副作用に副作用があるのはおかしいだろ!! 作:おびにゃんは俺の嫁
短いですが、ついに大規模侵攻編に突入です!
カチッ
電気ケトルのお湯が沸いたことを知らせる音を聞いた夏樹は、ケトルを電源プレートから外して、あらかじめインスタントコーヒーの粉末を入れておいた2つのカップにお湯をのの字を描くように丁寧にお湯を注ぐ。そして出来たコーヒーとお茶請けの小分けのバウムクーヘンを持ってキッチンからリビングに行く。
余談だがバウムクーヘンとは職人が一本ずつ手作りした菓子のことを指し、日本でバームクーヘンと呼ばれる菓子とは別物と言ってよい。夏樹が今お茶請けに出したのは、オペレーターの相川の家に送られてきたものの中の余りを相川が持ち込んだ物。要は本場ドイツのガチもんのバウムクーヘンなのだが、バウムとバームの違いを知らず、さらには
食べってしまっている。後日真実を知って顔を真っ青になるとも知らずに…
閑話休題
「どうぞ、コーヒーです」
夏樹がキッチンから出て来て、テーブルの上にコーヒーを置く。
「ああ、サンキュー」
炬燵で温まっていた冬島は礼を言ってコーヒーを夏樹から受け取って一口、口にする。
「ふー、やっぱ夏樹が入れるとうまいな。舌バカなのに」
「一言余計ですよ」
夏樹も炬燵に入ってコーヒーを口にする。まぁその前にミルクと砂糖を大量に入れてだが…
「そういや妹ちゃんボーダーに入ったんだってな」
冬島は、夏樹のもはやコーヒーではなくコーヒー牛乳になっているソレに呆れながら、夏樹に関わりのある話題を上げる。
「ええ、オペレーターですよ。でもなんで知ってるんですか?」
「俺んとこのオペに聞いたんだよ」
「真木ですか」
「おう。なんでも「オペレーター界にも期待の新人が入って来た」って」
先日の入隊日で隊員たちの間で話題になっているのは、バムスターを0.4秒で倒した新人と本部の壁に穴を開けたトリオンモンスターの2人なのだがオペレーター達の間ではそれに加えて、機器操作、情報分析、並列処理を部隊オペレーター並みに出来る新人が入ってきたと話題になっていた。
「まぁ冬華は玉狛で、基本的なことは宇佐美に教わってますから」
「あーやっぱそうだったか。それと、隊をもう組んだんだってな」
「そりゃ入る前から組もうって話になってたみたいですからね」
「西峰ズか…お前は入らなくてよかったのか?」
「自分で言うのもアレですけど、俺が入っちゃダメでしょ」
昔、まだ夏樹が本部で沢村たちと部隊を組んでランク戦をしていた時トリオン量の多さからチーター扱いされたことがあり、色々あったのだがそれはまた別の話。
「それもそうだな。てっきり俺は夏樹も入るもんだと思ってたよ。お前シスコンだもんな」
「冬華は大事ですけど、俺はシスコンではないですよ。それに、もしシスコンだとしても隊を組むことはないですよ」
「どうしてだ?」
「そんなの、冬華の為にならないじゃないですか。あいつももうすぐ高校生になるわけですから、いつまでも過保護なわけにはいかないですよ」
などと、冬華の兄離れかのように夏樹は言うが、本当は冬華による長きにわたる説得で夏樹が妹離れをしただけである。
「それもそうか。ランク戦参戦は次のシーズンから?」
「ええ。二月から参加するらしいですよ。あぁそういえば、ちょうど今頃、初防衛任務ですね」
「お前付き添わなくて良かったのか?」
「いや〜付き添いたかったんですけど、この後1時から新トリガーの実戦テストがあるんで、東さんに頼みました」
「そうか。新トリガーってそれか?」
冬島は、夏樹の前に置いてあったスマホ大の大きさの物を指差した。
「そうですよ。まぁ中身も改蔵されたものや新開発が多いですけど…」
夏樹は冬島にそのトリガーを渡す。
「デカイな…」
手からはみ出す程の大きさとずっしりとした重さに、冬島は思わず声を漏らした。
「普通のトリガー3本分のコストらしいです」
「ほー、それはまたすごいなぁ。で、肝心の機能はどんなだ?」
冬島は手に持ったそれを見る。
「なんでも、鬼怒田さんがパーフェクトオールラウンダー用に考えた物らしいです。攻撃手、射手、狙撃手のポジションごとにトリガーセットを瞬時に切り替えることが出来るとか」
「なんだそりゃ」
「えーっと詳しく説明するとですね。3つのポジションごとに4つのチップのセットがあって、状況に応じてその場でチップを切り替えられる用になってるんです。もし狙撃してたところに近づかれても、セットを攻撃手用に切り替えれば、そのままスコーピオンとかレイガストを出して返り討ちに出来るわけです」
「なるほど、そいつはすげぇな。でもそれだと何個チップをセットしてんだ?いくらトリオンモンスターのお前といえど、各ポジションのトリガーをセットするのはきついんじゃないか?」
「そうですね。攻撃手用と射手用にそれぞれ4つ、狙撃手用に3つ、後シールドやバックワームとか7つで、18個ですね」
「多いな…」
「自分もそう思いますよ…まぁでもタンクがあるんで、大丈夫と言えば大丈夫なんですけどね」
「タンク?…あぁ自作のやつか」
「ええ、そうです」
「確か、トリオンを貯めてるんだったか?」
「はい。俺のトリオンが確か39くらいなんですけど、その中の3分の2を常に貯蓄に回しているんですよ。貯めたトリオンは、戦闘体を作る時に時間短縮したり、戦闘用のトリオンになったりしてるんですよ」
因みにタンクについて詳しいことを知った鬼怒田開発室長が、新たに改良作を作っている。
「便利なもんだな」
「まぁこれは俺の自信作ですから!」
「あっそうだ。お前が作ったスモークさぁ、あれってどうなったんだ?」
「あぁあれは今俺専用から一般用にするために改良中です」
「おっそうなの。じゃあさトラッパー用にも出来るように頼める?」
「いいですよ。やっぱり使うつもりですか…」
「そりゃそうだろ。あれがあれば、うまくいきゃ当真の狙撃を隠せるだろ」
「まぁ確かにそうですね。分かりましたやっておきます。ってそういえば冬島さん、仕事大丈夫なんですか?」
夏樹は少し呆れた目で冬島を見る。
「大丈夫!大丈夫!…どうせ徹夜することになるだろうから…」
「いや、それ大丈夫じゃ………っ!?」
その時だった。
夏樹の言葉を遮るようにしてボーダー内にアナウンスが流れ、夏樹と冬島2人のボーダー用端末にもメッセージが届く。
〔 門発生 門発生 大規模な門の発生が確認されました 〕
「冬島さん!」
「ああ、ついに来たようだな」
2人は炬燵から出て、トリガーを起動する。
そしてリビングから隣の機器類が置いてある仕事用の部屋に行く。
「隊室まで戻ってたら時間が無いな…夏樹、PC借りていいか?」
「どうぞ。そっちが俺のです」
「おう、サンキュー」
冬島は、夏樹が使っている机に着いて、PCを起動する。
夏樹はタブレット端末を開いて、状況を確認する。
「出現したトリオン兵はどうやらいろんな方向に分散したみたいですね。そっちはどうですか?」
夏樹は、PCで罠の稼働状況を確認している冬島に問いかけた。
「ああ、問題なく稼働してるな。これなら隊員の現着まで持つだろ」
「そうですか。なら少し安心ですね」
夏樹は大きく息を吐き、張り詰めた気を少し緩める。
「まぁな。だが四年前のよりだいぶ規模がデカい。あんま気を緩めすぎんなよ。まぁこれはお前じゃなく当真の奴に言った方が良いかもしれないがな…」
「ははは、確かにあいつならこの状況でも寝てそうですね」
「だな」
2人でこの場にいない奴の話をしているとドアの開く音が聞こえ、誰かが入ってきた。
「ごめんなさい!待たせちゃったわね」
少し走ってきたのか息を切らし気味に謝って入ってきたのは相川だった。
「大丈夫ですよ葵さん。俺はまだ出撃じゃないんで」
「そう?なら良かったわ。私のせいで出るのが遅れたらどうしようかと思って少し焦っちゃったわ。あっ冬島さん、お疲れ様です!」
「お、おうお疲れさん。それじゃ夏樹、俺は自分の隊室に戻るわ。お互い頑張ろうや」
「はい、頑張りましょう!」
冬島は、相川と入れ替わるようにして部屋を後にした。決して女子が苦手だから逃げたわけでは無い……と思いたい……
感想、評価、アドバイス等々、是非お願いします!!
皆さんはWT最新話&最新21巻読みましたか?
自分はジャンプ+の電子書籍でもう読みました。(ステマ)
一言だけ「二宮さんはやはりかなりの天然」