ

 加古さんセレブオーラあるもんなぁ〜

 

「いいんじゃないですか」

「そうだわ! 畳を敷いてそこに炬燵を置きましょ! どうかしら?」

 

 俺たちは、お互いどれくらいできるのかを知るために、仮想戦闘でトリオン兵相手に少し戦った。そして今は隊室をどうするか話し合っていた。

 

「いいんじゃないですか。自分も畳の部屋いいと思いますよ」

「そうよね!」

 

 コンコンコン

 

 話しているところに、少し強い感じのノックが聞こえた。ソファから立ち上がって、ドアを開けに行く。

 

「今開けます」

 

 そう言ってドアの横のスイッチを押して、ドアを開けた。

 

「なぁーつきぃー!!」

「んなっ!? ぶべらっ!」

「あらあら〜大丈夫?」

 

 ドアを開けた瞬間、顔面に拳が飛んできた。あまりにも咄嗟にのことで回避が間に合わず、頬にクリーンヒットした。

 

「夏樹! あんた玉狛から異動ってどう言うことよ!」

「桐絵? お前突然何すんだ! いてぇじゃねか!」

「何言ってんのよトリオン体でしょ。それよりも! なんで本部に行ったのよ! 説明しなさい!」

 

 俺を殴ってきたのは桐絵だった。どうやら迅さんは説得に失敗したらしい。

 

「わかった。わかったから落ち着け。説明するから」

「あたしが納得できるようによ!」

 

 んな無茶な……

 

「あら? 小南ちゃんじゃない! そっか、あなたもボーダーだったわね! 私もオペレーターになったのよ」

「あ、葵先輩!?」

 

 ん? 2人は知り合いなのか? 

 

「佐藤くん、葵と小南は先輩後輩の仲なのよ」

「あ〜そうなんですか」

 

 疑問に思っていると、横に来た月見さんが説明してくれた。

 

「そうなの〜小南ちゃんかわいいじゃない! あれ? でもその格好……」

「げっ!」

「葵、小南はオペレーターじゃなくて戦闘員よ」

「ちょっ! 月見さん」

「あら〜そうだったの」

「は、はい……」

 

 ん? あの桐絵が借りてきた猫のように大人しく……

 そうか、これが桐絵のいつもの感じなのか……

 

「ちょっと何笑ってるのよ!」

「いや〜あの桐絵が学校だとそんな感じなんだと思うと……笑いが……止まんない」

 

 俺は思わず声を上げて笑ってしまう。すると桐絵はみるみる顔を赤く羞恥の色に染めていく。なるほど、こっちには猫かぶりのこと知られたくなかったのか

 

「わ、笑うなー!!」

 

 桐絵はそう言って俺に掴みかかって揺さぶってくる。

 

「でも私もびっくりだわ。佐藤くん、小南ちゃんと仲がいいのね。付き合ってるの?」

「「違います」」

 

 俺と桐絵は声を揃えてそう言った。

 

「って、なにあんたが否定してんのよっ!」

「理不尽!!」

 

 桐絵はなにかが気に入らなかったようでスネを蹴ってきた。

 

「相川さん、こいつとは単なる……幼馴染……腐れ縁? みたいなもんですよ。まぁ言ってしまえばかわいい妹みたいなものです」

 

 まぁ冬華には負けるけど

 

「……っ!? か、かわいいってそんなぁ……でも妹みたいなって……」

 

 何故か桐絵は喜んだり悲しんだりしてるがまっいいか。

 

「そうだったのね。てっきり付き合っているんだと思ったわ。お似合いそうだもの〜」

「いやいや、俺なんかより桐絵にはふさわしい奴はたくさんいますよ」

「そうかしら? 私はいいカップルになると思うわよ」

「月見さん、ダメですってそんなこと言ったら。桐絵も俺なんか無いって思ってますって。なぁ桐絵?」

「どうなの小南ちゃん?」

 

 3人の視線が桐絵に向く。

 桐絵は口をもごもごしたかと思うと

 

「うがー!!」

 

 と叫びながら、顔を真っ赤に染めて出て行った。

 

 なんだったんだ? 桐絵のやつ

 

 




後何話か書いたら、大規模侵攻編に突入する予定です。

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